原作キャラが勝手に模擬戦するようです   作:チビメガネ

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今回の戦闘員

 風間 蒼也
 言わずと知れたNo.2攻撃手。No.1攻撃手と違い、ボーダー内で多くの隊員が尊敬していると思われる。もうすでに風格を醸し出しており、世代交代した際には上層部の1人になっている可能性があるほど、前途有望である。なお前途有望という言葉は、非常に若い人に使う言葉とは限らないことは理解しておいた方が良い。
 スコーピオン使い全員に言えることであるが、特に書きにくい。もう少し感覚で動いてほしいと常々思っている。

 菊地原 士郎
 聴覚モンスター。風間さんのことをきちんと尊敬、ないし信用している様子が分かるので口が悪くても結構好きなやつである。やれやれ系ではなく、ハッキリとグチグチ言った上で物事に取り組むため、おそらくやれやれ系より性質が悪い。
 迅、遊真、菊地原が組むと精神的拷問にかなり適していると思う。その場には絶対に関わりたくない。

 歌川 遼
 尊敬できる隊長、毒舌聴力モンスターと一緒にいるため注目されないが、有能なことに間違いはなく、風間隊の3人目はこいつなんだろうなと作者的には腑に落ちている子。たぶん時枝と同じ部類の子である。
 いずれ本誌で、『こいつ……できる! 』となるのを期待している。
 結構好きである。

 三輪 秀次
 東ファミリーの一員。大規模侵攻でのハイレインとの戦闘は変態としか言いようがなく、流石は隊長さんですと何度読み返しても呟いてしまう。読者の皆さんが感じておられるように精神的に成長しているのが読み取れて嬉しい枠に入る。ただどれだけ成長しても太刀川は無視される。

 米屋 陽介
 3バカ、槍担当。3バカの中で一番好きである。
 近界民だろうがなんだろうが態度を変えない良い奴である。三輪が成長できた要因の1つとして、米屋の存在があると思っている。
 『……と思うじゃん? 』と書けば違う行動ができるため、作者的にも優しい奴である。
 ひらがなであるだけで、語彙力的には陽太郎の方があると考えられ、今後とも要勉強である点は覆すことができない事実である。

 奈良坂 透
 東ファミリーの一員。ブラックトリガー争奪戦の際、ある隊員から『お前もリーゼントにしないからだよ』(意訳)と言われたものの、きのこを貫き通す。その結果、大規模侵攻にて『あの程度では、防御のうちに入らない』という言葉とともに名実ともに変態となった。
 ちなみ作者は、きのこでもたけのこでもなく、ア〇フォート派である。

古寺 章平
 メガネ族。頭も良い上で、そこそこ焦ってくれる有能メガネ。古寺より理論を詰めればより理詰め派に、より雰囲気で動けば感覚派になるという、古寺を中心に頭の良さを決めている節が作者にはあるので、結構重要なメガネ君である。
 要するに、彼は単色の明るい色がフレームのメガネが結構似合いそう。



風間隊 vs 三輪隊 vs 二宮隊

 

 

「次は負け越しかー。毎回そう上手くいかないもんだな」

「そうそう何度も負けはしない」

 そりゃそうだと軽く笑い飛ばして、腰かけていたベットに横になる米屋。

 

 学校のテスト期間が近づくと防衛任務を終わってから三輪隊では、米屋の赤点阻止のため勉強会が開かれる。米屋曰く、「蓮さんが日本語喋ってない勉強会」は彼にとって拷問以外のなにものでもなく避けるべき対象である。そういうわけで、休憩時間に抜け出しブースに直行。そこで見つけた暇そうな隊員とランク戦を行い、終わった頃に三輪に連行される一連の流れが、この時期の三輪隊の日課である。もっとも、ストレス発散のために月見がわざとブースに行かせるよう仕向けているわけだが、そんなこと彼は知る由もない。彼としては、誰か1人とランク戦をして終了など、折角ブースに来たのにもったいないことこの上ない。何人もやりたい。そのためにはどうすればいいか周りに聞いたことがある。

 

 緑川曰く、

「そりゃ何しに行くかとか言わないからでしょ。本部無駄広いんだし。三輪先輩が怒り気味なのは仕方ないと思うよ」

 ブースに行かされているという事実を知らない彼は、確かに秀次のこと考えてなかったと納得する。

 

 次に当真曰く、

 「どうせお前あれだろ。自販機行くとかそんなこと言って抜け出していくだろ。自分の隊室から自販機の距離なんて変わんねえだから、時間分かっちまうだろ。だから何分後に戻るとか言えばいいんだよ……これで1回は稼げる」

 その発想はなかったと目を開く米屋と誇らしげな当真。

 

 最後に陽太郎曰く、

「陽介。あゆみをとめるな。おれは陽介をしんじてる」

 親指を立ててドヤ顔をした後、握りしめた拳を米屋の心臓に向ける。

 

 そして、彼の出した結論は……

 

 「今からブースに行ってくるわ。休憩時間は15分だからそれまでには戻ってくる……じゃ」

 米屋は親指を立てて、三輪に自分の行先と時間を告げると、月見が所用で外しているときを見計らって立ち上がり隊室のドアに手をかけ、駆け抜ける。目指すはブース。

 

 会心の出来で三輪を出し抜くことができたと思っている米屋は、堂々とブース内を歩いていく。ここ2日の鬱憤を全て解消するため、そして今後テストが終わるまで続くと思われる地獄の日々から目を逸らすため、相手を探していく。彼は探す。この時間をより良い時間にするためには誰とランク戦をし、次に誰とすべきか、いや誰とやりたいか。ここは慎重に、普段このようなことに使わない頭で深く考えるべきである。そう……幸せな時間は長くは続かないのだ。彼の体に深く刻み込まれている。オペレーターに逆らうことはできないということを。

