夢うらら   作:さくい

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6話

 結羅の殺取りも大分板についてきた今日この頃、私は平成時代に戻って四魂の欠片を探す旅に行くための準備をしていた。

 

 どれ位の旅になるかわかんないし、やっぱり荷物は多めの方がいいよね。

 

 それと、平成とは色々と違う戦国時代に行くとはいえ美容に妥協する気はないから持って行けるものは出来るだけ持って行こうと思います。

 

 

「うんと、シャンプーと洗い流すタイプと洗い流さないタイプのトリートメント、ボディーソープに洗顔に化粧水と乳液にボディークリームは絶対必要なのよね。それぞれ四つずつくらい?あ、あと歯ブラシと舌磨き用のブラシに歯磨き粉と洗口液…これも四つでいっか…。うーん、後は着替えと寝間着と下着を七着くらい?他に何かあるかな…」

 

「…かごめ、美容に気を使うのはいいと思うんだけど非常食とかも用意した方がお母さんはいいと思うなぁ」

 

「それなら大丈夫だよお母さん!別のカバンに非常食と小さめの鍋とかナイフとかスコップとか詰め込んでるから!」

 

「それなら大丈夫ね」

 

「うん!!」

 

 

 ていう感じで思いつく限りの物を詰め込んだらかなりの重量と大きさになったなぁ。よくファンタジー小説とかであるボックスとか使えたらいいのに。

 

 なーんて、無い物ねだりしても仕方ないんだけどね。でもあったら便利だよなぁ、どっかに落ちてたりしないかな。私の全財産の18万円上げるから誰かくれないかなぁ。

 

 とかなんとかウダウダと考えてたら祖父ちゃんが桐箱を手に持って私に話しかけてきた。

 

 

「かごめ、蔵を整理してたら物凄い物を見つけたんじゃがいるか?」

 

「物凄い物ってどんなの?」

 

「うむ、これなんじゃがの」

 

 

 そう言って祖父ちゃんが桐箱を開けて取り出したのは所謂スマートフォンだった。…うん、かごめに成る前だったら『ふぅん』で返せるけど、犬夜叉の時代で考えると目ん玉飛び出る程ありえないよね。

 

 

「…液晶のついた板?案外未来の機械だったりして」

 

 

 とかなんとか言いながらスマートフォンを手に取って電源ボタンを押して起動させる。蔵にあった筈なのにバッテリーが残ってるのに軽く疑問を持ちつつ画面を操作する。

 

 基本的機能の電話やメールに機能設定云々、インターネットは繋がらないと。アプリとかも特になく出来るとしたらカメラで写真や動画を残すことくらいかな。

 

 

 ちなみに電話帳の中に新世界の神っていう名前が登録してあったけど見なかったことにする。

 

 

「うーん、一応貰っとこうかなぁ」

 

「そうかそうか、それじゃあほれ」

 

 

 なんとも軽い感じでお祖父ちゃんから桐の箱ごともらった。そして、持って気付いたけど底と箱の深さが合ってない。ということで引っ繰り返したら底の板が落ちるのと一緒に普通の充電器と太陽電池を搭載した外でも使える充電器、小さい冊子が落ちてきた。

 

 …うん、まあ充電切れてそのままっていうのは流石に辛いから助かったって言ったら助かったかな。しかも戦国時代に行っても使えるよ?やった!んで冊子はまぁ、説明書だね。

 

 

 とりあえずこのスマフォを活用して戦国時代の風景、犬夜叉や結羅、まだ見ぬ七宝と弥勒と珊瑚と雲母を写真に収めなきゃね。そして出来るなら殺生丸、りんちゃん、邪見に阿吽の四人…うん、四人の殺生丸一行集合写真も撮りたい!

 

 そっぽ向いた殺生丸が真ん中にいてその横にりんちゃんが殺生丸の服の裾を軽くつまんで笑顔でピース、殺生丸を挟んでりんちゃんの反対側に邪見がいて何故か転びそうになって慌ててて、そして阿吽は三人の後ろでカメラを興味を持った瞳で見つめるっていう構図!最高じゃない!?うん!最高だよ!!

