正義の魔王 [改稿版]   作:しらこつの

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第17話 VSエリカ・ブランデッリ

Side 昴

 

あれから数日が経ち僕は今、東京都内のとある屋敷の一室にいた。

畳20畳は有ろう大きな部屋にエリカさんと二人で正座して、ある人達を待っている。

暫くすると奥の襖が開き荘厳な老人と強面の40後半であろう男性、その後ろに馨お姉ちゃんが入って来た。

入って来た3人は並んで僕達の前に座り、頭を垂れた。

 

「この旅は私共の呼び出しに応じて下さり誠にありがとうございます。

 呼び出して置きながら王で在らせられる神藤様を待たせてしまい、ご容赦頂きたく・・・。」

「あ、あの、そんなに畏まらないで下さい。」

 

僕はとても丁寧な言い回しに恐縮してしまって思わず止めてしまった。

そしたら皆さん漸く頭を上げてくれた。

 

「そうは言われましても・・・王になられた方に対して気軽に声を掛ける等・・・。」

「勘弁して下さい、源蔵様。

 お互い知らない間柄では無いのですから・・・。」

 

 

 

ここは沙耶宮家の屋敷の1つだ。

休日に突然馨お姉ちゃんがやって来て此処に連れて来たのだ。

 

そして僕達の前に座っている人は・・・。

そこにいるだけで存在感が凄まじい老人が沙耶宮家前頭首『沙耶宮 源蔵』様。

その隣に座っている源蔵様に劣らない存在感を放っているのが沙耶宮家現頭首『沙耶宮 千尋』様。

そしてその後ろに控える様にして馨お姉ちゃんが座っている。

源蔵様が馨お姉ちゃんのお爺様で、千尋様がお父様だ。

 

 

 

「例え見知った間柄でもこういう事は必要なのじゃよ。」

 

そう言った源蔵様の表情は先程と違い好々爺といった感じになっている。

これが僕のよく知っている源蔵様・・・源蔵お爺ちゃんだ。

 

源蔵お爺ちゃんとは何度も遊んで貰った事がある。

馨お姉ちゃんが道場に来た切掛けが源蔵お爺ちゃんと僕のお爺ちゃんが友人同士だったからだ。

偶に送り迎えに源蔵お爺ちゃんが来ていた事もあり、自分の孫の様に僕の事も可愛がってくれた。

勿論お爺ちゃんの葬式にも参列してくれた。

 

「お初に御目に掛かります、神藤 昴様。

 私が沙耶宮家当主であります沙耶宮 千尋と申します。

 以後お見知りおきを・・・。」

 

そう言ったのは源蔵お爺ちゃんの態度を無視する様に挨拶をくれた千尋様だった。

千尋様とは会った事は無い・・・ここに来るまでに馨お姉ちゃんに少し話を聞いた位だ。

 

「初めまして、神道流当主の神藤 昴と言います。」

「エリカ・ブランデッリです。」

 

エリカさんは名前だけの簡単な挨拶をする。

・・・恐らく僕の事を立ててくれているんだろう。

 

「さて、昴君・・・馨から話は聞いたよ、何やら大変な事になっているみたいじゃな。」

「はい、色々ありまして・・・。」

「その事に関してじゃが、わし等の方でも確認を取った。

 馨から聞いた話とも辻褄も合うし・・・本当の情報だと思っておる。

 儂としては奴の孫でもあり、儂自身孫同然に可愛がっていた昴君の頼みだ。

 協力したいと思っておる・・・のだが・・・。」

 

そう言って源蔵お爺ちゃんは隣に座る千尋様を見た。

 

「確かにあの時に新たな神殺しが誕生した事は限りなく本当の事でしょう。

 しかしそれが神藤様だと断定できる証拠がありません。」

「お父様!!それについては僕が霊視したと・・・。」

「お前も霊視の成功確率が低い事位わかっているだろう・・・失礼致しました。

 そして仮に神藤様が神殺しだったとしても私共と致しましては、神藤様に付くメリットが御座いません。」

 

確かにそうなのだ・・・この国には既に草薙 護堂先輩が居るのだ。

今迄の恩義があり、実績のある方に就くのは当たり前だ。

 

 

今更新しい王など必要ない。

 

 

「そう言う訳ですので・・・。」

「私から少し発言の許可を頂いても宜しいでしょうか。」

 

このまま断られると思った時にエリカさんが口を開いた。

 

「エリカ・ブランデッリ様ですか・・・何でしょうか。」

「我が王に付くメリットが無いと仰りましたが、少なからずメリットは発生致します。」

「どういう事でしょうか?