 テスト前に米屋と一戦交える前には、いつ頃に迎えにいけばいいか判断するために月見に連絡を入れるのが暗黙のルールになっていることを本能的に理解しているのか、2週間ぶりにブースで見たことで負けたことを思い出したのか、もしくはその両方なのかは分からない。しかし今視界に入り、やろうと思った男は確実に連絡を入れることはできないだろう。唯一その暗黙のルールを知らされることがなかった男。否、教えようと接近しようとした際に、いつの間にか消えていた男。

 

「久しぶり、米屋」

「おー辻ちゃんじゃん。久しぶり」

 辻 新之助である。

 

 こうして辻との何戦かを終えたのが冒頭である。時間としては20分超。どう考えても時間超過である。前のテスト週間では僅か1戦、時間にして数分で三輪に見つかり満足するまでできなかった。やりたいことを我慢して辛いことをやり切ってこそ、やりたいことが格別な味になる的なことを聞いたことがあるが、辛いのならランク戦しようぜ派である彼にはそんなもの通用しない。この時間はまだ続いている。辻以外の隊員ともランク戦をすべきだ。自分は完璧に勉強会を回避することができたのだ。恐れる者は何もない。いざ次のランク戦へ。

 

「……15分で戻るんじゃなかったのか」

「……よっ、久しぶり」

 ベットから飛び起きて辻に別れを告げ、次の相手を探そうとブース内にある個別の部屋から出ると前には、三輪隊隊長三輪 秀次の姿。

 

「何でここにいんの? 」

「自分でブースに行くと言っただろう……」

 まさかすぐ来ると思っていなかった米屋の驚く様子見て、三輪はため息を漏らす。

 

「でも15分って言ったから、来るのもうちょい遅いと思ったんだけどな」

「お前がランク戦15分で終えると思わない」

「あー確かに」

 あははと笑う友人を見て改めてため息を漏らす。

 

 呆れながらも15分過ぎても区切りのいいところまでランク戦を許すあたり、三輪の優しさが感じられる。もっとも無理に終わらせた際、次の勉強時間の集中力が持続しなかったという前例があったことも理由としてあるわけだが、そんなことは米屋の知るところではない。加えて三輪としては赤点を取らなければ、自分の自由が保障されるのだから日頃からそれなりに勉強をしておけと言っている。しかしそこは米屋、

 

「秀次、勉強をしたくないんじゃない。ランク戦がしたいんだ」

 と言われたので勉強姿勢に対する矯正を諦めた。

 

 この要勉強の隊員たちをどうにかしようと勉強を見ろと上層部から言われ、三輪隊としても動いているわけだが、本人が赤点でもいいと言っている以上、上手く動かすことはできない。いっそのこと赤点の数に比例し、ランク戦をできないシステムを作ってほしいと鈴鳴第一のオペレーターが冗談めかしく言っているのを聞いて、本当にそうしてほしいものだと心の中で思ったのはここだけの話である。ただそれを聞いたとある攻撃手が、

 

「それ単位とかに置き換えられたら、俺ランク戦できないやつじゃん」

 と言っていた時点で、この制度化は無理なのだろうと、鈴鳴第一のオペレーターと共に思い直したは、前の試験期間のときだったか。

 

「全く……」

 帰り道で偶然会った菊地原と絡んでいる米屋を見ながら、三度ため息を漏らす

 

「秀次も今度しようぜ、ランク戦」

「赤点取らなかったら、好きなだけ相手する」

「マジか! おっけ、頑張るわー」

 久しぶりだなー、秀次とすんのと言ってこちらに向けた顔を正面に戻す姿米屋に対し、三輪は全くと再び呟いて、お気楽な友人だなと思うのだった。

 

 そしてそのお気楽な友人が、再度振り向いて一言。

 

「……でさ、菊地原に『馬鹿なんだから勉強すればいいじゃん』って言われたんだけど、どう思う? 」

「その質問に対して答えた方がいいのか? 」

 米屋の勉強道はまだ始まったばかりである。

 

 

『さて始まりました。ボーダー赤点阻止企画による三つ巴模擬戦! 解説を務めるのは、(わたくし)宇佐美と我ら玉狛騙され系女子こと小南と、ボーダーの狙撃手界のリーダーこと東さんです』

『どうぞよろしく』

『よろしく……ってしおり!! 騙され系女子ってなによ。そんないっつも騙されてるわけじゃないわよ! 』

 テスト終了から2週間。場所は、ランク戦会場。月見と今それと宇佐美により結成された一部のボーダー隊員のための学力向上委員会。その第一回会議にて参考人と呼ばれたNo.1攻撃手曰く、

 

「まあ米屋なら適当に模擬戦でも褒美として与えれば、結構やる気でると思うぞ。国近は最近だと据え置きハード? がそれなりに安くなったから欲しいらしい。当真は……」

 ということらしい。

 

 本人が一番勉強しなさいという幼馴染の視線を無視しながら言うその隊員が言うように、米屋については模擬戦が褒美というのは、全員一致の事実でもある。そこで模擬戦を赤点阻止の餌として宇佐美が支部長に相談してみた結果、偶々ランク戦会場が空いている時間帯があったため、やってみようという軽い形での実現となった。実際米屋の集中力が増し、赤点阻止は実現できたことは十分すぎるほどの収穫である。米屋が単純ということも理由の1つではあるが、彼女らとその他協力隊員の努力のたまものであることは間違いない。

 

