どういうことなのか、ご覧になってください。
最初に断っておきますが、ある程度の覚悟を持っておいてください。
豊饒の女主人で夕食を済ませた後(その際に起きたことは割愛するとして)クラウドは一端、店の前で待つことにした。
閉店まで残り僅かだったのでリューが出てくるのを待っているのだ。
「にしても……ただ夕飯食べに来ただけでこんなことに巻き込まれるとはな……」
突然の事態が連続して起きて最近休まることがない。
八年ぶりに幼馴染みと再会したり、姑(形式上そう呼ぶ)に結婚の挨拶をさせられたり、中々にハチャメチャな日々だ。
そんなことを考え、深くため息をついていると見慣れた金髪と尖った耳が視界の端に映った。
「……クラウドさん」
「あ、終わったのか?」
「はい」
店の出入口が閉じられ、中では清掃や後片付けが進められているようだ。
「その……急に申し訳ありません。クラウドさんが構わないならこれから少し頼みたいことがありまして……」
「ああ……別にいいけど。その頼みたいことって?」
クラウドとしては今日は多少遅れようが構わない。精々日が変わる前に戻れば大丈夫だろう。
「ここでは……話せません。私の部屋に来てください」
リューは踵を返すとやけにぎこちない動きで、店の離れにある部屋に向かって移動を始める。クラウドもその背中を追うようについていった。
「あ、ああ」
気のせいだろうか。リューの顔がやけに赤くなっているような……
ここで気づいた。いやまさか、とクラウドは思い当たる節があった。
「あの……あのさ、リュー」
「何でしょう?」
「……聞いてた?」
「……何をです?」
「だから、さっきの……嫁がどうとか……」
リューの足が止まった。ま、まさか……地雷でも踏んだか?
「離れに着きました」
「え? あ、ああ、だよな。うん、そうだよな」
びっくりした。いつの間にか離れの入り口に来ていたのか。
クラウドはリューに続くようにその中の一室に足を踏み入れた。
「……腰掛けていてください。話をしますから」
リューは部屋に入ると扉をすぐに閉めて鍵をかけた。なぜ鍵を……?
「で? その頼みっていうのは……」
「その前に、話すことがあります」
リューはクラウドの前のベッドに腰掛ける。彼女の顔は戸惑いと緊張を含んでいるように見えた。
「先程のミア母さんとの話は……その、聞こえていました」
「やっぱりか……」
恥ずかしくて思わず笑ってしまった。目が全然笑ってないことは自分でもわかったが。
「ごめん、恥ずかしかった……よな? あんな大声で言ってたんだし」
「いえ、恥ずかしくなかった……と言えば嘘になりますが……それ以上に、嬉しかったです」
リューは照れくさそうに笑顔を作る。不意打ちを食らったようにドキッとさせられてしまう。
「私も貴方と――クラウドさんと同じ気持ちです。貴方の決意に誓って、裏切るような真似はしません。私は、一生貴方の傍にいます」
「……!?」
もう声も出せなかった。外見の美しさもそうだが、高貴で誇り高い性格をしていても、こんな風に不器用に告白をしてくる辺りは普通の女の子と変わらない。
「それで、お願いというのは……そのことについてです」
「お、おう」
やっと本題か。もう忘れかけてたぞ。クラウドは気を取り直して咳払いをする。
だが、そんな決心を嘲笑うかのごとく衝撃の事態が起こった。
「んなっ!?」
「……っ」
リューが服を脱ぎ始めた。若葉色のワンピース型の給仕服を脱ぎ去り、その下のインナーを裾から捲り上げる。カチューシャや靴下も外し、脱いだ服は部屋の隅にある籠に放り込んだ。
「な、なななな何で脱ぐんだっ!?」
「そ、それは……というか、あまりじっくり見ないでください……」
「ごっ、ごめん! 後ろ向いておくから、早く……」
「め、目をそらさないでください」
「どっちなんだよ一体!?」
口が半開きになって目の焦点が定まらない。リューはもう素肌に下着を着けているだけだ。彼女の清廉とした感じを強調する白い下着だ。しかも何故か申し訳程度の布面積しかない。年相応に膨らんだ胸元、脇腹から足にかけての曲線、白く、細い手足。肌にはシミ一つなく、本当に御伽噺に出てくる妖精を思わせる。
一度彼女の水浴び姿――つまりは裸を見たことがあるから今更などと思われるかもしれないが、そんなことはない。そもそもあのときはほんの一瞬見えただけだったし、今回は今回で下着がただの衣類としてではなく女性らしさを際立たせる重大な要素となり得ている。
「たっ、頼みたいことって何なんだよ!? そろそろ教えてくれても……」
「……耳を、貸してください」
「み、耳?」
クラウドはなるべくリューの下着姿を見ないように――実際はチラチラ見てしまっていたが――彼女の口元に耳を近づけた。
「――――」
「え?」
クラウドはリューの『頼みたいこと』の内容を確認せざるを得なかった。本当にそんなことをしていいのか、と。
「本当に、俺がやっていいのか?」
「はい……クラウドさんは嫌ですか?」
そんなことはない。『こんなこと』を他の奴にやらせたら多分後悔してもしきれないくらいだ。
「……そんなことない。むしろ、他の奴にやらせたくない」
「……よかった」
リューは最後の衣服――上下の下着を外し、裸の状態でベッドに横たわった。
◼◼◼◼◼
「んっ……あ、そこは……」
「ここがいいのか?」
「は、はい……そこをもう少し……んうっ!」
