暗殺教室 グリザイアの戦士達   作:戦鬼

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死神編ラストスパート!

こんな感じでいいかなぁと思いつつ投稿しております


死神の時間・5時限目

雄二がⅠとⅡと死闘をしている時、雄二への命令の後に烏間も死神と接敵していた

 

「くっ‼︎」

 

禍々しいほどの殺気を感じて反射的に烏間は物陰に身を隠した。雄二に銃を預けたがまだもうひとつあり、腰からそれを出して警戒する

 

「殺気の感知も完璧か……ⅠとⅡが追って来ていないなら、彼が1人で足止めしてるのかな?だとしたら、正直、君も彼も見くびってたかな」

 

「……トラップの見本市のようだった。多彩なもんだな」

 

「人殺しの技術を身に付けたらね、片っ端から試したくなるのが殺し屋の性さ」

 

「あの双子暗殺者はなんだ?ブースターを使っているということは…」

 

「なに、ちょっとしたビジネスみたいなものさ。彼らの性能をチェックして、報告するっていうね。商品価値としては、プロから見たらなかなかだけど、成長までの時間と彼らの生命時間を考えたら難しいね」

 

烏間はやはりかと思う。

 

(あの双子は一定の行動、今回で言うなら暗殺に特化して作られた存在…痛覚や感情を無くして、ただ相手を殺し、目標を達成させる事のみに忠実なロボットに近い)

 

そしてさまざまな薬品を使用して無理矢理作った体は長くは保たない。言うなれば、消耗品なのだ。非人道的なそれはもはや見るだけも不快である。躊躇すれば殺されるし、殺す気でないなら烏間とて危うい。相手は自信の命を選択肢に入れない。自爆すら躊躇いなく決行する

 

(色々調べたいが、今はこいつを)

 

その瞬間、後ろから烏間の顔を掠めるように弾丸が飛んでいく

 

「ちゃんと当てなよ、イリーナ」

 

「ごめんね、次はちゃんと当てるわ」

 

後ろから奇襲をしてきたイリーナを見る烏間の眼にある感情は、失望でも、怒りでもなく、諦観に近い。受け入れたからこそ、死神に注意しつつ烏間は銃口を向ける。

 

「…死ぬぞ、イリーナ」

 

烏間ほどの強者を殺すなら、完全な奇襲しかなく、今のがその最大の奇襲だった。それがもうできない今、烏間はイリーナが撃つより早く撃つ事も可能だ。だからそれは最期通告。これ以上相手をするなら本当に殺すぞと

 

「死ぬなんて、覚悟の上よ。あんたには理解できないだろーけど」

 

だが、イリーナはそういった世界で生きてきた。いつ殺されるか、それとも殺すのか、そんな世界で

 

死神(カレ)理解(わか)ってくれた。僕とおまえは同じだって」

 

「テロの絶えない貧困のスラムに生まれ、命が曖昧な世界。そこで信用できるのは、金と己の技術と『殺せば人は死ぬ』という事だけ……僕はイリーナの気持ちがわかるし、イリーナは僕の気持ちがわかる」

 

死神は語りながらタブレット端末を操作し、その罠を発動させる

 

「なっ⁉︎」

 

天井が爆破され、大量の瓦礫が降り注ぐ。死神にとって、ⅠとⅡも、イリーナですら、目的を達する為の捨て駒でしかない

 

「……へぇ、さすがだな」

 

「…ぐ、天井全てを落とすとは」

 

瓦礫の完全回避は不可能と判断した烏間は最もダメージを低くする為、あえてひとつの瓦礫を腕で受けた。残りの瓦礫の盾にする為だ

 

「けど、閉じこめた。おそらく、君や風見雄二、それとあのタコ単独ならこのトラップも抜けただろう。だから、彼女を使った」

 

烏間がイリーナを見ると彼女は瓦礫に下半身が埋もている

 

「可愛いらしいくらい迷ってたよね、彼女」

 

最初の奇襲で外したのはその迷い。『かつての仲間を巻きこんでいいのか?』それに彼女が気付いていたかはわからない。だが、死神は気付き、利用すると瞬時に判断した

 

「迷いは伝染する。君も彼女を攻撃するべきか迷った。その結果が今の君だ」

 

烏間はすぐに判断を下せなかった自分を恥じるがそんな暇はないすぐに瓦礫を退けていく

 

「当分は追ってこれないね。それじゃ、遠慮なく最後の仕上げに入るとしよう」

 

確信を持って死神は制御室へ向かう。

 