『でもこんなことしちゃっていいわけ? こんなことしたら太刀川とか悪い意味で調子乗るでしょ』

『そこらへんは蓮さんに任せているから大丈夫だよ、きっとね』

『軽いわね……』

 ボーダーとしてもこういった機会にA級隊員の戦闘を見ることは、良い機会だという判断なのだろう。実際上手く日程と場所が空いてなければ実現しなかった。

 

『後は二宮隊を呼んでくれた東さんに感謝です』

『本当に偶然ですが、三つ巴ということになって嬉しいですね』

 隣に座っている東に頭を下げる宇佐美。

 

『さて……簡単な挨拶はこれくらいにして、今回のMAPは市街地A! 風間隊、三輪隊、二宮隊転送開始です』

 宇佐美の言葉とともに転送が開始される。

 

 

「うっし。やるかー」

 北東方向に転送された米屋は、そのまま南下していく。

 

 今回のMAPは市街地A。射線が通るところあれば、射線が通りにくい場所もあり、特別な特徴があるわけでもないMAPである。射線が通りやすお、つまり狙撃手を防ぐ要素ないとするならば、狙撃手がいる三輪隊が断然有利であると考えられる……というのも早計だ。

 

『風間隊には菊地原がいる。撃つ瞬間を見ていなくても、最悪狙撃場所が完璧に特定されるかもしれません』

『狙撃手がいる優位性を保とうとすればするほど、慎重にする必要があるということですね』

 MAP北西側に古寺、南東に奈良坂。共に姿を隠しながら、同じく姿を隠している風間隊、特に菊地原の居場所特定のためスコープを覗いている。

 

 サイドエフェクト『強化聴覚』

 ただ単に耳が良いというだけのサイドエフェクトである。自分のサイドエフェクトを知った際の本人曰く、「ショボい能力」。

 未来予知や嘘を見抜くような、人が羨むような能力ではない。しかしこの能力は、音の聞き分けからその状態までも決定することも可能な優秀な能力である。まして、彼の耳が補足できる範囲で、その音を聞き取るなど造作もないこと。

 

『距離さえ分かればそこからの狙撃ポイントの特定なんて、歌歩ちゃんなら余裕だね! 』

『なんであんたが自慢気なのよ……』

 狙撃時の発光が見えなかったとしても、音からの情報さえ分かれば、後はそこからの狙撃可能範囲からの狙撃ポイントの特定するのは、A級3位のオペレーターなら当然可能な仕事である。まして射線が通らない箇所もある市街地A。候補も絞ることも可能。

 

『狙撃ができるところは、射線が通るところですからね』

 アイコンが映っているMAPの南側に目を向けながら、東は宇佐美の補足をする。

 

「秀次と米屋の合流を避ける。犬飼俺と合流。辻は米屋とともに南下。風間隊の姿が確認できない以上気をつけて動け」

「「了解」」

 南東の位置で、狭い路地から大通りに出た二宮は、耳に手をやり犬飼、辻に連絡を取る。それを受けて、南下を止めて移動していく辻と、南下し二宮と合流していく犬飼。

 

『二宮隊長は南下、辻隊員は北上を開始。三輪隊長が合流するのを阻止する流れか! 』

『2人の攻撃手が揃ったら、いつもの三輪隊の形になる。秀次の補足ができたなら、その形にさせないのは当然ですね』

 まだ距離がある二宮、犬飼2名と三輪。そのため先に戦闘を開始するのは……

 

「辻ちゃん、みっけ」

 北東で向かい合った、米屋と辻である。

 

『先制攻撃は、辻隊員! 孤月が心臓目がけて伸びていく』

 右からの一振りを避けながら、米屋は大きく踏み込んで一突き。

 

 顔面に近づいている矛先に対して首を右に曲げて避けた上で、自分は半歩踏み込んで右肩を斬り落としにかかる。

 その攻撃に対して、右を軸足にして孤を描くようにして後ろに回り込んで避け、もう一突き。

 

『槍とか使ったことないからよく分からないけど、柄の部分の方が長いんだから普通の孤月の間合いに踏み込まれたら終わりってのは分かる』

 その矛先に対して、刀身を横に向け上から押さえつけるようにして捌き、次はこちらから心臓目がけて突いていく辻。

 

『まあ、その分リーチが増えるって考えだから色々できるのは認めるけど』

 その突きをアスファルト強く蹴り込んで、大きく後退していく米屋。その動きを予測していたかのように踏み込んで一振り。

 

『面倒なことキライだから、あたしは無理』

 その踏み込んだ足を後退しながら突くことにより、追撃を阻止する。

 

 距離を取り、再度向かい合う両名。

 

『次は米屋隊員による攻撃。辻隊員は踏み込めずにいる』

 米屋の間髪を入れない攻撃を攻め込まず、捌いていく辻。

 

「やっべ」

 米屋の突きに対して下から刀を振り上げることにより、矛先を上方に上げる。そして自分は振り上げた刀を振り下ろし、踏み込む。

 

「あっぶねー」

 自分の右斜め上にシールドを発生させ、それを防いで後退していく米屋。

 

『……米屋は何回かしたことあるのよ。そこそこ強いことも知ってる。映像見る限り辻もそこそこ強いの知ってるから、一度はやってみたいんだけど、あたしがブースいるときは何故かいないのよね』

 辻は追撃の斬撃を当てにいく。

 

 伸びていく孤月を避ける米屋。辻はもう半歩踏み込んで斬りかかる。米屋はそれを受け流し、攻撃。互いに付かず離れず、踏み込み過ぎず距離を一定に保った上での斬り合いを行っている。

 

『辻は時間稼ぎと米屋は思っているだろうから、早めに辻との戦闘を切り上げたい。古寺の援護射撃も菊地原がいる以上、狙撃が一回しか使えないという状況もありえる』

 米屋は、辻の後退を受け踏み込んで追撃として一突きする。辻はそれを捌いていてから回り込み踏み込んで斬りつける。

 

