魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ-   作:八坂 連也

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修学旅行と言えばやはり……


第56話 修学旅行〈中学校編〉後編

 

 

 

 

「当たらない!」

 

「にゃあぁ! 何なのぉ!?」

 

俺となのはは戦っていた。

 

何と戦っているのか……だって?

 

4年前に戦った鹿・グレートである。

 

以前戦った時より一回り大きくなっている。

 

〈4年前の屈辱を返すぞ!〉

 

しかも念話魔法を修得してるときたもんだ。

 

俺となのは達と一緒に歩いていたら、結界に覆われて俺となのはだけ取り残されてしまったのだ。

 

何故なのはだけ取り残されたのかは分からないが。

 

理由は後だ。

 

今は、この目の前の鹿を撃退するのが先決だ。

 

〈お兄様、目の前の鹿・グレートの解析が終わりました!〉

 

〈そうか!〉

 

〈名前が『鹿グレート・改』になってます! それと結果は以前戦った時より全ての能力が3倍近く強化されています! ただ、素早さだけ9倍です!〉

 

〈『鹿グレート・改』? 何者かがヤツを改造したと言うのか……? まあいい。速度特化か!フェイトよりも上回っているな、コレは!〉

 

動きが某モンハンのキリンに似ているが、あれの倍以上タチが悪いな!

 

残像を残して移動とか、質量を持った残像とか!

 

しかも、避けるだけではない。

 

ヤツの足下にはミッドチルダ式魔法陣が展開されて魔法弾が発射されているのだ!

 

しかも結構上手いときたもんだ。

 

だが、俺に当てるにはまだまだだがな!

 

俺は両手に持った剣で魔法弾を切り裂いている。

 

なのはもレイハさんではじいたり、シールドで防いでいる。

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 闇の精霊二百五十五柱。集い来りて敵を射て。『魔法の射手・連弾・闇の255矢』」

 

指先から発射される闇の矢。

 

一斉に鹿グレート・改に向かう。

 

しかし、鹿・グレートはそれを難なくと避ける。

 

もはやどこぞのF91とかああいうヤツにしか見えない。

 

「にゃあぁぁぁぁ! フェイトちゃんより速いよ!」

 

なのはもアクセルシューターを放つがそれすらも避ける。

 

 

〈その程度の速さで我に勝てると思ってるのか! 大人しく我の一撃で……死 ぬ が 良 い !〉

 

 

「ふざけるな! 貴様こそ二度と出てこない様にきっちり叩きのめしてやる!」

 

こういったものの、この状態では千日手状態である。

 

接近戦で叩き斬ってやろうと思ったが、俺の今の状態では攻撃を当てるのが難しい。

 

身体に負荷をかけている重力魔法を解除するのに少し時間がかかる状態になっているのだ。

 

今度から簡単に解除する様にしとかないとないけないな!

 

「にゃあ! このままじゃジリ貧だよ! 何か手は無いの!?」

 

「鹿グレート・改……使いたくは無かったが」

 

俺はジロリと鹿グレート・改を見る。

 

〈何をするか……無駄な事を〉

 

俺は身体に魔力を纏わせる。

 

「アレス……君?」

 

「なのは……耐えろよ?」

 

「う、うん……」

 

なのはは身構える。

 

 

 

 

「きらめき高校・演劇部奥義……! 『脱力漫才』!!」

 

 

 

 

俺は今から喋る言葉に魔力を込める。

 

いわゆる言霊に近い物があるが、これから喋る言葉はあんな高尚なモノでは無いとだけ言っておこう。

 

 

 

 

 

 

『土管が爆発、どかーん!』

 

 

『母艦が爆発、ぼかーん!』

 

 

『ちわー、東京ガスでがす!』

 

 

『猫が……ねころんだ!』

 

 

『ネギを……値切った!』

 

 

 

 

 

 

……。

 

 

…………。

 

 

 

その時、空間が凍り付いた様な感覚に陥る。

 

よし! 衰えてはいないな!

 

後ろを見るとなのはは呆然としている。

 

鹿グレート・改を見ると凍った様に動きが止まっている。

 

「隙ありだぁぁぁ! 天使滅殺(エンジェルバスター)!」

 

〈なんだとぉ!? うぐおぅ!?〉

 

左手から発射される闇の光線が鹿グレート・改に直撃する。

 

「……はっ!?」

 

なのはが復帰したようだ。

 

「もう! 何言ってるのよアレス君!」

 

なのははそう言ってレイハさんで俺の頭を容赦なく殴ってくる。

 

パカンと言う音が周囲に鳴り響く。

 

「いくら俺が頑丈と言っても殴るのはどうかと思うんだが?」

 

「アレス君のせいなの! お陰で身体が凍るかと思ったの!」

 

