暗殺教室 グリザイアの戦士達   作:戦鬼

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さて、どう彼らを戦わせようかな


死神の時間

あれ以降、ビッチ先生は学校に来ていない。その期間は3日目になる

 

「私達、余計な事しちゃったかな」

 

桃花が落ち込み気味に言うと皆同じ事を考えていたのかうつむく

 

「烏間先生は厳しい人だからね。特に、一人前の大人相手だと」

 

先ほどまで烏間はいたが殺し屋との面談があるとの事で先に帰って行った

 

「こればかりは時間が解決する事ですからねぇ」

 

殺せんせーも関わった者としてそして烏間の考えもわかる故、どうにもできなかった。

 

「イリーナ先生に動きがあれば呼んで下さい。先生これからブラジルまでサッカー観戦に行かなくては」

 

「にわかファンのくせに」

 

「普段は野球派でしょ。そっちもそっちでにわかっぽいし」

 

「応援する方も毎回違うし」

 

「ぬぐぅ!……君達最近毒が多くないですか?風見君の影響ですか?」

 

わりと心にダメージを負いながら以前から行きたいと思っていたサッカー観戦の為ブラジルへ向かった

 

「あーあ。雄二君もバイトで今日は来れないそうだし」

 

「来てたら相談してたけどね。…まぁ、流石に今回はどうにもなんないかもしれないけど」

 

彼女達言う通り今日は以前JBから受けた仕事の為ここにはいない

 

「うーんダメ。ビッチ先生ケータイもつながんない」

 

桃花は時間をおきつつ何度も連絡するが毎回出られませんコールばかりだ

 

「まさか…このままバイバイなんて事はないよな」

 

「そんな事はないよ、彼女にはまだやってもらう事がある」

 

千葉の不安をやわらげるようなんて事ない仕草と声で丁重に花束を運びつつ花屋の男は教室を歩く

 

「だよねーなんだかんだでいないと寂しいし、いてくれたら楽しいし」

 

「そう、君達と彼女の間には充分な絆が出来ている。それは下調べで確認済みだ」

 

岡野の言葉に同調するように答える。口から出る言葉は自然に例えるならそよ風の様にクラスの皆に通っていく。

 

「だから僕は、それを利用させてもらうだけさ」

 

バサっと花束を教壇に置く。もっと静かに置くこともできたが合図とする為あえて音がするように置く。そこでようやく全員がその異常に、花屋に気づく。

 

平然とまるで最初からクラスにいたようにその男は溶け込んでいた。それがどれだけ異常なのかなど彼らならよくわかる。訓練をしてきたなら尚更だ。

 

「はじめまして、僕は『死神』と呼ばれている殺し屋です」

 

『死神』…その名はロヴロから聞いていた者もいる。世界最高の暗殺者

 

「今から君達に授業をしたいと思います」

 

だがニコニコとした表情、見た感じの印象、その声を聞くだけではとてもじゃないがそうには見えない。マジックの様に手のひらから花を出し説明をしだす

 

「花はその美しさにより、人間の警戒心を打ち消し人の心を開きます。これは渚くん達にも言ったよね。種類にもよりますが、香りは精神と肉体の疲労感と緊張感をほぐす効果があります。アロマセラピーなどがコレに入りますね」

 

その言葉に渚達買い出し組はわずかだが反応する。彼らがもって帰った花束は彼から購入したからだ

 

「けどそれは本来花がしたくてやってきた進化じゃない。花が美しく芳しく進化してきた理由は虫をおびき寄せるためです………律さん、画像が送られてきたでしょ?表示して」

 

時間差で自分が話をするタイミングに合わせて送る様にセットしていた。つまりは全てが計画通りだという事だ。そしてその画像には…ビッチ先生が写っている。だだし手足を縛られて身動きがとれにくい人がギリギリ入れる箱に詰め込んだ状態だ。所々汚れも見える怪我をしている可能性も充分にある

 

「手短に言います。彼女の命を守りたければ先生方、それとこの場にいない生徒がいるならその子にも決して言わず、君達全員で僕が指定する場所に来なさい」

 

ビッチ先生の状態に驚く生徒達を横目に死神は淡々と説明を続ける

 

「あ、来たくないなら来なくてもいいよ。その場合は彼女の方を君達に届けます。全員に平等に行き渡るように小分けにして、花を詰めてね」

 

黒板にビッチ先生の簡単な絵を描き縦線と横線を書いて表現する。

 

「それでもダメなら次の『花』は君達のうちの誰かにするでしょう」

 

先程から目の前にいて、恐しい事を平然と言っていて、感覚でそれがハッタリでないのはわかる。それなのに全く危機を、恐怖を、敵意を、まるで感じない。むしろ安心してしまう。警戒できない。恐怖ではなくおかしな困惑がそこにあった

 

カルマ曰く、「怖くないって実は1番怖い」その言葉の代表が今目の前にいた

 

