暗殺教室 グリザイアの戦士達   作:戦鬼

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死神追跡が多少レベルアップしております




死神の時間・4時限目

歴戦の殺し屋は、当然のごとくさまざまな技能を持っている。そのなかで最高の称号を持つなら簡単なトラップを瞬時に作れる

 

「!………」

 

「追いつけなくなるぞ……トラップか?」

 

先頭を走っていた烏間はドアノブに違和感を感じ、何かしらのトラップがあると確信した。雄二の質問に軽く頷きそのまま静止する

 

「風見君、下がるんだ」

 

「!」

 

この短時間で仕掛けられるのはせいぜい爆薬のみ。だが当然殺傷能力くらいはあるだろうそれを理解してなお、烏間はなんの躊躇もなく開けた。

 

何かが切れる音がしたと思うと次の瞬間ドアを吹き飛ばした。そのあと

 

「チッ思ってたより強力だった」

 

爆発に巻きこまれていた烏間は服が汚れ、多少のダメージはあるが本当に多少のため何事もなく進む。雄二は見た爆風と同じ速さ後ろに受け身を取り、ドアを盾にして爆発から身を守るところを

 

「つくづく規格外だよな」

 

「君も似たようなことくらいできるだろう」

 

「無茶言うな。あそこまでできるのはあんたくらい…!」

 

雄二が気づいた時烏間も気づいた。向かってくるのは銃弾。連射している速度からしてマシンガンだろう。そしてそれを撃っているのは人間ではなく

 

「銃猟犬ってのは本来獲物の発見と挑発がメインなんだがな」

 

6匹のドーベルマンその背中には銃器が取り付けられている。銃を撃てるよう調教されたものだろう。

 

「どんなだけ用意がいいんだまったく………烏間、銃を貸してくれってどうした?」

 

不気味な笑顔…否、人を恐怖させる笑顔をした烏間がいた

 

「俺はな、犬が大好きなんだ」

 

「それは俺もそうだが、まさか強行突破すんのか?」

 

「いや、傷つけるのも、後の事を考え傷つくのもダメだ。動物なら、いい笑顔を見せれば通してくれる」

 

「その威嚇みたいな笑顔を見れば通したくなりそうだが、俺は万が一を考えたいんでな…借りるぞ」

 

「っておい」

 

「殺さねーよ」

 

雄二とて犬を殺すのはあまりしたくない。犬の口元に付けられたものからコードのようなものが見える。それは背中の銃に続き、引き金部分へ繋がっている。その引き金部分に狙いを定める。

 

「っ!」

 

集中時間、射界の狭さ、距離、全てが超難易度。おまけに今使っている銃はスナイプ機能はない。一般的な拳銃に近い。だというのに

 

「よし、無力化した」

 

「…流石だな。では」

 

行くかと進む。銃は撃てないが威嚇をしていたドーベルマンは

 

「殺さねーって言ってるだろ?もう撃てないんだから下がってくれ」

 

「お前らの主人には悪いが、優しく通させてもらうぞ」

 

2人の笑顔。1人は見るものを威圧してしまう笑顔。もう1人は笑顔だけで内面は手を出したものを食らいつくぞ言わんばりのニヒルな笑み。ドーベルマンの戦意が喪失する瞬間だった

 

 

 

「えー。もう、えーだよ」

 

牢屋から死神が取り付けていた監視モニターでその一部始終を見ていたクラスメイト達はハラハラしながら見ていた。しかし、トラップをものともせずに進む2人に唖然としていた

 

「さっきのドーベルマン、風見の狙い撃ちも恐ろしいけど、実際あの2人の笑顔だけでどうにかなったんじゃね?」

 

「わかる。烏間先生笑顔メッチャ怖えーし」

 

「人間を襲っている時が多かったしね」

 

「雄二君の方も、あの笑顔はちょっと怖かったなぁ」

 

「あいつ、たまに殺せんせーを罠にかける時にああいう笑顔してるけど、何しでかすかわからん笑顔だよなぁ」

 

ドーベルマンが礼儀正しいお座りをして道を譲るのを見て苦笑しつつ2人を評価する

 

「烏間先生の真価は、強い理性で抑えこんだ暴力的な野生」

 