 

 ああ〜早く会いたいなぁ、早く来ないかなぁ。まあ、四魂の欠片を集めてたら何れ会えるよね。それまでの我慢だよ、それにもうそろそろお姉ちゃんがお風呂から上がって来る時間だしこのことは頭の隅に置いておこっと。

 

 

 とりあえず暇つぶしの一環としてスマフォの説明書をパラパラ見てる。そして気づいたんだけど、このスマフォは2016年に作られたらしい。

 

 通りで画面が綺麗なわけだよね。ていうか丁度私が私になる前に生きてた時代じゃない…なんか因果的なものを感じなくはない、かな。

 

 

「お、かごめ。その桐の箱に透明なケースが入っとるぞ」

 

「え?…あ、ほんとだ」

 

 

 お祖父ちゃんに教えられて桐の箱…の蓋を見るとたしかに透明なケースがくっついてた。あ、これはあれかな?この中にスマフォを入れて傷つかないようにしろってことかな?まあ、折角あるんだし有難く使わせてもらおっと。

 

 んでスマフォをケースに入れたところでお姉ちゃんの足音が私たちがいるリビングに近付いてきた。そしてリビングに入ってきたお姉ちゃんに飛びつく。

 

 

「お姉ちゃーん!!」

 

「っと…ふふ、よしよし。それでかごめ、戦国時代に行く準備はできたのか?」

 

「うん!ちょっと重くなっちゃったけど想定の範囲内だし、ちゃんとノートとかも持ってくよ!」

 

 

 そう言いながらお姉ちゃんのお胸様に顔をグリグリとする。ああ、お姉ちゃんの豊かで柔らかでしっとりとしたお胸様の感触に、ボディーソープの香りが相まって最高だよ。

 

 そして、そんな私の頭を髪を梳くように撫でるお姉ちゃんの手の感触も合わさって…これはもうあれだね、極楽で天国で理想郷で桃源郷だよ。あ、眠くなってきた。

 

 

「…かごめ、そろそろ寝るか?今日はどっちの部屋で寝る?」

 

「お姉ちゃんの部屋で寝る!!」

 

「わかった、さぁ明日も早い。もうそろそろ寝ようか」

 

「はーい!」

 

 

 ということで私はお姉ちゃんの部屋でお姉ちゃんの香りとお姉ちゃんに抱き締められて抱きしめながら眠りにつくのでした。お姉ちゃんに満たされた私は幸せだよ。

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 っていうことがあった翌日の今日という日。私、結羅、犬夜叉の前に巨大な鬼の肩の上に立って殺生丸が現れました。あ、邪見もいるよ。

 

 

「何しに来やがった殺生丸!」

 

「ほう、感心にもこの兄のことを覚えていたか」

 

 

 そりゃあ兄弟なんだから覚えてるんじゃない?とか思うわけだけど殺生丸的には違うのかな?犬夜叉に覚えられてて殺生丸嬉しい!的な?

 

 でも表に出すのは恥ずかしいから澄ましてる的な?きゃあー!ツンデレー!もし本当にそうなら殺生丸可愛すぎるよ!!

 

 っていう感じで1人妄想に耽ってたら殺生丸に連れてこられた犬夜叉のお母さんが近くにいて、そこに鬼の掌が凄い勢いで2人を押し潰そうとしてた。

 

 

 わっ、危ない!って思ってたら無意識的にレクト・ショットと飛永刃を数発鬼に向けて放ってた。無意識だって無意識、私誰かに操られてない?なんてね。

 

 レクト・ショットが鬼の掌を穿ち飛永刃が切り刻んだ後に残ったのは見るも無惨な肉の塊。鬼が自分の手の状況を理解して激痛に悲鳴を上げた。

 

 うわぁ〜、ごめんね?でも攻撃してきたそっちが悪いんだらね。でも何時迄もその痛みを味合わせるのは可哀想だから楽にしてあげる。

 

 

「ふん、所詮はこの程度の鬼か」

 

 

 霊力を練り上げて玉響の風を放とうとしたら殺生丸が先に行動を起こしてました。爪から緑色の光線が出てきて鬼を滅多打ち。

 

 叩いて叩いて叩きまくるその光景を見て思ったんだけど、そんなに手を振り回すより天生牙で蒼龍波を放てば一発で終わるんじゃないの?何か拘りでもあるのかな?