「おうおう兄ちゃんよ好き放題しゃべってくれてっけどよ、別に俺等はあんな高飛車ビッチを助ける義理はねー」

 

この様な歪な状況下でもすぐに口を出し、行動できるのは寺坂の才能と言ってもいい。それに呼応する様に吉田と村松も立ち、死神を囲い込む

 

「俺等をどうこうしようってんならそれも無理だぜ。烏間とあのタコがそんな真似ゆるさねー。それ以前に、俺等を無視に例えてんならそれは逆だぜ」

 

「飛んで火に入る夏の虫…かな?」

 

死神は「夏じゃないけどね」っととぼけたように言う

 

「おうそうだ。ここでボコられる事を想定してなかったのかよ誘拐犯?」

 

寺坂の睨みと言葉に一切動じず、ニコニコした表情のまま死神は「不正解」と否定する

 

「君達は自分達が思ってる以上に彼女が好きだ話し合っても見捨てると言う結論は出せないだろうね」

 

優れた殺し屋は万に通じる。それが世界一ともなれば訓練しているとはいえたかが中学生の思考を読むなど造作もない。

 

「そして僕は虫ではなく死神。死神を人間が刈り取る事などできはしない」

 

持ち込んだ花束をバラしながら軽く投げる。多くの花びらを撒き散らし落ちていく。そして死神は彼らの目の前で煙の様に消える

 

「畏れるなかれ、死神が人を刈り取るのみだ」

 

そんな言葉と一枚の地図を残して

 

 

 

 

「目的地到着。これより待機する」

 

【了解。9029待機に入りました】

 

無線を通してその場待ちを開始する。用意したモノを多少整備と微調整をして後は適当に脳内で次に終わった後どうするかを考えていると横に置いた仕事用の携帯からバイブ音がする。掛かってくる相手は限られている。

 

「なんだ?」

 

【調子は?】

 

「悪いって言えば外れられるのか?つか、そんなことのためにいちいち連絡するな」

 

イラッとして雄二は言う。ついでにいうと今日は完全にクラスメイトに会えない事もイラつかせる理由だ

 

【仕事なんだからごちゃごちゃ言わない】

 

「だからって現地集合から作成会議の時間ながくねーか?ほとんどの話が事前にしたもので意味のない会議だったぞ?」

 

【ちょっとは私の気持ちがわかった?】

 

「切るぞ」

 

いい加減イライラしてきたのでそう言って電源ボタンに手をかけようとした

 

【ここ最近のゴミの情報についてよ。ようやく1人だけ自白したわ】

 

すぐに聞く姿勢になる。

 

「よく自白したな。正直、俺はしないと思ってた」

 

【苦労したわ。誰もかれも恐怖でいっぱいだったんだから………まず、結論から言うと彼らは襲われて、脅されたそうよ。指定した場所に行けいかなければ殺すって感じでね。目の前で仲間を複数人殺したり、散々痛めつけたり、影から姿を見せて常に脅したり、まぁ色々ね】

 

「回りくどいやり方だな」

 

【私達の気を逸らすのが目的だったのは間違いないわ。何せ、全員がそれなりに大きな『ゴミ』だし】

 

「それを指示した奴の名は……流石に言わなかったんだな?」

 

【言わなかったわ。というより、言う事ができなくなった】

 

「?……⁉︎それは…」

 

【ええ。その対象が死んだ…というより殺されたの】

 

雄二も流石に驚く。対象はおそらく保護プラス監視もある施設にいたはずだそこで死んでいるという事は

 

「内部の者か?」

 

【可能性としてはね。けどそうだとするなら、上層部は何か、もしくは誰かを知っている】

 

「この通信は大丈夫か?」

 

【秘匿通信よ私以外には通信できないし、私が今いるところも盗聴の類はないわ】

 

少し安心する。だが、そうなると雄二は今その何者かによって今ここに誘導されている可能性もある

 

「JB、この場所は【目標到着、9029号、支援体制をお願いします】」

 

安全を確かめる前にもうひとつの通信機から指示が出たのでそちらに集中する事とした

 

 

 

 

 

「想定外の事態は常にある。そういう事態で敵と接敵したらまず逃げる判断。接敵してない、逃げれない、そういった際は残された情報をまずは徹底的に調べる事……雄二君の言葉だけど、冷静になれてよかった」

 

あの後、調べるとビッチ先生へのプレゼントとして買った花束から盗聴器が見つかった。殺せんせーは盗聴器やカメラは見つけたら即座に片付けるがコレに関しては鼻の匂いで盗聴器の機械臭を消したのだろう。指示された建物付近でまずイトナ製の偵察機でまずは観察していた

 

「盗聴器を仕掛けたって事は、それ以前の情報は持っていない。この超体育着も、俺達の現在の能力もだ。これは間違いなく武器になる」

 

プランとしてはおとなしく捕まりに来たフリをして、スキを見てビッチ先生を見つけて救出。全員揃って脱出

 