【烏間先生‼︎モニターを見ていたら爆発したように映りましたが、大丈夫ですか⁉︎イリーナ先生も‼︎】

 

「……俺は大丈夫だが、あいつは瓦礫の下敷きだ。だが、構っているヒマはない。道を塞いでる瓦礫を退かして死神を【ダメ‼︎ 】……倉橋さん」

 

耳元で大声を出されて怯む。その声が彼女の指導をよく受けている1人の陽菜乃とわかり、感情的になるなと言いたいが、そんな簡単に割り切れる歳でもないとまずは話しを聞く事とする

 

【どうして助けないの⁉︎】

 

「…彼女なりに結果を求めて死神と手を組んだ、その結果だ」

 

烏間はその判断を肯定しないが批判もしない。プロはさまざまな考えの下、最も有益だと思える行動と考えを常にする。そしてそれは常に自己責任で成り立っている

 

「彼女の考えを責める気はないが、助けもしない。一人前のプロなら、自己責任だ」

 

【プロだとかどうでもいーよ‼︎15の私が言ってもなんだけど、ビッチ先生まだ二十歳(はたち)だよ⁉︎】

 

成人したて、つい最近まで子供だった、それがイリーナだ。経験は豊富だが、時折見せる姿は彼らより若く、子供に見えるほどアンバランスだ

 

【たぶん、安心の無い環境で育ったから、大人になる途中で大人のカケラをいくつか拾い忘れたんだよ】

 

「………」

 

烏間は、その言葉を聞き、また考える。イリーナと、そして彼の事を。育った環境は人を変える。良い意味でも、悪い意味でも……それを知ったからこそ彼を、風見雄二には、その尊い普通を体験して少しでも彼の心の助けになればと思っていたから

 

【助けてあげて、烏間先生】

 

【私達が間違えた時も、許してくれるように】

 

【ビッチ先生の事も】

 

陽菜乃、桃花、莉桜。イリーナから指導を受けた、弟子と言って過言でない3人の言葉を聞き選択に迫る

 

「だが、その場合、君達が時間のロスで死ぬぞ」

 

たった1人の為に多くの命を犠牲にする行為など、烏間にはできない。だが通信から【大丈夫】と磯貝の自信のある声が出る

 

【死神はたぶん、目的を果たせずに戻ってきます。だから、烏間先生はそこにいて】

 

烏間が取るべき選択は2つ彼らを信じて留まるか、それでも先に進むかだ。

 

 

イリーナは、夢の中にいた。だがそれは走馬灯に近い。民兵を殺し、どうにか生き延びた彼女は血に怯える日常か、血に向かい仕事として飼い慣らす選択を迫られた。そして彼女は血に向かい合う選択をした

 

(いつからだろう。感じなくなった血の温もりじゃなく、暖かい穏やかな温もりを感じ始めたのは)

 

だがそれはイリーナはわかっている。この生活が、E組の皆と過ごしてきて……いや、それが確かに9割を占めるが、きっかけは

 

(あの子、マーリンを妹のようだと思い始めてからかもしれない)

 

イリーナ今でも思い出せる。あの時感じたものは、共感。形が違えど同じく安心などない環境で育った者同士の共感。あの時、誰かを教えるという行為が変わるきっかけだった。あのまま彼女と仕事をこなしていれば、もっと早くにその温もりを思い出していた。だからこそ、ロヴロは成長してきた段階で彼女と引き離した。イリーナが迷いで死なないように

 

だが、それでも運命は彼女を逃がさない。怪物の暗殺としてきたこのクラスで彼女はまたその温もりに触れた。

 

(冷たい血の海が私の日常だったのに、結局は捨てきれなかった。そんな私が、裏切られて死ぬのはきっと正しいんだろう)

 

暖かい優しい温もりをもつ者達を裏切った報い。それでも

 

(終われてよかった)

 

またあの温もりを思い出してしまう前に、血の海より深い闇へ沈む。それは今彼女が望んだ形。ゆっくりとその闇が彼女を覆っていくその時、また光が彼女の視界を広げる

 

大きな物が動く音する。意識が回復してイリーナが最初に見たのは

 

「さっさと出てこい重いもん背負ってやる」

 

言葉通り、巨大な瓦礫を背負い、イリーナの、もしかしたら心のどこかで願った光を見せる烏間が、思い人がいた

 

 

「クソっ」

 