『そうなると古寺の援護も下手に頼めない。もし頼むなら、確実に落とせるときでしょう』

『隠れてるのが風間隊じゃ、踏み込んだ瞬間に落とされるっていうのも考えないとあれだし。かといってこのまま平行線だと風間隊が戦闘に参加しないまま、誰か落ちて、その隊が風間隊と違うの隊2つの攻撃を受けるってこともありそうだし……やりにくそう』

 バックワームを使用して隠れている風間隊3名のアイコンを睨みながら、小南は他人事のように呟いて溜息をつく。

 

『風間隊長と三輪隊長が互いを確認。戦闘を開始! 』

 生活道路から大きめな道路に出た先で風間を視認した三輪が、バックワームを外し、向かい合う。

 

 

『まずは風間隊長の先制。間合いに入っていく』

 バックワームを消しながら懐に入り込み、右手に収まっている小刀で喉に斬り込んでいく。

 

 刀を右に振っていくことで、その切っ先を横に往なし、次の踏み込みを自分がその位置に先に踏み込んで阻止する。

 風間はアスファルトを左足で蹴り上げながら、左腰に動いていく腕を長めに作った刀で落としにかかる。

 シールドとスコーピオンの衝突音が響く。

 

『小南も言ってたけど、風間隊の動きが見えないのは他の隊にとってやりにくい。たとえ菊地原でなくても、風間隊を確認できることは他の隊にとって意味のあるものです』

 三輪が踏み込み横から首を刈り取ってくることに対して、小刀を縦にして剣先をずらしていく。

 

 風間は剣先が小刀に接触するのと同時に、三輪の鳩尾に左手の刀を突き刺していく。それを受けて次は三輪がアスファルトを蹴り上げ、後退。その左手は腰にかかっている。

 風間は目線を銃口に向けながら、踏み込んでいく。

 最初の一歩は、黒い弾丸が頭上を通り過ぎるように深く踏み込む

 次の一歩で、再び弾丸を出させないために左側に回りこむ。

 そして一突き。

 三輪は、体を向かい合うように動かしながら、回り込んできた相手の攻撃を往なす。そして往なすと同時に自分の腹に突き刺さってくる小刀を避けて、引き金を引く。

 

『ただ……本当に風間隊が奇襲を狙っているのだとしたら、相手の移動は警戒するはず』

 2つの弾丸は、風間の横に着弾していく中、次弾の軌道を避けるように後ろに回り込んでいく。それを見越してか三輪は体勢を変えずに、風間の後を追うように孤月を振っていく。

 

『確かにあれよね。風間隊が奇襲するってなったら、風間さんが一番重要なのはどの隊だって分かってる。その中でも一番バレるのを警戒してるはずの風間さんがこんな見晴らしいい場所に出た途端バレるなんて怪しい……』

 風間はそれを左の刀で往なすも、勢いを殺しきれず1m程飛ばされてしまう。

 

『風間隊長自体が囮ってことも考えられますね』

 三輪は、体勢を崩したと思われる風間に踏み込んで斬り込みはせずに、再び銃口を向ける。

 

『踏み込んだ結果やられて三輪隊の攻撃手が米屋だけになるのは、三輪としては避けたいって思うのがふつうね』

 その弾道を避けるように、風間は急接近していく。そしてそのまま踏み込んで攻撃を……とはならなかった。

 

 次に引いた弾道はバイパーによるもので、風間が元いた位置から風間が踏み込んできた位置に向けて曲がっていく。風間は両刀での攻撃を断念し、シールドを発生させ弾が届くのを防ぎ、右の刀を振り上げていく。

 

『奇襲を警戒して、三輪隊長攻め込めずにいるか! 』

 その攻撃を往なして、距離を置く三輪。

 

 再度引き金を引くことによる放たれる弾道も、一度風間を通り過ぎた後に曲がり、戻っていくように引かれており、風間の背後を狙う。

 風間は背後からのバイパーシールドで防ぎ、孤月の間合いで振り下ろしに来た三輪の攻撃を、左腕から短めに出現させたスコーピオンで横に往なしていく。往なしながらも右足の方向は、三輪の右足に向いている。

 

『……まあでも、そんなんで風間さんの攻撃を防げるなら苦労ないでしょ』

 足元に踏み込んで懐に入り込んだ風間は、そのまま体勢を多少崩した三輪の首目がけて右手で斬りあげていく。

 

『先に傷を負わせたのは、風間隊長! 三輪隊長、再び距離を置く』

『だからなんであんたが自慢気なの……』

 距離を置いた三輪の頬から、トリオンが漏れる。

 

 三輪は距離を取るため後退しながらも、その銃口は風間に向けられている。引き金を引き放たれるアステロイドは、風間の踏み込んでくる足元に着弾していく。その攻撃を避けながらも回り込もうとしてくる風間の動きに合わせ、自分も動き距離を一定に保つ。

 

『秀次としてもわざと攻め込んで、風間隊の居場所をあぶり出すという方法もあると思うけど、米屋がいない今、その方法が取りにくい』

『狙撃も使えないんでしょ? あぶり出した結果、1対2になったら流石に無理ね』

 風間の踏み込みを阻止するように振り下ろされる孤月。そして風間の攻撃の手を出させないためのバイパー。

 

『かといって、風間の攻撃を阻止し続けるのは風間相手じゃ得策じゃない』

 風間の視線が右肩に、右半身の重心が一瞬ずれ、三輪の孤月がそれに呼応する。

 

