正義の魔王 [改稿版]   作:しらこつの

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第15話 味方

Side 昴

 

後日、手紙に書いてあった連絡先に電話をして馨お姉ちゃんと近い内に会う約束を取り付けた。

電話に出た人は違う人だったけど・・・僕のドキドキを返せ!!

 

そして約束の日・・・僕達は学校からは少し離れた場所にあるカフェで馨お姉ちゃんを待っていた。

学校から離れた所にしたのは草薙先輩達に見つからない様にする為だ。

先に到着した僕は馨お姉ちゃんと会える事を嬉しく思いながらも、久し振りの再開に緊張していた。

 

僕達が店に入ってから10分が過ぎた頃・・・店の扉が開いた。

扉の音と共にそっちを見ると、そこに居たのは美少年とも美少女とも取れる美しい顔立ちをした人物だった。

彼女を瞳に移した瞬間、僕は思わず立ち上がっていた。

 

とっても大人っぽくて、あの頃よりも凄く綺麗になってるけど・・・間違いない。

 

「・・・馨・・お姉ちゃん・・・。」

 

立ち上がった時に大きな音を立てていたからか・・・それとも僕の呟きが聞こえていたのか・・・。

店内を見渡していた馨お姉ちゃんと目が合った。

馨お姉ちゃんは優しくも懐かしむ様な笑みを浮かべながら、僕の方へ歩み寄って来る。

 

「馨・・お姉ちゃん・・・だよね?」

「僕の事をまだ『お姉ちゃん』と呼んでくれるのか・・・久し振りだね、昴君。」

 

嬉しそうに微笑むお姉ちゃんと数年振りに再会した瞬間だった。

 

 

 

いつまでも立たせる訳にも行かないから、馨お姉ちゃんに席に座って貰った。

注文を取りに来た店員さんと話す馨お姉ちゃんを見て・・・僕は懐かしい気持ちになっていた。

 

・・・本当に馨お姉ちゃんは変わらないな。

勿論、あの頃と違って背も高くなってるし、とっても綺麗になってる。

でも雰囲気というか何というか・・・。

馨お姉ちゃんと一緒に居ると落ち着くこの感じは全然変わってない・・・凄く安心する。

 

僕達の方に向き直った馨お姉ちゃんと改めて向き合う。

久し振り過ぎて何と声を掛ければいいのか迷う僕に、懐かしさに目を細める馨お姉ちゃんが先に口を開いた。

 

「本当に久し振りだね、昴君・・・とってもいい男になって・・・。」

 

馨お姉ちゃんが考え深そうに僕の事をじっと見つめてくる。

温かい視線にちょっと恥ずかしくて、照れ臭くなってしまう。

 

「馨お姉ちゃん・・・そんなにじっと見詰められると恥ずかしいよ。」

「はははっ、悪かったね。」

 

そう言って僕達は自然に笑い合った。

 

 

 

数年振りに再会した事もあって、少しの間二人で話していると・・・。

 

「2人で楽しそうに話している所、ごめんなさい・・・そろそろいいかしら?」

 

エリカさんが少し怒った様子で言葉を発した。

久し振りに馨お姉ちゃんに会って浮かれていたとはいえ、エリカさんの事を忘れる何て・・・。

 

「ご、ごめんなさいエリカさん。

 え、えっと、馨お姉ちゃん紹介するね・・・こちらエリカ・ブランデッリさん。」

 

慌ててエリカさんの事を紹介した。

エリカさんは表情は笑顔だけど、視線は鋭い眼差しで馨お姉ちゃんを見据えてながら口を開いた。

 

「初めまして、沙耶宮 馨さん。

 赤銅黒十字所属の大騎士エリカ・ブランデッリよ。」

「僕の事は知っていると思いますが、正史編纂委員会・東京分室・室長、沙耶宮 馨と言います。」

 

エリカさんの視線を表情一つ崩す事無く同じ位鋭い眼差しで答える馨お姉ちゃん。

自己紹介する二人の言葉がやけに力強い気がする。

何か2人の間に火花が見える・・・いや、僕の気の所為だ・・・そうに決まってる。

 

