正義の魔王 [改稿版]   作:しらこつの

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色々と詰め込み過ぎ、更に分かり難いかもしれません。
そういったご指摘があれば、訂正・加筆しようと思います。


第22話 決着

Side エリカ

 

昴は私との戦いで発現させた炎の権能を行使し、ウプウアウトに一撃を入れた。

しかし、それと同時にカウンターによる一撃を喰らい、再び距離を取らされた所だ。

これから彼等の第二ラウンドが始まる。

 

「エリカ、1つ聞いてもいいか?」

 

そんな時、声を掛けて来たのは草薙護堂だった。

本当の事を言えば、昴の戦いに集中させて貰いたい所だけど無視する訳にはいかない。

 

「何かしら?」

「俺達はこれまで神藤と多少なりとも交流してきた。

 でもその間、万里谷が神藤の事を『神殺し』だと気付けなかったのは何でだ?

 彼奴は今使ってる権能以外に、別の権能を持っているのか?」

 

私も今日の戦いで万里谷祐理の霊視能力の高さには驚かされた。

はっきり言って今まで見てきた霊視能力者の中でも抜きん出ている。

それに彼等が彼女の霊視をどれだけ頼りにしているのかも・・・。

 

本当であれば言わなくてもいいのだが、まぁこれ位なら言っても問題ないだろう。

 

「違うわ、彼の権能は見ての通り炎に関する物だけよ。」

「だったらどうしてだ?」

「それは彼の技術によるものよ。」

 

私の言葉に草薙護堂が首を傾げる中、別の所から声が掛かった。

 

「『神道流』・・・魔力を操り、その力を持って武術を収める。

 確か古くから伝わる古武術の1つだったかな。」

「『神道流』?・・・リリアナが言っていた神藤が使う武術の事だろ。

 それがいったい何の関係があるんだ?」

「う~~ん、恵那も正直信じられないんだけどね。

 『神道流』は魔力を完璧に操れる様になって初めて、その真髄を当主から教えて貰えるらしいんだ。

 で、その完璧って言うのが文字通り『完璧』じゃないと駄目みたいなんだ。」

「どういう事だ?」

 

言葉の意図が理解できずリリィが口を挿んだ。

そんな彼女に清秋院恵那が少し悩みながら問い掛けた。

 

「リリアナさんは体中に流れる全魔力を指先だけに集める事って出来る?」

「・・・無理だな。

 元々魔術を使う時に練り上げる時位にしか魔力を意識しない。」

「私達からしたらそれが普通だよね。

 ・・・でも、神道流の当主に認められた者はそれを呼吸するのと同じ様に熟すんだよ。」

「なっ!!」

 

この話をよく分かっていない草薙護堂。

清秋院恵那の話に驚きを隠せないリリィ。

そして、今まで何やら考え込んでいた万里谷祐理が何か思い付いたか「はっ」と顔を上げた。

 

「もしかして、彼は神より与えられた権能の力すらも完璧に操っているというのですか!!」

「まぁ、半分正解と言った所ね。

 別に昴は権能の力を完璧に操っている訳では無いわ。

 でも神殺しになった事で質も量も変わった魔力・・・彼はその全てを完全に掌握しているわ。」

 

私の言葉に草薙護堂を除いた全員が戦慄する。

 

「ど、どういう事だよ。」

「簡単に言うとね、彼は例えどんな時だろうと自分の呪力を思いのままに操れるんだよ。」

「つまりはこういう事です、草薙護堂。

 神藤昴は自身の呪力を完璧に操り、神殺しの膨大な呪力を一切外に漏らす事なく己の内に抑え込んでいた。」

「恵那達も時々隠行で気配を消す事があるけど、彼の場合は常にそれを行っていたって事・・・。」

「日常生活の間、絶えずそんな事をするとは・・・普通ではありません。」

 

この時になって漸く昴の規格外さに気付いた草薙護堂は現在も戦い続けている昴に視線を向けた。

その眼にはリリィ達同様驚きの色が浮かんでいた。

 

そんな彼等の様子が可笑しくて思わず笑みが零れる。

馨さんの話だと彼の技術は歴代でも類を見ない程の圧倒的な物らしい。

 

誰にも真似出来ない、昴だけの強み。

 

彼は自分だけの武器を手に今も必死の表情で神との戦いに挑んでいる。

再び距離を取って始まった戦闘。

始めは最初の頃同様、ウプウアウトの矢の弾幕に中々近付く事が出来なかった昴だった。

しかし背にある日輪から『炎玉』を形成し、矢の相殺に成功した事によって形勢が逆転した所だ。

1つ気がかりなのは昴が背負う日輪が心なしか小さくなったかの様に思えた事。

 

