夢うらら   作:さくい

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4話

 骨食いの井戸の不思議空間を抜けてーー

 

 

「戦国時代よ…私は再びやって来たー!!」

 

 

 その掛け声と共に井戸から飛び出したらあら不思議。目の前に糸…いやぁ、髪の毛かなぁ。うん、髪の毛だね。

 

 妙に長くて妖気漂う髪の毛が骨食いの井戸の周りを囲うように張り巡らされてた。

 

 これをした人の人間性が伺える。ふむ、これは多分櫛が色々な人の髪を梳かしていった末に九十九神になって色々悪さしてる感じかな。主要人物と大きい出来事以外ほとんど覚えてない知識から推測した予想だけどね!

 

 

 しっかし、なんでこんなのがあるんだろ?戦国時代に舞い戻ってきた四魂の玉を奪いに来たのかな?だが残念、玉は昨日の内に砕けて各地に降り注いでいるのだ!無駄足だったな妖怪め!

 

 

「誰?」

 

 

 …なんてね!ただ何と無くやってみたかっただけです、だってなんかカッコよくない?後ろを見ないで何者かがいるのを見抜くって、私の察知能力はまだそのレベルになってないから憧れるなぁ。

 

 精々が足音で体型、性別、戦闘能力、戦闘スタイル、ある程度の服装及び装備がわかるだけだし。

 

 

 とりあえず周りにある髪の毛が邪魔だから18ある攻撃系の技の一つ、パーティカル・レイジを使って微塵切りにする。

 

 形状としては破魔の桃色の霊力と浄化の白の霊力、その2つの霊力を使った飛ぶ三日月型の斬撃波で、何気に私のお気に入りの技の一つ。

 

 

 そんなお気に入りの技であるパーティカル・レイジは、お祖父ちゃんが昔に実演してくれた霊力で作り出した鎌鼬をそのまま再現した技。

 

 お祖父ちゃんの技名は聖刄、和風でカッコイイ!でも洋風もいいよね!っていうことで私の技の半分位は洋風だったりする。

 

 

 ちなみに霊力に関して私はよく知らない。個人によって色や効果が違い、私のように霊力の効果や色を複数持っていて扱える人もいるっていうのが私の個人的な見解である。

 

 

「お前!私の髪に何をした!!」

 

「ん?」

 

 

 突如聞こえた女の子の声、この声から察するに黒髪ショートの美少女だとみた!ということで聞こえてきた方に顔を向けると…なんと予想通りに黒髪ショートの美少女が髪の毛の上に立ってた。

 

 しかも、着てるものは和風の服を1枚だけ。胸元がガッツリ開いててパンティ…この時代だとふんどしかな。うん、とりあえず下着が見える位の丈で、スリットが腰近くまで入ってる大胆且つエッチィ服装…これは私を誘ってるのかな?

 

 

 今は大分女の子的になってるけど、前世は男。恋愛対象もとい性の対象は専ら女性です。

 

 男なんて論外、男に私の身体を預けるなんてそんなの悪夢で絶望以外の何者でもない。もしそんな状況になったら霊力を暴走させて爆発してやる。

 

 

「私の髪に何をしたって?邪魔だったから散髪しちゃった、文句ある?」

 

「…文句?あるに決まってるじゃない!私の大事な髪をこんなにして!!」

 

「大事な髪…?大事ならあっちこっちに置かないで一ヶ所に置いときなさいって、誰のかも判らないんだし切るに決まってるじゃん。それに、こんな油でギトギトで傷みに傷んでる髪だよ?大事にするならもっと質の良いのを大事にしようよ。…これ、見た感じ君のじゃないよね?人の髪大事にするより自分の髪を大事にしたら?何なら私が君の髪洗ってあげよっか?あ、私は日暮かごめっていうの、よろしくね!」

 

 

 ちょっとした長台詞を言ってふんすと息を吐く私、対してのエッチィ娘は私の言葉が予想外だったのか眼を見開かせてワナワナと震えてる。

 

