魔法少女リリカルなのは -転生者共を捕まえろ-   作:八坂 連也

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やはりここはお話をしておかないといけませんね


第22話 管理局に話してみよう

 

 

 

 

 

ネコを2匹、拾った。

 

グレアム氏の使い魔だったはずだが。

 

先程の戦いで気絶させてから拾って帰ったのだ。

 

家に着くと母さんがちょっと目を見開いてからこう訪ねてきた。

 

「えっと……今晩のおかずはネコ鍋? 母さん……ネコは捌いた事無いんだけど」

 

「違う!」

 

ネコを食材にする国なんか滅多に聞いた事無いし、日本はそんな食文化は無い。

 

「もしかして……獣姦? アレスちゃんは人より獣が好きなの?」

 

母さんが泣きそうな顔で俺に聞いてくる。

 

泣きたいのは俺だよ!

 

【ええ!? お兄様……そんな趣味が? 初めて知りました!】

 

エヴァが勘違いしてるんだが。

 

「違うっちゅーに! こいつらは今度の事件の関係者なの! 襲って来たから返り討ちにして連行してきたんだよ」

 

俺がそう説明すると母さんはホッとした表情を見せる。

 

「だよね~。アテナ様や妖子(あやこ)から聞いてたけど、アレスちゃんは『人の女の子』が大好きだもんね」

 

アテナと妖子から聞いていたんかい!

 

「どんな事を聞いたかは聞かないけど……」

 

 

「そうね、3日3晩、3人でセック……」

「言わなくて良いからね!?」

 

 

 

俺は即座に反応して最後まで言わせない。

 

「うふふ、分かったわよ」

 

全く、恐ろしい事を言う母親である。今の台詞をなのは達に聞かれたら誤魔化し様が無い。

 

【へぇ~……お兄様、今度私にもお願いしますね?】

 

エヴァが何かとんでもないこと言ってるんですが…。

 

「……何ヲ?」

 

 

【もちろん、セック……】

「分かったからそれ以上言うんじゃありません!」

 

 

同じように最後まで言わせずに言葉を被せる。

 

【分かりました♪】

 

くっ、2人して楽しんでやがる!?

 

「と、とりあえず……部屋に連れて行く」

 

「じゃあ、段ボールとか用意して行くわね」

 

母さんは段ボールを探しに奥に行った。

 

いらない布きれとかを敷き詰めてペット用の簡易ベッドを作る為だ。

 

 

 

 

 

 

 

さて。

 

このままでは逃げられたりとか暴れたりされても困るので。

 

寝てる最中に首輪を装着しておく。

 

アリアとロッテに着ける首輪は只の首輪だが、同じ形で爆弾を仕組んだタイプも持ってるのだ。

 

とりあえず、首と胴体がおさらば出来るだけの威力を持っている。

 

コレでこの2匹は大人しくなるだろう。

 

【寝てる分には普通のネコで可愛いんですけどねぇ】

 

「うむ。蓋を開けたらかなりの凶暴な生物だがな」

 

俺は簡易ベッドの中で眠るネコ2匹を眺めていた。

 

 

「んにゃ……」

「にゅ……」

 

 

同時に目を覚ます2匹のネコ。

 

目を開けて周囲を見渡し、俺の顔を見て箱から飛び出そうとしたが。

 

「んにゃ!? バインド!?」

 

「何コレ!? ミッド式じゃない!?」

 

すかさず四肢にバインドをかけておく。

 

見た目はミッド式だが、中の術式はベルカ式だ。

 

しかし、見た目だけだとどっちがアリアでどっちがロッテか分からないな。

 

「さて、君達が何処の者だかしっかり吐いて貰うぞ?」

 

俺は身動き出来ないネコ2匹達の目を見据えて言う。

 

「だ、誰が!」

 

「私達は屈しないよ!」

 

「そうか……」

 

俺はネコのぬいぐるみを2匹の前に持ってくる。

 