殺せんせーが烏間を評価しているとセンサーに反応し鉄柱が除夜の鐘を鳴らすがごとく向かってくる。それを烏間は重心をぶつかる瞬間に下げ、あとは強靭な腕一本で抑えこんだ

 

「一方風見君は数多の知識、それらを上手に使いこなす技量による手札の多さ、修羅場を乗り越えてきた数による経験則による直感」

 

烏間が追撃のボウガンをもう片手で防ぐとさらに別方向からボウガンの矢が飛んでくるが烏間は動揺しない。その矢は烏間を避けるように外れ壁に当たる。直前に後方にいた雄二がボウガンを撃ち、軌道が逸れるように角度を僅かに変えたのだ

 

「彼の能力は烏間先生や死神にはまだ及ばないものの、限りなく近い位置にいます。追いつくのは時間の問題でしょう」

 

「人類最強決定戦にわずかながらでも参加できてるってどんだけだよ」

 

「というか殺せんせー、そう言えるってことはやっぱり雄二君について何か知ってるんですかぁ?」

 

「ある程度は。というか、君達もなんとなくでも気づいているんでしょう?」

 

「そりゃね」

 

皆、やれやれといった表情になる

 

「あれ隠してるつもりなのかな?」

 

「いや、むしろ隠し続けるには不可能って最初からわかってるからあえてかも」

 

「別に話したくらいでどうこうしないんだけどねぇ」

 

雄二に好意のある女性3人はその程度のことで嫌うわけないと口にだし、他の皆も同意する

 

「まぁ、話したくないなら放っておきましょう」

 

その後もぽんぽんと罠を突破していく2人を見ていた

 

「こりゃ勝てないわけだ。才能も積み上げてきた経験も段違いだ」

 

木村の呟いた言葉は生徒全員の答えだ。結局は未熟だから負けたのだと

 

「で、それで君達はどうしますか?」

 

殺せんせーは優しく尋ねる。

 

「今すぐ彼らよりつよくなるか?敵わないからと諦めるか?」

 

強さはすぐに手に入るものではない。どれでだけの才能があろうとも、長い経験、強く印象に乗る経験を何度も積まなければ強くなれない。でも諦めるのは性に合わない

 

「もうわかりますよね。弱いなら、弱いなりの戦法がある。いつもやってる暗殺の発想で戦いましょう」

 

 

一方、烏間と雄二は少々困ったことになる。罠がではない

 

「烏間、どう思う?」

 

「ここまでの罠の数、短時間であれほどつけたのは凄まじいが、多すぎる」

 

死神の技量は凄いとしか言いようがないが、1人で取り付けるには多い。死神は操作室を迅速に占拠するため、追いつかれないように罠を作ったがそれに時間をかけては本末転倒だ。にもかかわらず途中から罠の量が増えている。つまり

 

「あの2人の男達が手伝っていたのだとして、こんな短時間に技量を盗み取ったって事か?」

 

「そうとしか考えられない。……そして、今度はその2人そのものを足止めにしてしたと言う事か」

 

ⅠとⅡ。2人の瓜二つの男がこちらを無機質な目で見据える。だがいつでも攻撃できる体制なのに動かない

 

「実はすんなり通してくれる…わけないか」

 

「命令に従う存在なのだとしたら、おそらく『ここを通ろうとする者を排除しろ』だろうな」

 

広い部屋だ。カメラもない。物置に使っているのかいくつか荷物がある。この先の扉はⅠとⅡの後ろ、距離は1mほど離れて立っている

 

「時間が惜しい。迂回したらそれだけ時間がかかる。烏間、あいつらの相手は俺がする。先に行ってくれ」

 

「いいのか?」

 

「いいも悪いも、死神の技量は俺じゃ届かないおまえの方がいい」

 

「……わかった」

 

雄二と烏間はまず早歩きで進む。スタスタと歩くがまだ反応しない。更に近付く…まだと思った瞬間早撃ちをしてきた

 

「「⁉︎」」

 

 

直前で回避して物陰に左右に分かれて隠れる。が、それはほんの1秒ほど。すぐに烏間が動きだし、両者はそれに反応して銃を向けた。

 

「やっぱり扉に向かう奴を優先するんだな」

 