本来なら凍ってもおかしくないのだが、なのはの耐魔力が高かったお陰だろう。

 

鹿グレート・改の方を見る。

 

煙が晴れて来る。

 

直撃が効いたのであろう、足が少し震えている。

 

〈くっ、今のは効いたぞ……!〉

 

怒りに震えているのかも知れないな。

 

「よし、もういっちょ!」

 

「駄目なの! 今度聞いたら凍死するの!」

 

そう言ってなのははまた俺の頭をレイハさんで殴ってくる。

 

今度は『ゴスッ』と響く。

 

「ならどうしろと……」

 

「……」

 

なのはは俺の目をジッと見つめてくる。

 

わずかに上の方を見る。

 

……この合図は、『バインドで固定してスターライトブレイカーで葬るの』と言うヤツである。

 

やれやれ、上手く誘導してやるとするか。

 

俺は武器を無くして徒手空拳モードに切り替える。

 

「……闇の玉(ダークボール)!」

 

両手から連続で闇の玉を発射する。

 

どこぞの戦闘民族の王子みたいに連続発射だ。

 

鹿グレート・改は弾を避ける。

 

よし、さっきよりも素早さは落ちているな。

 

〈無駄だ! 先ほどは油断したが、この程度の速さでこの我に……〉

 

鹿グレート・改は弾を避け続ける。

 

そして。

 

〈!?〉

 

鹿グレート・改の足全てに桃色のリングが装着される。

 

〈バインド!?〉

 

「もう一丁!」

 

俺は更にバインドを鹿グレート・改にかける。

 

同じように黒い色のリングが鹿グレート・改の4本の足にかかる。

 

「なのはぁ!」

 

「うん! 全力……全壊!スターライトブレイカー!」

 

【スターライトブレイカー】

 

レイハさんの前に集まる桃色の魔力光。

 

一瞬の溜めの後、一気に放出される。

 

その瞬間。

 

俺の目に閃光がほとばしる。

 

「っ!」

 

俺は即座に目をつむる。

 

ちなみに目の前には魔力の盾を展開している。

 

轟音が周囲に響く。

 

常々思うのだが、何か……撃つたびに威力が上がってきている様な気がするんだが。

 

アレで非殺傷か……。

 

そりゃ、管理局で『人間アルカンシェル』とあだ名が付くわな。

 

俺の中では『人間波動砲』だがね!

 

煙が晴れて来る。

 

一応、非殺傷だから消滅することは無い……ハズなのだが。

 

っと、ちゃんと生き残っていた。

 

どう見ても満身創痍と言うヤツなんだが。

 

足は生まれたての子鹿の様にプルプルと震えて、身体には血が流れている。

 

〈おのれ……!〉

 

だが、ヤツの目は今も燃えている。

 

アレを喰らって心が折れないのは褒めてやろう。

 

「もう、その身体では戦えないだろう。諦めて山に帰るんだな」

 

〈くそ! ここは撤退するしかないか……! 今度会った時が貴様の最期の時だ!〉

 

鹿グレート・改の足下に広がる魔法陣。

 

コレは……転移魔法陣!?

 

鹿グレート・改はあっという間に転移して逃げ出してしまった。

 

「……逃げちゃったね」

 

「……ああ」

 

隣になのはが降りてくる。

 

「にゃはは、よっぽど恨みがあったのかな?」

 

「……だろうな」

 

何とも言えない気分になったが、ヤツは明らかに殺意を持っていた。

 

さすがにむざむざと殺される訳にはいかない。

 

今度会った時……か。

 

会うとしたら、3年後だろうな。

 

 

 

 

 

結界が解けてなのは以外の5人と合流する。

 

聞けば全員違う生物に襲われたとの事。

 

アリシアとフェイトが『ハブロード・改』でアリサ、はやて、すずかが『キラーヒグマ・改』との事。

 

色々とツッコミを入れたいが、何者かがこの世界に送り込んできたのだろうか。

 

しかも、ご丁寧に名前の後ろに『改』と付いている。

 

何者かが奴らを改造した……と言うことだろう。

 

生物を改造……?

 

俺の頭に1人の人物が浮かぶ。

 

『ジェイル・スカリエッティ』

 

何か、あいつならやりそうな気がする。

 

もう原作から乖離しているからどんなイレギュラーがあるか予測も出来ない。

 

ひょっとしたらまだ捕まっていない転生者共の可能性もある。

 

そうそう、この世界には『ときめきメモリアル』は存在する。

 

誰かがスカリエッティに入れ知恵して……と言う可能性も考慮する必要がある。

 

何にせよ、少し注意した方が良いかも知れないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

家に帰宅する。

 

あの後は何事もなく過ごす。

 

特に目立ったことは無かったので割愛させて貰う。

 

「お帰りなさい、お兄ちゃん♪」

 