ぬいぐるみには2匹に着けてる首輪と同等の物が装着されている。

 

「……?」

 

「な、何よ?」

 

更に俺は手鏡を持ってきて2匹の前にかざす。

 

「さて、君達の首を見て貰おうか?」

 

2匹は鏡を見て驚く。

 

首に装着された首輪を見て。

 

「な!? 何よコレ!?」

 

「んにゃ~!」

 

「そして、このぬいぐるみにも同じのがあるな?」

 

「……ええ」

 

「っ! もしかして!」

 

「そう、そのもしかして……だ!」

 

俺は右手の指をパチンと鳴らした。

 

部屋に音が鳴り響いた瞬間、ぬいぐるみの首輪が爆発して首と胴体が千切れ飛んだ。

 

「!」

 

「っ!」

 

息を呑むアリアとロッテ。

 

「俺としては、こんな事はしたくないのだがね?」

 

口元を少し吊り上げて俺は微笑んだ。

 

「卑怯者!」

 

「ろくでなし!」

 

「そうか、まあ、姉妹2人で逝くのも良かろう」

 

俺は左手を掲げた。

 

「……ま、待って! 喋る! 喋るわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

ってな訳で洗いざらいお話を2人から聞きました。

 

大体は前世の時に観たアニメと同じでした。

 

まとめると。

 

 

 

・ギル=グレアム氏は11年前に夜天の書が暴走して部下を何人も亡くしてる。

・その部下の仲にリンディさんの夫、クライドさんが居た。その時、クロノは3歳。

・ハラオウン親子に負い目を感じていたので自らの手で夜天の書を封印しようと決意。

・後に両親を失った八神はやてを発見、そして夜天の書の主であることを突き止めた。

・夜天の書が起動した時、主であるはやてごと封印する計画を立てる。

・そのためにも、両親、親戚がいないはやての保護者となる。

 

 

 

「ふざけるな! ふざけるなよ! はやてを……闇の書もろとも封印だと?」

 

実際に聞くと腹が立つ。

 

これだと、彼女は何のために……生を受けてこの世に生まれたんだ!

 

「し、仕方なかったんだよ……闇の書には転生機能が付いていて、主を亡くすと次の主を求めて転送されてしまう」

 

「私達だって、本当は……そんな事したくなかった。お父様だって、本当は……」

 

そうか、彼女達だって、辛かったのか。

 

大本は、夜天の書を改悪した先代の主達だな。

 

「まあ、良い。俺がいれば、そんな計画は中止だ」

 

俺は自分の胸を親指で差した。

 

「どういう事?」

 

「こういう事だ。エヴァ、ブックモード」

 

【了解です、お兄様】

 

ネックレスが光り輝いて、俺の手には漆黒で、紅い装飾の本が現れた。

 

「……そ、そんな……」

 

「な、何で……あんたが……その本を?」

 

アリアとロッテは目を見開いて俺の本を見つめた。

 

「この本の名は『武神の魔導書』。かつて、古代ベルカの騎士達の武器を蒐集するために作り出された魔導書だ。そして……」

 

俺は一呼吸おいてから言った。

 

「闇の書……いや、正式名称『夜天の魔導書』と同時に作られた姉妹機だ」

 

 

「!!」

「!!」

 

 

アリアとロッテは声を出さずに驚いていた。

 

【私の中には姉妹機、夜天の書のバックアップデータが入っております。このデータを使用すれば闇の書……いえ、夜天の書は元の魔法蒐集デバイスに戻ります】

 

「と言う訳だ。これで良いか?」

 

 

「……」

「……」

 

 

アリアとロッテは無言だった。

 

「どうした?」

 

「……良かった……お父様、今でも……1人でお酒を飲んで悔やんでいたから……」

 

「ええ……」

 

やはり、はやてごと封印すると言うのは苦肉の策だったのだろうな。

 

「で、どうする? 俺に協力するか?」

 

「分かったわ。貴方に協力する」

 

「ええ」

 

アリアとロッテの協力を得られる様になった!

