夢うらら   作:さくい

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5話

 結羅が私の式神になってから2日経ったわけだけど、私達は未だに楓おばあちゃんの家に居る。理由としては、髪を武器として使ってた結羅の戦力強化。

 

 前までは髪を使ってたんだけど、この前の契約前に今まで集めてた髪を捨てたから武器と言えるのは持っていた小太刀だけ。

 

 その小太刀も使うっていうより振り回すような使い方だから戦力に数えられるかと聞かれたら微妙。というわけで髪に代わる新しい武器又は技を身に付けてからこの村を出ようってことになった。

 

 

 その旨をお姉ちゃんに言ったところ、怪我とかしないように万全と言えるくらいまで力をつけるように言われた。

 

 その時の不安と心配、悲しみとかの感情がごちゃ混ぜになってたお姉ちゃんの声を聞いてお姉ちゃんの温もりが途轍もなく恋しくなったのは私達姉妹の秘密。

 

 

「よし、さあさあいつでもいいわよ犬夜叉!」

 

「はんっ、怪我しても知らねぇからな」

 

 

 んで、今何をやってるかっていうと犬夜叉との戦闘訓練だったりする。結羅は結羅で霊力を糸にした“霊糸”と私が持って来ていた荷物に紛れ込んでいた鋼糸を混ぜた訓練をしてる。

 

 ちなみに、霊糸と鋼糸を混ぜた技術と鋼糸に霊力を纏わせる技術を纏めて“殺取り(あやとり)”って呼んでる。どっかのぬらりひょんの孫の側近さんで首の無い男の人の技名であった気がするけど…あったっけ?うん、思い出せないや。

 

 

「先手必勝、私の先行!喰らえ!レクト・ショット!!」

 

 

 破魔の霊力を球状にして合計20発時間差で犬夜叉に放つ。私の持つ18ある攻撃系の技の中で一番安定性が高く霊力の消費が低い技。だって撃つだけだからね!

 

 ただ、霊力を強く込めれば込める程威力が比例的に増すのもこの技の魅力である。霊力を抑えまくったレクト・ショットも、霊力を込めに込めたレクト・ショットも見た目や感じる霊力があまり大差ないという優れもの。

 

 

 お祖父ちゃんにこれを披露したら、先祖代々が書き加えてきた技の結晶である“霊技の書”に新しく書き加えられたのは記憶に新しい。ちなみに、このレクト・ショットはうらぁっ!!て我武者羅にやってたら完成した。

 

 

 なんでも、見た目や感じるプレッシャーをほとんど変えずに威力だけを調整するのは4代前からの課題だったんだって。

 

 それでお祖父ちゃんに褒められまくって調子に乗った結果、家の屋根を吹き飛ばしてお母さんとお姉ちゃんに怒られたのはあまり思い出したくない記憶。

 

 

 あの時の怒ったお母さんもそうだけど、静かに諭すように優しい声色で懇々と私のやった事がどれだけ危ない事だったのかを話したお姉ちゃんの涙に濡れた顔が未だ鮮明に焼き付いてる。あの時は申し訳なさで死にたくなったなぁ。

 

 

「へんっ、効くかよそんな技!お返しだ!散魂鉄爪!!」

 

 

 レクト・ショットを悉く弾き返した犬夜叉が得意技を私に向かって放ってきたけど残念でしたっ。空中にいて身動きが制限されるのなら、私の勝利は揺るがないのさ!

 

 

「甘いね犬夜叉、空中に移動した時点で私の勝ち!金縛り!かーらーのー!玉響の風!!」

 

 

 霊力で強制的に相手の肉体を拘束して、一瞬のうちに霊力で作り出した鎌鼬で全身を切り裂く。この玉響の風はお祖父ちゃんが私とお姉ちゃんに教えてくれた奥義の1つだったり。

 

 

 本来の玉響の風は霊力で生み出した風で相手を包んで行動を制限して、鎌鼬や極小規模の風の渦で相手を切り裂き粉々に砕いてから風を爆散させて塵にする技。

 

 私はまだまだ未熟だから金縛りで相手の行動を制限してから幾十の鎌鼬で切り裂くことしかできない。こんな体たらくで玉響の風の名前を使っちゃ駄目だと思うんだけど、お祖父ちゃんが使っていいって言ってくれたから使ってる。

 

 

 ちなみに、お姉ちゃんは玉響の風をしっかり完成させてるし、さらに改良したお陰で戦略系の大規模なものにまでなった。お姉ちゃん凄い!