「それで・・・イタリアの騎士様がどうして昴君と一緒にいるのかな?」

「簡単な事よ・・・私と昴は婚約者同士・・・私達は常に共に居るべきなのよ。」

「ほぅ・・・婚約者・・・ですか。」

 

誇らしげに宣言するエリカさん。

いつもの僕だったら恥ずかしさに身悶えするだろうけど・・・今の僕にそんな余裕はない。

だって・・・馨お姉ちゃんの機嫌が一気に悪くなったんだから。

 

今でも忘れない・・・子供の頃に一度だけ馨お姉ちゃんを怒らせてしまった時の事を・・・。

うん・・・心臓に悪いから思い出すのは止そう。

それよりも目の前で始まりそうな彼女達の戦いを止める方が先決だ。

僕は恐る恐る声を掛ける事にした。

 

「あ、あの・・・馨お姉ちゃん?」

 

僕の声に気付いてくれた馨お姉ちゃんがエリカさんとの睨み合いを止めて僕の方を向いてくれた。

そのお蔭で店内に充満していた緊張感が無くなり、店員さんがほっとしているのが見えた。

 

「何かな、昴君。」

「今日馨お姉ちゃんに来てもらったのは助けて欲しい事があるから何だ。」

「昴君の頼みだ・・・僕に出来る事だったら何でも言ってくれて構わないよ。」

 

僕が切り出そうとした所をエリカさんが遮った。

 

「その前に1つあなたに情報を与えてあげるわ。」

「・・・何でしょうか?」

「3月の終わりにイタリア・ミラノに現れたまつろわぬ神については知っているかしら?」

「今その情報を魔術界で知らない人はいないでしょう。

 勿論僕達の所にも入って来ていますよ・・・赤銅黒十字が何やら隠し事をしている事も・・・ね。」

「その事に関する情報を特別に教えてあげるわ。」

 

そう言ったエリカさんに対して、馨お姉ちゃんは訝しげな視線を向けていた。

 

「以前護堂さん達は教えて貰えなかったと聞いています。

 それに、赤銅黒十字も頑なに口を閉ざして何も話そうとしない事を・・・僕にですか?」

「これから話す事は他言無用よ・・・勿論、草薙 護堂にもね。」

「それが無理な事は貴方が一番わかっているでしょう?」

「・・・それは話を聞いてから改めて判断して頂戴。」

 

 

 

「まず・・・あの事件についてどの位情報が入って来ているのかしら?」

「イタリア・ミラノにまつろわぬ神が降臨した事。

 そのまつろわぬ神が炎に関する神である事。

 この件について赤銅黒十字が何かを隠している事。

 この件にあなたが深く関わっていた事。

 そして・・・この時昴君がイタリアを訪れて居た事・・・これ位ですかね。」

 

ちらっと僕の方に視線をやる馨お姉ちゃん。

エリカさんは難しい顔をして何やら考え込んでいる。

 

「昴君の事はリリアナさんが独自に調べた事ですが・・・日本にもこの程度の情報は入って来ています。

 ヨーロッパの方では、更に多くの情報が出回っているでしょうね。」

「・・・やはりもっと早く行動して置くべきだったわね。」

 

エリカさんは小さく呟くと、馨お姉ちゃんに向き直り、あの日在った事を話し始めた。

 

「あの日は叔父様にまつろわぬ神が顕現なされたと聞いて、その対処に私が向かう事になった。

 まつろわぬ神を見つけた私は失態を犯してしまった。

 初めて遭遇した神に舞い上がっていた私は・・・畏れ多くも何も考えずに話し掛けてしまった。」

「それは・・・やってしまったね。」

「・・・えぇ、本当に。」

 

エリカさんは悲痛に表情を歪めたが口を閉ざす事無く話し続けた。

 

「私が神に気付いた事によって、その場で神は暴れ出した。

 そのまつろわぬ神の名は『アグニ』・・・インド神話の火神よ。」

「火神アグニ・・・やはり火に纏わる神だったか。」

「えぇ・・・そして辺り一帯は火の海になった。

 私も自分の招いた事だから何とかしようとしたのだけれど・・・駄目でね。」

 