 

「さて、俺はグレアムさんと面識無いからなぁ……とりあえず、リンディさんと連絡を取ってみるか」

 

「やっぱり、リンディ提督と知り合いだった」

 

「そうだよ。リンディさんに頼まれて嘱託魔導師やってるけど?」

 

「……思い出した! 最近、リンディ提督がウキウキしてた理由……貴方でしょう!?」

 

アリアが驚いた口調で俺に語りかける。

 

「何故に?」

 

「だって、リンディ提督って幼い男の子が好みだって話よ? 有名だもの」

 

 

……。

 

 

リンディさん……貴女は一体管理局でどんな事をやってるんだ?

 

思わず眉間に皺を寄せたくなるが、そこは我慢する。

 

「まあ、参考に聞いてみるが……リンディさんは普段、どんな行動を?」

 

「ん~…、私が聞いたのは、たまに通りがかる男の子に『子供を見つめる母親な視線』じゃなくて、『獲物を狙う肉食獣的な視線』を向けたとか……」

 

「あたしが聞いたのは、10歳位の男の子に過剰なスキンシップをする……とか。頭を撫でて、抱きついて、ほっぺたスリスリ的な?」

 

やべぇ。どっちも違和感が無いぞ。

 

原作のリンディさんなら絶対にしないだろうが、こっちのリンディさんは俺を見る目が全然違うからなぁ。

 

「……良く分かった」

 

「……ひょっとして、身に覚えがあるとか?」

 

「いや、流石にそこまでは。ただ、一目会った時から『アレスちゃん』と呼ばれたり、ちょっとだけ艶めいた視線を向けられる事があった位だが……」

 

「滅茶苦茶ストライクゾーン入ってるじゃん。そのうち、管理局内で抱きしめられたり、ほっぺたスリスリされるわよ?」

 

 

両方あり得るからタチが悪い!

 

 

「……昔からああなのか?」

 

「そうだねぇ~クロスケが小さい時とかかなり可愛がっていたからねぇ~。最近は背が伸びてきたからあんまりやらなくなってきたけど」

 

「そう言えば、同僚のレティ提督も貴方みたいな男の子が好きって言う噂聞いたわね。最近は自分の息子にご執心らしいけど」

 

おぅふ。レティさんもショタでしたか!

 

うーむ、俺みたいな容姿やなんかは最高の獲物なんだろうな。

 

「管理局はショタが多いのか?」

 

「ん~? 言われてみれば、結構いるかもね。そうそう、あたしとアリアは違うよ」

 

「ええ。小さな男の子よりも渋いおじさんの方が良いわね」

 

「そうだね~、あたしもアリアと同じかな」

 

この姉妹はオジコンと申すか。

 

管理局は一癖も二癖もある連中ばかりなのか!

 

 

もし、レジアスのオッサンが少年偏愛(ショタコン)とかだったら俺は全力で排除せねばなるまい!!

 

 

「ああ、分かった。とりあえず、リンディさんに連絡取ってみる」

 

俺はリンディさんに向けて通信を飛ばす。

 

 

 

 

 

『ハイハーイ。あら……アレスちゃん♪』

 

声からして嬉しそうな雰囲気が伝わってきます。

 

表情もニコニコしてご機嫌なのがよく分かります。

 

「お久しぶりです、リンディさん」

 

『どんな用かしら? デートのお誘いならいつでも、喜んで受けるわよ♪』

 

「いえ、デートでは無いんですが……」

 

『そう…………』

 

途端にどんよりした雰囲気に包まれるリンディさん。

 

後ろのアリアとロッテは呆然としていた。

 

「えっと……ですね。ギル・グレアムさん……とお話がしたいのですが」

 

『え? グレアム提督と? どんな用件かしら?』

 