飛び膝蹴りがⅡに当たり、巻き込まれてⅠも飛ばされる。あらかじめ雄二は烏間よりも後方になるように分かれた。狙いどおり2人は烏間の方が扉に近いとして一斉攻撃をしようとしたが雄二の速力を考えより上だったのかそれとも考えなかったのかはわからないが特攻してきた雄二の攻撃を防ぎきれなかった

 

「まかせる!」

 

烏間を追撃しようとするが今度は雄二がⅠとⅡの前に立って扉を塞ぐ

 

「お前らの相手はこっちだよ」

 

 

「あれ、烏間先生だけになった」

 

カメラのない部屋に入ってすぐ出てこないと思っていたら。出てきたのは烏間だけであった

 

「何かあったのかな」

 

心配になるが烏間が雄二をただ置いていくとは思えない

 

「烏間先生、風見君は?」

 

【さっきの双子暗殺者と戦闘中だ】

 

殺せんせーは烏間に連絡をとって確認したが思わぬ答えだった

 

「そんな!相手は2人だよ⁉︎」

 

「いくら雄二君でも、流石に暗殺者2人と戦闘なんて無茶だよ‼︎」

 

【死神はあの2人を捨て駒にしかしていない。あのまま風見君と共に戦っていれば時間を確実に取られる】

 

葛藤は烏間にもあった。だが彼は信じる方に賭けたのだ

 

【贔屓目じゃなく、真実だけ言おう。彼の方が強い】

 

ⅠとⅡの成長速度は半端ない。だが成長途中だ。今なら2人同時でも倒せると判断した。

 

「信じましょう。私も、風見君の方が強いと思ってますので」

 

 

発砲音が室内に響く。ⅠとⅡは命令に絶対だ。本来なら、今すぐに烏間を追いかけて殺しに行くが彼らが受けた命令は『ここを通ると判断した者は殺せ』だ。雄二もまた通ろうとする者。そして目下最大の障害と判断し攻撃してくる。

 

(武装は、サブマシンガンがそれぞれ2。腰に拳銃それぞれ1。腰にナイフがあったがまだある可能性あり)

 

ⅠとⅡは弾切れになると交代してリロードと攻撃をしてくる。命令を受けるだけの存在だとしてもそれぞれのチームワークは最低限はあるようだ

 

(このまま隠れていたらそのうちやられる…なら)

 

攻めるl。そう決めて物陰から出る瞬間、2人からの砲撃が始まる

 

「で、そう簡単には、いかないか」

 

再び隠れる。雄二の武装は烏間から借りた拳銃が1弾はあと4発。これだけだ

 

(せめてマシンガンの弾が無くなるまで待つか?いや、ダメだな)

 

痺れを切らして攻めてくる可能性もある。

 

「あー2対1とか、やっぱきついな。孝太郎曰く、無理ゲーってやつか」

 

荷物に隠れれば砲撃は続き、物陰なら止まる。ここまで得た情報をもとに、雄二は逆転を模索する

 

(つか、あいつらやっぱり)

 

ある確信を抱いた雄二はその連絡をし、またある命令を受け取る為、烏間に連絡する

 

【苦戦してるのか?】

 

「それなりにな。……あいつら、多分ブースターを使ってる」

 

【‥確かか?】

 

「容赦のなさ、痛覚の無さとそれによる動き。まず間違いない。……だから許可をくれ、烏間」

 

烏間は一瞬黙るが直ぐに

 

【わかった】

 

「ありがとう、烏間」

 

烏間が肯定しその命を出す前に【すまない】と言い、その命令を口にする

 

 

「雄二君大丈夫かな」

 

「あ、見て烏間先生連絡取ってる。多分大丈夫なんだよ」

 

映像に映る烏間は今生徒たちと喋ってない。トランシーバーのチャンネルを変えて雄二と話していると確信した。

 

「…え?」

 

「茅野ちゃん?どったの?」

 

「え。いや、なに話してるのかなぁっておもって」

 

莉桜の言葉に誤魔化す。彼女は烏間の口元を見た。そして、彼女だけがもつ理由ゆえに口元のセリフがなんとなくわかった。その言葉が

 