暫くの間全員が口を閉ざし昴の戦いに集中していた時、清秋院恵那が再び口を開いた。

 

「エリカさんから感じ取れる魔力量が少なく感じられるのはそのせいなのかな?」

「・・・その通りよ。

 私は情報収集の傍ら、昴から稽古を付けて貰っていたの。

 魔力効率も上昇傾向にあるし、お蔭で魔術の威力も制度も上がったわ。」

「・・・そうだったんだ。」

 

流石に無視出来ず、本の少し視線を外した時だった。

突如、世界が闇に覆われた・・・。

 

 

 

 

 

Side 昴

 

再び距離を取った所で始まった第二ラウンド。

開幕は戦闘開始同様、相手からの矢の弾幕から始まった。

一切の隙なく襲い掛かる矢に僕は近付く事が出来ないでいた。

 

・・・くそっ、折角一撃与えた所なのに。

このままじゃさっきと一緒だ・・・何とかしなくちゃ。

 

其処で頭に浮かんだのはアグニの使っていた『炎玉』だ。

数多襲い掛かる矢を躱しながら新たしい事をやろうとするのは苦難の技だが、そう言っていられる状況では無い。

僕はあの時の戦闘を明確に思い浮かべる。

すると体が、思考が、何かに至ったかの様に動き始めた。

僕はそれに逆らう事をしない。

それがこの状況における最善手だと信じているから・・・。

 

『氣』の動きから背中の日輪より幾つかの『炎玉』が生まれ出たのが分かる。

やり方を覚えた僕は自分の意志でそれを加速させる。

 

・・・よしっ、これなら行けそうだ。

 

彼の放つ矢に対抗する為、僕は瞬く間に数え切れない程の『炎玉』を形成した。

そしてそれを彼目掛けて一気に撃ち放った。

 

「くっ・・・小癪な!!」

 

突然の反撃に不意を突かれた形になった神様。

丁度彼の放った矢と相殺する形で、僕達の間で幾つもの爆発が起こった。

 

両者遮られた視界。

 

僕はこの隙に神様に近付こうと爆煙の中に飛び込んだ。

しかしその中で待っていたのは、眼前に迫る鉄の塊だった。

遮られている視界の中での不意打ちを如何にか間一髪で躱す。

 

「なっ・・・何がっ!!」

「ハハハっ、お前の動き等御見通しだ!!」

 

正面から聞こえた声は対峙する神様の声。

声によって彼がかなり近くに居る事は理解したが、肝心の彼の姿が確認出来ない。

そんな中で彼は恐らく先程のメイスによる、息もつかせぬ連続攻撃を繰り出してきた。

突如として襲い掛かる攻撃の数々に反応が遅れ、幾つか攻撃を食らってしまう。

視界の悪い中で的確に頭や脚等を攻撃して来る事に僕は動揺を隠せない。

 

「ぐっ・・・どうしてっ!!」

「お前は神殺しになって、まだ日が浅いのではないか?

 その証拠に自身の状態すら正確に認識出来ていない。

 お前の背に輝く太陽の如き日輪・・・あの爆煙の中でもお前の動きがはっきりとわかったわ!!」

 

神様の言葉に僕は恥ずかしくなった。

目の前の事にいっぱいいっぱいで、自分の状態すら分かっていない。

そんな初歩的なミスを犯すなんて・・・。

 

劣勢の中、更なる動揺から生まれた隙は大きかった。

それでなくとも視界が悪いのだ・・・等々神様の攻撃を躱しきる事が出来なくなっていた。

あの時を様な強烈な一撃は1つも無いが、的確な攻撃にダメージが蓄積されていく。

 

しかし、痛みによる刺激に冷静さが戻って来た。

 

・・・接近戦になれば勝てる何て甘い考えがこの状況を招いたんだ。

でも反省は後だ。

まずはこの状況を如何にかしないと・・・。

 

攻撃を喰らってあちこち痛いけど、気合で動かす。

爆煙が晴れ始め、視界も戻り始めている。

そのお蔭で思考がクリアになった僕は徐々に攻撃を躱す回数が増え始めた。

僕の調子が上がった事に気付いた神様は小さく舌打ちすると、大きくメイスを振り上げた。

 

・・・やらせない!!

