前話より格段に読み易いと信じてる。
世に「九尾事件」と呼ばれる俺の生誕から早くも月日は流れ、原作開始時期まで差し迫っていた。
この12年で様々な事があった。様々と言ってもたった2つだが、如何せん後者の内容が濃過ぎた。
3歳の頃にはヒナタが攫われ、しかし、雲の国の忍頭を生け捕りに出来たお陰でヒザシの死体譲渡の件は回避され、ネジは
両親が命を賭して守ったこの里、
それから数年経って、うちは一族のクーデターを回避。
これを決定した主な理由は国力低下を危惧して。
うちは一族が存続し、イタチの抜け忍化も
手放したり、殲滅したりは、余りにも頭の悪い対応だと言わざるを得ない。里の対応として、原作のように「切り捨てる」を選択するのは、一から十まで不穏分子の
そういう理由で敢行した。これにより得られるメリットは、身近で言えばサスケの強化。イタチに暗部の仕事があり毎日とはいかないが、それでも兄弟での研鑽を積み続けられるため、成長率が大幅に向上するのはほぼ確実。道を正す立派な兄がおり、彼からの忍術・体術・技術など、諸々の教授も見込めるだろうから、より優秀な忍が誕生するのは間違いない。三忍の1人である大蛇丸をして敵わないと言わしめるイタチに師事するのだ。見込みは大きいだろう。
里単位で見たメリットは、木の葉崩し発生確率の低下。うちは一族が揃って存続する事で、大蛇丸が
ここでもし、クーデターが
その場合、将来的に高い確率でサスケの抜け忍化が起こる。正直対処が面倒である。是非とも
それで、原作でサスケ奪還任務を受けた者の大半が下忍と言えど、三代目火影戦死の有事で里としてガタガタの時期に、自里の忍を追い掛ける為に
それも、不幸にも原作通りに話が進めばの話だ。血も涙もないような事はしたくない。出来る事なら仲良くしたいし。
ただ、確かに、俺としても大蛇丸の元に行くのは少なからずメリットがある。うずまき一族の生き残りである
そんな訳で、最初期から阻止の方向で動いた。だが、方法について大いに悩んだ。
そもそも、クーデターの理由が曖昧であった事が俺の頭を大いに痛ませた。
対応改善が根底にあったと思うが、“漂白”なるもののお陰で穴開きの知識に残ったのはそこまで。そこからは完全に推測となった。
確か、うちは一族は警察機関を一手に請け負い、住民からの信頼も一定以上あった筈で、里の端の方に追い遣られた以外に目に見えた迫害はなかった筈だ。それに「追い遣られている」と言っても、そういう風にマイナスに解釈しようと思えば出来なくもない程度で、嘗てと──二代目火影の時代と比べて里の規模が大きくなった現在では、槍玉に挙げるのはナンセンス極まりない。
木の葉の治安維持はうちは一族ありき。火影であろうと、相談役であろうと、ダンゾウであろう、決して無視出来ないくらいに重要度が高いのは、今更論ずるまでもない。クーデターに拠らずとも、言葉による待遇改善は望めたのではなかろうか、と思うのは至極当然だった。
相談役を抜いた場で、互いに落とし所を探っていけば、血
そんな
それに、うちは一族に偏見があるのはそういった上層部の部分的な者達だけ。住民としては身の安全を守って貰えている以上、感謝が大半だろう。
また、うちは一族の立場に立ってみると、力のある不穏分子と言えば聞こえが悪く、危険性が高いが、全員が全員、反旗を
里を愛する者として、ダンゾウなどの極端な考え方は俺には受け入れられないし、立場改善と銘打って、強引な策に出ようとするうちはの一部の考え方も、俺には受け入れられない。風味が違う。
故に、クーデター回避に励んでいた。俺個人の力で出来る事など限られているので、本人は自覚がないだろうが、三代目火影を矢面に立たせて交渉事の類は
決定したのは以下の事。うちはの代表と三代目火影
道筋を決めれば行動あるのみ。
ある程度能力を付け終えた5歳程から、
それも最近実を結び、交渉は当然の如く三代目火影頼みだったが上手くいって良かった。火影、相談役、ダンゾウ、うちはマダラを含むうちは一族と、誘導しなければならない対象が多過ぎて挫けそうだった事をここに記しておく。
自分でも驚くべきハイスペックさと幸運で上手く事が進んでくれて、そのように生んでくれた両親に深い感謝である。父さん、母さん、ありがとう。
その反動として、アカデミーの成績は
そんな事もあって、原作のようにアカデミーの卒業試験を何度か失敗し、一段落ついた最近、
そして組み分けも原作通り。
相も変わらず女子に人気の、イタチとの日常的な組手により下忍にしてはスペックが可笑しくなっているサスケ。歳相応の実力のサクラ。「問題児」認定されている成績ドンケツの俺。そしてカカシ先生。
自己紹介で「夢は?」と聞かれて「イタチを殺す事」から「イタチを超える事」と微笑ましいものに変化していた。頑張れよ、と応援しておく。
因みに俺は「里を守る事」と答えた。そうしたところ、サスケから「ドベが
そんなこんなでカカシ先生による試験当日。
朝飯を抜いて来いとの指示を受けたが、ここ数年のチャクラ大量消費により朝飯を抜くと本当に動けなくなるポンコツ仕様に体が維持されてしまったので、気持ち普段より軽い朝食をとってから向かった。
まぁ、クーデター回避のオーバーワークはこれでおさらば予定なので、徐々に一般的な12歳の燃費に戻ると思う。全快時なら三日三晩休息を挟まずに全力で戦い続けられるだろう体力であり、スタミナ総量で言えば体力バカだった三代目火影顔負けと推測され、密かに自慢になっている。世に言う俺TUEEEEだ。ふはははは!!
