【完結】もしパンドラズ・アクターが獣殿であったなら   作:taisa01

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もしパンドラズ・アクターが獣殿であったなら
もしパンドラズ・アクターが獣殿であったなら


 ナザリック第九層 宝物殿

 

 積み上げられた数多の財宝の奥には、かつての仲間の似姿と品を祀った霊廟がある。

 

 アインズは洗脳されたシャルティアを助けるため、アルベドとプレアデスの二人を従え宝物殿の奥へとその歩みをすすめる。しかし黒曜の輝き放つ扉の前で立ち止まり、伸ばした手は扉に触れること無く彷徨う。

 

「いかががなさいましたか、アインズ様」

 

 扉の前で不意に立ち止まったアインズの行動に、付き従うアルベドは静かに問う。

 

「いや、わたしはシャルティアを救うためにここに来た。しかし戸惑っているのだよ」

 

 骸骨であるアインズの表情を読むことはできない、しかしその言葉の端々ににじませる感情、躊躇や戸惑いをアルベドは確かに感じることができた。

 

「アインズ様が戸惑われるほどの何かがここにあるのですか」

 

 心配そうな表情を浮かべたアルベドの姿に、アインズは意を決して告げる。

 

「ここには、わたしの過去(黒歴史)がある」

 

「アインズ様の過去……」

 

 アインズの過去。

 その言葉に付き従うものは驚きを隠すことができなかった。

 自分たちが生み出された時から、アインズはオーバーロードであり、装備こそ違えど完成された支配者のそれであったからだ。

 

「ゆくぞ」

 

 アインズは、アルベド達の驚きなど気付くことなく扉を開け放つ。

 

 そこには第九層の応接間にも劣らぬ荘厳な装飾。

 シャンデリアの明かりは部屋を優しく包みこみ、ここが地下であることを忘れさせる。

 

 しかしその荘厳さなど、比べ物にならないものが

 部屋の中央に存在していた。

  

 そう。そこには黄金があった。

 

「ひさしいな。卿がここにくるのは、どれほどぶりであろうか」

 

 黄金の髪。黒い軍服に包まれたその体は黄金比の象徴。

 部屋の中央。無造作に置かれた応接用のソファーに座る姿に、玉座で多くのものが傅く姿を幻視させた。

 

「おまえ……。いや、あなたは」

 

 そしてなにより、その覇気は己が主に通じる支配者のもの。

 アルベドは、おのが主に対する不遜な物言いを咎めようとしたが、男の纏う黄金の覇気に言葉を変えた。

 いや変えざるえなかった。

 

「卿がアルベドか。名前こそ知っているがまみえるのは初めてであったな」

 

 男はその黄金の瞳をアルベドに向ける。

 その瞳はどこまでも澄んでおり、慈愛に満ていた。

 

「私はラインハルト・ハイドリヒ。しかし卿には、パンドラズ・アクターと言ったほうが良いかな」

 

 パンドラズ・アクター

 愛するモモンガ様が創造した唯一の存在であり、ナザリック大墳墓の宝物殿の管理者。

 

「お前も……。元気そうだな」

 

 アインズ。いや鈴木悟は日本人であり一般的な黒髪・黒瞳であった。

 だからこそ金髪や白人に特有の憧れがあった。そしてパンドラズ・アクターに存分に反映されたのである。

 黒い軍服。映画スターのような体躯。黄金の髪に瞳。畏怖を乗せた黄金のオーラ。

 どんな時も自信に満ちた唯我独尊の姿。

 パンドラズ・アクターという名前がありながら、ラインハルトというもう一つの名を名乗る。

 

 その全てが、アインズの何かを削っていく。

 

「うむ。卿も壮健でなにより。ところで今回はどうしたのかな。見目麗しいフロイラインをつれて」

 

 アルベドや戦闘メイド(プレアデス)のユリやシズは、フロイライン(お嬢様)と言われたことに対し、普段であればその職務を貶されたと感じたであろう。しかし、アインズと似た覇気の前になぜか咎めることができなかった。

 

「最奥にある秘宝。ワールドアイテムを取りにきた」

「ほう。アレを」

 

 どこか疲れた雰囲気を醸し出すアインズは要件を伝えると、ラインハルトは足を組み換え右手を軽く形の良い顎に添え一言応える。その姿はさながら名画のようであった。

 

「卿にも、ものの愛し方が分かってきたということかな」

 

 アインズはその尊大で中二病の塊のようなその言葉に、無い眉をひそめる。

 

 しかしアルベドの思考は違っていた。

 強烈な黄金の覇気。支配者のみが持ち得るカリスマ。なによりモモンガ様はここに過去(・・)があるとおっしゃった。

 

 その時、アルベドの脳裏に天啓にもにたナニかが舞い降りた。

 

「ああ、モモンガ様は生まれながらの覇者であったのですね」

 

 このお姿はオーバーロードとして君臨される前、モモンガ様の捨てさった在りし日の姿であると。

 アルベドは、まるですべての謎が解けたような表情で言い放つ。

 

「なるほど」

「えっ」

 

 答えを得たと納得するプレアデスの二人。

 そして困惑するアインズは一人どこかに置いていかれた心境に陥ったのであった。

 




自分のサイト(http://www.loudist.jp/)でも紹介させていただいた、アルコホル氏の作品、墓の王~金髪の野獣~(http://novel.syosetu.org/20742/)を読んで思いつたネタ。

復活を切に願います。

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