 既に草薙王が存在する時点でメリット等は無いと判断しておりましたが・・・。」

 

源蔵様も興味があるらしく真剣な表情でエリカさんを見つめている。

この重圧が掛かる場面で一切怯む事無くエリカさんは口を開く。

 

「一つ目は草薙王が何処の結社にも所属していないという点。

 更に彼の王は自らの気分次第で誰にでも味方をする御方。

 彼の振る舞いに振り回された事も少なくないのではありませんか?」

「・・・・・・。」

 

事実なのか誰も言葉を発さない。

 

「彼の近くに控えている媛巫女『万里谷 祐理』も草薙王に付いていくと明言。

 確かな情報筋から、いずれは自らの結社を持つ事を考えておられると聞いています。

 あなた方正史編纂委員会から離れていく可能性も捨てきれない・・・。」

 

エリカさんの言葉に千尋様の表情が少し崩れた。

 

「そうなって来ると正史編纂委員会としてどう動く事になるのか。

 勿論古老と呼ばれている方々も黙って静観する事はないでしょう。」

「・・・・確かにそうじゃな。」

「それで・・・神藤様に付くメリットというのは・・・。」

 

エリカさんは少し笑みを浮かべながら話し続ける。

 

「推測に過ぎない話でしたが、可能性としては低くないと思っております。

 そこで、我が王です・・・何も傘下に降る必要はありません。

 四家の内、既に清秋院家が草薙王に付いていると聞いています。

 あなた方も遅れは取りたくない筈です。

 今の内に協力者として信頼関係を築いておけば、もし草薙王が離れて行った場合にも沙耶宮家は我が王のご寵愛を受ける事が出来る。」

「だが・・・神藤様が本当に神殺しか・・・。」

「その点もご心配に及びませんわ。

 私が騎士の誇りに懸けて我が王が神殺しである事を証明致します。」

 

彼女の言葉に僕も思わず顔を向けた。

其処には相応の覚悟を持ったエリカさんの姿があった。

 

「・・・どうする御積りですか?」

「私がお相手を務めます・・・それを見て判断して頂きたく存じます。」

 

エリカさんの顔は真剣であった。

彼女の覚悟の前に僕達は何も言う事が出来なかった。

 

「・・・・わかりました。

 それでは場所を移しましょう。」

 

そう言って千尋様は立ち上がり、僕達も彼等の後に続いた。

 

 

 

場所を移して屋敷内にある大きな庭にやって来た・・・とても見事な日本庭園だ。

千尋様達に付いて広い庭園の中を歩いている時、隣にいたエリカさんが謝ってきた。

 

「昴・・・ごめんなさいね。」

「何の事ですか?」

「こんな方法しか思いつかなかった。

 他にもっといい方法があったかもしれないのに・・・。」

「気にしないで下さい。

 こうやってチャンスが生まれたのはエリカさんのお蔭です・・・ありがとうございます。」

 

エリカさんが居なかったら最初の時点でこの話は終わっていただろう。

だからこそエリカさんには感謝の気持ちしかない。

 

「そう・・・でもね、昴・・・これはかなり分の悪い賭けなのよ。」

「どうしてですか?」

「神殺しって言うのはね、神や同じ神殺し・神獣なんかじゃないと真の力を発揮できないと言われているの。

 それに神殺しになってまだ間もない昴は、まだ自分の権能も把握していない。

 私の力で貴方の力を引き出せるかと言われたら・・・かなり厳しいでしょうね。」

「そうだったんですか・・・でも僕はあまり心配していませんよ。

 何とかなる気がするんです・・・勘ですけどね。」

 

そう言って僕は「それに・・・」と続けてエリカさんに笑い掛ける。

 

「僕はエリカさんの事・・・信じてますから。」

 

僕の言葉に一瞬目を見開いたエリカさんだったが、次の瞬間花が開く様な笑顔を見せてくれた。

 