烏間の進んだ道とは違う道を進み、バシャっと水が溜まった場所に体が倒れた。血の汚れが取れていくが己の血も流れる。雄二はズリズリと体を動かして移動を再開した。烏間の命令で己のリミッターを外したが、それにダメージによる限界が来たことで冷静になったが疲労と痛みが一気に出てきたのだ。それでも先へ進む

 

【風見君、大丈夫ですか⁉︎ボロボロじゃないですか⁉︎それに血も⁉︎】

 

通信を取り、雄二は殺せんせーに連絡する

 

「奴らのマシンガンの弾がかすめただけだ。超体育着でも、さすがにマシンガンの鋭い弾丸を防ぐのは無理みたいだ」

 

【それでも、君が動いているという事は、双子暗殺者は】

 

「…………あぁ、無力化した」

 

殺したとは言わないが、きっと殺せんせーは気付いているなと確信する。

 

「それより、烏間…先生は、死神は、どうなった?」

 

【現在、死神は私達が爆弾付きの首輪を外し、超体育着の迷彩で壁と同化した事で戻ってきたところ、裏切り返したイリーナ先生の策で烏間先生との1対1の接近戦をしています。通常戦闘なら死神よりも烏間先生に部がありますが】

 

「相手は死神、何をしてくるかわからないか‥‥俺の現在地って烏間先生から遠い?」

 

【多少、しかし間に合わない距離でもないです】

 

【雄二君、烏間先生を信じて休んで‼︎】

 

「陽菜乃…」

 

雄二とて、烏間を信用してないわけではない。だが、彼を今動かすのは烏間からの命令

 

「まだ、敵がいるなら、俺も何かしないとな」

 

冷静さは取り戻しているが、その命令を上書きしない限り、彼は止まらない

 

【どうして!】

 

「どうしても何も、それが俺の役目だ」

 

【役目って……それで雄二君が死ぬなら、意味ないよ⁉︎】

 

「死なないさ。俺を信じてくれ、莉桜」

 

這いずる足の痛みが慣れだし、雄二は走る準備をする前に、耳を地面につけた。音を感じる。戦闘の音を

 

「こっちだな」

 

そしてすぐさま向かうそして、立坑の中間地点に到着し、そこの階段を降りているとイリーナと合流した

 

「カザミ⁉︎その怪我…」

 

「そっちもだいぶ痛手だな。しばらくベッドはお預けだな」

 

「その減らず口を言えるなら大丈夫ね!つか、最近あの子達あんたに似てきたのよ!どーしてくれんの⁉︎」

 

ソッポを向いて雄二はスルーした。

 

「時間がないな…その話は後にしよう」

 

「飛び降りる気⁉︎その怪我で⁉︎」

 

「烏間先生はたぶん1番上から飛び降りたんだろう?それと比べたらあまりにも低い。大丈夫だ……それと」

 

「?」

 

「ビッチ先生、おかえりって言ってくれる場所は、大切にしておけ」

 

「…………あんたが言うなっての」

 

違いないと心の中でツッコミ、雄二は飛び降りる。着地の瞬間は死神が腕から隠しナイフを出したところだ。バシャン‼︎と水飛沫が舞い、死神も思わず気がそちらに向いてしまう。その隙を烏間は当然狙うが即座に冷静な対応で防ぎ、ナイフを振るう。最初の動転もあり、回避は楽にできた

 

「気持ち悪い顔だなぁ‼︎」

 

死神の顔は皮のない顔だ。顔の筋肉がハッキリと見え、骨格すらわかる

 

「顔の皮なんて、変装の邪魔なんだよ‼︎」

 

死神の技術を求めるそれは狂気だ。自分を高める為に犠牲にできる物を容赦なく切り捨てられる。その狂気を纏うナイフの腕を持ち、投げに入る。

 

「!ぐぁ」

 

だがそれはできなかった。死神の口から釘のように鋭い針が出てきて、どうにか下がり回避するが1部が顔をかすめた。本来ならここで死神も止めに入るがここには超人がいる

 

(2対1は流石に厄介だな)

 

烏間の猛攻を防ぐとまた雄二もきて拳を向けてくるが烏間の攻撃を防ぎ、時に反撃しつつ、足に仕込んだナイフを蹴るように雄二へ向けた。加速を急速に落とした瞬間、そのナイフがパシュと音を立てて飛んできた

 

「ぬぉ!」

 

(怪我と少し冷静さがなくなっている。なら、先に始末するなら烏間(こっち)……と思わせて)

 

死神は烏間の攻撃をあえて受けてその反動で下がりながら向きを雄二に向ける

 

「⁉︎」

 

「動けないでしょ?さっきの針、毒付きだからさ!」

 