エリカさんは自分のしてしまった行動を今でも悔いているんだ。

あの時の光景が、自分が原因で引き起こされたんだとしたら・・・忘れる事何て出来ないだろう。

 

「何も出来ずに私も死にそうになった時に・・・私を助けてくれた人が居たの。

 私はその人に助けられて今もこうして生きていられる。

 そして・・・その人は無謀にも神に戦いを挑んだ・・・傷つけられながらも、何度も・・何度も。」

 

そこでエリカさんが言葉を切った。

じっと馨お姉ちゃんの瞳を覗き込み、馨お姉ちゃんも何かを感じ取ったのか息を呑む。

 

「エリカさん・・・もしかして・・本当に・・・?」

「えぇ、今、貴方が予想している通りよ。

 その人は私の目の前で神殺しを成し遂げた・・・あの光景を忘れる事はないでしょうね。」

 

エリカさんはその時の事を思い出したのか、とても誇らしそうだ。

馨お姉ちゃんは困惑しているのか、驚いているのか・・・何とも言えない表情を浮かべている。

 

「此処まで話せばあなたはもう想像が付いているでしょう?

 私が・・・昴が貴方に話したい事の内容を・・・。」

「・・・昴君。」

 

馨お姉ちゃんは困惑の籠った視線を僕に向けた。

僕はちらっとエリカさんに目を向けると、頷く彼女を見て真っ直ぐ馨お姉ちゃんを見つめた。

 

「僕がイタリアへ卒業旅行に行った日の夜・・・大きな『氣』を感じたんだ。

 去年からあの『氣』の正体が知りたかった僕は気になってこっそり見に行ったんだ。

 そしたら街が炎に包まれてて・・・僕、見て見ぬ振り何て出来なくてさ。

 炎の中に飛び込んで逃げ遅れた人達を助けて回ってたんだ。

 そしたらエリカさんが全身から炎を吹き出してる・・・化け物みたいな『氣』を持った人に襲われてて。

 僕はエリカさんを助ける為にその人と戦ったんだ・・・後は、エリカさんが話した通りだよ。」

「・・・じゃ、じゃあ、昴君は本当に・・・。」

「うん・・・僕、『神殺し』になっちゃったんだ。」

 

 

 

僕の言葉に言葉を無くした馨お姉ちゃんは手に顎を置き、目を閉じた。

僕達は黙って待つしかなかった。

暫くして馨お姉ちゃんが深く息を吐くと、口を開いた。

 

「護堂さんから昴君の事を知っているかと聞かれた時から、何となく予想は付いていたんだ。

 ・・・でもひとつ聞かせてくれ。

 赤銅黒十字の様な大きな結社には昴君に付くメリットが無いんじゃないのか?」

「確かにその通りよ・・・でも昴のご両親に赤銅黒十字は大きな借りがあるのよ。」

「借り?・・・昴君のご両親に?」

「そうよ、彼のご両親は赤銅黒十字の特別顧問をしていたの。

 当時から皆がとてもお世話になっていたと聞くわ。

 そして・・・私の両親の命の恩人でもあるの。」

「まさか、彼のご両親が亡くなったのは・・・。」

「私の両親を逃がす為に、昴のご両親は神に戦いを挑み・・・命を落としたの。

 私達には彼のご両親に多大な恩がある・・・だから赤銅黒十字は彼の傘下に降る事を決めたわ!!」

 

馨お姉ちゃんは腕を組んで考え込んでしまった。

暫くして今まで見た事の無い真剣な眼差しを僕に突き付けながら問い掛けてきた。

 

「・・・それで、僕にお願いって言うのは?」

「うん、それ何だけど・・・パオロさん達はイタリアで活動しないかって言ってくれたんだ。

 その方が色々と支援もしやすいからって。

 けど僕にはお爺ちゃんの残した道場もあるし、日本で活動したいって事になったんだ。」

「そこで日本に君臨するカンピオーネである護堂さんの事が問題になった・・・と。」

「草薙先輩が既に治めている日本で勝手に活動すると、問題が起こるかもしれない。

 だからまずは日本で活動出来る様に地盤を固めてからって事になって。」

 