「そう・・・ありがとう。

 私も今回の事は本気で行かないとね・・・貴方が命の危機を感じるくらいじゃないと意味が無いから。」

「わかっています、遠慮なくお願いしますね。」

 

 

 

話している内に前を歩いていた千尋様が立ち止り此方に振り返った。

 

「この辺りでしたら大丈夫でしょう。」

 

そこは庭園から少し離れた所にある運動場の様な所だった。

この屋敷はどれだけ広いんだ・・・流石由緒ある一族。

 

「それじゃあ・・・昴。」

「はい。」

 

僕達は少し距離を離して向かい合う。

2人の間に訪れる静寂・・・先に動いたのはエリカさんだった。

 

「鋼の獅子と、その祖たる獅子心王よ、騎士エリカ・ブランデッリの誓いを聞け。

 我猛き角笛の継承者、黒き武人の裔たれば、我が心折れぬ限り、わが剣も決して折れず。

 獅子心王よ、闘争の脊髄を今こそわが手に顕し給え!!

 クオレ・ディ・レオ-ネ!!」

 

エリカさんが紡いだ言葉と共に刀身の薄い長剣がエリカさんの手に現れる。

エリカさんは剣を握り締めると素早い動きで間合いを詰めて来た。

素早く正確な突きが僕の心臓目掛けて放たれる。

急な先制攻撃に驚いたが、僕は落ち着いてそれを横に体をずらす事で避ける。

エリカさんは続けて僕の首目掛けて切り払いを仕掛けてくる。

 

そうした彼女の連続攻撃を躱している中で、体の調子が上がって来たのを感じる。

・・・稽古の中でも感じていた感覚。

相手の動きが良く見える・・・体に滾る氣が零れ出しそうになる。

 

 

それは稽古の時以上の高まりだった。

 

 

その微妙な違いに対応しながらエリカさんの攻撃を躱し続ける。

 

「・・・昴、反撃しないのかしら?」

「すいません、体の変化に戸惑っていまして・・・。」

 

そう言って足元目掛けて放たれた斬撃を『氣』で強化した蹴りで弾き、一度距離を取る。

そんな僕を見てエリカさんは一度息を吐いた。

 

「ふう・・・この程度では全然ダメみたいね。」

「そんな事は無いと思いますよ。

 『氣』で強化したのに弾いた足が切られてます。」

 

僕は薄っすらと切られた足を確認する様に視線を向ける。

エリカさんも僕の足を見ると呆れた様に息を零した。

 

「普通なら切断してる筈・・何だけどね。

 なら・・・少し戦い方を変えてみましょうか。」

 

エリカさんはそう呟くと彼女から氣が溢れ出した。

 

「鋼の獅子に使命を授ける。

 引き裂け、穿て、噛み砕け!

 打倒せよ、殲滅せよ、勝利せよ!

 我は汝にこの戦場を委ねる。」

 

エリカさんは刀身を愛おしげに撫で、軽く口付けると、剣を上に放り投げた。

すると剣が膨れ上がり、徐々にその形は獅子を模した物へと変わっていく。

大きさも普通の獣とは桁違いに大きく、低いうなり声を上げながらこっちに襲い掛かってきた。

 

「うそっ!!・・・ぐっ!!」

 

流石に驚いて反応が遅れてしまった。

避けきれず爪の先が当たり吹っ飛ばされてしまう。

少し掠った程度なのに服が切り裂かれ、体も少し傷付いている。

吹き飛ばされたが、姿勢を整え上手く着地する。

 

大した怪我じゃない、全然大丈夫だ。

でも・・・流石にあれを倒すのは難しそうだな。

 

何て考えながら次々と襲ってくる目の前の獅子を観察する。

動き本物の獅子・・・体中が剣の様に鋭く、普通なら少し当たっただけで切り裂かれるだろう。

そんな更なる強敵にさらにテンションが上がってくる。

 

・・・僕こんなに戦うのが好きだったかな?

