GOD EATER-BURST~縋る神なきこの世で~   作:A-Gyou

54 / 57

コトコト、コトコト。

それは煮詰められる。

蓋が開くのは最高の瞬間___


滲み黒み

 

悪意に始まり、大概の仄暗い意識や行動と言うものは対象にぎりぎり勘付かれるか完璧に隠し通せる間合いを置いて渦巻く。

 

で、事の悪質さの話で行けば完璧に隠し通せる間合いで練られた奴の方が単純にタチが悪い。当たり前と言えば当たり前だ。本人が思いもしないタイミングで、考えもしなかった爆弾をいきなり落とされるのだから、その衝撃たるや計り知れないものがある。

 

ならば、ぎりぎり勘付かれる間合いがまだ可愛いのかと言われればそれはまた別の話だ。むしろこっちの方が搦め手でややこしく、威力も絶妙に調整されている可能性が高く、総じてこっちの方が悪質になりがちと言える。

 

考えてみれば分かることだが。

 

意図的にその間合いで事を練っているとしよう。つまりそれは、勘付かれても問題ないと言うことでその分得体が知れなくなるのだ。

実行に移されるまでの間に対象は焦らされ精神を磨り減らし、良い頃合いで適度に調整された爆弾を落とされる___プロセスだけを見ればこっちの方が博打要素を混ぜている分当たりを引かされたらダメージが絶妙に致命傷にかするのだ。

 

無論例外もあるだろうが、ここでは割愛する。

 

要は、イリヤを取り巻いている悪意がどう言った類いの物なのかを判断するための彼自身の分析なのだ。

 

で、得た結論が。

 

「一も二も無く後者だよなぁ」

 

第1部隊に下達された任務___鉄塔の森で確認されたコンゴウ1体及び他複数の小型アラガミの排除___が終わりアナグラに帰還したら、どう言う訳かイリヤを名指しする形で別の任務がいくつか放り込まれていた。それも、第1部隊を通しての話では無く、イリヤ個人に直接依頼という体で、だ。

 

どれも難易度的には問題無かった。

 

ツバキも、若干不思議そうな態度を示していたがイリヤをそれらの任務に赴かせた。

 

___結果として最後の任務でコクーンメイデンの森に放り込まれてなかなかややこしい目にあったのだ。

 

ジャミングの嵐という状況下で、オウガテイルやらザイゴートやらの乱入が立て続きジリ貧状態になったのだ。

 

いつの日か、止めどなくダミーが出てくるツバキ式スパルタトレーニングをこなしていなかったら本当に食われていた可能性すらある。

 

やや命からがらの状態で任務を達成して、帰還する。その時点で、流石にこれはおかしいと思ってヒバリのところで諸々の手続きを手早く終わらせて自室のノルンからその日の任務データを引き出してみた。

 

何が出るかは皆目見当もついていなかったが、蓋を開けてみてあぁなるほど、と彼は思った。

 

彼を5秒間死なせたあの日の任務、その時の依頼元と同じ所から依頼が来ていたのだ。

 

(つまり何が何でも俺を任務中に消してぇのか)

 

顔も知らぬ相手の徹底した自分柄の悪意と殺意を肌でうっすらと感じ、それをどうでも良いと受け流す。

 

こういうとき、イリヤはどう言った立ち回りをするのが相手にとって一番腹が立つのかを心得ている。それは、決して相手の思い描いたビジョン通りの結果に陥らないことだ。

 

どうしてそこまで彼を殺すことに固執しているのかは知らないが、どんな任務が舞い込んでこようが生きて帰ってさえいれば相手にとっては面白くないのだ。

 

そこから先はイリヤと相手の耐久レースだ。

 

イリヤは耐えれば良いだけで、そして彼は耐えることがかなり得意だ。仮にストレスがあったところで、発散の場は相手が用意してくれる。

 

そこまで考えて、その思考の穴に気付く。

 

相手がイリヤをどうにかしたいと考えているのは間違いないが、それを実行するに当たってどうして自分にしかそれが来ないと言い切れるのか、と言うことだ。彼の周りにも何かしら影響がある可能性だって、十二分にあり得る。

 

やはり、ぎりぎりの間合いの方が質が悪いと改めて認識させられる。

 

こうして考えるだけでも、計画性も無く不穏な事項が増えていくのだ。

 

そしてそうなってしまっていることこそがぎりぎりの間合いの術中にはまり込んでいることにも気付くが、気付いたところで現状をどうにか出来るほどの力も無い。

 

(自覚の有無だけでも分かってりゃまだマシか)

 

いったんそう結論づけて、思考を打ち切る。

 

これ以上考えたところで何か良いことがあるとも思えず、何より無意味にネガティブな方へと流される予感しかしなかったからだ。

 

「……寝ちまうか」

 

雨宮姉弟からは任務を差し止められている。罰則とかそう言った後ろ暗い理由では無く、単にイリヤの疲労度合いを見かねての判断だ。

 

隊長たるリンドウからは

 

「お前さん、今日は頑張りすぎだ。隊長命令だ、もう休んどけ」

 

と言い宥められたほどだ。

 

ならば無理に逆らう必要も無く、さっさと寝ていつ来るか分からない緊急の任務に備えて体力を回復させておく方がよっぽど賢い判断である。

 

サッとシャワーを済ませて彼はベッドに身体を預ける。

 

思いの外意識を手放すのは早かった。

 





前に放り込んでいたオリジナル設定とかもようやく再び日の姿を見せられそうです。

今はまだ停滞気味のストーリーですが、もう少しお待ち下さい。

否応なく怒濤になるので、それまでの辛抱だと思って気長に待って下さると嬉しいですww

それでは!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。