そこまで話すと馨お姉ちゃんは納得した様に頷いた。

 

「そこで僕に白羽に矢が立ったって訳か・・・。」

「東京呪術界のトップだから草薙 護堂との関わりもあって危険だと思ったわ。

 けど昴が貴方なら信頼できる・・・って言ったからこうして全てを話す事にしたのよ。」

 

僕は立ち上がり馨お姉ちゃんに頭を下げた。

 

「馨お姉ちゃん、お願いします。

 僕に出来る事だったら何でもしますから・・・僕の味方になって下さい。」

 

隣に座っていたエリカさんも立ち上がり一緒に頭を下げてくれた。

けれどそんな僕達を見て慌てた様子で馨お姉ちゃんだ止めに入る。

 

「昴君、エリカさん、頭を上げて!!」

 

僕は場所を思い出し、周囲の視線を気にしながら席に座った。

・・・あまり人が居なくて良かった。

 

「・・・まず僕にも多少なりとも霊視の力があるんだけど、昴君からは神の神気が欠片も感じられない。

 まぁ、昴君の事だから、完璧にコントロールしてるんだと思うんだけど・・・。

 もし良かったら少しばかり昴君の『氣』を見せてくれないかな?」

「流石、馨お姉ちゃん・・・その通りだよ。」

 

僕はそう言うとほんの少し『氣』を放つ。

すると馨お姉ちゃんは納得がいったのかしっかりと頷いた。

 

「ありがとう、もう大丈夫だよ。」

 

お姉ちゃんの言葉に僕はすぐに氣を放つのをやめた。

もし誰かに気付かれでもしたら今迄の努力が水の泡になっちゃうしね。

僕が神殺しだという事が確認された事で、馨お姉ちゃんの表情が少し険しくなった。

 

「昴君が神殺しか・・・・1年前ならすぐに協力体制を作る事が出来ただろうけど・・・今はね。」

「やはり難しいかしら?」

「難しいね・・・僕達はすでに何度も護堂さんには助けて貰っている。

 正史編纂委員会としてもここで鞍替え何て怖くてとてもじゃ無いけど出来ないね。」

「・・・やっぱり無理だよね。」

 

無理だったと思い落ち込んでしまう。

難しい事を頼んでいると分かっていたけど、やっぱりショックだ。

 

「委員会を動かして君の方に就くのははっきり言って無理だ。

 既に委員会の中には護堂さんを王と崇めている者も多く居る。

 特に清秋院家は娘が1人護堂さんの側近として付いている事もあって、今更昴君に靡くとは考えられない。」

 

馨さんはここで言葉を溜め・・・そして、今までの険しい表情を一変とさせると・・・。

 

「僕個人としてなら今すぐにでも委員会を辞めて昴君の力になろう。」

 

はっきりと言ってくれた。

僕はもう断られた物だと思っていたから彼女の言葉が信じられなかった。

 

「あ、あの、どうして・・・。」

「ん?・・・僕が昴君の味方をしない訳が無いだろう。

 それに約束だったからね・・・何かあれば力になるって。」

 

そう言われて安心したのか涙が出て来た。

エリカさんも隣でホッと息を吐いているのを感じた。

 

「ほらほら、泣くな。」

 

馨お姉ちゃんが身を乗り出して、ハンカチで僕の目元を拭ってくれる。

彼女に行動に・・・以前もこんな事があったなぁ・・・と懐かしくなった。

 

「ありがとう、馨お姉ちゃん。」

「どういたしまして・・・と言いたい所だけど、安心するのはまだ早いよ。

 僕1人だけだと大して力になれないからね・・・お爺様に昴君の事を話して沙耶宮家を味方に引き入れる。」

 

安心したのもつかの間、馨お姉ちゃんの提案にエリカさんの視線が鋭くなる。

 