 ワナワナ、ワナワナ、フルフル…っていう感じでエッチィ娘の震え方が変わるのを観察する私。怒った?怒ったのかな?そりゃまあ、自分の大事な物をいらない物呼ばわりされたら怒るよね。

 

 

「…ねぇ」

 

「ん?どうしたの?」

 

「あんたの髪、綺麗だよね…触り心地、いいんだよね…?」

 

 

 俯いて震えながら言うエッチィ娘、私は胸を張って自信満々に頷いた。ほら、私の髪をご覧なさい。クセがありながらもサラッと流れて柔らかく天使のリングが出来る程ツヤツヤで潤ってるこの自慢の髪。このクセですら女友達が羨んで妬むほどの綺麗なウェーブである。ふはは、どうよ私の髪は。

 

 思いっきり見せびらかしてたらエッチィ娘がいきなり顔を上げた。眉毛が八の字に歪んで瞳がウルウル、その表情は今にも泣きそう。どうしたどうした、私の髪に感動した?

 

 

「他の人の髪捨てたら、私に…私に、その髪梳かさせてくれる?」

 

 

 …ん?私の髪を綺麗にしてとかじゃなくて、梳かせて?いや、まあ趣味は人それぞれだから何も言わないけどさ。それに、人に髪を梳かしてもらうの気持ち良くて好きなんだよねぇ。

 

 

「うん、いいよ!」

 

「本当に?本当に梳かさせてくれる?」

 

「こんなことで嘘なんて言わないよ。ただ、私の髪を梳かす時は丁寧にね」

 

 

 そう言った途端に周りにあった髪やこの森、更には楓おばあちゃんの村にあった髪、更にはめちゃデカイ髪の塊が此処に来て空に溶ける様に消えていった。ほうほう、何かを媒体にして辿れば結構な範囲の妖気を感じれるんだね。

 

 新しい発見にふむふむと頷いてたら赤い半月状の櫛が緩やかに宙を待ってエッチィ娘の手に収まった。…あれって死に化粧の櫛、だよね?あれ、もしかして私の当てずっぽうの予想が少し当たった感じ?

 

 

「私は逆髪の結羅、死に化粧の櫛の九十九神っていうのかな。死人の髪を梳かされるのが嫌で、気付いたら妖怪になってたの」

 

「ふーん、よろしくね結羅!さあさあ好きなだけ私の髪を梳かすがいいよ!」

 

 

 そう言ってエッチィ娘改め結羅に背を向ける。ゆっくりゆっくり私に近付いて来て、恐る恐る私の髪を触る。そして、私の髪に櫛を通して梳かした瞬間…結羅が静かに泣き出した。

 

 

「えっと、どうしたの?何かあった?」

 

「…ううん、なんでもないの。ただ、生きてる人の髪を梳かすのが嬉しいだけ…今まで死んでる人の髪しか、梳かしたことなかったから…」

 

 

 泣きながら私の髪を梳かす結羅に苦笑しながら身を任せる。暫くの間、結羅の泣き声と風の音だけが私達の周りを支配した。

 

 そして泣き止んだと同時に私の髪から手を離した結羅に向き直る。あらあら、目を真っ赤にしちゃって可愛いんだから。

 

 

 手を伸ばして結羅の目元に触れて、軽くヒーリングをして目の赤みを取る。そして、結羅を胸に抱く様に抱き締めて耳元で囁く様に言う。

 

 

「ねぇ結羅、私の式神にならない?結羅って髪を梳かすのがすっごい上手で気に入っちゃった。結羅さえ良ければこれから先、私の髪を梳かしてほしいな」

 

 

 その言葉にビクッと反応して信じられない様な顔をした結羅が顔を上げて私を見た。…なんだろう、この胸がドキドキしてキュッと苦しくなる様な感覚…もしかして、これが萌え?