クラウドはベッドに横たわるリューの上に股がり、その白い肌に触れる。何度も触れる内にその部分が熱くなり、彼女の反応も変わる。それが嬉しくてクラウドは強弱をつけながら続ける。
「リューの身体って、こんな風になってるんだな。普段着からじゃあよくわからないとこもあるから、何だか新鮮だ」
「どっ、何処を見ているのですか……?」
リューは彼女の身体を撫で回し、時折指で適度に圧力を加えるクラウドを見上げるように尋ねてきた。クラウドはそんな姿が余計に嬉しくなる。
「何処だと思う?」
「ですから、そんなに見つめては……んあっ……あ、灯りを……け……し……くうっ……けし、て……」
「明るい方が見えやすいから、そのままにさせてくれ。リューだって初めてなんだし、俺に気持ちよくしてもらいたいだろ?」
「……はい」
リューは顔を真っ赤にしたまま目をそらす。クラウドは彼女の期待に応えてやろうと続けて二の腕や背中の線をなぞる。
「ひあっ!」
「……凄い声が出るんだな」
肌の上を滑らせるように指を走らせただけだったが、彼女にはかなりの刺激だったようだ。
リューは恥ずかしそうな、悔しそうな顔で訂正する。
「ち、違います……これは……慣れていなくて……」
「意外とリューって敏感なんだな」
「そ、そんなこと……」
リューの言葉を遮るように手のひらで優しく肌を撫でる。
「ふあっ……ひっ……」
「まだ途中だぞ。まだ触ってないところもやらないとな」
「触って……いない……ところ……?」
リューは目を泳がせ、クラウドからの返答を待つ。クラウドも少し興奮気味に背中や腹に触れていた手を身体の下に移動させる。
「ま、まさか……」
「ああ、足の方だ」
クラウドは彼女の両足――太股や脛辺りに触れる。鍛えているため筋肉もついているが、女性らしく柔らかさも備えている。足全体の脚線美も目が眩むほど素晴らしいものだ。
「変では……ないですか?」
「そんなわけないだろ。すごく綺麗だ」
人の美しさに明確な定義などないのだろうが、少なくともリューの今のあられもない姿を目にすれば、世の男どもは軒並み陥落してしまうのではないかと思うほどだった。
「それにしても、こんなことお願いしてくるなんて……リューも溜まってたんだな」
「し、仕方ありません。18階層から戻って以来……ずっと忙し……ひゃっ!」
リューの太股の内側に手を伸ばし、揉みしだくように指で押す。リューの身体が小刻みに震え、声を発してしまう。
「だったらこんな風に言わなくても、いつだってしてやるのにな」
「本当ですか……?」
「ああ、だから今は楽にしてていい。俺に任せてくれ」
クラウドの顔も赤く染まり、リューの身体に触れる指の力が強まる。
「うっ……あっ、だめ……!」
「わ、悪い。痛かったか?」
「いえ、そうではなくて……もう少しゆっくり……」
「こうか?」
クラウドはじっくりと追い詰めるように太股を、脛を、足裏を指で刺激する。
「んっ……くっ……はあ……や……そこ……」
リューは身体をぴんと張って快感に耐えようとしたが、抗えずにやがて身体から力が抜けていく。
「怖がらなくていいから。力を抜いて」
「ふぁ、ふぁい……ああ……」
クラウドはリューの足から手を離すと前傾姿勢だった身体を起こす。
「どうだった、リュー」
「すごく……よかったです……こんなの初めてで……」
「よかった。マッサージ、気持ちよかったんだな」
クラウドは一息ついて
「これ、する方もけっこう疲れるんだな。暑くなってる」
「……ごめんなさい、手間をかけてしまって。最近忙しいせいで疲れていて……」
「気にするなよ。疲れが溜まったら休んだり、今日みたいに誰かに手伝ってもらったりすればいいんだからさ」
そう。リュー曰く、明日のデートに疲れきった状態で行けばクラウドと十分に楽しめないと考えたらしい。しかし、休みがとれるのはデートの当日だけなのでどうしようか迷っていたところへシルからの入れ知恵があったらしい。よくやった、シルよ。
断っておくが、リューはマッサージ中はうつ伏せだった。腰辺りにも毛布を乗せていたので隠すべきところは隠れていた。
リューは毛布を胸元まで引き寄せ、身体を隠した状態でベッドから上体を起こす。
「正直、不安だったんです。私の身体が……変に思われないかと」
「いや……」
本気で言っているのか? と思ってしまった。こっちだってかなりドキドキしていたのだ。
クラウドもアイズやラストルたちにマッサージをしてやったことはあったが、同い年の女子相手にしたことなどない。
「興奮したというか……すごく嬉しかったのは確かだよ。俺だって、男だし……」
「……! あ、ありがとうございます」
リューは消え入りそうな声で感謝の言葉を示した。クラウドも同じく小さな声で「ど、どういたしまして」と返す。
クラウドは気まずそうに立ち上がると、「そろそろ遅いから、帰るな」と部屋の扉に手をかけ退室しようとする。が、その背中に声が投げ掛けられた。
「クラウドさん……明日、楽しみにしていますから」
去り際のリューの台詞に面食らったが何とか表情に出さないよう努力して笑顔を作った。
「ああ」
怒らないので正直に先生に教えてください。途中のくだり見てて邪な気持ちになっちゃった人いたでしょ? 残念、マッサージです。これは、マッサージ。(念のため二回)
そんな気持ちになっちゃった人は好きな中二病系ヒロインを教えてください。私はデート・ア・ライブの耶倶矢です。
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