鈍感な会長と悩める乙女の役員達と召喚獣   作:風澄龍

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はあ、起承転結の形に沿うように書くのって大変ですね。


第9話

顔合わせと書類の作成が終わった僕は書店に寄っていた。

理由は、今日発売されるプロの料理に関する雑誌が届いたという情報を掴んだからだ。殆どの生徒が買うことのない雑誌を見つけ、いざ、レジに向かおうとした時に見慣れた生徒の後ろ姿を発見した。

首の近くで揃えられたショートヘアのその姿はよく見る友達でもその人物は女子生徒ー生徒会副会長の木下優子さんだ。

 

「木下さん?」

「ッ⁉︎」

僕が声を掛けるとビクッと体を震わせた後、慌てて手に持っていたものを背中に隠す。

「あ、あら、よ、吉井君じゃない。き、奇遇ね」

僕に気づいた木下さんは動揺した面持ちで背中に何かの本を隠しながらこちらを向く。

「まあ、そうだね。それでどうしたの?ここってー

 

 

 

ーBL本のコーナーだよね。もしかして………」

「ええそうよ!腐れ女子よ!滑稽しょ⁉︎優等生なのにこんなので!笑いたきゃ笑いなさいよ!あっはははっはっは!はっゲホッ、ゲホッ」

木下さんが僕の確認の言葉に逆ギレのように声を荒げ、そして咽せる。

「木下さん、図書室ではお静かに。それにそんなことで笑ったりしないよ」

「えっ、どうして?」

僕のその発言に口に手を当てて周りを見回した後、目を丸くする。

今は放課後で殆どの生徒は寮に戻っている、または、帰宅しているだろう。

「だって、趣味は人それぞれでしょ?確かに引かれるかもしれないけど、それも木下さんの個性だと思うな僕は」

僕の言葉に嬉しそうに微笑む。どうやら嬉しいらしい。

「だから気にする必要ないよ。僕はそっちの話には付いていけないけど、相談くらいは乗るからさ」

そう言って僕は雑誌を買うと書店を後にして寮へと帰った。

 

 

 

 

 

 

久々に帰る寮部屋はあの時のままだった。備え付けの学習机と本棚それに二段ベットがあり、片方の机の上には家から持ち込んだ辞書が置かれている。本棚には僕の買った雑誌とルームメイトの本がある。

「おかえり、明久君」

「おかえりなさい吉井」

「ああ、うんただいま」

僕は部屋に帰ってカバンを机の横に置いて雑誌を机の上に置く。そして部屋にいる葉留佳さんと佳奈多さんにただいまと言う。

「ってなんで2人がここに⁉︎」

「あれ?いるのが普通に思ってるんじゃないの?」

スルーしてしまってたけど、ここに2人がいるのはおかしい。本来なら女子寮にいるはずだ。それと葉留佳さん、それは絶対に無い!

「思ってないから……それで、2人はなんで僕らの部屋にいるわけ?」

僕はジト目で2人を見る。

「やはは……実はですね、明久君の部屋に遊びに行こうと思ってたらお姉ちゃんに会っちゃいまして、そのまま2人でここで勉強しながら待つことにしたんですよ」

思い付きで僕の部屋に姉妹揃って入ったらしい。

「あれ?でも鍵………」

「棗先輩に言ったらマスターキー貸してくれたわ」

 

おいこら、あのダメ男子寮長何してるんだ。

そんな事を思いながら、彼女達と勉強して夜は更けるのだった。

 

余談だが、帰ってきた恭介は入室一番に明久に殴られた。そして葉留佳さんはものの数十分で飽きたと言い出したので、説教した。

 

 

 

 

 

翌日、Fクラスに2人の生徒の姿があった。

 

1人はこの文月学園にファンクラブを持ち、新設された生徒会の会長を務め、副会長に新たにフラグを立てたことにより生徒会メンバー全員に加え、風紀委員長にも好意を寄せられているのに気付かない朴念神(朴念仁ではない)な天才・吉井明久

 

もう1人はかつては神童と呼ばれるほどの頭脳を誇っていたが、ある日を境に悪鬼羅刹と呼ばれるほどの喧嘩ばかりして教師を悩ました坂本雄二

 

彼らは卓袱台を挟んで、向かい合って座る。

「わざわざ、来てもらって悪いな明久」

「良いよ。それより君がこんな早朝に、それも誰もいないような時間に呼んだのはやはり………僕の戦争参加してほしいっていうお願い、かな?」

ちがう?と僕は聞く。その言葉に雄二は黙って腕を組み、目を閉じている。そしてその目を開けた彼の目には強い意志が感じられた。

「その通りだ。俺はあの後、ずっと考えた。俺は世の中学力じゃない、確かにそう言っていながら俺は結局、学力に頼っちまった。俺が本当に証明したかったのはもっと別のことだ。そのためには明久!お前の力必要なんだ!頼む!………」

 

僕を呼んだ理由を話した後、雄二は僕のすぐ近くまで来ると、額を畳に押し付けー土下座した。

 

元来、坂本雄二という人物について、知っていることは問題児、元神童、そしてプライド高い人物。

 

そんな彼が、土下座を、プライドを捨てて、頭を下げている。それ程までに彼は僕の力を頼っているのだ。

 

(応えてあげるべき、かな?)

 

彼が真摯な心で頼み込むならば、無碍には出来ない。それは人道に欠いている。

 

「……もう一つだけ、聞かせてもらえるかな?」

「なんだ?」

 

「もし、君はAクラスに勝てたとして設備をどうするの?それにたとえ、設備を交換しないと言ったとしても、彼らーFクラスの生徒が納得するかな?答えはノー。その辺りについても答えてもらうよ」

 

「設備はお前の言った通り、設備は交換しない。学園長に頼み込んで、再振り分け試験を実施してもらう。そして彼奴らだが、他のクラスの女子とクラスメイトになれるといえば納得させられる」

 

どうだ?と彼の目が語っている。彼の言葉はとてもクラスメイトに対するものとは思えないが、如何せん、彼らなら納得してしまいそうなのでなんとも言えなかった。

 

「なら君のお手並みを拝見させてもらうよ。元神童さん」

「!」

僕は笑顔でそう言う。そんな僕に驚いた顔をする雄二。

こんなことがあったことを誰も知らない。


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