「そんな事が出来るの?」

「確証はないけど・・・恐らく大丈夫だよ。

 先生・・昴君のお爺さんと僕のお爺様は古くからの友人・・いや、親友同士だったらしい。

 お爺様は昴君の事を気に入っていたから、きっと協力してくれる筈だ。」

「そうなるととても心強いわね。」

「任せて置いてくれ。」

 

自信を持って言う馨お姉ちゃんがとても頼もしく見えた。

 

 

 

そんな馨お姉ちゃんはふと視線を外に向けると穏やかな表情を浮かべた。

 

「さて外も暗くなってきたし、今日はこの辺りで終わりにしよう。」

 

そう言われて僕は初めて外が暗くなっている事に気付いた。

馨お姉ちゃんが味方になってくれた事に浮かれる僕と、そんな僕を面白くなさそうに見るエリカさん。

そんな僕達が外に出る準備をしている時、馨お姉ちゃんが思い出した様に声を掛けて来た。

 

「あっと・・・最後に1ついいかい?」

「どうかしたの、馨お姉ちゃん?」

「昴君とエリカさんの婚約について何だけど・・・やっぱり昴君が神殺しになったからなのかな?」

 

突然の疑問に首を傾げる僕を余所に、エリカさんが答える。

 

「それに付いては関係ないわ・・・私達が子供の頃に親同士が決めていた事みたいだから。

 まあ、今は私達の意思で婚約しているのだけれどね。」

 

自慢する様に答えたエリカさんに、真剣な眼差しで馨お姉ちゃんが問う。

 

「それは、彼を愛しているという事でいいのかな?」

「勿論・・・私は彼の愛しているわ。」

 

それを聞くと馨お姉ちゃんは一瞬眉を寄せたが、次の瞬間には僕に近寄ってきて・・・。

 

「あ、あの、か、馨お姉ちゃ・・・んっ・・・。」

 

僕は馨お姉ちゃんに唇を奪われた。

馨お姉ちゃんの柔らかい唇の感触・・・さらに零距離という事で女性特有に甘い香りが鼻腔を擽る。

 

「んっ・・・・ちゅ・・・・・ぷはっ。」

 

・・・途中から舌も入ってきて、僕の思考は止まってしまった。

唇が離れた後も動かない僕をエリカさんが奪い返す。

 

「ち、ちょっと馨さん、私の昴にいったい何をしてるのよ!!」

「いや・・・僕も婚約者としての挨拶をと思ってね。」

「こ、婚約者ですって!!」

 

エリカさんの怒声に悪びれる事無く馨お姉ちゃんは言葉を返す。

そして僕はその言葉に我に返り、エリカさんも驚きの声を上げた。

 

「あぁ、そうだよ・・・僕と昴君の婚約は僕達のお爺様同士が決めた事だ。

 今だから言うけど、僕は当時から昴君の事が好きでね。

 けど、媛巫女修業の為に道場を止め、昴君と離れ離れになる運命だったんだ。

 その時、我儘も言えず1人で泣いていた僕に気を利かしたお爺様が婚約者にしてくれたらしい。

 僕自身その事を知ったのは修行を終わらせて正史編纂委員会に入ってからだったけどね。」

 

・・・と笑顔で言う馨お姉ちゃん。

そんな話を全く聞いた事が無かった僕はかなり驚いている。

し、知らなかった・・・お爺ちゃんも何勝手な事してるんだ。

せめてひと言位言って置いてくれても良かったんじゃないか!!

 

「家に正式な書状があったから昴君の家にもあると思うよ。

 それとも・・・僕が婚約者だと嫌だったかな?」

「いや・・・その・・・。」

 

言葉に詰まる僕に馨お姉ちゃんは優しい笑みで話し掛けてくれた。

 

「突然の事だったからね・・・嫌なら嫌で構わないんだよ。

 でも、僕は子供の頃から変わらず昴君の事が大好きだよ・・・もちろん、異性としてね。

 それじゃ、進展があったらまた連絡するよ。」

 

そう言って馨お姉ちゃんは店から出て行った・・・とんでもない爆弾を投下して。

突然の事で頭を回らない僕は、隣で悪魔の笑みを浮かべているエリカさんに気付かなかった。

 


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