俺は後ろのアリアとロッテを見せてから今日あった出来事を話す。

 

 

 

 

 

話終わった時にはリンディさんの背後には黒いオーラが立ち上っていた。

 

顔は笑顔なんだが……なんだ? 笑顔に見えない。

 

『アレスちゃんに……怪我を……? しかも、半年も……。半年“も”入院生活ですって……?』

 

アリアとロッテは真っ青になってガタガタ震えていた。

 

「あ、リンディさん、気持ちは受け取りますが。とりあえず、頭を冷やしては……」

 

『ありがとうアレスちゃん♪でも、それとこれは別です。今からそのいけないネコ達を引き取りに行きますから……』

 

ん? リンディさん……近くにいるんかいな?

 

『ちょっと、かあ…ゴホン! リンディ提督! 何処に行かれるのですか!?』

 

姿は見えないが、声が聞こえた。

 

この声は、クロノだな?

 

『邪魔はさせないわ、クロノ。貴方のお師匠様が……アレスちゃんに……大怪我を負わせようとしたのよ!?』

 

『はぁ!?』

 

リンディさんは顔を横に向けてから画面の死角にいるであろう、クロノと会話していた。

 

『だから、今から2人を引き取りに行ってから然るべき恐育を……!』

 

口から煙の様な蒸気を吐き出して目が妙に光り輝いているリンディさん。マジにキレております。ってか、スゲー恐い。

 

『いや、だからって……』

 

『そこをどきなさい……クロノ』

 

『くっ!』

 

ドアが開く音が聞こえた。どうやらクロノは逃げた模様。

 

後ろでは『クロスケ! もうちょい粘りなよ!』とか『根性無し! エイミィの尻に敷かれろ!』とか聞こえたがスルーしておく。

 

『さあて、アレスちゃん? アレスちゃんのお家……住所を教えてくれないかしら?』

 

非常に恐いです、リンディさん。

 

目が血走ってて普段の優しさが全く見えません。

 

『言っちゃダメよ!』とか『言ったらアンタの貞操が危険だよ!』と小声で話しかけてくるアリアとロッテ。

 

〈どうした方が丸く収まるかな?〉

 

〈ん~……『取り付く島も無い』ですね〉

 

エヴァもお手上げだった。

 

すると、ドアの開く音が聞こえた。

 

誰かがやってきたのだろうか?

 

『リンディ! 貴女、何処に行くのかしら!?』

 

『レティ!?』

 

驚いた顔で横を見るリンディさん。

 

どうやら、同僚のレティさんが来たみたいだ。

 

アニメでは余り出番が無かったが……確か、つり目で眼鏡をかけたキャリアウーマン風な感じの人だったな。

 

『もしかして、仕事を私に丸投げして……最近、嘱託魔導師になった『アレス』ちゃんの所に行くんじゃないでしょうね!?』

 

レティさんェ……。

 

俺は心の中でため息をついていた。

 

『そ、そんな事……するわけ無いじゃない! クロノ! 貴方! レティに言ったわね!?』

 

『~♪』

 

音程が少し狂った口笛が聞こえてくる。ひょっとして……クロノ?

 

だとしたら意外とお茶目だな。

 

『さあ、早く仕事を片づけて貰うわよ……!』

 

そう言ってリンディさんの耳を引っ張るレティさん。

 

『痛い! 痛いわよ!』

 

そして、俺の目の前に現れるレティさん。

 

 

『……』

「……」

 

 

俺とレティさんはお互いに目を合わせていた。

 

「えっと……?」

 

『あ、私はレティ・ロラウンと申します。(リンディのヤツ~! 私にほとんど報告しなかったのはコレが理由だったのね!?)」

 

「藤之宮アレスです。リンディさんにはお世話になってます」

 

『良いのよ。リンディの事はテキトーにして良いからね』

 

『レティ! 貴方は息子がいるでしょう!?』

 