 

 もしかしてあれが噂の『君が!謝るまで!鞭を!振るう事を!止めない!!』っていうやつ?…違うか。

 

 

 にしても、殺生丸の綺麗な白髪は綺麗だなぁ。遠目からでも分かる程に凄いさらっさらでキラキラ輝いてるよ。どうやって手入れしてるのかな?

 

 流石に水洗いとか、そもそも洗ってないとかだったら盛大に引くけどそれはないよね。だってあんなに綺麗なんだもん。あれかな、殺生丸の一族に代々伝わる秘伝の洗髪液とかかな?

 

 それなら頑張って話を通して手に入れたいね。もし本当に手に入ったら私の髪はまた一つ新しい壁を乗り越える事になるし。

 

 

 うーむ、殺生丸に聞いてみようかな。髪の手入れって普段どうしてるの?って。…まあ、流石に今の雰囲気で聞いたら八つ裂きにされそうだから聞かないけど、いつか仲良くなったら聞いてみたいなぁ。

 

 

「ねえねえ、犬夜叉もそう思わない?……あれ?」

 

 

 ふと髪の傷んでる犬夜叉に殺生丸のさらさらな髪の秘密が気にならないのか聞いてみようと思って振り返ると…犬夜叉、犬夜叉のお母さん、結羅がいなくなってた。

 

 ……あれ、私仲間外れ?っていうか何処行った?

 

 

「ふん、1人だけ外れたか」

 

「も、申し訳ございません殺生丸様!!この邪見めが即刻片付けまする!!」

 

 

 そんなことを言って男女の顔が一つずつ付いた杖を私に向ける邪見。む、私に何をする気なのかな?かな?そんなことやっていいのかな?っていう感じでニコニコして邪見を見たら顔中に汗掻いて殺生丸の後ろに隠れちゃった。

 

 …何がしたかったんだろ。

 

 

「…何をしている邪見」

 

「…ハッ、も、申し訳ありません!!この小娘から何とも言えない寒気を感じまして!!」

 

 

 うわぁ酷いなこのチビ妖怪、こんなにか弱くて可憐な美少女を捕まえてそんなことを言うなんて。全く失礼しちゃうね。

 

 

「それで?邪見て言ったかな?私に何をしようとしたの?」

 

「う、煩いわ小娘!ワシを馬鹿にしておるのか!?」

 

「えー?ただニコニコして聞いただけじゃない?馬鹿にしてる要素あった?ねぇねぇ、何処に馬鹿にしてる要素あったの?」

 

「その言葉と態度じゃ馬鹿たれ!!」

 

 

 なんていう拒絶…っていうか、私のこと下に見過ぎじゃない?ここは力関係をしっかりと見せておいた方がいいかな。

 

 

「これかごめ、何時迄もふざけてないで早く犬夜叉様を探すぞ」

 

 

 って言って私の血を吸ったのは蚤妖怪の冥加じいちゃん。殺生丸がここに来る前に犬夜叉に用事があるとかで来たらしい。

 

 そんで、冥加じいちゃんの言うことはもっともだけど…以外と近い所にいるっていうね。

 

 私から見て前の方にある池の岩、その裏に犬夜叉を取り込もうとしてる犬夜叉のお母さんがいた。

 

 

「あれ、犬夜叉のお母さんって妖怪だっけ?」

 

「何を言うておる。犬夜叉様の母君、十六夜様は正真正銘の人間じゃぞ…む、あれは無女!?」

 

 

 無女…確か日暮神社にある妖怪目録にあった気がする。子を想う母親の無念が集まって妖怪になった存在だっけ。まあ、そんなことはどうでもいいとして…どうするかなぁ。何かどんどん犬夜叉吸収されてるよ。

 

 うーん、まだ大丈夫そうだし記念に写真撮っとこ。タイトル、母に沈むほど甘える犬夜叉、的な?序でに犬夜叉を見下ろしてる殺生丸も撮ろっと。パシャパシャ。

 

 

「かごめ!そんな奇妙なことをしとらんで犬夜叉様を助けぬか!」

 