「おはよう諸君」
「おっそーい!!」
早朝に集合予定だった筈が、今では充分空高く太陽が昇っている。にも関わらず、悪びれもなく登場したカカシ先生に、サクラが淑女にあるまじき怒声を上げた。
一応食べて来たのだが、既に朝ご飯は消化されてしまったようだ。相変わらず燃費の悪い体である。
盛大にぐぎゅるるるぅ~~と鳴らしたのを見て、カカシ先生が満足そうに頷く。丸太の上に時計を置き、12時に鳴るようセットした。
「あーはいはい、サクラくん、せっかちな女の子は嫌われるぞ。さて、試験内容だが話は簡単、ただの鈴取りだ。俺から鈴を取れれば合格。取れなければ不合格。それを昼までに
サスケを流し見てサクラを脅すような言葉を掛けると、カカシ先生は腰の忍具入れから鈴を取り出し、チリンチリンと鳴らして試験内容を説明した。
そこも原作と変わりないようで数は2個。必然的に仲間割れを誘発させる思惑があるようだ。指摘したサクラの答えとして、全員に聞かせるようにそういう旨を告げていたから間違いない。子供に対して意地が悪い。
「もう質問はないな?」
各々の顔を見て疑問がない事を確認し、
「殺す気で来ないと取れないからな。じゃ、スタート!!」
掛け声を合図にカカシ先生を除く面々は、演習場を取り巻く木々の影に思い思いに身を隠した。
◇
さてはてどうしたものかと、俺は木陰に息を潜め、攻略の方法を考えていた。
試験というからには、そして卒業したからには、早い段階で「問題児」という汚名を返上してチーム内での地位を確立しておきたいところ。
アカデミーでの俺は本当の俺ではない、力を隠していたのだ、などと、クーデター回避という止むを得ない事情があったのだから阿呆のように厨二病振るつもりは当然ないが、今の自分の力を過信して「俺1人で充分だ」と宣うサスケや、「きゃーっ!! サスケくぅーん!!」でこっちの話を少しも聞こうとしないサクラと意思疎通出来る程度には関係を良くしておかなければならないのは明白。後々の任務に支障を
故に、今回の試験では、否が応でも実力を買って貰わなければならない。最初は邪魔と思われようが、試験終了後に協力してくれてよかったと思わせなければならない。ツンデレなサスケには、これはなかなかハードルが高いと言わざるを得ない。イタチという高過ぎる目標があるから尚の事。
「はぁ……、しゃあない。やるだけやるか」
額当てとその付随した布で、右目以外を隠したカカシ先生が、演習場のド真ん中で本を片手にニマニマしている。
本とは
サスケをどうしようかと沈んで溜め息を吐いたが、もっと分かり易い目標が定まった事でやる気が沸いて来る。我ながら現金な奴である。
(影分身の術)
印を組み、5人に分身する。
アイコンタクトを取ると、分身体が意味を理解し方々に散って行った。
(気付いた様子は……あり、か。気配消したところでやっぱ近過ぎるよなぁ)
木陰からカカシ先生の様子を確認すれば、一瞬の空白。葉擦れの音で即バレのようだ。
無論、その仕草としては決して大きなものではない。滞る事なく上から下、右から左と紙の上を滑っていた右目が、何かに引っ掛かるように一瞬止まった。それだけだ。
それだけだが、一度も引っ掛かる事なく今の今まですらすら読んでいたところでその反応は大き過ぎる。下忍相手という事で油断があるのだろう。
何にせよ、流石は上忍にして暗部も務める人だ。勘が鋭い。けれども、何の術を使ったかまでは分からないだろう。喩え分かったとしても俺とは思うまい。
……いや、気配で分かるか。下忍らしく甘い隠し方の2人と違って、ある種の戦場で磨かれた俺の気配消しは暗部とそう大差ない。寧ろ禁術巻物の書庫に忍び込む関係上、三代目火影を相手にする事もあって場合によっては暗部以上かもしれない。消去法で今の行動が簡単に俺と割り出される。
(ある意味不利だったな……)
と言っても、この試験に合格して初めて下忍と名乗れる俺が、同じく下忍の卵に求めていい気配消しのレベルではなかったな。
溜め息を吐いたところで、茂みからオレンジ色の影が3つ飛び出した。3人は両手にクナイを持ち、カカシ先生に突貫する。俺の影分身である。
気付かれたからにはサスケが動き出すのを待つのは得策ではない。こちらを陽動としてサスケを
