原作キャラが勝手に模擬戦するようです   作:チビメガネ

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 今回の戦闘員
 那須 玲
 その儚げさで読者の心を鷲掴みにした射手。その儚げさによって、観覧席及び解説役、そして読者に弾バカさ加減を隠すことに成功した能力者。ファンブックによってホルダーにアステロイドを入れているのにも関わらず、バイバーに拘るという頑固者であることが露呈した。おそらくこの拘りが出水との違いであると思われる。
 全く関係ないが、作者は茜ちゃん派であり、くまちゃん派、那須さん派の友達が多いなか細々と彼女のことを応援している。また塩昆布界の女神こと小夜ちゃんには、猛烈なファンが一人いる……ただ、もこっちという愛称は好きなキャラに対してどうなんだと思っているのはここだけの話である。

 空閑 遊真
 対チビメガネ攻略型主人公。18人のオサムは死ぬよ発言から始まり、数々の会話イベントで作者の好感度を上げ続けるチート。でも書きにくい……そこらへん、小南を見習ってほしいとつくづく思っている。構想を練っている新風間隊(身長160cm未満が条件)のメンバーの一員である。
 「おまえつまらないウソつくね」という発言によって、言い訳を続けて単行本全巻の大人買いを避けていた作者の心を見破る。そして、作者は単行本を大人買いした。あの月の財布をほぼ空にさせた罪は重い。でもお気に入りなので、活躍する。ちなみに佐鳥、ゾエ、唯我もお気に入りであるが、愛の方向性の違いで活躍することはたぶんない。



空閑遊真 vs 那須玲

 

 

「あー、そういえばここで終わってるんだっけ。いいところなのに……」

 彼女は、気がついてしまったのだ。

 自分の解説コレクションは、完璧ではないということを。

 

「ここさえ、補完できれば、このランク戦もっと興奮……勉強になるのに」

 そして、彼女は考えてしまったのだ。

 もしランク戦の流れの中では聞くことができなかった解説を我が耳で聞くことができたならば、どれくらいの幸福感が得られるかということを。

 

「……ん? そっか、じゃあ付け加えればいいんだ」

 だから、彼女は動き出してしまったのだ。

 

「もちろん、あれから強くなってるしね……よしっ」

 人間は欲望の奴隷であるという言葉の名の下に……。

 

『……さて、始まりました。今回、解説を務めさせていただきます。わたくし武富 桜子! 』

 場所はC級ブース。そしてそこに急遽設置された解説席用の長机と3人用の椅子の真ん中に座り、声を響かせているB級海老名隊 オペレーター武富 桜子。

 

 その特徴的なツインテールを揺らしながら、今現在の時刻が夜であるのにも関わらず元気な声を出せているのは、最早言うまでもない。先週から調整に調整を重ね実現した、2月8日ランク戦3日目昼の部補完用模擬戦解説……いや、実際には互いにより強くなっていることからより白熱する戦いになることが期待できるこの『空閑 遊真 対 那須 玲』のカードの実況を我が手に収めることができる高揚感。そしてコレクションとして自分の棚にこのテープを入れる際のあの音を聞くことができるという高揚感。これを分かっていて元気にならない彼女ではない。

 コレクターとして唯一の失敗として挙げられる点は、このランク戦の実況を務めた三上 歌歩をこの席に座らせることができなかったという点だけ。だがこの点は、自分が実況をできることを考えれば、補って余りある。何故ならば『合法的』に解説を入手できるからだ。上層部の目を盗み、盗聴……ではなく、手間暇かけて入手することをしなくて済むわけだ。このことを考えると、今回この2人だけでも連れてくることができただけでも十分と言うべきだろう。

 

『そして、この空閑隊員と那須隊長の模擬戦の実況をして頂くのは、ランク戦第3戦でも実況をして頂いた……』

 彼女にとっては自分の興奮を抑え込むためのものであるが、何も知らない観客からは溜めを作るためにしているようにしか見えない深呼吸を1回。

 

『実力派エリートこと迅さんと、No.1攻撃手の太刀川さんです』

『『どうぞ、よろしく』』

 ランク戦第3戦を見たボーダー隊員にとっては、万全なコンディションでの玉狛エースと那須隊エースを見ることができる戦いが……

 迅にとっては、期間限定の味のぼんち揚げを入手できるための戦いが……

 太刀川にとっては、暇つぶし、そして東の新しい解説を聞くための戦いが……

 空閑と那須にとっては、後学のための戦いが……

 そして、変態にとっては、自分の欲望を満たすためだけの戦いが……

 

