ごった煮   作:ソーマ=サン

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 原作開始時の日程が分からなかったので、設定上入学式の次の日が舞台。

 原作キャラの性格は原作がないため想像により以下のような感じに改変。
 織斑一夏→鈍感。自身の精神力に忠実。
 織斑千冬→厳しいが理解ある教師。故に体罰自重。
 篠ノ之箒→軽度ツンデレ。体の半分は優しさで出来ている。
 イギリス娘→高飛車。ツンデレ。
 銀髪娘→クーデレ。
 男装娘→未定。
 中華娘→苛烈。

 のほほんさんとかは作者の脳内でイラスト化されて保存されていないので、どういう人物か作者が理解出来るまでは恐らく出ない。


重圧

 

 

 副担任によるHRを終え、1時間目に突入して現在、一夏の教室では出席番号とは関係なく前後に、順々に自己紹介と相成っていた。

 

「──って事でみんなと仲良くしたいです! よろしくお願いします!」

 

 たった今、快活な声で締めくくったのは右から2列目中頃の女子生徒。前髪をゴムで括ったショートカットが特徴的で、送られた拍手に照れ臭そうにはにかんでいる。

 しかし、織斑一夏はそれを知らない。自己紹介を終えた人数が2桁に突入しているにも関わらず、そもそも彼には他人を気にかけるだけの余裕が皆無だった。

 その理由は単純明快。

 女子の中にポツンと男子。不慣れな環境に放り出されては、「振り向いて確認」するという行為1つが並々ならぬ精神的苦痛を伴う。

 ただでさえ遠慮なしに突き刺さる視線に疲れを感じているのだ。既にして彼の心中は一杯一杯だった。

 そこに追い討ちをかけるように出現したある障壁。担任教師──山田真耶により提案された自己紹介。逃げたくなるが、なけなしの気力を振り絞って直面しなければならないその内容思案。

 「鈍感・オブ・鈍感」の称号を不服にも友人から授けられた彼は、異性が喜ぶような自身の表し方を知らなかった。

 故に悩む。これでもか、と言わんばかりに現在進行形で必死に。

 

(女の子ってのはあれだろ……、弾が言うには甘いものと可愛いものが好きなんだろ? 千冬姉と違って甘いものを献上すれば何でも許してくれて、そして千冬姉と違って可愛いものを差し出せば簡単に機嫌が良くなる、そんな俺の身近には(つい)ぞ見なかった、けれど世界には有り触れた存在なんだろ?

 なら、俺を物理的に甘く可愛い男に見せれば万事解決……?──いや、意味分かんねぇよ……。「物理的に甘い男」とか病気だろ、我ながら流石にねぇよ。それに「可愛い男」って何だ。フリル付いた服とか着んの? 想像しただけで気持ち悪い)

 

 あれでもないこれでもないと思考が巡る。

 ぐるぐるガラガラと、回転式おみくじの如く多数の(意見)が、抽選機()の中で跳ね回る。

 それは一夏として嘗てない程の高速回転だった。

 そうは言うものの、女子生徒の興味はやはり男性操縦者の自己紹介に焦点が合っている。それぞれの自己紹介は各自の名前に一言二言付けて最後に「よろしく」という簡素なもの。1人当たり30秒もかかっていない。

 如何に回転が速かろうと、十分な時間を稼ぐには心許(こころもと)ない。彼の番は直ぐそこまで迫っていた。

 

(──てかもう女子ばっかのとこに男子1人ってのがまず間違ってんだよ! “2人目”はどうした“2人目”は……! 「一緒のクラスにもう1人も入れたから安心していい」って言われて期待してたのに、いねぇじゃねぇか!? 嘘教えて上げて落とすとかどうなってんだよ校長! あんたそれでも教育者の長かよ……!? そしてどうすりゃいいんだよ自己紹介!!)

 

 机上に肘を付き、組んだ手を口元に当て、真剣な眼差しで壇上の教師──低身長の割に西瓜を胸にぶら下げた真耶を見詰めるようにして、一夏は心の内で悲鳴を上げる。某司令官の如き姿勢でごちゃごちゃになった考えを廃棄しつつ、半ば脳機能の低下に見舞われていた。

 

「──織斑君、織斑君? 次、君の番ですよ?」

 

「え? あ、はいっ!」

 

 そんなところに回って来た自己紹介。

 一夏は担任教師の呼び掛けに我に返って、慌てて席から立ち上がった。

 そして多数の女子生徒が座る後方に体全体で振り返る。

 

「あー……」

 

 正面から相対(あいたい)する事になった女子を倍する視線に、蛇に睨まれた蛙の如く動きを止める。

 黒髪、茶髪、金髪。色のバリエーションは主に3種。

 対して顔付きは、HR直前に入室した女子生徒のクール系から始まり、くりっとした大きな眼の可愛い系、釣り目の見た目ツンデレ系、にこにことしたのほほん系と様々。

 「あれ? 俺って以外と冷静?」と思いの(ほか)落ち着いて観察出来ていると感じ、小さく独り()つ。

 彼は意を決して口を開いた。

 

「俺、織斑一夏。男子操縦者候補。以上」

 

 周囲からは溜めに溜めたように見えた一夏から流れ出たのは、シンプルの粋を極めた単語4つ。一人称代名詞、固有名詞、役職名、自己紹介終了の合図。

 期待に胸を膨らましていた生徒達が、揃ってガクッと頭を落とした。勢い余って机に額をぶつけた者もいる。それ程に期待の度合いが大きかったという事だ。

 遠慮も糞もない反応を目の当たりにしたその本人は、と言えば、

 

(昔の偉い人も言っていた。「シンプル イズ ベスト」と。一層(いっそ)投げ遣りなくらいが1番そいつの人物像が伝わるんだよ! だから残念みたいな空気出すなよ!? 泣くぞっ、盛大に男泣きするぞ……!)

 

 先程より悲痛な悲鳴を上げていた。

 一夏の受けたダメージは計り知れない。彼の背後から響く千冬の溜め息も、その心の罅を拡大するのに一役買う。

 

「えー……っと、織斑君は織斑先生の弟さんなんですよね? ……はい、えー……織斑君、ありがとうございました」

 

 担任教師の気遣いが、彼には有り難くも、痛かった。

 

 

 

 

「渡辺空。ISの事はあまり知らないから得意な人は教えて欲しい。料理がそれなりに出来るからそれと交換でもいい。よろしく」

 

 一夏が意気消沈しつつも順調に自己紹介を進め、白マスクの女子生徒が最後に終えた。

 その後1週間の予定が知らされ、1時間目終了後に追い討ちをかけるようにイギリス代表候補生が一夏に突っ掛かるという事態が起きたものの、幼馴染みであった事を思い出した篠ノ之箒に介抱されながら項垂(うなだ)れた彼が、雀の涙程の精神力で取り合う筈もなく、問題なく1日の授業を全て消化し解散となった。

 そうして情けなくもあるが、自室にまで箒に送られた一夏はそこでルームメイトが箒である事を知り、箒もその事実を知り、互いに驚く場面があったとかなかったとか。

 

 




 いつから部屋が宛がわれるか分からなかったんで、この話の前日、つまり入学式のあった日は、部屋がまだ決められていなくて千冬の部屋に泊まったんだと都合の良いように解釈してください。
 その後色々あって原作通り(?)に箒と同室。オリ主は一人部屋。何故かは知らん。学校側の勘違いでしょ(適当)

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