 その孤月は半身になった風間の横を通り過ぎ、左の小刀の切っ先が肩から腕を斬り落とす。そして孤月を無防備に振り下ろし、次の追撃の一手からの連続攻撃。

 それを察知した三輪は、無防備に孤月を振り下ろす手前、相手が半身になり避けていなければ、丁度頭上に届く位置で孤月を止め、体勢を変えながら追撃の一手を往なし、距離を取り、銃口を向ける。

 攻撃を防ぐための攻撃であると感じた風間は、シールドを発生するも、すり抜けていく弾丸を確認してすぐに、大きく後退していく。

 

『三輪隊長、この均衡を破れないか! 風間隊長の動きに合わせる形になり続けている』

 傷は先程の一撃しか当たってはいないものの、三輪としては攻撃を与えられず、距離も詰めることはできない状況が続いている。

 

『いや、そういうことはないとは思います』

 東の言葉を受け、画面を変える準備をし始める宇佐美。

 

 それを確認する東。そしてあくまでスコープからの確認だが風間隊の確認が済んだ後なのでと断った上で言葉を続けていく。

 

『近距離に偏っている風間隊の位置を無理やり動かせるのは、やはり遠距離の攻撃です』

 MAP北西での発光と共に放たれた弾丸は、辻と米屋の戦闘する位置へ着弾していく。

 

 

『撃つんだ』

『まあ風間隊が近くにいないって分かったからね、特にきくっちー』

 辻が踏み込みを止めて、米屋への追撃を中断する。

 

 先程述べたように音が拾える場所に菊地原がいるならば、位置の補足をされる可能性がある。近くに菊地原がいれば、自主的な戦闘離脱も不可能。落とされることも明らかである。だからこそ、慎重に探して近くにはいないことを確認してからの狙撃という形となった。とはいっても、自分の近くにいる風間隊を慎重に確認をすればするほど、つまり狙撃手たちの近くにいないと分かれば分かるほど、三輪もしくは米屋の近くにいて奇襲を狙っているという疑念が大きくなっていく。辻により、米屋の合流が遅れているというのも一因ではあるが、このことも米屋と三輪が本格的に攻撃に気持ちを移せない原因であると考えられる。

 狙撃を防ぐ方法として、菊地原は近くにはいるが、民家等に身を隠し狙撃するまで攻撃に参加する意思がないというものがある。三ここまでされたら民家を1軒1軒見に行くという方法しかないため、これについては、三輪隊はある程度諦めてはいるだろう。だからこそ狙撃の選択は、賭けのように見えるかもしれない。最初で最後の一撃になる可能性がある以上もう少し慎重になるべきだと思うかもしれない。実際、他に条件がないならばそう思うのも無理はない。

 

『ハウンドが降り注ぐ! 二宮隊長も参戦です』

 周りの民家の屋根を破壊しながら、三輪と風間の周辺にハウンドが大量に着弾していく。

 

『狙撃ができないというのは、風間隊が優勢を保っている段階の話。そのバランスが無理やりでも崩れたら、話は変わってきます』

 二宮が視認したということは、三輪も二宮を見たということ。

 

『隊長3人が向かい合った! 誰が最初に仕掛けるか』

 画面の右半分に辻と米屋の戦闘、左半分に三輪と二宮と風間が向かい合う様子が映っている。

 

『最初に仕掛けたのは、二宮隊長! 民家を削りにかかる』

 手をスーツのポケットに入れた状態で放たれたメテオラは、風間と三輪のいる道路に隣接している民家を数軒崩壊させていく。

 

 三輪と風間は、瓦礫を避けていく。2人の移動を受け、その先の民家の屋根も崩壊させていく。それを避けながら、距離を詰め三輪の首を取りにかかる風間。それを往なす三輪と、次の三輪への追撃を阻止するように眼前に落ちていく瓦礫。

 三輪は、瓦礫を避けるために後退した風間に対して追撃の一振り。その刀は肩には届かないものの、往なすことのみに力を使わせる。その防御を受け、もう一歩踏み込んで斬り上げる。

 風間はその攻撃を往なした上で回り込んで一突き……しようとするも放り込まれるハウンドにより防御の選択肢を取らざるを得ない。

 

『その方が確実ってのは分かるけど、風間さんに2人がかりね。誘き出すにはそれが一番いいんだろうけど』

 三輪の踏み込みに対して、横に回り込みながら攻撃をする風間。それを避けながら踏み込んで斬り下ろす三輪。

 

『まあでも……』

 そして風間はその攻撃の右の短刀で往なしながら、自分の足位置を調整していく。なぜなら、地面からスコーピオンを出して、相手の足を固定するためである。

 想定通り、自分の足から地面を通ったスコーピオンは、相手の足を突き刺していく。

 

「|徹甲弾《ギムレット」

 2人の攻撃手の隙を突き、合成弾を放つ二宮。

 

『本気で共闘する気なんて皆無でしょ』

 三輪と風間はその攻撃を、三輪がだいぶ手前に配置したシールドによる防御と横への移動で避けていく。

 

『小南が言うように共闘する気はない。3人が互いに互いの隙を狙っている。だからこそ、二宮隊にとっても効いてくることもあると思う』

 風間が距離を詰めようとすれば、三輪の孤月がそれを阻止し、追撃を二宮の弾道が阻止する。三輪が孤月を振れば、風間が往なした上で反対の刀で攻撃をし、二宮の弾がそれを援護する。二宮が攻撃を仕掛けようとすれば、三輪のバイパーがその前に飛んでくる。

 

『場所も特定されていないもう一人の狙撃手の存在を意識させる』

 隊長3名が戦闘を行なっている位置より多少北側に、バックワームを外したことによりこれ見よがしに出現する菊地原。そのまま古寺を落とすため北上していく。

 