 

ふと疑問に思ったが今考える事では無いと、思考を振り払う。

大きな爪による攻撃を見切り、紙一重で躱して獅子の懐に入り込む。

 

「『神道流攻式壱ノ型・波』。」

 

拳を打ち込み内部まで攻撃を浸透させながら浮き上がらせる。

この体になって初めて攻撃らしい攻撃をした。

本当であればさっきの一撃で破壊してしまう積りだったが、少し加減しすぎたみたいだ。

神様にだったら手加減は必要ないんだろけど・・・やっぱり力加減が難しいな。

 

・・・でも、もう覚えた!!

 

獅子の体が浮き上がった所を追撃。

エリカさんのいる方向に蹴り飛ばす。

限界を迎えたのか蹴った衝撃で獅子を形作っていた鋼はバラバラに崩れ去った。

 

「ふう~~。」

「まあ、この程度じゃこんなものよね・・・でも準備は整ったわ。」

 

そう言ったエリカさんの手に砕かれた獅子の残骸が集まり、また剣を形作った。

そして彼女から先程とは比べ物にならない『氣』が放たれた。

 

「エリ、エリ、レマ・サバクタニ!主よ、何故我を見捨て給う!

 主よ、真昼に我が呼べど御身は応え給わず。

 夜もまた沈黙のみ。

 されど御身は聖なる御方、イスラエルにて諸々の賛歌をうたわれし者なり!」

 

周りの温度が急激に下がった感覚。

あの戦いの中で感じたエリカさんの冷たい『氣』。

応対している今だからわかる・・・とても危険な『氣』がエリカさんから溢れて来ている。

 

「神をも傷つける事の出来る『絶望の言霊』・・・威力は先程の比じゃないわよ。」

 

そう言って駈け出したエリカさん。

瞬く間の間に僕との距離を無くし、剣の切っ先を僕に向ける。

 

スピードが上がってる!!

 

先程との誤差に反応が鈍り、何とか躱すが体制を崩される。

体制を整えようとするが、その前に斬り掛かられ攻撃に移れない。

 

「さあ、あなたの内に秘める力を開放させなさい!!」

 

その速さにも慣れ、余裕を持って対応できる様になった頃だった。

首を狙ってきたエリカさんの剣を避け様とした時、彼女はその口元に笑みを浮かべていた。

訝しみながらも頭を傾ける事でその攻撃を避ける。

 

「なっ!!・・・くっ!!」

 

しかし、突如剣先が曲がり避けた先にある僕の首目掛けて迫って来た。

咄嗟の反応で後ろに転がり回避しようとしたが、避け切れず首から血が流れ出す。

 

エリカさんが神との戦いにも用いただけはある。

・・・本当に危なかった。

エリカさんの表情の変化に警戒していなかったら、さっきの一撃で終わっていた。

 

傷付けられた首元に手をやり、流れ出る血を確認する。

それを見た瞬間、あの時以来感じていなかった死の恐怖が体を掛け廻った。

そして恐怖を跳ね除ける様に、思考の奥底から浮かんできた言葉を声に出して紡いでいた。

 

「天上にあっては太陽、中空にあっては稲妻、地にあっては祭火。

 世界に遍在する火、惑わしの罪を取り除き、善き路によって富を導く者為り。」

 

聖句を口にすると共に、体から『氣』が迸り、放たれた『氣』が炎へと変化する。

僕に近い位置にいたエリカさんはその強い熱風に吹き飛ばされた。

 

でも今の僕に彼女の事を気にしている余裕はない。

突然膨れ上がり、暴れ回る『氣』を制御するので精一杯だ。

現に今も炎は広がり続けており、黙って見守っていた沙耶宮家の人達も慌てだした。

 

僕は内に意識を集中させる。

迸っている『氣』を内に留める様に・・・。

 

そうして自らの今までとは違う、力の持った『氣』を徐々に掌握していく。

少し時間は掛かるが周囲に放たれた『氣』にも意識を向けその範囲を広げて行く。

すると徐々に周囲に広がった炎は霧消し、消えていく。

 

そして周囲に僕の放った炎が見られなくなった頃・・・僕は自分の権能を掌握した。

背に炎の輪を背負った姿・・・それはまるで神々しい日輪を背負っているかの様な姿だった。

 