「えー、まだ大丈夫そうだしもう少し見てようよ。それに、変に動くと殺生丸に殺されそうだし」

 

 

 そうなんだよねー。犬夜叉を見てると思わせてこっちの方もしっかり監視してるんだよね殺生丸って。でも殺しに来ない不思議。

 

 やっぱり久しぶりの兄弟の再会ってことで犬夜叉を見てたいのかな。案外ブラコンなのね殺生丸様って。

 

 

 何てことを思ってたら鋼糸が池に向かって飛んで行って、その鋼糸に霊力が伝い池が爆発した。

 

 おお、結羅ってば何時の間にそんな技を身に付けたの?あれかな、殺取り『鋼連爆』的な?…うーん、なんか微妙。あ、殺取り『絲爆衝』なんてどう?よくない!?

 

 

「ヒイィィーー!!」

 

 

 わっ、びっくりしたぁ。何々?何やったの?って思って声の聞こえた方を見たら犬夜叉が無女から解放されてた。おお、結羅凄い!よくやった!っていうことは今の悲鳴は無女か。

 

 

「犬夜叉、しっかりしな!!」

 

「…っ、ちくしょう、ちくしょう!よくもこんな真似をっ、お袋をダシにしやがってっ!!」

 

「あの殺生丸って奴と、手下の邪見の仕業よ」

 

「くっ、なんだと?…っ」

 

 

 犬夜叉が怒ってる…ってそりゃそうだよね。自分の大切な人をダシに使われて不快に思わない人はいないし。犬夜叉が怒るのは当然だよね。

 

 

「犬夜叉よ、墓のありかがわかったぞ」

 

「…っ、殺生丸!!」

 

 

 挑発するように言った殺生丸に向かって叫ぶ犬夜叉。それを見て思うのは、わざわざ印象の悪い言葉を言って印象付けようとする殺生丸って健気ねってこと。

 

 まあ、流石に冗談だけどね。

 

 

 無女に掛けられた術で疲労して座り込んでる犬夜叉の首を、半端ないスピードで掴み上に上げて犬夜叉を宙吊りにする殺生丸。

 

 そして犬夜叉の右目に手から出した閃光で右目から黒い球を取り出した。あれが、殺生丸が探してたお父さんの墓の場所らしい。

 

 あれでどうやって行くんだろ、あれかな…飛行石みたいに場所を示すのかな?うーん、わかんない。

 

 …本当に場違いな考えしかしてないよね私。切り換えよっと。

 

 

 そう思って状況を把握しようと努める。偽物の犬夜叉のお母さんを仕立て上げたのは余興だって言い切った殺生丸に激怒した犬夜叉が飛び掛かった。

 

 

「許さねぇ!!」

 

 

 飛び掛かった犬夜叉を飛んで避けて、爪から閃光を鞭のようにしならせて攻撃する。二、三撃受けて倒れた犬夜叉に追い打ちをかけるように放った一撃は、無女が庇うように前に出たお陰で防げた。だけど、その攻撃で無女は殺された。

 

 妖怪になっても、本当の自分の子じゃなくても命を賭して子を守った無女。それを見て私の中にある感情が浮かんでくる。

 

 この頃の殺生丸気に食わない。

 

 だからってわけじゃないけど、哀しき妖怪の敵討ちとしてレクト・ショットをぶっ放そうとしたら邪見が持ってた杖を使って異空間の入り口みたいなの出現させてその向こうに消えてた。

 

 

 こんにゃろ!一発撃たせろー!!

 

 

 って感じで近くにいた結羅と犬夜叉を引っ掴んで穴に飛び込む。飛び込んだ先は赤と黒、白が混じり合う異空間。なんかカッコイイ。

 

 

「ちょっとかごめ!もっと慎重に行かないと駄目でしょ!?」

 

「むー、でも気に食わないんだもん。とりあえず一発ぶん殴る!」

 

「…はあ、私から離れないでね」

 

「はーい!」

 

 

 渋々って感じで離れないように言う結羅に返事をして前を見据える。ちなみに犬夜叉は、私に何か言おうとしてたけど由羅に遮られて結局何も言わなかった。

 


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