『五月蠅いわね! グリフィスも可愛いけど、この子も捨てがたいのよ! それにアンタはクロノがいるでしょう!?』

 

『クロノはもう大人なの! アレスちゃんは子供! しかも私の勘がささやくのよ! アレスちゃんはずっとこのままだって!』

 

『っ! さすがリンディね! 私も今会った時にそう思ったのに!』

 

画面の向こうで言い争うリンディさんとレティさん。

 

言い争ってる内容が色々と終わってる様に思えるのだが。

 

後ろの方で『あー、噂は本当だったのか』とか『クロスケも大変だねぇ~』とか他人事の様に呟いているアリアとロッテがいた。

 

『うう~! アレスちゃんは私が先に見つけたのよ! 貴女には渡さないわ!』

 

『そんなのは関係無いわ! 私が運用部提督を務めてる限り、アレスちゃんは貴女の好きなようにさせないから!』

 

お互いににらみ合って互角の戦いをしている。

 

『これは話にならないな』

 

クロノが画面の前に立つ。

 

どさくさに紛れてクロノがリンディさんとレティさんを押しのけていた。

 

2人は気付かず不毛な言い争いを続けていた。

 

「おお、クロノ」

 

『話は聞かせて貰った。闇の書……いや、夜天の魔導書が元通りになるならこちらも何とか協力しよう』

 

「すまないな。で、この2人は?」

 

俺はアリアとロッテを指差す。

 

『明日にでも迎えに行く。今日はそちらに泊まらせてくれないか?』

 

「ああ、それは構わないが」

 

『あと、母さんが訳の分からない事言ってすまない……』

 

「……気にするな。いつもの事だろう?」

 

『確かに、ソレはそうなんだが。母さんもこの癖が無かったらなぁ……』

 

クロノは言い争ってるリンディさんとレティさんを眺めながら深いため息をついた。

 

「まあ、良いんじゃないか? 美人だが、この癖のお陰で変に言い寄ってくる男が来ないだろう?」

 

『母さんに美人とか言わないでくれ……。君がそんな事言うと母さんは喜んで明日の迎えに行くかもしれないだろ』

 

……否定出来ない所が怖い。

 

「そうだな。あまりリンディさんを褒めるのは止めておくよ」

 

『そうしてくれ……。さすがに将来、歳下の君をお義父さんと呼びたくない。明日の午後にでも迎えに行くよ。その後の予定は会った時に話し合おう』

 

「俺も年上の義息子とか勘弁してくれ状態だ。うむ、分かった」

 

『それじゃあな。母さんとレティ提督が気付かないウチに通信を切らせてもらうよ』

 

「了解」

 

そう言って通信が切れる。

 

ちなみにこの後、通信を勝手に切った為にクロノがリンディさんとレティさんに追いかけ回されて大変だった……と本人の口から聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

学校が終わってからクロノと会うために翠屋に行く。

 

面倒だから俺がそこに指定したのだ。

 

なのはは丁度夜天の書の蒐集に行ってるからいない。

 

桃子さん、士郎さんには昨晩こっそり説明しておく。

 

そうそう、アリアとロッテも人間形態で翠屋に一緒に来ているハズだが。

 

店に入るとクロノ、アリア、ロッテの3人はテーブルに着いていた。

 

「ウィーッス」

 

俺はクロノの隣に座る。

 

「来たか」

 

「ああ。それで、どうする? とりあえず、グレアムさんと会話したいのだが」

 

「そうだな。近いウチに会う様に段取りしておこう」

 

桃子さんがニコニコしながら俺の前にオレンジジュースとケーキが置かれた。

 

ケーキを頼んだ覚えは無いんだが?

 

「……アレ?」

 

「うふふ、試作品よ。アレスちゃんの口に合えば良いけど……」

 

「分かりました、頂きます」

 

俺はケーキをフォークですくって口に入れる。

 

チーズケーキに苺を混ぜたのか? 甘酸っぱい味が口に広がる。

 

美味い! やはり桃子さんのケーキは最高だぜ!