 

 

「私でよかったら、ううん…私も、かごめの髪をこの先ずっと梳かしたい」

 

「うん、交渉成立だね。じゃあ、早速契約の口吸いをしよっか」

 

 

 言い終わるか終わらないかのところで結羅にキスをする。勿論舌と舌を絡ませる深くて気持ちいい方…ではなく、唇と唇が軽く触れるだけのソフトな方。

 

 

 相手の同意の元で口付けを交して私の霊力と対象の霊力又は妖力を互いの身体に行き来させる。

 

 そうすれば式神の契約は成立。ちなみにこの式神契約の法は、家の蔵にあった妖怪を従わせる服従の法をアレンジしたもの。

 

 

 式神契約することによって得られる恩恵はそれぞれに幾つかある。

 

 契約主の恩恵は契約対象の力や技をそのままフルに使ったりアレンジして使えることと、契約対象を通じて視界や感覚を共有することができること。しかも、契約対象が妖怪とかなら妖力や瘴気にある程度耐性ができて逆にある程度なら扱えるようになる。

 

 

 契約対象の恩恵は契約主が死なない限り身体が散りになったりしても関係なく復活することで、この時に契約主の力が強ければ早く、しかも強くなって復活する。逆に弱ければ遅く、弱くなって復活する。

 

 更に契約主が死んだ時に契約主の力の何割かを得ることができて、契約中は契約主の力を少し使えるようになる。そして、契約主が人間なら霊力や人が張った結界にある程度の耐性ができる。

 

 

 お互いが不公平にならないようにこうしたんだけど大丈夫だよね?どうせ私が死んだ後に力が譲渡されるんだし、その後その契約対象が暴れても私の与り知らぬところです。

 

 

 ちなみにさっきから式神って言ってるけど、それは私がしっくりしててそう言ってるだけで特に式神の言葉に意味はない。正直な話、使い魔でも契約魔でも何でも良かったりする。

 

 私の右手の親指の爪と結羅の右手の親指の爪に契約の証が浮かぶ。浮かんできたのは簪の絵、多分結羅自身が簪の九十九神だからかな。

 

 

 それを確認して口を離し結羅を見ると、頬を紅くさせて瞳が熱っぽく潤み、少し息を切らせつつ色っぽい顔をして私を見てた。

 

 おおう、そんな顔してたら襲っちゃうよ?女の子と女の子の間で開かれる白百合の扉を思いっきり開けるよ?いいの?

 

 

「かごめ!無事か!!」

 

 

 その言葉が聞こえた瞬間に犬夜叉が飛び出して来た。あ、背中に楓おばあちゃんが乗ってる…何気に犬夜叉って優しいよね。

 

 普段は素っ気なくて小憎たらしいガキだけど、いざってなったら優しくて頼りになる感じ?…はっ、これがツンデレ?

 

 

 あれ…っていうか何気に私のこと名前て呼ばなかった?あらあら、昨日まで激おこぷんぷん丸な感じだったのにどういう心境の変化?楓おばあちゃんに諭された?

 

 

「ノープロブレム!それより紹介するね!たった今私の式神になった結羅ちゃん!可愛くない?可愛いよね!?」

 

「んなことはどうだっていい!!四魂の玉は無事なんだろうな!それと…怪我、ねぇか?」

 

 

 最後の最後、そっぽ向いてぼそぼそと私の心配をする犬夜叉にやっぱり首を傾げる。本当にどうしたんだろ?もしかして寂しくなって人肌恋しくなった?わぁ、何それ可愛い。

 

 

 犬夜叉は男だけど可愛い、1度そうやって見たらなんか昔の草太を思い出すよ。

 

 昔は草太もベーゴマで近所の子供達を蹴散らしたり、盗んだ三輪車で走り出したり、公園のど真ん中で用を足したりする悪ガキだったんだよねぇ。

 

