魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ- 作:八坂 連也
「……本当に良いのか?」
「良いの。これは油断……いえ、慢心した私が悪いんだから」
なのははそう言う。
ベッドの上で仰向けで寝ている。
その姿は痛々しい姿だ。
右目部分と顔の大半は包帯で巻かれている。
そしてここでは見えないが腹の部分も包帯で巻かれている状態だ。
「……頑固者」
「えへへ、結構私って頑固なんだよ?」
微笑むなのは。
とある任務の最中、なのはは大怪我を負ってしまった。
右目部分と左頬を切り裂かれ。なおかつ腹部分にも大きな切り傷を負ってしまったのだ。
俺は即座に治癒魔法で治そうとしたのだが。
なのはは『油断した私が悪いの……』と言って俺の魔法を拒否したのだ。
くそ、こんな事なら一緒に行けば良かった。
たまたま違う任務があったので俺となのはは別行動していたのだ。
その時になのはは怪我を負ってしまった訳だ。
医者の見立てでは最低で全治2ヶ月との事。
不幸中の幸いと言うか、綺麗に斬られているからくっつくのは早いだろうとの事。
ただ、どうしても傷跡は残ってしまうそうだ。
「顔に傷跡が残るんだぞ?」
「良いの。戒めと思って残すんだから。それに、お嫁さんの貰い手はあるもんね?」
「……ったく」
諦めるしかなかった。
「ただいま」
自宅に帰宅する。
するとドヤドヤとフェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずかが出迎えてくる。
「おかえり~」
「どうだった?」
「リビングで話そうか」
リビングに上がる。
そこには士郎さんと桃子さんがいた。
「申し訳ない」
俺は2人に深々とお辞儀する。
「……命に関わる怪我では無いんだね?」
「はい。ただ、どうしても顔に傷跡が残ってしまいます」
「そんな……」
「消すことは出来ないのかい?」
「……魔法で消す事は出来ます。ですが、なのはがそれを拒否するのです」
「……そう……か」
士郎さんはため息をつく。
「アレス君」
「はい」
「改めて、なのはを頼む。頑固な子で申し訳ないが……」
「……分かりました」
子供を作って今更別れ話とかあり得まい。
「で、なのはを襲ったのって?」
ニコニコ顔のフェイトが俺に問い尋ねてくる。
だが、右手に持たれた紅茶のカップが震えている。
こぼれるぞ、フェイト。
「うむ、残骸なら本局に渡してきた。結果はまだ出てないが……。俺の予想では『スカリエッティ』の仕業だと思う」
知らない人はいないと思うが。
スカリエッティ……『ジェイル=スカリエッティ』はStS編で出てきた黒幕的存在の男だ。
古代ベルカ時代に作られた大型戦艦『聖王のゆりかご』を復活させて管理局に戦いを挑んできたのだ。
目的ははっきりと描写されていなかったから最後まで分からなかったが。
「そう……」
そう言うとフェイトは立ち上がって瞬時にバトルジャケットに着替える。
「フェイトさん?」
「……ちょっとスカリエッティを殺してくる」
『ちょっとコンビニ行ってくる』みたいな軽げに物騒な発言してるんですか!
よくよく見ると目が据わってる様に見えるんだが!
「あ~、フェイトってお兄ちゃんの次になのはの事が好きだからねぇ~」
アリシアは苦笑しながらそんな事を言う。
「そうやねぇ……たまになのはちゃんとフェイトちゃんキスしてる時あるし」
……まあ、確かに夜の運動会の時とか百合な事してる時あるもんな。
と言っても!
他の方々も百合な事してるじゃないか!
・例1…アリサ×すずか
・例2…すずか×はやて
・例3…アリサ×なのは
・例4…アリシア×フェイト
どんな光景なのかは読者諸君の妄想力に任せるとして。
とりあえずはフェイトの頭を冷やさないと色々と大変な事になる。
「とりあえず、落ち着け」
俺は素早くフェイトの前に回り込み、抱きついてみる。
抱きつくと言うよりしがみつくが正解かも知れないが。
「……うん」
顔を赤くするフェイト。
落ち着いた様だ。
「そもそも、スカリエッティの居場所も知らないのにどうするつもりだったんだ?」
「ん~、とりあえず虱潰しに」
……大半の管理世界を焦土にするつもりか。
「管理局に捕まるぞ」
「でも、アレス君が大怪我した場合だったら?」
すずかがそんな事を言う。
どうなるかは予想が出来るんだが……。
「あ、それはもうアカンね」
「うん、片っ端から魔法を撃ち込むよ」
「リンディさんもレティさんも許可してくれるでしょうし……」
全員の目が据わっている。
とりあえず、スカリエッティは命拾いしたのかも知れない。
あっという間に2ヶ月が過ぎ。
なのはは無事に退院してきた。
迎えは士郎さん、桃子さん、そして俺というメンツ。
なのは曰く、顔の傷が少し恥ずかしいそうな。
丁度夏真っ盛りで麦わら帽子と大きめのサングラスで顔を隠しているなのは。
しかし、左頬の傷はしっかりと見えている。
さすがにマスクは暑くて断念したようだ。
「みんなに見られるのは良いけど……さすがに不特定多数の人に見られるのは……」
まあ、確かにそれはあるだろうな。
何せなのはの身長は少し高い。
しかも、スタイルはかなりのモノだし。
桃色のワンピースを着ているが、身体のラインは隠しようがない。
胸は大きく、腰はくびれていて、お尻は大きい。
日本人離れした体型なのだから。
今でも時折すれ違う人はなのはの事をチラチラと見ているのだから。
「まあ、慣れるしかないね……」
「うん。自分で選んだ道だもん」
「さあ、帰ろうか」
俺達は士郎さんに促されて帰路につく。
なのは達と一緒に学校に行く。
なのはと一緒に教室に入った時はクラスが静まりかえった。
まあ、それはそうだろう。
なのはの顔には大きな傷跡が残されているのだから。
右目部分に大きな裂傷跡が斜めに2本。
そして左頬に十字の傷跡。
……何処の歴戦の戦士ですか?と問いたくなる雰囲気だから。
ちなみに腹部分にも大きな傷跡があるが、知ってるのは一部の者だけだ。
「どうしたの!?」
「うわー…」
クラスメイト達が一斉に駆け寄って問い尋ねてくる。
「ちょっと……事故で」
なのはは苦笑いしながら応答するのであった。
ちなみに。
なのはファンクラブ『NNN』は減るかと思ったが、減ってなかった。
むしろ、増えてた。
『かっこいい……』
『アレはアレでありだ』
『ファンタジーの女騎士みたいだ』
……なんだかな。
俺はとりあえず放置することにした。
ヒロインの顔に傷跡を残すなんて俺位なもんだろ!w