 

「どうかしら?」

 

「美味いです。さすが、桃子さんですね」

 

「ありがと♪」

 

「ただ、俺的にはもうちょっと甘みが欲しいかな~と思ったりしましたが」

 

「なるほどね。うん、今度作った時はアレスちゃんスペシャルで作るわね」

 

何ですか、そのスペシャルは。

 

「あ、ありがとう……ございます……」

 

俺は苦笑しながらお礼を言う。

 

桃子さんは違う客が来たのでそちらの方に向かっていった。

 

「……なあ」

 

「……言いたいことは分かる」

 

クロノが頬に冷や汗を流しながら聞いてくる。

 

「あの……なのはの母親は……ウチの母さんと同類か?」

 

「……」

 

俺は無言で頷いた。

 

「うわぁ……」

 

「アンタも大変だね」

 

同情の目で俺を見てくるアリアとロッテ。

 

「ちなみに俺の母親も全く同じだ」

 

「そうか。君もか……」

 

遠い目をしてるクロノ。

 

「だから、リンディさんとレティさんを見てもいつもの光景にしか見えない」

 

「なるほど」

 

「確かに、いつもあんな調子なら2人を見ても別に何とも思わない訳だ」

 

それに更にプレシア女史までいるのだからもう慣れている。

 

「それで、夜天の書は今はどんな状態だ?」

 

クロノが話を切り替えてきた。

 

「ああ、250ページを超えたと思ったが。とりあえず、400ページを超えないと管制人格が起動出来ないみたいだ」

 

「なるほど……って、何処で蒐集してるんだ?」

 

「うむ、とある世界だ。蒐集相手は其処に住む原生生物だ。人じゃない」

 

「う~む、本来ならあまりよろしくないんだけどなぁ。かと言って魔導師から蒐集したら大事になる。目をつぶるしかないか……」

 

軽いため息をつくクロノ。

 

「ちなみに俺を蒐集すれば早く済むぞ、と進言したが0.5秒で却下された」

 

「サラリと言う君も大概なんだが」

 

俺を蒐集すれば666ページまでいけるのだがなぁ。

 

気を魔力に変換する指輪装備してるから魔力が尽きる事は無いし。

 

「まあ、そんなところかなっと、そうだ。こないだ……乗った船って?」

 

「ん? ああ、アースラの事か?」

 

「あれって……何か強力な砲撃とか搭載されてるか?」

 

「……どういう意味だ?」

 

「万が一だが。もし、失敗した時の保険だな。出来るだけ失敗はしないようにしておくが」

 

「……分かった。アルカンシェルを搭載するようにしておく」

 

「それはどんなヤツだ?」

 

性能は知っているが、一応聞いておく。

 

「魔力弾を発射して着弾後一定時間の経過によって発生する空間歪曲と反応消滅で対象を殲滅する。その効果範囲は発動地点を中心に百数十キロに及ぶ代物だ」

 

「過去にクロスケの父さんと一緒に闇……いや、夜天の書を葬った魔導砲さ」

 

ロッテの言葉でテーブルの空気が暗くなる。

 

「そうか。嫌な事を思い出させる事を言ってすまない。まあ、最善は尽くす。失敗はしない様にする」

 

「気にしないでくれ。僕は当時の事は余り覚えていないから。それじゃあ、頼む」

 

そのあと、クロノ達と別れる。

 

【成功させましょうね? お兄様?】

 

「ああ。エヴァが一番の要だからな。頼むよ、エヴァ?」

 

【お任せ下さい、お兄様♪】

 

さあ、物語は佳境に入ってきたか?

 

リインフォース、待ってろよ。

 

主と幸せな時を過ごして貰うんだからな。

 

 

 




 
レティさんェ…

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