「やったわね、昴。

 権能を掌握出来たみたいだし、その姿とても神々しいわ。」

「そうですか?・・・自分ではよくわからないんですけど・・・。」

「とても素敵よ、思わず見惚れてしまう位にね。

 後、ここまで圧倒的な力を見せたのだから十分よ・・・私達の戦闘も終わり。」

「そ、そうだっ!!エリカさん、怪我は有りませんでしたかっ!?」

「気にする事ないわ、少し火傷を負った程度よ。

 こんな怪我よりもあなたが権能を掌握してくれた事の方が嬉しいわ。」

 

あの時吹き飛ばされていたエリカさんを思い出す。

慌てて権能を解除し彼女の体を確認するが、エリカさんの言った通り庇ったであろう腕が少し火傷を負っていた。

そんな僕を見てエリカさんはとても嬉しそうに微笑んでいた。

 

「早く冷やさないと」と慌てる僕の所に、近くで見守っていた沙耶宮家の方達が近寄ってきた。

3人は僕に近寄るとその場に膝を付き、頭を下げた。

 

「神藤様の御力、篤と拝見させて頂きました。

 これまでの御無礼申し訳ありませんでした。」

 

千尋様達の対応に、どうしていいか分からず周囲を見渡した時に気付いた。

・・・に、庭が大変な事になってる!!

 

「あ、あの、こちらこそすみません。

 綺麗だった庭をこんなにしてしまって・・・。」

 

そう、幾ら火を消したと所で被害まで消える訳じゃない。

あの綺麗だった庭園は見るも無残な焼け野原になっていた。

 

「この位どうという事はありません。

 ・・・それよりも神藤様、一つお聞きしたい事があります。」

「な、何でしょうか?」

 

千尋様の真剣な眼差しに僕も背筋を伸ばす。

真っ直ぐ見据えた視線で僕を射抜き千尋様は問い掛けた。

 

「神藤様はそのお力で何をされ、何を目指す御積りですか?」

「この力は理不尽を覆す事のできる力です。

 僕はこの力を自分の為に使いたいとは思わない。

 この力は必要としている人の為に・・・圧倒的な理不尽で苦しんでいる人達の為に使いたい。」

 

僕は目を真っ直ぐ見詰めてそう告げる。

千尋様は目を閉じると・・・何かを噛み締める様に呟いた。

 

「馨、お前の言う通りだったな。」

「言ったではありませんか、昴君はそういう男だと。」

 

馨お姉ちゃんに言葉に薄っすらと笑みを浮かべると・・・千尋様は宣言した。

 

「今この時点を持って我ら沙耶宮家は『神藤 昴』を王と仰ぎ、ここに絶対の忠誠を誓う事をお約束致します。」

「ありがとうございます!!これから宜しくお願いします!!」

 

僕に力を貸してくれる人が増えた事が嬉しくて、僕は頭を下げていた。

頭を上げてくれた千尋様はすごく穏やかな顔をしていた。

 

「こちらこそ・・・そして娘を・・・馨を宜しくお願い致します。」

「はい・・・・・えっ!?」

 

お、思わず返事をしてしまったけど・・・今、何やら凄い事を言われた気が。

そんな僕を気にする事無く、今まで以上に真剣な顔付きで馨お姉ちゃんに顔を向ける千尋様。

 

「馨、昴様を絶対に離すなよ。

 彼は今迄と全く違った王になる・・・私はそんな気がしてならん。」

「心配には及びません、お父様。

 子供の頃より僕の心は決まっております。」

 

馨お姉ちゃんはそう言うと立ち上がり僕に寄り掛かって腕を絡めてきた。

ふわっと薫る優しい香りと、押し付けられる柔らかい感触に動揺を隠せない。

 

「お疲れ様、昴君。

 さっきの戦闘見惚れてしまう程かっこよかったよ。」

「う・・・あ・・・。」

 

僕が戸惑っているとそう言って僕の頬にキスをしてきた。

それを見て黙ってなかったのがエリカさんだ。

 

「昴、私頑張ったわよね・・・何かご褒美が欲しいわ。」

 

エリカさんも反対の腕に抱きついて来て、僕の頬にキスをしてきた。

どちらの腕からも柔らかい物が押し付けられ、さらに甘い香りが漂ってくる。

僕は顔を真っ赤にして盛大に慌てふためいていた。

 

そんな僕達を源蔵お爺ちゃん達は楽しそうに笑って見守っているのだった。

 


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