水音の乙女   作:RightWorld

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2017/1/6
誤字修正しました。
報告感謝です。 >(ΦωΦ)さん
三点リーダーを正式には使うんですね。

2019/12/31
体裁修正しました。





第1章
第1話:親友からの手紙


 

 

「優奈から天音に手紙が来たよ!」

 

クラスのみんながわたしの周りに集まった。学校に届いた優奈からの郵便物に、わたしへの封筒があったのだ。

 

手にした手紙をじいっと見つめる。中身が見える訳でもないのに。

宛名は確かにわたし。丸っこい字体は間違いなく優奈のだ。開けるのが、怖かった。いや、彼女は元気だろう。分かっている。あの優奈がそうやすやすとくたばるわけがない。

でも、だからこそ、どんどん差が付いてしまうことに恐れている。

 

「開けないの?」

「あ? ああ、もちろん開けるよ」

 

かさかさと手紙を裏返した。封筒の封をしているのは錨のシンボルのシール。扶桑皇国海軍のマーク。その封に指を伸ばした。

優奈は中学に入って最初にできた友達だ。わたしの親友だ。毎日一緒に学校へ登校していた。それができなくなったのは、梅雨明けの少し前。

彼女は、選ばれたのだ。

封を開け、中身を取り出した。中には折り畳まれた便箋と、写真が入っていた。

 

「写真だ!」

「ええー? 見せて見せて!」

 

わたしが見るより前に持って行かれてしまった。

 

「やぁ~ん、かっこいいー!」

「本当にがんばってるんだ」

 

きゃいきゃいとみんなの手を次々と渡り歩き、ようやく写真がわたしの元に戻ってきたのは7分後のこと。

 

やっぱり。

 

まったくもって元気にうまくやってるようだ。

そこにはいつもの彼女の元気な満面の笑顔が写っていた。どこの景色だろう、雪を被った山が後ろに写っている。そしてそこは外国の港のようだ。そこまでなら海外旅行のスナップ写真だったかもしれない。

ただ違和感が漂うのは、彼女の後ろに深緑色の巨大な軍用機が写っていることだ。それは扶桑海軍が誇る世界トップクラスの水上飛行艇、二式大艇だった。

便箋を広げる。丸っこい字が紙いっぱいに埋まっている。一応検閲されてるんだと思うが、女子中学生の丸文字とその文面は、読む方も一苦労だろうと思う。

 

『天音、元気にしてる? あたしは念願の機械化航空歩兵になったよ。みんなが思い描いているのとはちょっと違うかもしれないけど、空を飛んでる。空はすごい気持ちいいところだよ。』

 

ほらやっぱり。彼女はここでもその優秀さをいかんなく発揮しているんだ。

天音は窓から空を見上げた。

 

この空のどこかを、今優奈は飛んでいるんだ。……凄いな。

 

最後の方に、わたしを気遣っての一言が添えられていた。

 

『天音の力が必要になる日がきっと来るよ。その時は一緒に人類を救おうね。』

 

これはまた大きく出たもんだ。でも、優奈は本当に人類を救う立場になったんだよね。

わたしは……選ばれなかったんだ。

 

 

 


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