強い毒でなく、短時間動きを鈍らせる程度だが、充分に効果はあった。直感で腹にくると感じて腕でガードし、腹に力を入れたがそれでもクリティカルヒットといえる一撃で雄二は本当に戦闘がほぼ不能になる

 

「風見君!」

 

だが、そのおかげでで死神は無防備となり、持っている仕込み武器も使い果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………あとひとつを除いて

 

(さぁ、見せてあげよう。暗殺技術の極致を)

 

胸元に手を入れた事で烏間は飛び道具を疑い止まってしまう。取り出したのは一輪のバラ。それを上へ投げる

 

意味のない行為に見えるそれは、烏間に一瞬の油断が生まれる。戦闘から、暗殺へと戻す為の布石。死神は烏間が一瞬バラに意識がいった瞬間に親指を立て、人差し指を烏間に向ける。それは、子供が銃を撃つ真似をする時するもの。だが、聞こえないほどの小さな音と共に人差し指の先から極小の弾丸が発射された

 

そのサイズは、10口径… 2.5mmの弾、本来殺傷能力はほぼないに近い。だが、それを撃つのが射撃技術が頂点に達した死神の物なら別だ。筋肉、骨、その隙間を針に糸を通すごとく、正確に大動脈に裂け目を入れ、その裂けた部分から血流圧で裂け目が広がり、心臓近くで血が吹きだして、大量出血を起こす

 

「……っ」

 

胸元からブシュと生々しい音を立てて液体が漏れ出る。

 

「極小の弾丸は血流に流されて体の奥へ銃声はしないから凶器もわからない。標的の体と精神の波長を見極めて鍛え抜かれた動体視力で急所を撃ち抜く、死神でしかできない、まさしく総合芸術だよ」

 

相手が相手なので完全にトドメをさす為に近付くと、流されていく血に違和感を感じた

 

(なんだ、皮膚と同じ色のチューブが、血を噴いて……⁉︎)

 

死神はその鍛えた視力で見た。そのチューブは烏間の体のさらに向こう、生徒と殺せんせーが捕まっている檻に続いて、中にいる殺せんせーが器用に1本だけ触手を檻からだして、血と同じ色のトマトジュースを飲んで、それをこちらに送っていたのだ。

 

「(だとし…)‼︎⁉︎うぐおあおあおあ‼︎⁉︎」

 

気絶したフリをした烏間の鉄拳は、どんなに鍛えても、決して鍛えることのできない男の弱点…股間に命中し、悶絶する

 

「やっと決定的な隙を見せたな。死神も急所が同じでホッとしたぞ」

 

死神の隠し玉を、殺せんせーは最初から見抜いていた。

 

「おまえにやられた殺し屋の様子を話したた、瞬時にあのタコは正体を見抜いていた。奴の頭の速さをみくびっていたのか、檻に入っているなら大丈夫と油断したかはどうでもいい……俺の大事な生徒と同僚に手を出したんだ。覚悟はいいな?」

 

「ぐっ…うおっ!なん…だ………⁉︎」

 

どうにか逃げようとする死神のズボンをしっかりと持っていたのは雄二だった。

 

「助けにきて何もできないとかかっこ悪すぎだろ?」

 

「まっ、待てッ‼︎僕以外に誰が奴を殺れると…」

 

命乞いのように死神は己の有用性を強調するが、そんな物は無意味だ。確かにその技術は素晴らしく多彩だがその全て既に

 

「既に技術(スキル)は、E組(うち)に全て揃っている」

 

今までの鬱憤を全て込めた1撃の鉄拳は、死神を空中で1回転させ、そのままゴッと鈍い音を地面に打ちつけ、完全に意識を落とした

 

「…大丈夫か、風見君」

 

「問題ない。と言いいたいが、早いとこ治療頼む」

 

ふっと笑い

 

「忘れてないか、ひさしぶりに。ここでは先生だ」

 

全員でもぎ取った勝利。だが、雄二には後に引く余韻が残っていた

 




ちなみに
超体育着を貫通する弾丸はある程度威力ある物か鋭い物です。前回読み直したら「あ、やばい超体育着着てんだ」と思い出してつけた後付けですハイ…すいません

ちなみに2
もそⅠとⅡのダメージが少ないと烏間が気絶させた後トドメを刺してました。

ちなみに3
殺せんせーはⅠとⅡを殺したことに気付いています。クラスの皆は半信半疑ですが、知って受け入れることはたぶんできる



たぶん。だから殺した事はここでは教えません

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