 

 どれくらいかというと、私たちの住む地域一帯の雲が跡形も無く消し飛ぶくらいのもの。世界中の色々な専門家や研究家が調べに来た果てに世界七不思議の1つにランクインしたり、宇宙人の大侵略とか地球の終わりだとかで一時期騒然としたっけ。

 

 

 しかも、ノストラナントカっていう人やマヤ文明の地球滅亡の予言とかとかっちり一致しててその騒ぎも一塩。事情を知ってる日暮家はちょっとだけ肩身が狭かったよ、ちょっとだけね。

 

 だってお姉ちゃんが初めて超規模の技を発動させた日だったから、主役であるお姉ちゃんを除いた日暮家全員で飾りをつけたりお姉ちゃんの好物を中心にたくさん料理を作ってたりしてそれどころじゃなかったのさ。

 

 

「隙だらけだぜ!散魂鉄爪!!」

 

「ちょっ、危な!!」

 

 

 くぅっ、愛しのお姉ちゃんの事を考えてる私の隙を突くとか酷い!私が咄嗟にしゃがんでなかったら今頃私の髪型は奇抜で独創的なものになってたよ!

 

 しかも、私が反撃する暇もなく遠くに離れるとか…中々に堅実的じゃない。っていうか玉響の風効いてない…ちょっとショック。

 

 

「中々やるじゃねぇかかごめ、今のを避けるなんてよ」

 

「ふふん、私の回避能力を甘く見てもらっちゃあ困るよ。私のターン!レクト・ショット!」

 

「へっ、その技は俺に効かねぇぞ!」

 

 

 その言葉を実践するようにレクト・ショットをその場で受けようとする犬夜叉…馬鹿め、誰もレクト・ショットだけとは言ってないよ。

 

 レクト・ショットの陰に隠れるようについこの前完成した霊力の斬撃波、飛永刃を3つ放つ。ふふふ、飛永刃は切れ味に特化したもの、幾ら火鼠の衣でも切り傷くらいは出来る筈!

 

 

 

 

 って思ってたんだけどなぁ…火鼠の衣って結構頑丈なのね。擦り傷1つつかなかったや。

 

 

 んでまあ最終的に私の負けで終わるのが戦闘訓練を始めてからの流れだったりする。ま、まあ…お互い本気じゃないし、身体能力なんて犬夜叉の方が断然上だし、私自身ほとんど力込めてないから負けるのは仕方ないよねっ。

 

 …次は絶対負けない!だって悔しいから!!そしてドヤ顔してる犬夜叉腹立つー!!

 

 

 

 

 

 

 っていうことがあった翌日、今私は結羅と水浴びしてます。いやはや、結羅の人形のように白くて張りのある柔肌の触り心地のいいこと。

 

 すべすべでもちっとしてて弾力性が抜群、正直結羅の胸に顔を埋めて抱きしめながら眠りに就きたいと思ったり思わなかったり。

 

 

 …ってあれ?なんかタオルボロボロになってるんだけど…どっかで引っ掛けたかな?確かこれを抜きにして後5枚あるけど…結羅と犬夜叉の分もって考えると足りないよねぇ、このあと取りに行ってくるかな。

 

 

「それで犬夜叉?さっきから何覗いてるのかしら?」

 

 

 私から見て右の方を見てそう言った結羅に続くようにして顔を向ける。其処にはしっかりとお座りして私達を見てる犬夜叉がいた。

 

 …いやまあ、弟って感じてる犬夜叉に見られても何か思うことはないけどさ…岩陰に隠れてこっそり見るとかしようよ、そんな堂々と見ないでさ。うーん、でもコソコソするよりはでーんと見られる方が嫌悪感が少ないのはなぜ?