「分身……いや影分身か……!? 気配の消し方と言い、どうしてお前がドベだったのかねぇ」
本から目を離し、グルッと見遣ったカカシ先生。訝しげに本を閉じる。
その3方から影分身は挟撃を仕掛け、駆けながらクナイを投げた。全身の比較的大きな急所を目掛け、ヒュンッと鋭く、遠慮なく、6本のクナイが
瞬時に、カカシ先生との距離が詰まった。が、カカカッと小気味良い音を立て突き刺さり、変わり身を使ったのだと理解した。カカシ先生だったものが丸太に変わる。
直後、
「奇襲なら準備からもっとバレないようにね──っ!?」
背後から声がかかった。
半ば予想していたため行動は速い。それより自らを囮とする思惑もあったので油断して引っ掛かってくれて万々歳。
影分身の放った手裏剣が右手側から襲来する。それも1枚2枚ではない。無数に。徐々に数を増やして壁のように。
手裏剣影分身。忍具を対象に影分身を掛ける地味な術だ。
木に幾つも突き立ちながらも、射線を確保していたために目標通り、俺の居座る場を押し潰す勢いで押し寄せる。その場に俺はもういない。林の中からずり滑るように影分身の残る中央の広場に踊り出る。カカシ先生も身の危険を感じて
「よし、アレだ」
「「「了解」」」
変わり身に使われた丸太からクナイを回収して集まる影分身と視線を交わす。我が半身という事で意思を汲み取り、1人が煙玉を用意して煙を焚いた。
本体がどれかを撹乱させるためのシャッフルである。ただ、カカシ先生の嗅覚は犬もかくやの高性能。微妙な匂いの差異でオリジナルを嗅ぎ当てられるかもしれない
「っ!?」
可能性を考慮していたのも束の間、地面から微かな振動が伝わる。カカシ先生の使用する術の一端を知るからこそ、気付ける異質な微振動。
煙から抜けるように四方に飛び
「うわぁぁぁ!!??」
白煙の中から悲鳴が響く。逃げ遅れた1人がカカシ先生の術に嵌ったらしい。
その悲鳴が聞こえた丁度その頃、これまで林の中に身を隠していた1人が、木の上から大きく跳躍。空中で拳を握り、右腕を大きく後方へ引き絞っていた。
「ふっ!!」
そのままオリジナルや分身の離脱する動きによって
「なっ……!!??」
ドゴォッ!! とただ殴っただけでは有り得ないような音を伴い、広場に広く地割れが走って
後方の茂みからサスケの驚嘆。
地盤の影でカカシ先生も目を見開き、急いで地上に躍り出る。
そこに特攻。地面に引き
最も近かった分身体がクナイを構えて体術を仕掛けた。
腹部を狙って突き。それを手の甲で先生が軽く弾く。大人と小柄な子供という
「「っあぁっ!!」」
バネのように。射出機のように。2人係で腕を繋いだ1人を、パチンコの玉に見立てて引っ張り飛ばす。
足を大きく前へ一歩。大遠投するように体を開いてぶっ放す。
グンッと距離を詰めた。体勢を泳がせた一方が、カカシ先生の脇を抜ける前転。そうして頭を下げたところで放物線を描いてクロスチョップの姿勢で襲撃した。
「っ……!! トリッキーな奴だ……!!」
印を組む。慣性の法則そのままに、3人になって人型ミサイルが到達した。と思われた瞬間、霞んで見える腕の動きで印が組まれ、土の壁が現れた。影分身が激突してボフンと消える。
横に抜けていた1人が再度体術を仕掛けに出る。低姿勢からの足元を刈る回し蹴り。後ろに
「まだ甘い!!」
カカシ先生が壁を蹴った。地を蹴り回し蹴りを避けたと同時に、土流壁により形成された壁を更に蹴り、跳び上がって時計回りに体を捻る。頭部を狙っていた影分身の下から右手で裏拳を叩き込み、軌道を強制的に上方修整。掬い上げられ、可動域の限界に至った分身体が小さく呻き、体を後ろに逸らして倒れ行く。そして逆の手で抜いていたクナイを、裏拳を放った手に鋭く移し、突き出した俺のクナイを切り払った。
「流石先生……!!」
正直尊敬しかない。平時の気の抜けた雰囲気とは比較にならない程切れ味の良い鍛えられた空気。歴戦の
なるほど、父の教え子はこれ程まで天才で優秀か。だが、その額当ての下に隠しているものも、潔く出して貰おうか。
「アカデミー上がりにしちゃ上出来どころか異常だね。ま、昼まで寝ときなさい」
手刀が振り
うちは一族のクーデター理由覚えてないです。原作(兵の書など設定本含む)は最近の以外段ボールに入ってて探すの大変なんで誰か教えて下さい。
他力本願ですよろしこ。