 

神様の魂胆は分かっている。

一度喰らった事で強烈な一撃は必ず避けると踏んでいるんだろう。

その一撃によって土煙を上げ再び距離を取るつもりだ。

僕はそうはさせないと、避ける事無く自分から彼に向かって飛び込んだ。

 

「ふんっ!!」

 

予想と反した僕の行動に驚くも、彼の動きは止まらない。

風を切る音と共に一段と加速しながら迫る一撃。

 

「はぁぁぁ!!」

 

僕は迫るメイスを純粋な火力と威力で迎え撃った。

最初の一撃以上の炎を拳に宿し・・・一気に振り抜いた。

 

 

 

バキッ!!

 

 

 

この攻防・・・軍配は僕に上がった。

神様の手には粉々に砕かれたメイス。

僕の右手も多分骨が折れただろうが、今止まる訳にはいかない。

 

「『神道流攻式参ノ型『連撃・波・焔(れんげき・なみ・ほむら)』」

 

お返しとばかりに繰り出す連続攻撃。

一撃一撃が決まる事に彼の体を駆け巡る炎。

後半は対応し始めた神様だったが『波(なみ)』による攻撃が例え防いだとしても内へダメージを負わして行く。

最後の回し蹴りも防がれ、同時に距離も取られたが、彼に僕以上のダメージを負わせる事に成功した。

 

「はぁ・・はぁ・・・その武術、中々に厄介だな。」

 

そう言いながら手に持つ砕かれたメイスに視線を落とす。

メイスの状態を改めて確認した神様は口元に笑みを浮かべると、持ち手だけとなったメイスを放り捨てた。

 

「敵を甘く見ていたのは私も同じだという事か・・・。」

 

彼は呟くと徐に弓を呼び出す。

その事に僕は警戒心を高めるが、彼はその弓を僕ではなく空へと向けた。

 

「・・・そろそろ本気を出す事にしよう。」

 

そう言った彼は僕に牙を剥く。

その時、今迄で最大級の警笛が頭に鳴り響いたが、もう遅かった。

彼の放った矢は真っ直ぐ天へと昇り、空を切り裂いていく。

 

・・・そう、空が切り裂かれたのだ。

 

矢の軌跡に沿う形で空に一本の線が描かれる。

そしてその線が開いたかと思うと、そこから闇が吹き出した。

見た瞬間やばい物だと確信した僕は瞬時に『氣』を高め、身を守る事に専念する。

その直後だった。

溢れだした闇は瞬く間に辺りを覆いつくし、僕は闇に飲み込まれた。

 

 

 

「これはいったい・・・。」

 

一寸先も見えない暗闇の中、辺りを見渡す。

しかしこれが神様の仕業である以上警戒を弱める事は出来ない。

それにこの闇は何か嫌な感じがする。

周囲の気配を探ってみたけど、あの神様の強い『氣』しか感じられない。

 

・・・いや、1ヶ所だけ違う所がある。

 

これは・・・クラニチャール先輩?

かなり微弱だがクラニチャール先輩の『氣』を感じ取れた。

でも彼女だけという事は無い筈だ、エリカさん達も同じ場所に居ると考えた方がいい。

 

等と思案している時だった。

僕は考えている最中も警戒を怠ってはいなかった。

それなのに・・・突然、何かに左肩を貫かれたのだ。

 

「ああぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!

 くっ・・・はぁ・・はぁ・・・い、いったい何が・・。」

 

突如襲う激しい痛みに苦悶の声を押さえる事が出来なかった。

いったい何が起こったのか検討もつかない。

そんな中、痛みの中心である肩に視線をやると、そこには深々と矢が刺さっていた。

 

間違いなく神様からの攻撃。

 

痛みに耐えながら更に警戒心を高めたが、それは意味を成さ無かった。

続け様に背中・右太腿の裏・右腕と激しい痛みが襲う。

 

「ぐうっ・・・ぐあぁ・・・ああぁぁ・・・。」

 

連続した気配の無い攻撃に為す術無く傷付けられていく。

そんな時、全方向至る所から神様の声が響き渡った。

 

「私は軍神としての力だけでは無く、死者の魂を冥界に導く為の力も有している。

 今回は私の力で『死』を現世に呼び込ませて貰った。

 咄嗟に呪力を高めていたが、流石の神殺しも長時間この闇に触れ続けると・・・死ぬぞ。

 ・・・まぁ、その前に私自身の手で決着を付けてやるがな。」

 

神様は最後に何とも楽しそうに締めくくった。

僕は彼の言葉を聞きながら、体に刺さる矢を握り締めた。

構造上中々向けない作りになっている矢。

しかしこのままでは満足に動く事が出来ない事から、激しい痛みを堪えながら我慢して引き抜く。

 

・・・でも、このままじゃいけない、何か対策を考えないと。

 

矢を引き抜きながらも僕は考える事を止めなかった。

 

神様は既に勝負を決めに来ている。

此処で僕も勝負に出なければその先に待っているのは・・・確実に死だ。

でも、どうやって気配の無い攻撃に対応する?