「お帰り、お兄ちゃん♪」

 

藍色髪の少女と栗色髪の少女が出迎えに来る。

 

ティアナとスバルである。

 

どうやら遊びに来ていた様だ。

 

「お、お帰りなさいアレスさん」

 

「お帰りです」

 

後ろに現れたのはエリオとキャロ。

 

どうやら2人も来ていた様だ。

 

「おお、来ていたのか。どうしたんだ、今日は?」

 

俺は部屋に帰る。

 

ティアナ達も一緒に部屋に入る。

 

「えっと。アレスさんの子供を見たくて」

 

なるほど。

 

エリオとキャロは隣だから結構ウチに来て見ているが、ティアナとスバルはしょっちゅう来ている訳ではないのだ。

 

鍛錬はミッドチルダで行っているが。

 

ちなみにギンガは学校が忙しいので滅多に来ることが出来ない。

 

「まあ、今は寝てばかりだからな。もうちょっと大きくなったら楽しくなると思うんだが……」

 

言っても12人だからシャレにならんと思うんだが。

 

「ねーねー、アレスお兄ちゃん?」

 

スバルが俺の顔を見つめてくる。

 

「ん?」

 

「私もお兄ちゃんの子供欲しいなぁ~?」

 

「……」

 

この娘はいきなり何を抜かすのだろうか。

 

「何言ってるのよ、スバル。年上の私から先に決まってるでしょ?」

 

ティアナがスバルをたしなめる。

 

コレって、たしなめるに該当するのか?

 

そもそも……だ。君達は何歳になるのかね?

 

「……お前達、今年で何歳になる?」

 

俺はスバル、ティアナ両名を見つめる。

 

「んっと、12……歳?」

 

「私は11歳♪」

 

「両人とも却下だ!」

 

小学生と子供作りとかもはやシャレにもなんにもならん。

 

「え~?」

 

「駄目なの~? こないだ何か血が出てきたから父さんに聞いたら大人になった証拠だって……」

 

ゲンヤさん、ご愁傷様と言っておきましょうか。

 

「え、スバル早いね。私はこないだ血が出てきたから義父さんに聞いたんだけど……」

 

……レジアスのおっさんがテンパって娘さんのオーリスさんに相談している姿が見えたんだが。

 

血が出てきた事を知ってるって事は、子供作りの事も知ってる事だろう。

 

誰が教えたのか……はやて辺りが怪しいが。

 

「兎に角。2人の年齢で子供は早い」

 

「じゃあ。なのはさん達の年齢になったら良いのね?」

 

にっこりと満面の笑みで俺の顔を見つめるティアナ。

 

「じゃあ、あと3年後だね♪」

 

馬鹿野郎、3年後って言ったらStS編に……引っかからないな。

 

確か、数えで19歳の頃の話だし。

 

大丈夫と言えば大丈夫なのだが。

 

畜生!14歳で子供作った前例のせいで断れないじゃないか!

 

やっぱり神界に帰った時はゼルディア様特訓100年コースに延長だ!

 

「……好きにしてくれ……」

 

断りたかったが、スバルとティアナ両人の目を見て諦めるしか無かった。

 

何故なら、なのは達みたいに凶化しかねない勢いだったから。

 

ちなみに。

 

 

「エリオ君♪私もこんな子供欲しいなぁ♪」

「ええっと……」

 

 

キャロが俺の子供達を見つめている。

 

エリオが救いを求める視線を俺に向けてきたが、それどころではなかった。

 

 

 

 

 

 

『お話は聞きました! 来年はアレスさんの子供を作れると!』

 

部屋で休憩していたら何故かギンガからのこんな通話が。

 

「色々とツッコミを入れたいが、何故に来年?」

 

『え? 14歳になったらアレスさんと子供作りが出来るとスバルから聞きましたが?』

 

とりあえず、あの娘は今度会った時にお仕置きをせねばなるまいて。

 

「……ギンガは良いのか? 俺には見ての通り嫁が6人いるんだぞ?」

 

『問題ありません! ベルカ自治区は一夫多妻制です! 友達にもお母さんが複数いる人もいます!』

 

鼻息荒いギンガの姿を見てもはや諦めるしか無かった。

 

「……そうか。まあ、来年の話だからな」

 

来年の俺に丸投げすることにした。

 

頑張れ、来年の俺。

 

「ちなみに、ゲンヤさんは?」

 

『お父さんは問題無いと言ってます』

 

止められなかったのね、ゲンヤさん。

 

俺は心の中で手を合わせる事にした。

 

あ~、マッチョ神の部下をボコボコにしてぇ。

 

俺はそんな事を思いつつギンガと会話をするのであった。

 

 

 




 
脱力漫才ではホントにこんな感じのダジャレを言いますw

個人的に一番気に入ってる奥義ではありますが



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