 

 それはやっぱり犬夜叉を弟って感じてるからだね。まあ結羅はその限りじゃないから殺取りで犬夜叉を逆さ吊りにしてるけど。

 

 

「それで?私達の水浴び見てた理由は一緒に混ざりたいから?しょうがないなぁ、ほら早く服脱ぎなさいな」

 

「バッ…!んなわけねぇだろ!!おめぇらに何かあった時のために見張ってたんだ!!」

 

「ほうほう、そう言いつつ私達のこの瑞々しくてぷるんぷるんな柔肌を見に来たんでしょ?正直に言うなら一緒に入ってもいいよ?ほれほれ、犬夜叉の本心を聞かせなさい」

 

 

 そう言いつつ吊り上げられている犬夜叉の元へ近寄っていく。勿論腕で胸を隠してだけど、隠すついでに谷間を作って犬夜叉に見せつける…その瞬間に犬夜叉の視線があっちこっちに動き出した。

 

 ふはは、童貞丸出しじゃないか犬夜叉君。その初心さに免じて今日のところはこれで終わりにしようじゃないの。

 

 

「それじゃあ2人とも、私現代に用事あるから行ってくるね。明日の朝くらいに帰ってくるからよろしく!」

 

「ええ、わかったわ。あ、戻る序でにペロペロキャンディ持ってきてもらっていい?あれ気に入っちゃってさ」

 

「わかった!犬夜叉はポテチでいい?」

 

「ん?おう、あれだ…あの、こんそめってやつな」

 

 

 2人に帰る許可を貰ったから早速里帰り!…にしても、犬夜叉が妙に落ち着いてるっていうかなんというか。確か序盤って四魂の玉を集めるの躍起になってたよね?あれ、違った?

 

 まあいっか、困ることじゃないし。さてさて、2日ぶりに生のお姉ちゃんに会える!この2日間通信してお姉ちゃんの等身大式神で寂しさを紛らわしてたけど、やっぱり直接触れ合う方が何那由多倍も違う。

 

 

 ちなみにお姉ちゃんの等身大式神を目撃した犬夜叉が滅茶苦茶狼狽して混乱してアバババな状態になったりして面白かったなぁ。

 

 結局はお姉ちゃんの『貴様のことなど知らん』っていう一言で犬夜叉も落ち着いたんだっけ、自分の知る桔梗と私のお姉ちゃんである桔梗は姿形は同じだけど別人だって納得したんだよね。

 

 

 その後は特に引き摺らないで私、お姉ちゃん、結羅、犬夜叉の4人で普通に談笑してたし。

 

 何気に大人な考え方ができて割り切りが早い犬夜叉に脱帽ですわ。私の知識にある犬夜叉は無駄に女々しくてうじうじしてる根性なしなのにだいぶ違うよ。

 

 

 とりあえず今日は帰ったらお祖父ちゃんの所に行って修行して、それからちょろっと勉強しつつお姉ちゃんが帰ってくるのを待つ。

 

 そしてお姉ちゃんが帰ってきたら抱きついて甘えて、ご飯食べて一緒にお風呂入って勉強してお姉ちゃんと一緒に寝る!うん、完璧な計画だよ流石私!

 

 

 そんなわけで身体を拭いて服を着て骨食いの井戸に到着。村の人から貰った野菜やお肉をちゃんと持ってるか確認してダイブ!いざ参らん平成時代!お姉ちゃんが私を待っている!!お姉ちゃんが帰ってくるのは夕方だけどね!!

 

 

 お姉ちゃんが帰ってくるまでは予定通りお祖父ちゃんに修行を見てもらおっと、私の場合霊力は馬鹿みたいにあるけどその霊力を引き出して操るコントロールが駄目駄目であまり威力出せないし細かいことできないんだよねー。

 

 普段使ってる技だって瞬間的に霊力を操ってからはコントロール放棄して遊ばせてるだけだし。

 

 

 コントロールなんて保てたしとても数十秒が限界っていうね。お姉ちゃんは身に宿す霊力もさることながら一番凄いのは霊力のコントロール、最小の霊力で最大の効力を発揮するその制御力はお祖父ちゃんいわく日暮神社が出来てから数えて1番。つまり歴代最高、きゃーお姉ちゃん素敵ー!!