『天気は那須隊長、空閑隊員2人の要望により晴れとなりましたが、舞台は同じく河川敷A。まもなく転送が開始されます』

 今まさに始まろうとしていた。

 

『那須隊長と空閑隊員が再び向かい合う形となったわけですが、注目する点はどんな点でしょうか? 』

 転送までの繋ぎとして、武富は隣に座る2人に話を振る。

 

『まあ当たり前のことだけど、まずは状況が違うってことだろうな』

『空閑隊員も那須隊長も今回は万全な状態で向かい合いますからね。その分選択肢は増えると思います』

『天候の差もありますからね』

  舞台のMAPは河川敷A。

 このMAPでは、中央に流れている川を挟んで、東岸と西岸に分かれている。各々の場所に行くためには、中央に架かっている橋を渡るか川を渡るかの2択である。

 

『天候はあんまり関係ないんじゃないか。確かに転送位置によっては川を渡るって選択肢はなくはない。でも空閑も川渡るのは厳しいだろ。相手が射手である以上、気長に渡ることもできないわけだし』

『そうですね。一対一であったとしても、動きの遅い的は、那須隊長から見れば格好の的です』

『そそ、そういうこと。グラスホッパーで上を飛んでく形にすればいけなくないが、那須相手だとな……無傷ってわけにもいかないだろうし』

 迅の持ってきたぼんち揚げを手に取り、口に放りながら食べる太刀川は、迅にもぼんち揚げの袋を渡し、食べるように促す。

 

『なるほど。今回は悪天候という条件がなくなる一方で、連携がなくなったということですね』

 武富は2人がぼんち揚げを食べていることには目もくれず、叫びたい勘定を理性で抑えながら唾を飲み込む。当然のことではあるが、観客からは2人が次に話す間を繋ぐ言葉であったとしても、彼女にとっては衝動を抑える間である……それを知ってか知らずか呑気な攻撃手が一言。

 

『那須と空閑はいいとこで終わったからな……どうでるか、楽しみだな』

『はい。私も切実にそう思います』

 2人の本音が出たと同時に転送が開始される。

 

 

「ふむ……なるほど」

 空閑が転送されたのは、川の西岸。対する那須は川の東岸。

 

 今回の条件では、那須と向かい合おうとしたときには橋を渡るか川を渡るかの2択がある。橋を渡る場合は、簡単に言えば走り抜ければ良い。それに対して、川を渡ろうと考えた場合、川の中を進んでいくためどうしても動きが鈍くなってしまう。その対策として、何回かで川を飛び越えていく形で対岸に渡ることもできる。しかし、太刀川が述べるように今回空閑の相手は那須であるため、どちらの方法も厳しいと思われる。

 というのも、那須はボーダー内でも屈指の射手であり、バイパーを1回毎に自分で射線を引くことができからである。もし川を渡る際盾を作っていたとしても、裏から回り込むような射線を作られてしまえば、盾の意味もない。もし川を飛び越えようとしたとしても、どこに飛び越えていくか推測できれば、そこに射線を引くことができる。グラスホッパーはただでさえ踏み台が見えてしまうのだ。行く先をある程度予測できる川の上なら行く方向のある程度の推測はできる可能性はある。そのため、橋を渡っていく方が安全である。しかしその際には、注意すべき点がいくつかある。

 

『第3戦のときに那須隊が最初狙ったように橋が落ちるってことだな』

『橋が落ちるということは川を利用しなければいけないということですからね。空閑隊員としては那須隊長にその隙を与えないようにする必要がありますね』

『橋が落ちたとして空閑にはグラスホッパーあるから、落ちるっていう心配はないとは思う。となると……』

 互いに対岸に転送された状況の中で、第3戦のとき以上に橋の主導権を握るか否かが1戦目の勝利を掴む可能性が高くなっている。このMAPで戦う攻撃手は、橋を渡ろうとしたときに落とされたとしたならば、川に落下していくのと同時に狙われてしまうことだろう。

 

『自分の間合いに入るときが問題だな。那須の攻撃の隙で踏み込まないと、行くところ予測した弾道引かれて終わる』

『那須隊長は、バイパーを毎回引けますからね。那須隊長も近づいてくるならそこを狙ってくるでしょう』

『なるほど』

 武富は、空閑と那須のアイコンが橋に近づいてくるのを確認し、空閑と那須の現在の様子を伝えていく。

 

『ほぼ同時に橋に足を踏み入れる状況となった! 』

 解説席から見える画面からは、橋に差し掛かる道で、向かい合う両名の姿が映し出されている。

 

『先制を仕掛けるのは空閑隊員か。大きく踏み込んでいった! 』

 少し笑っているようにも見える空閑は、スコーピオンを片手に収めた上で、強く蹴り上げていく。

 