 そして、もう一人。米屋と辻の戦闘に対する乱入者歌川もこれ見よがしにバックワームを外し、隠れていた民家から出て米屋の体勢を崩しにかかってきていた。

 体勢を崩した相手は、カメレオンで消えかけているのが見える。レーダーから古寺の方へ向っていることだけは辻も米屋も確認できる。

 歌川も狙ってこないことが分かっており体勢が崩れているならば、米屋に追撃を仕掛けようとするのは攻撃手の性なのかもしれない。

 辻は、体勢の崩した米屋の喉を突き刺すため踏み込んでいく。

 

「知ってる? 辻ちゃん。最近狙撃手界でも……」

 辻と米屋の位置から、程遠い南東方向で発光するのが、米屋の目からもどうにか確認できた。

 

「脚狙いが流行ってるらしいぜ」

 踏み込んだ右足が消えたことで、辻が体勢を崩す。

 

『ということは、風間隊も揃いそうな段階で通常の三輪隊の動きも意識する必要があるということです』

 辻の喉に米屋の槍が突き刺さる。

 

『米屋もこれでフリー。三輪隊も揃うし、古寺落した風間隊2名も時間の問題。けっこう二宮隊としては厳しいかもね』

 米屋も隊長3名が揃っているMAP中央より多少北東よりに行った位置に移動を開始する。

 

『でも、そうだね。乱戦になるのは二宮も頭の中にはあっただろうし、仕向けているといことはあると思う』

『どういうことでしょか? 』

 MAP上、北方面には古寺、その古寺を仕留めるために南から菊地原、東から歌川がフォローに入っている状況。南東の端には奈良坂。そして今述べたようにMAP中央より北東には隊長3名。

 

『本当に三輪隊を揃わせないつもりなら、辻を使って徐々に南下させる必要性もないし、三輪と風間を無視して二宮隊で合流して米屋を倒すってこともできたはず』

 米屋が合流するために、狭い路地を下っていく。そして、三輪が戦闘を行なっている位置へ移動するためにその路地を右へ曲がっていく。

 

『ですが、犬飼も二宮の方へ移動していた。初めから米屋を止める気はたぶんなかったんでしょう』

 右へ曲がってくる瞬間を狙って、アステロイドを放射していく犬飼。

 

「来たとこを狙い撃ちなんて、ひどくない? 」

「隠れて狙う方がひどいでしょ」

 シールドを発生させ、その攻撃を防ぐ米屋。

 

 そして踏み込んでいく。リーチがある分、孤月よりも早く間合いに入れる。あと2歩。

 

「……俺もそう思うわ」

 あと1歩の踏み込みをしようとした直前に横から飛んでくる数本の弾道。射線の辿ってきた先を見ると二宮の姿。

 

『二宮隊長が乱戦に持ち込むメリットは何かあるんでしょうか? 』

 自分に降り注ぐハウンドを避けながら、米屋は南下していく。

 

『攻撃手同士の乱戦になれば、風間隊が有利になる』

 三輪たちが戦っている道路に足を踏み込んだと同時に、三輪の攻撃を避けるために後退してきた風間の首を狙って、槍を一突き。

 

 この攻撃を腕から出した短めの刃で槍の矛先をずらし、続いてくる三輪の攻撃を左の小刀で往なしていく。

 風間の後退に対し、もう一歩踏み込んで槍をもう一突きしていく。

 

『確かに乱戦は、風間隊が隠れながらやれる土俵ね』

 歌川が米屋の踏み込みを受け、米屋の腹にスコーピオンを刺していく。

 

『風間隊はカメレオンを使う。乱戦になれば使ってくる可能性は高くなる』

 その攻撃を三輪が発生させたシールドでどうにか防ぎ、米屋は無傷で済む。

 

 距離を置く攻撃手4名。

 最初に風間が動く。米屋の横に回り込むために踏み込んでいく。

 それに対して、三輪が風間に銃口を向けアステロイドを放射していく。風間の逃げた先には米屋がおり、風間に攻撃を仕掛けてくる。

 盾を発生させる風間に対して、米屋は槍を曲げることで盾を避けて、首を狙う。

 後退する風間に対して、三輪は鉛弾(レットバレット)を、犬飼はアステロイを放つ。

 風間は鉛弾(レットバレット)を避けながら、アステロイドを冷静に落としていく。

 隊長のフォローに入るため、歌川は消えて奇襲をかけようとする。

 

『乱戦の状態を射手の間合いでみられる二宮は、無防備になった瞬間を狙える』

 その瞬間を狙いすましたかのようにハウンドが真っすぐ飛んでくる。

 

『歌川隊員、危機一髪! 風間隊長のフォローでどうにか無傷だ』

 風間は三輪の攻撃を往なしながら、歌川の横にシールドを発生させる。

 

『ハウンド』

 銃手や射手用トリガーの1つである。バイパーのように使用者の好きに射線は引くことができない分、相手を追尾する能力があるトリガーである。カメレオンは消えるという優位性とバランスを取るように、他のトリガーを使うことができない。乱戦で風間隊を狙う以上弾速設定をそれなりに速くする必要性があるとはいえ、身を隠す瞬間さえ狙えばそれなりの牽制にもなる。風間隊への牽制と三輪隊への攻撃。二宮はNo.1射手。この2つの条件があれば、二宮隊がこの場所の支配者になることも難しいことではない。

 

『とはいっても、奈良坂いるんじゃ二宮隊の独壇場ってわけでもないでしょ? 』

 二宮は、背後からの射線が通らない位置でハウンドを放ち続ける。

 