いっその事、周囲に炎の壁でも作って矢を全部燃やし尽くすか。

いや、そんな事をすればすぐに僕の『氣』が無くなってしまう。

それでなくてもさっきの神様の言葉が気になって、いつもより強く『氣』を纏っているのに。

 

・・・でも、これしかないか。

 

僕はこの状況を打開するこれ以上の方法が思い浮かばなかった。

恐らく次の攻撃が始まったら僕は為す術なくやられてしまう。

 

だから、そうなる前に行動を開始した。

 

先程の『炎玉』同様に日輪から『炎壁』をドーム状に形成する。

『炎玉』で掴んだ感覚のお蔭で簡単に作る事が出来た。

欠点は予想通り・・・壁を作り続ける間『氣』の消費が止まらない事。

 

「その炎でいつまで耐える事が出来るかな?」

 

その言葉と共に『炎壁』に何かが当たった感覚があった。

神様の攻撃が始まったんだ。

でも嬉しい事に矢が『炎壁』を突き抜けてくる様子は無い。

その事に安心を覚えた時、ある事に気付いた。

 

・・・『炎壁』に当たっている事は感知出来ている?

だったら『壁』である必要はない!!

 

気付いてからは早かった。

『氣』を大量に消費する『炎壁』から『炎膜』と呼べる所まで極力薄く『炎壁』を調整した。

本当なら炎の権能を使ってやる必要は何処にもない。

でも権能を使っている間は『氣』を使うと僕の意思とは関係なく強制的に『炎』に変換されてしまう。

これが僕の権能の制約なんだと思う。

 

後の問題はこの傷付いた体でどこまで対応しきれるか・・・。

でも感知さえできるなら・・・やってみせる。

 

薄くなった事で矢は簡単に『炎膜』を突き破ってくる。

多方向からの一斉に射撃が襲い掛かるが、その全ての矢を最低限の動きで避けきった。

 

よし、上手く行った!!

防御に関してはこれで暫くは耐えられる。

 

「ほぅ・・・面白い。」

 

声だけなのに神様の獰猛な笑みが想像できる。

そして予感的中・・・猛攻が襲い掛かって来た。

最初の攻防の様に大量の矢が四方八方から迫る中、僕はまるでステップを刻む様に避ける。

目に頼れなくなった事で難易度は格段に上がったが、それでも諦める事なく避け続ける。

 

 

 

その中で僕は徐々に焦燥に駆られて始めていた。

 

問題点は多々ある。

傷付いた体から止まる事なく体力と共に流れ続ける『血』。

『炎膜』を張り続けている事によって『氣』も消費し続けている。

そしてこれは全く予想していなかった。

 

・・・背にあるに日輪が徐々に小さくなり始めたのだ。

 

今まで何故気付かなかったのか・・・。

この日輪・・・最初に権能を発動させた時から炎を消費するばかりで増やす事が出来なかったのだ。

 

つまりこの権能には・・・。

1.『氣』を込めたら強制的に『炎』へと変換される。

2.『炎』の量は権能発動時に込めた『氣』の量で決まる。

3.権能を発動したら最後『炎』の量を増やす事が出来ない。

・・・と言う制限が存在する事が分かった。

 

そして最大の問題は・・・攻撃の糸口が見つかっていない事だ。

 

それで無くとも多くの問題点から戦闘のタイムリミットが近付いて来ている。

以前止まない猛攻をいつまでも凌ぎきれる訳が無い。

防ぎ続けられたとしても、攻撃に回す『体力』『氣』『炎』が無くなってしまう。

 

1つあるとすれば・・・『炎膜』の中は神様の呼び出した『闇』の影響を受けていない・・・という事だ。

つまり『炎膜』の範囲を広げれば『闇』に紛れる神様の居場所を突き止める事が出来る可能性がある。

 

だけどリスクが高すぎる。

 

まずは相手に気取られない様に『炎膜』の広域展開を一瞬で終わらせなければならない。

そして見つけたとしても、今の僕の状態だと展開出来るのは持って数秒。

その間に捕えきれなければ、その時点で勝負がついてしまう。

 

 

・・・とその時、視界の隅にきらりと光る物が移った。

 

 

ん?・・・あれは何だ?・・・何かの金属片?

あっ、そうだ!!あれはエリカさんの獅子像の残骸だ!!