『那須隊長、近づいてくる空閑隊員を寄せ付けないように攻撃していく! 』

 那須は、空閑の接近に応戦するために立方体を出現させ分割。右で分割した弾と左で分割した弾で違う射線を引いていく。

 

 右からの射線の軌道は、敵の攻撃範囲の手前で方向を上方に換え、後ろから敵の左腕に着弾するように描いていく。

 左からの射線の軌道は、右からの射線を回避した敵を仕留めるように右斜め上方から降り注ぐように描かいていく。

 

『空閑隊員、これをシールドで防御! どうにか無傷で切り抜ける』

 これに対し那須は、間髪を入れずに次弾を発生させていく。

 

『接近戦になる前に仕留める気満々だな』

 空閑の接近を防ぐように、空閑の前方に雨のように降り注ぐバイパー。

 

 それを受けて下がっていく空閑の動きに合わせるように、道路に着弾する瞬間に曲がり空閑目がけて直進していく。右足で横に蹴り上げてこれを回避した空閑は、左から襲い掛かってくる数本の射線をシールドで防ぎ、それを掻い潜ってくる射線をスコーピオンで振り落としていく。那須はそれを受けて次の攻撃に移行していく。

 分割を先程の何倍もして弾数を増やした那須は、空閑の周り全方位に射線を引いていく。先程の追撃で反応が出遅れた空閑は、この全方位攻撃に対して自身の周りに円形の盾を発生させ、全弾を防ぐ選択肢を取る。

 

『那須隊長の猛攻を防ぎ切る空閑隊員。心なしか徐々に距離も詰められているか! 』

『いや、まだ那須隊長の攻撃はまだ終わってない』

 空閑は、この攻撃を防ぐために自身の周りを半球の盾を作り上げている。従ってそこから身動きが取れず、再度攻撃に対する反応が遅れてしまう。

 

 那須の放った弾の軌道は、空閑に動きを予測し曲がるようには描かれることはなくそのまま上空から急降下していく。その軌道は空閑さえも捉えずに地面に着弾していく。そして……

 

『那須隊長が選択したのは、バイパーではなくメテオラだった!? そのまま橋が崩壊していく! 』

『まだ距離があるなら射程が長い那須隊長が有利ですね。ただ……』

 爆音と共に崩壊していく橋が崩壊していく。その結果、空閑の足場も崩れ去っていく。

 

 足場が崩れ去ったため、そのまま川に落ちていくこともなく、落ちていく瓦礫を利用して空閑は那須の方へ移動していく。しかし当然、橋に戻るまでの距離は稼ぐことはできず、最後にグラスホッパーで急上昇。最高点で斜め下方向に急降下するようにもう一度踏み込んで那須の方へ戻っていく。

 これに対して那須は、空閑が戻ることを察していたためか空閑の姿を追う軌道で即座にバイパーを放射していく。何発か被弾しつつも橋に差し掛かる道路に着地。距離としては、リーチのない攻撃手としては厳しい距離。

 

『今の遊真なら届く距離だよ』

 振り下ろされる左腕。その腕の上下に合わせて湾曲し、那須の首を絡めとろうとしていく。

 

 間合いをはかり損ねたと思いながら、盾を発生する時間のない那須は横に飛んでこれを回避しようとする。それを察して、空閑は軌道を少しだけずらす。

 

「流石ね」

「いえいえ、それほどでも」

 右脇腹からトリオンが漏れている那須と、数か所に傷を負った空閑が向かい軽口を叩く。

 

『那須隊長が再び猛攻を仕掛ける! 』

『マンティスを使っている間はシールドも出せませんからね。那須隊長にとっては攻撃であり防御にもなりえます』

 空閑は攻撃の機会を窺いつつ、那須の攻撃を凌いでいく。

 

 空閑が接近しようとすればバイパーがその道を塞いでいき、互いに付かず離れずの距離を保つ。そしていつの間にか橋の位置からは離れ、住宅地区に入っていく。

 

 

『那須隊長による縦横無尽の攻撃が止まらない! 空閑隊員は近づけずにいる』

『上手く誘い込みましたね。こういう狭い路地が多い住宅地区なら空閑隊員がグラスホッパーで逃げたとしても行く先を予測しやすい』

 空閑を追跡するように引かれた射線は、空閑が右へそして左へ曲がることで塀に直撃する。

 

『空閑が何を考えてるかは分からないけど、トリオン切れ狙いってのも考えられるからな……那須もそこらへんは分かってると思うが』

『前回の件もありますからね』

 空閑が次の角を右に曲がろうとすると、バイパーが上空から阻もうとする。それをシールドで防ぎ、それでも足りなければスコーピオンで射線を振り切る。

 