『先程の民家崩しの意図は、場所の移動を促すという点と狙撃手を風間に意識させるという2点があったと思う』

『でも、それはあくまで古寺隊員への意識ということですね』

 犬飼の銃口がこちらに向いていることを受け、そちらにアステロイドを放つ歌川。

 

 犬飼の防御体勢に入ったことにより、風間の踏み込みを成功させる。米屋はそれを横に飛ぶことで阻止し、道を開ける。それに呼応して三輪は孤月を振っていく。そしてこの3人の密集を受け、ハウンドを放射する二宮。

 

『風間隊がいるかもって状況で、民家崩し程度で奈良坂が釣られるなんて思ってないでしょ』

『そうですね。二宮もどんな状況であれ必要になるだろう奈良坂を釣る気は風間隊もないと考えていたはず。だからこそ、菊地原を出したことに意味がある』

 風間が右脇腹を刺してきたので、米屋はそれを往なす。これにより左の短刀からの攻撃は防げないが、そこは横から飛んでくる弾丸により、その追撃を阻止する。歌川は再び引き金を引こうとする三輪に対してアステロイドを放射、追撃を防ぐ。

 

『でも、古寺は風間隊を引きつけるだけ引きつけた後も、仕事はするだろうと考えて人を配置しているあたり』

 再びハウンドを放射する意思を見せる二宮。

 

『流石は二宮隊長ですね』

 二宮の眼前に、犬飼がシールドを張る。ハウンドはシールドを避けるように放物線を描いていく。

 

 犬飼は防御に回っているため隙があるものの、犬飼の周辺にもハウンドが着弾しており、攻撃することもできない。奈良坂の狙撃を意識してか、家と塀を上手く活用して射線に入らないようにしている。

 

『古寺隊員、緊急脱出(ベイルアウト)! 菊地原隊員はすぐに南下を開始』

  MAPの北側で、光が上空に上がっていくのが映る。

 

『三輪としては狙撃手どっちか位置を補足されても仕方ないくらいには考えていたということでしょね』

 MAP上のアイコンの配置は、北側に菊地原。そこから南下した位置しているMAP中央にその他攻撃手と二宮隊2名。南東の端に奈良坂。

 

『乱戦の中どの隊がポイントを獲るのか。この戦い、最後の幕を開けようとしている! 』

 画面には、攻撃手4名が向かい合う姿が映っている。

 

 

『やはり現時点で戦況を支配しているのは二宮隊長か。攻撃手の隙を狙って攻撃を仕掛けている』

 二宮は、攻撃手の間合いから離れた位置でハウンドを放っていく。

 

 ハウンドの軌道上にいる米屋がそれを避けると、その位置へ風間が移動し、突き刺してくる。米屋はそれを往なすことで、三輪への攻撃へと繋げていく。

 風間は右から斬り下ろされる孤月を左手で往なし、右膝からスコーピオンを伸ばすことで、踏み込んできた足を捉えようとする。一歩下がる三輪に対し、歌川が斬りかかり、犬飼がハウンドを放射する。

 ハウンドは防御したものの、歌川の攻撃は微かに掠る三輪。

 隊長の傷を取り返すかのように、米屋が歌川の首を取りにかかる。歌川はシールドを発生させ、首に届く前に止めにかかる。

 

『お得意の幻踊孤月! しかしこれは避けられる』

 そのシールドを避けるように曲がっていく槍。そのまま首を刈り取りにくる。

 

『……歌川にせよ三輪にせよ』

 それを大きく下がる歌川。そしてどの攻撃手の間合いにも入らない位置への着地。

 

『上手く間合いを使っていますね』

 二宮のアステロイドは防ぎきるが、三輪からの弾丸により腹に傷を負う歌川。しかし三輪の構えを見た風間が斬り込んだことにより、三輪も腹に軽傷を負う。

 

 再び攻撃手の密集。その動きに合わせるように降り注ぐハウンド。防御を強いられる攻撃手。それを受け、アステロイドを放っていく銃手、犬飼。その射線にいる米屋と風間にアステロイドが掠る。

 

『そろそろね……』

『そうですね。全員レーダーで捕捉済みだと思います』

 MAP北側のアイコンが中央に移動してくる。バックワームもせず、身を隠すこともせずに接近してくるその姿は、二宮の射線を気にしながら移動していき、射線に入る手前で姿を消していく。

 

『風間隊長、歌川隊員の2名が距離を置いた。それを確認して二宮隊長も攻撃の体勢に入っていく』

『風間隊の場合、その行為を囮としたとしても、囮を止めて攻撃態勢に入ることもできる部隊』

 菊地原が二宮の背後から足を狙うために姿を現す。二宮は、大きめの盾を背後に配置擦ることでその攻撃を防いだ上でハウンドを放射していく。

 

 菊地原を狙い、延いては風間を狙うように伸びていく弾道を、姿を消さずにそれを冷静に防ぐ風間。そして消える風間と米屋に狙われる姿の見える菊地原。

 消えようとする歌川を狙い、犬飼がアステロイドを放とうとした瞬間に犬飼の真上にメテオラを放射。

 

『風間隊長、二宮隊長の背後に回り込んで首を刈りとりに来た。しかしこれは二宮隊長ファインプレー! 無傷で防いだ』

 姿を消していたが、背後に回ってくる瞬間に姿を現した風間の息の根を止めてくる攻撃を防御し、数弾放射。

 

『放置ができない部隊だからこそ……』

 そのうちの一発が当たり、右腕を落とす風間。

 

『そちらに気を取られる』

 民家が崩れた瞬間に、犬飼の喉を貫通していく弾丸。

 

『奈良坂隊員の長距離狙撃! 犬飼隊員緊急脱出(ベイルアウト)! 』

 歌川が菊地原の援護に入っていく。

 

