GOD EATER-BURST~縋る神なきこの世で~ 作:A-Gyou
凶弾が突き進む先は神ですら分からない___
大概、ある程度の施設規模を持っていればフェンリルのどの支部でも職員居住区画の中には外来フロアと呼ばれるフロアが用意されている。
字面が示す通り、外部から来たフェンリル職員を臨時で住まわせるためのフロアだ。
無論、相手の身分によって幹部用、一般用と部屋のランク分けもなされている。
アナグラの外来フロアの一般用の内の1室は、大車ダイゴと言男にあてがわれていた。
その部屋の中身は、有り体に言って気味が悪い。
明は最低限にしかついていない薄暗い空間、乱雑に広げられた荷物、脱ぎ散らかされた衣服、こもった空気。
これだけで言うのならこの男に対する評価も整理整頓ができない生活能力の低い人物、に落ち着けることができる。
が、この部屋の空気を異質たらしめているのは床に散らばった雑物が原因では無い。
部屋に備え付けられていたデスク、加えて彼が持ち込んだ野外デスク……その上である程度整理されて並んでいるカプセル碇や錠剤が入ったケース、ケース、ケース。
他にも、ハーブやら、お香やら、全体的に見てセラピストなのか医者なのか分からない混沌とした様を醸し出しており、この部屋にいる男の存在を輪郭が分からない曖昧な物に仕立て上げる。
そもそも、目立たないようにしているのかはたまた偶然なのかは分からないが、医療やらセラピーとは明らかに無関係な特殊作業工具までそこはかとなく存在している。
一言で言って、カオスだ。
部屋も、使っている男の素性も。
そして、その部屋の仮初めの主は壁に取り付けられたコルクボードに数枚の写真と、いくつかのペーパーグラフを貼り付けそこに新たに何かを書き加えている。
中心には、今よりも更に幼い雰囲気のアリサの写真。中に留められた彼女の眼は、仄暗く寒冷下の金属を思わせる冷たさと拒絶を孕んでいる。命を宿す直前の人形のような、生きながらにして無機質。
そして、彼女の写真のすぐ真上には数本の糸を乱雑にまとめて貼り付けたセロテープ。そこを起点に伸びた糸は彼女の周りに貼り付けられた別々な写真に繋がる。
それぞれの写真は、イリヤ、リンドウ、サクヤ、ツバキ、コウタ、榊博士、リッカ等のアリサと比較的接触の頻度が高い人物の物だ。それぞれを繋ぐ糸には付箋紙で更に補足事項が書き足されている。
基本的にどれも接触の頻度だとか、何の会話だったとか、関係の深度だとかストーカー然としたもの。この時点で充分に異常性は理解できるが、それに輪をかけているのがそれぞれの写真に直接貼り付けられた殺すか否かを示した付箋紙だ。
特にイリヤとリンドウの写真は念入りな殺意がこめられた付箋紙に塗れている。
『雨宮リンドウ:暗殺 任務中 事故死~調整済』
『イリヤ・アクロワ:暗殺 計画段階~調整中』
まるで蜘蛛の巣。
「ふふ___ふははは!! アリサは良い子なんだよ……本当に、良い子だ___貴様らなんぞに触れさせるものか」
大車は、聞く者に確実な生理的嫌悪を覚えさせる粘ついた鼻息を漏らしながらコルクボードの上のアリサの写真を指でなぞる。
ぎらついた眼は独占欲に染まり、同時に嫉妬心と敵愾心も内包している。
「あぁ___アリサ、キミはまだ完成していない___キミの美しさは壊れて狂って__そのとき初めて出来上がるんだ__」
歪んでいる。狂っている。
その表現が全て。
大車ダイゴという男は、この時点で既に人の道を外れているのだ。
「ん~? そう言えばコイツもアリサを......ふふ、ふふふ__私のアリサを汚す輩は全て消してやる」
『楠リッカ:暗殺 誘拐 殴殺 刺殺~調整中』
凶器の撃鉄は今起こされた。
さて、良い感じにぐつぐつ煮えてきた感じがします(主観)
どうやって爆発させようかな~ww