『太刀川さんの言う通り、那須隊長としては早く仕留めないといけない。かといって簡単に仕留められる相手でもない』

『こっちに来させるのが一番手っ取り早いんだろうが、空閑は急接近する方法としてグラスホッパーいけそうなときしか使ってない。空閑も狙ってきたところの弾幕を警戒してるのは分かる……実際、何発か被弾してるしな』

 空閑が盾とスコーピオンでバイパーを捌きながら、一歩また一歩と下がっていく。那須は相手との間合いを気にしながら半歩ずつ進みつつ、再度弾を生成していく。

 

 1組の射線は、空閑の正面。2、3組目の射線は曲がっていき横を突くように。それぞれ数本の射線を放射していく。

 空閑はある射線はスコーピオンで振り落とし、ある射線は曲がりながら家の敷地に入りながら逃げていく。

 家の敷地を出た先には、道を回り込むように引かれた射線。

 

『開けた場所に逃げようとする空閑隊員を嘲笑うかのようなにバイパーが襲い掛かる! しかしどうにかシールドを発生させ、これを防ぐ』

『そうなると那須隊長のすべきことは、いかに空閑隊員の足を止めるかにかかってくる』

 その攻撃は、金属音が響くことで防がれたことが察知できる。

 

 空閑はもう一度降り注いでくるバイパーを避けながらも、住宅地区の中でも狭い路地ではなく広い車線が近くにある地区に抜けていこうとする。それを追いかけてくる射線の軌道は、空閑を捉えるように動いていく。

 

『空閑隊員のスコーピオンが限界か!? 何発か空閑隊員の体に着弾! 』

『スコーピオンは他のに比べると脆いからな。受け過ぎるとそうなる……』

 猛攻に耐えかねた刃が刃毀れ(はこぼれ)を開始する。

 

 画面には、先程の路地よりも広い道の真ん中で辛くもバイバーを凌ぎ切った空閑。その両隣に林立する一軒家とそれよりも高さがあるマンション。

 

 数メートル手前で那須は追い込むためにもう一度弾を放射していく。最後に放った弾幕は隣接する家々、マンション付近に着弾していく。再び響いていく轟音。

 

『バイパーの着弾で爆発が誘発していく! 事前にメテオラを仕掛けていたということか』

『那須隊長は、少しでも反撃の隙を与えずに確実に避けられない一発を空閑隊員に当てたい』

『瓦礫によって身動きが取れなくならないよう逃げる選択肢を取らせるということですね』

 迅はその武富の言葉に首肯しながら、画面を見続けている。迅の視線の先には、数えきれないほどの建物の瓦礫が道路に落下している。

 

『那須隊長の攻撃は止まらない。瓦礫の先目がけて変化炸裂弾(トマホーク)を放射! 那須隊長の方が一歩早いか』

 合成弾による弾幕は、先程よりの激しい音と攻撃力を伴いながら瓦礫の落ちていく周辺に落下していく。

 その攻撃は、シールド諸とも貫いたことを小さく響いた金属音から確認できる。

 

 そして……その爆音が消えかけたときに足音が聞き取れたとともに感じる人影。

 

『スコーピオンを常時出してたのは攻撃の意志ではなく、那須にいけると思わせるための道具だったわけだ。自分はその時には移動できる準備をして、建物が崩れた瞬間に移動、死角から首を取るってわけだ』

 バックワームを着た空閑が背後から首を取る。

 

『那須隊長、緊急脱出(ベイルアウト)! 空閑隊員の勝利です!』

 アナウンスが響くとともに決着がつく。

 

 

 




まずは待っていた方がいたらすいません。忙しさにかまけて趣味すらもまともにできない状況でして……。
これからまだ時間がある……はず。
エタるつもりはまったくありません。本当にすいません

カメレオン遊真とかハウンド那須さんとか書きたかったけど、他の人相手の方が面白そうということでここは保留ということで。どうせまた遊真とか那須さん書くだろうし。
遊真がちょいと消極的だったかなと思いつつ久しぶりに書くと那須さんの駆けまわるのが楽しくって。
遊真ファンの方はすいません。

で……次ですね。
とりあえず三輪さん練習と風間さん練習をしたいなと思っております。
なので、三輪さん vs ? 風間さん vs ?
をして
三輪さん vs 風間さん
ですかね?
?の中を誰にしたいかを募集してます。
誰とでも面白そうですけど。

いや、遊真ムズイっす

アドバイス、感想あったらよろしくお願いします。

ではでは

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