「けど、間違いなく死神もそのくらいの事は読んでる」

 

「何を仕掛けてくるかはお互いにわからない。後は、臨機応変、それぞれの長所を活かしていこう」

 

そうと決まればと全員で侵入をする。来客用の扉には鍵がかかっておらず、いかにも入って来いと言わんばりだ。内部はだだっ広いが周囲には何もないし、死神もビッチ先生もいない。警戒を緩めず、端々に散って全員が捕まるのを防いでいると取り付けられたスピーカーからピーンとスイッチが入った音がする

 

【全員きたみたいだね。それじゃ、閉めるよ】

 

出入り口が自動で閉まる。取り付けられた窓も、シャッターが降りて閉まる。こんな倉庫にここまでの開閉システムがあるのはおかしい。おそらくは随分前から作られたものだろう

 

「用意がいいね。こっちの動きは全部わかってるんだ。死神って言うより覗き魔だね」

 

【皆そろってカッコいい服を着てるね。スキあらば一戦交えるつもりかな?】

 

カルマの挑発に何の反応も見せず、死神は問う

 

【へえ、部屋の端々に散ってる……油断はしてないみたいだね。よく出来ている】

 

突然褒めたと思ったら部屋が揺れだす。数名の生徒が驚く。何せ部屋全体がエレベーターのように下へ動いているからだ

 

「捕獲完了。予想外だろ?」

 

降りた所に死神がいたそれを挟むように柵があり、この部屋が檻となった。そして死神の後方に気絶したビッチ先生がいる

 

「お察しだと思うけど、君達全員があのタコを呼び出す人質だ。大人しく来れば誰も殺さないから、心肺しないで」

 

「それってつまりちょっとでも反抗したり、先生を殺す為なら容赦なく殺すってこと?」

 

莉桜が聞くと死神は笑顔のまま

 

「うん、そうだよ」

 

軽く、どこまでも軽い声で言った。

 

「とはいえ人質は多い方がいいし、場合によっては見せしめが必要だ。少なくとも今は殺さないよ」

 

「そう。じゃ、安心した」

 

安心。それが命を奪われないことへのものと考えたが違うとすぐに気付く。

 

「ここだ竹林‼︎空間のある音がした‼︎」

 

先程から彼らは捕まった事に焦り、周囲の壁を叩いていた。そう思っていたが実際は脱出経路を探していたのだ。奥田の煙幕で視界を塞ぎ、竹林の指向性の小型爆薬で壁を破壊した。煙幕が晴れると既に全員が移動した後だった。爆発してからほんの一瞬で27人全員が乱すことなく行動した。それは死神にとって予想外だった

 

「いいね」

 

だがその予想外は、良い意味(・・・・)でだが

 

「嬉しいよ…そうこなくちゃ!」

 

自身の技術の振るいどころその相手がこれだけいるのが嬉しいのだ。

 

「あぁ、君達もちゃんと使わないとね」

 

「「…」」

 

いつに間にか来ていた2人の男。花屋として活動していた時にいた2人

 

I(ワン)(トゥ)。おそらく彼らは3班に分かれて動く。戦闘と彼女の救出、それと脱出経路捜索班。僕の虹彩認証が必要だからね」

 

コクリと頷く

 

「戦闘班は僕が、救出班は無視、捜索班を任せる。あぁ、殺しちゃダメだよ」

 

またコクリと頷く

 

「会話がスムーズで良いね。んーこれが終わった後も試して、ものによっては…購入(・・)してもいいかな」

 

 

 

 

【状況終了。各員、片付けを終えたあとは自由にしてよし】

 

「……」

 

今日のバイトも終わった。終わったが雄二は違和感がある。先のJBの発言から何か仕掛けくるとふんでいたが結局何も起こらなかった。しかも今回は相手今までの怯えたものではなく普通に大きい『ゴミ』だった。

 

「(胸騒ぎがする。とりあえずJBに)…烏間?」

 

個人用の携帯が鳴る。

 

「どうした烏間?」

 

【風見君、今すぐ来れるか?】

 

「(君とつけたって事はクラスの誰か、もしくは殺せんせーが一緒にいる。だが…)烏間先生、そこにターゲット(・・・・・)はいるか?」

 

「?……あぁ、ここにいる」

 

「どうやら本物みたいだな」

 

「?」

 

「こっちの話だ」

 

もし偽者ならもう少し会話量が長い。ここまで事務的な会話は間違いないと判断した。

 

「こっちは今終わった所だ。それでどうした?」

 

「生徒達が行方不明だ。おそらく囚われいる」

 

もし、これが偽者だったとしても、彼には選択肢はなかった




ちなみに

オリキャラ
I(ワン)(トゥ)この2人についての情報は次に明かしますが、死神は彼らをワリと真面目に購入しようかと悩んでる。

「使えるけど人間だしなぁ」
的な感じです。今は貸し出し&試験中で逆にお金もらってます

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