 そんな悪ガキ草太は、私が怪我したと知ったらいの一番に来て…でも、俺は何もしらねぇぞって顔して怪我したら危ないからって言って絆創膏くれたりしてたっけ。

 

 

 その時のそっぽ向いた草太と犬夜叉がなんか重なった。ふむ、実際は犬夜叉の方が遥かに年上なんだけど私の弟にしてあげてもいいよ。ってね。

 

 

「私は逆髪の結羅、今さっきかごめの式神になったの。よろしくね」

 

「けっ、村人を操って俺を殺そうとしたくせに人間と仲良くしようってか?虫の良い話だな」

 

「それは…別に悪かったと思ってないけど…でも、もうそんなことはしないわよ。かごめの髪っていう極上の髪をこれから私が梳かすんだし」

 

 

 うんうん、犬夜叉と結羅もちゃんと話し合ってるし特に問題ない感じかな。仲が良いってやっぱりいいことだよね。

 

 

 んで、それから楓おばあちゃんが私と結羅、そして犬夜叉の3人に砕け散った四魂の玉を集めるように言った。私は乗り気で返事をして結羅は私が行くなら行くっていう感じで返して、犬夜叉は仕方ねぇなって感じで承諾した。

 

 

 犬夜叉の変わりように再度驚きながらも私は考える。殺生丸にいつ会えるかなってね、楽しみだよ。早く生の毒華爪を見てみたいし、化け犬の姿も見てみたい。さあさあ早く来なさい殺生丸、犬夜叉は此処にいるよ。

 

 そしてそのもふもふを私に思う存分堪能させなさい。あのもふもふは最高だと思うよ、絹より上質で滑らかでだけどふわっふわなんだろうなぁ。…あ、よだれ出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 かごめが戦国時代に行っても私の日常は変わらない。いや、かごめがいないだけでかなり変わるがそれは仕方ない。

 

 1人で学校への道程を歩き学校に到着、そしてクラスに入って一番に友人に言われた事は私が予想していた通りのものだった。

 

 

「おっはよー!桔梗!あれ、かごめは?」

 

「ああ、かごめは夢想病という奇病を患ってな、暫く学校を休む事になったんだ。滅多に発症する事はないらしいが、罹っても一月程すれば自然と起きるらしい」

 

 

 そしてかごめが学校を休む理由も、昨日の夜にお祖父様と話し合っている。風邪とかだと直ぐに新しい学校を休む理由を考えなければならない。

 

 それならいっそのこと奇病や珍病に罹った事にして長期間休んでも問題ないようにして、頃合いを計ってかごめの病気が治ったことにして数日間登校。それからまた何かしらの理由を使って学校を休む。

 

 

 ちなみに、今回の夢想病が終わったらかごめは暫くの間シンガポールにホームステイをするという設定になっている。ということで、シンガポールに住んでいるお母さんの友人から街の風景や特産物を送ってもらって、かごめがシンガポールに行ったという嘘を事実にする予定である。

 

 

 さて、退屈な日々がかごめが帰ってくるまで続くのか。早く帰って来いとは言わない、だが帰って来たら暫くの間かごめを抱きしめて離れない自信がある。

 

 まだまだかごめに対する依存は薄れない、なら自然と薄れるまで気長に待とう。まあ、依存が薄れても今とあまり変わらない様な気がしないでもない。

 

 

 とりあえずはかごめに勉強を教えられるように授業に集中するとしようか。ふふ、夜にするかごめとの定期連絡が楽しみだ。




という訳で逆髪の結羅さんが仲間になりました♪( ´▽`)


うちの結羅さんは、死人の髪を梳かされるのが嫌で嫌で気付いたら妖怪になってました。

原作のように人を殺して髪を集めてたのは、いっぱい集めれば好きになれるかもしれないって思ったから。

そしてかごめという生きた人の髪を梳かせることになり、今まで集めていた髪を捨てた。


それがうちの結羅さんであります。え、結羅の髪を使った技とかはどうするかって?それはお楽しみという事で。

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