 

矢を避けている間に移動していたみたいだ。

良く見たら、至る所に大きさの様々な金属片が転がっていた。

それに気付いた時、エリカさんの言葉を思い出していた。

 

『思う存分やりなさい、何かあればサポートするわ。』

 

僕を送り出す時に言ったあの言葉。

その言葉を思い出した時には、もう覚悟が決まっていた。

 

 

 

神様の猛攻にも一瞬の事だが攻撃が止む瞬間が存在している。

 

その瞬間が訪れた時・・・僕は動いた。

 

内に残る少ない『氣』を放ち『炎膜』を一瞬で広範囲に展開する。

瞬く間に闇に覆われた世界が元の世界へと戻って行く。

そしてそれはエリカさん達の所にも届いた。

僕は一瞬エリカさんに視線を向ける。

 

交差する視線・・・それだけで十分だった。

 

次の瞬間『炎膜』が神様を捕えた。

方向は僕の右前方。

視線を向ければ神様の表情がよく見えた・・・予想していなかった事に驚きを隠せていない。

だけど僕の視線に気付くと真っ直ぐ僕を睨み付けてきた。

 

この時点で『炎膜』を極狭い範囲に収縮させた。

背負う日輪も小さくなり、『氣』も残り少ない。

再び姿の見えなくなった神様だったが、関係ないとばかりに全力で一直線に駆ける。

 

普通ならもう別の場所に移動していると判断する・・・でも僕には確信があった。

 

神様の姿を再び視認した瞬間、思わず笑みが零れた。

そこには足先に鎖が絡みついた神様の姿があったから・・・。

 

戦闘後そのまま放置されていた獅子像の残骸。

エリカさんはそれらを遠方より操り、鎖とし、神様を捕えたのだ。

忌々しそうに鎖を睨み付ける神様。

もう次の瞬間には強引に鎖を振り解き見失ってしまうだろう。

 

でも、折角エリカさんが作ってくれたこのチャンス・・・無駄にはしない。

 

僕は今ある力全てを出し尽くす勢いで『氣』を解放した。

突然の強襲に驚き、隙を見せる神様・・・その顎を真上に蹴りあげ吹き飛ばす。

上空に高く打ち上げられた神様を僕も追い掛ける様に飛び上がる。

 

「『神道流攻式伍ノ型『獅子連弾・焔(ししれんだん・ほむら)』」

 

神様に追い付くとそのまま追撃を開始する。

背後から炎を纏いし右足を振り上げ、相手の右脇腹に叩き込む・・・が神様も反応し防ぐ。

 

「甘いぞ!!」

「まだまだ!!」

 

でも、それも想定内。

すぐさま極限まで炎を込めた左手を握り締め、真下に向け裏拳を叩き込む。

 

「ぐはっ!!」

 

続け様の攻撃に神様は反応できず、諸に喰らい地上へと向かう。

まだ、終わりじゃない・・・と僕も後を追い、残った全ての『氣』と『炎』を左足に籠める。

それにより左足は轟々と燃え上がり、辺りを真っ赤に染め上げる。

 

「うおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

そして神様が地面に衝突すると同時に、雄叫びと共に炎を纏いし左足を神様に叩き付けた。

 

 

 

ズドーーーーン!!

 

 

 

凄まじい爆発と揺れが辺りを駆け巡る。

僕は自分の起こした衝撃によって飛ばされたが、震える体に鞭打って体を起こす。

手足は震え、真っ直ぐ立つ事も出来ない状態。

それでも、衝撃の中心に向かって叫んでいた。

 

「はぁ・・はぁ・・・これで・・・どうだ!!」

「・・・ははははははっ。」

 

僕の言葉に反応する様に神様の笑い声が木霊する。

徐々に土煙が晴れていく中見えたのは、神様が声を上げて笑いながら倒れている姿だった。

その様子に「まだ動けるのか」と何とか動こうとするが、もう力が入らない。

立っているのがやっとの中、それでも何とかしようともがき、神様を睨みつける。

でも一向に神様の笑い声は収まらないし、動く気配もない。

そして完全に土煙が晴れた先にあったのは上半身と下半身が分かたれている神様の姿だった。

 

僕達の視線が交差する。

 

いつの間にか神様の笑い声は消えていた。

最後に満足気に笑みを浮かべると神様は塵になって消えてしまった。

 

・・・そうか、僕は勝ったんだ。

 

僕は勝利を手にした事に拳を握り締め、空に突き挙げる。

そして今まで張りつめていた緊張感が切れ、そのまま意識を失った。

 




ウプウアウトに関してはWikipediaを参照し独自に考えた物です。
自分でも無茶苦茶だとは思いましたが、ご了承ください。

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