 

 

「というけでお祖父ちゃーん!修行見てー!!」

 

「んおっ!?か、かごめか…老体を驚かせんじゃないわい。それで修行じゃったか?よかろう、道場に来なさい」

 

「はーい!!」

 

 

 胴着に着替えて道場に到着した私、お祖父ちゃんは先に道場に行って待ってくれてる。扉の前で1回深呼吸、よし頼もー!

 

 

「うむ、来たか。早速だがかごめよ、先ずは普段通りに霊力を巡らせてみなさい」

 

「わかった!」

 

 

 目を瞑って身体中を血のように流れる霊力に意識を向ける、頭のてっぺんから足の先まで隈無く流れる力の放流を意識的に制御する。

 

 ゆっくりゆっくり霊力の流れを緩やかにして時には速くしたりほとんど停滞していると言ってもいい程の速度にする。

 

 

 たったこれだけで全てのエネルギーが燃えるように身体が熱くなって汗が床に水溜りができる。肺が軋み呼吸が困難になり意識が朦朧としてきた所で霊力の制御を手放した。

 

 

「ぷっはぁー!疲れたぁ、でも制御時間少し伸びたよね?」

 

「うむ、前回に比べて2秒伸びたのぉ。頑張っとるじゃないかかごめ」

 

 

 おお!2秒も伸びたのか!これで30秒霊力を継続して制御できるってことじゃん!!やったね!!

 

 っていう感じで喜びを全身で表してるとお祖父ちゃんが次の修行内容を伝えてきた。

 

 それは今の身体に巡る霊力を意図的に制御する修練を後50回するようにっていうもの。死ぬかと思ったけどなんとか最後までやり遂げたら外はもう夕方になってた。

 

 

 お祖父ちゃんにお礼を言ってから身体の汗を拭いて部屋に戻る。さてお姉ちゃんが帰ってくるまで勉強しようと思って教科書取り出すのと同時に玄関が開く音が聞こえた。

 

 教科書を机に置いてダッシュ!階段をなるべく音をたてないで駆け下り丁度靴を脱ぎ終わってリビングに行こうとしてたお姉ちゃんに抱き着く。

 

 

「お姉ちゃんお帰りー!!」

 

「っと、ふふ、ただいまかごめ。そしておかえり、戦国時代はどうだった?」

 

「お互い手加減してるとは言え犬夜叉に負け越してるのが悔しい!次は絶対勝つ!!」

 

「そうか、応援してるぞかごめ。それで、今日は一緒に寝るか?」

 

「うん!!」

 

 

 お姉ちゃんに抱きついて胸に顔をぐりぐりしながら目一杯甘える私の頭を優しい手付きで撫でてくれる、お姉ちゃんが愛用してる淡い椿の匂いがする香水の香りが私を夢見心地にする。

 

 お姉ちゃんが香水を使い始めた頃はお姉ちゃんがグレた!!ってショック受けたけど、ただ単純に小さい頃に私が椿の匂いが好きって言ったのを覚えてて私が喜ぶように使うようにしたんだって。

 

 

 その話を聞いてマジでお姉ちゃんは女神で私の太陽であり月なんだって思ったんだっけ…いや、流石に言い過ぎたかな。

 

 それでも感動してその日はずっとお姉ちゃんに引っ付いてたなぁ。ちなみに私はお姉ちゃんが好きだって言ってた金木犀の香りがする香水を使ってる。

 

 

 まあお店に売ってなかったから香水の製造会社に殴り込みに行って作ってもらったんだよねぇ。ちなみに、その金木犀の香りがする香水は今や1番の売れ筋なんだって。

 

 

 そんなことを思いながら夕飯ができるまでお姉ちゃんと勉強してからご飯を食べて、久し振りにお姉ちゃんとお風呂入って就寝した私でした。

 


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