 二宮がハウンドを放射し、風間を後退させているのを横目に、歌川と菊地原の風間隊2名と三輪と米屋の三輪隊2名が睨み合う。

 

 まずは初めに距離を詰めていた米屋が菊地原に攻撃を仕掛ける。右のスコーピオンで往なした上で、左のスコーピオンで米屋の心臓を突き刺していく。

 三輪は、菊地原の左腕を孤月で斬り落とす勢いで振り下ろし、突き刺しを阻止していく。三輪が背後を向いたことを受け、スコーピオンを振っていく歌川。それに対し米屋が歌川を攻撃することで三輪の背中を守る。歌川が米屋の攻撃を避けながら、三輪に目をやると銃口が自分に向いていた。そして放たれる黒い弾丸。

 歌川は無理やり体勢を変え、それを避けるが米屋の攻撃は掠る。しかし後ろからの菊地原の攻撃を受け、肩からトリオンが漏れる米屋。

 このまま何度かの攻撃の応酬が続き、互いに少しずつ削り合う戦いが始まると思われた。

 しかし、そうはならなかった。

 

『二宮隊長の流れ弾が、4名のところにも着弾! これに乗じて歌川、菊地原両隊員も姿を隠す体勢か』

 そのハウンドを避けるために4名全員が距離を開けるために大きく蹴り上げて後退。そして風間隊が姿を隠そうとしていた。

 

『風間隊にやられっぱなしじゃない』

 小南が頬杖をつきながら、小さく呟く。

 

 実際、落ちた隊員は二宮隊2名と三輪隊1名。小南が言葉は事実である

 

 しかし、その呟きを隣で聞いていた女子と、先程やり合いながら落とせないことを馬鹿にされた攻撃手の言葉がリンクする。

『……と思うじゃん? 』

「……と思うじゃん? 」

 槍を片手に持ち替えた米屋は、左手で毒舌を吐いてきた後輩の手を掴んだ後、刃を手の平から出して自分の方向へ引っ張っていく。

 

「秀次! 」

 歌川が消えたことに一瞬目を奪われ背後から出現する風間の攻撃を受け、落ちかけてしまった三輪に声をかける米屋。

 

『……そういえばスコーピオン使えたのね、あいつ』

 後ろさえも振り返らずに銃口を菊地原に向ける三輪。その弾丸は、黒く輝いている。

 

 すぐさま手を離し、離れていく米屋。その攻撃を待っていたのは、南の端にいる奈良坂。しかしいち早く攻撃を届かせたのは……

 

『……上手く利用されたわね』

『……そーだね』

 二宮のアステロイドである。

 

「すまん、秀次。やらかした」

 三輪隊室と通信する米屋の横で菊地原の光が上空に上がっていく。

 

 風間と歌川が消える前に放たれるハウンド。風間隊は盾を発生させながら、移動していく。かすり傷が多くなっていく風間隊2名。

 

『奈良坂隊員、イーグレットからライトニングに変更。ハウンドで足を止めている風間隊を狙っている様子』

『風間隊が乱戦でのポイント獲りを優先したということは、あくまで菊地原が落ちた今だから言えることです。イーグレットより距離が近いライトニングだと補足もされた後、落とされやすくしまうかもしれない』

 奈良坂が距離よりも手数を選択したことにより、立ち止まりハウンドを安全に防御できない。

 

『それに手数が多くできるライトニングなら、二宮の隙も上手く狙える』

 歌川のメテオラで落とされた瓦礫の合間を縫う狙撃により、風間隊を狙うだけでなく、防御も強いられる二宮。

 

 その隙に距離を詰ようと踏み込んでいく。二宮はシールドを背後に出し狙撃を防ぎながら、ハウンドを地面に撃つことでその踏み込みを断念させる。

 後退した先に歌川と風間。2人で同時に米屋を狙おうとするが、狙撃を警戒し踏み込みを避ける。そこに放射されるハウンド。

 

 その行為を見て、米屋は風間に踏み込んで風間の首を狙いにいく。歌川の援護を足元への狙撃で防ぐ奈良坂。

 奈良坂の攻撃を防ぎながら二宮は弾を生成し、放射していく。

 

『本当に上手く利用されたわね』

 風間は、半身でその攻撃を避けながら米屋の左手を掴む。

 

 そして風間の手の平から刃が出てくる。そして自分の方へ引っ張り、自分は大きく後退した上で、後退。姿を消していく。

 

『二宮隊長のハウンドが届く。風間隊長にも当たったか』

 米屋に二宮のハウンドが直撃する。

 

『カメレオンは姿を消すといっても、ダメージを受けた際のトリオン漏れは見えてしまう』

 カメレオンで消えた瞬間に当たった腕からトリオンが漏れる。それを辿りハウンドを放射していく二宮。

 

『見えないと思うからこそ、視覚を頼ってしまう』

 背後から、心臓を一突きされる二宮。二宮の眼前には、歌川の右腕が消えかけているものが見え、歌川が緊急脱出(ベイルアウト)していく様子が見える。

 

 

 

 結果(隊 : 倒した隊員)

 風間隊 : 古寺、二宮、三輪

 三輪隊 : 辻、犬飼

 二宮隊 : 菊地原、米屋、歌川

 ※奈良坂は自主的な緊急脱出

 

 

 





……どうだったでしょか。
結構ビクビクしながら書いていたので……心配です。
ムズイ。
ああ、後誰と誰やって欲しいとかこのランク戦が見たいとかあれば言ってください。
ネタが意外と思い浮かばないので。

感覚で動く隊とかないかなー。
いればいいなー。

コメント、アドバイスあればお願いします。
三輪隊が一番低いのはマズったかな……


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