(気のせいなのかな。見間違い、だよね?いくらなんでも……殺せって)

 

 

side:雄二

 

【聞こえるか、風見雄二?】

 

声が聞こえる通信越しに烏間の声が

 

【目を閉じて、想像しろ風見雄二】

 

想像しろ。その言葉で、頭にまず何もない空間ができる

 

【今、こうしている間も、おまえの仲間が死へ近づいている。わかるか?】

 

わかる。見えてくる。檻の中で死だけを待つ自分のクラスメイト達の姿が

 

【様々な訓練を、様々な時間を、様々な困難を、共に過ごして乗り越えてきた、大切な仲間だ】

 

仲間。そう、仲間だ。大切な

 

【掛け替えの無い仲間だ】

 掛け替えの無い仲間だ

 

【それを奪おうとする者達が、今君が戦っている敵だ】

 

敵。……そう、敵だ

 

【わかるだろ?相手は人間じゃない。獰猛なナニカだ】

 

獰猛なナニカ。得体の知れないナニカ

 

【そのナニカが、君の仲間を殺す。大切な場所を壊す。…いいのか?】

 

いいわけない

 

【本当は殺したくない、それはわかる。だが、殺さなければ殺される状況で何もしないのは臆病者、まして仲間を殺されるのなら、それは裏切りだ】

 

裏切り?

 

【選ぶんだ風見雄二。呆然として仲間も君も死ぬか?血を吸ってでも生きて助けるか?】

 

決まっているそんなもの

 

【では戦え、殺せ、風見雄二。全責任は俺がもつ……目の前の敵を、殺せ】

 

殺す、敵を殺す

 

side:フリー

 

ⅠとⅡはマシンガンの弾切れが近いとし、目標を確実に殺すため一気近付こうと動きだす。

 

「!アァ」

 

だがそれとほぼ同時に雄二が荷物を蹴り飛ばして出てくる。荷物を避けるため、回避行動にでたⅠの右足を撃つ。姿勢が崩れるが痛覚が無いのですぐに立ち直る。ⅠとⅡは同時にマシンガンを向けた。

 

「!」

 

残った弾を全てⅠの引き金がある手を狙って撃ち、指が飛び、血が噴き出すがそれでもⅠはもう片方の手で腰の銃を出すがその腕を取りそのままⅠを盾にする

 

「っつぅ!」

 

防ぎきれない弾丸が雄二の手足に命中したが、痛みを耐えてⅠの腕に持つ拳銃の引き金を無理矢理引いて発砲した。狙いの定まってない弾丸だが多少怯む。その隙にまだ動くⅠを腰にあるナイフがを奪って喉元を切り裂く。血潮を出して絶命させた。その瞬間もⅠは無表情のままだ

 

「んのやっ⁉︎」

 

最後の抵抗か雄二の手を握っていたそのせいで回避が間に合わない。Ⅱは2本のナイフを投げていた。雄二に刺さるまであと1秒といったところで爆発音がし、少し揺れる。

 

雄二は知らないが死神が烏間を倒すためイリーナを巻きこむ形で天井を落したのだ。それが結果的に雄二を助けた。銃によって足にダメージがあったのもあり、ガクリと崩れてナイフを避けるのに成功した。だがすぐに追撃が来るⅡは再びマシンガンを拾い撃ってくる

 

「ぐっおぉ!」

 

どうにかして回避したがまた何発かかする転がり、荷物の影に隠れた。Ⅱはそこに連射した荷物を貫通して当たっている。弾全て使い近付く

 

「終わりだ」

 

いつのまにか雄二が後ろにいた。雄二はナイフでⅠの腕を切り落とし荷物の死角に入って後ろに回り込んでいた。さっきから荷物後ろで流れている血は全てⅠのものだ

 

「あばよ」

 

ゴキリとねじれる音がして、Ⅱは力の全てを失いドサリと倒れた。

 

「チッ、手間取らせやがって」

 

早く、次の敵を、死神をと、雄二は追いかけた




どうやってもⅠとⅡは殺すつもりでした。そして烏間による催眠暗示で強制的に殺し可能状態にするのもここでと決めてました。

言うまでもなく雄二は血だらけですがどっかである程度洗い流します。傷にはスゲー染みるけど


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