椚ヶ丘中学3-E組、木村はかたる。
(病院は嫌いだ)
別に注射がいやとか、薬が苦くて嫌だとか、そんな理由ではない。彼も中学3年だ。先端恐怖症でもなければ、苦い薬が飲めない子供でもない。なら何故嫌うか
(うちの近所の病院は皆フルネームで呼ぶからだ。これのせいで…俺の人生の苦労が絶えない)
そう言っているように今彼は風邪をこじらせその病院に来ていた。他の病院に行くにしてもただの風邪程度ならやはり近場にしてしまう。
「次は…っと木村さーん」
(きたか)
木村は覚悟を決める。彼が病院で嫌なことはまずカルテに名前を書くこと。フルネームで呼ぶと言う事は、ちゃんとここにもフルネームで書き、ふりがなも書かなくてはいけない。
「木村さーん…木村………⁉︎」
そこに書かれた名前を受付の看護師は二度見する。間違いなく書かれているその名をフルネームを凝視して確認後、しっかりと周りに聞こえるように言う
「き、きむら…
自分が呼ばれるまで待つ男性も検査が終わって落ち着くために茶を飲んでいた老人もこれから帰ろうとしていた者も驚き、フキ出す。そんな見慣れたくもないが見慣れた光景を見つつ、
*
「ジャ、『
「たしかに茅野も俺も皆が『まさよし』って呼んでるのを聞いてたからな……というか、茅野はその辺知らないのか?」
「あ、私は皆より後にE組に転入してきたから」
「おっ。俺とおんなじだったのか…まぁそれはいいとして、なんで皆は『まさよし』って呼んでんだ?」
「武士の情けってやつだよ。殺せんせーにもそう呼ぶように頼んでるしな」
とはいえ彼らは入学式にその名を知った時はかなり驚いたそうだ。
「となると卒業式にも呼ばれるだろうな」
「おい言わないでくれ。また公開処刑されるって思うだけ嫌なんだから」
「そいつはすまないな。そもそもおまえの親はなんでそんな名前をつけたんだ」
「ウチ両親が警察官と元警察官だからさ正義感で舞い上がってつけたんだそうだ。ちなみに弟がいるんだが、そっちは『
「た、大変だな」
名前に対する特別な感情のない雄二は木村の辛さなどわかるわけもなくそう言うしかなかった
「しかも《親の付けた名前に文句言うとは何事だ‼︎》って叩いてくるしよー…子供が学校でどんだけからかわれるか考えたことねーんだろーな」
愚痴が止まる様子もないなと思っていると狭間がぬぅと出てくる
「そんなモンよ親なんて。私なんてこの顔で
「い、いや」
覗き込むように言う狭間は『きらら』という名に合わないどちらかといえば魔女を彷彿させる笑みを見せる
「雄二は、なんかわかりやすいよね」
「たしかに一姫二太郎的な感じだったんだろうな。にしても、最近はそういう名前をつけるのがはやってるのか知らんが、大変だな」
「本当にねー」
「……それはおまえもだろ?『
雄二の意見に皆うんうんと頷く。
「あー俺は結構気に入ってるよ、この名前。たまたま親のへんてこなセンスが子供に遺伝したんだろーね」
「…人それぞれだが、木村もあまり考え過ぎないほうが逆にいいんじゃないか?」
カルマの意見に悩んでいると殺せんせーも話に入ってきた
「先生も、名前については不満があります」
「そうなのか?ならあらためて殺エモンと呼ぼうか?」
「いやそういう意味ではありません⁉︎茅野さんがつけてくれたこの名前は気に入ってます」
「じゃあ何が不満なんだよ
杉野の問いに殺せんせーは気に入ってるから不満だという。それはこのクラスの2名ほど…ぶっちゃけビッチ先生と烏間がその名で呼んでくれないからだ
「烏間先生にかんしては『おい』とか、『おまえ』ですよ…熟年夫婦じゃないんですから…」
「…だって…いい大人が『殺せんせー』とか…正直恥ずいし」
烏間も同意なのか小さく頷く。
「あ!じゃーさ、いっそのことコードネームで呼び合うってどう?南の島で会った殺し屋さん達みたいに」
「あーあいつらな」
男3人と女1人。その女の涙の事を一瞬だが頭によぎりすぐに振り払い雄二は桃花に言う
「あの人達、皆コードネームで呼び合ってたじゃん。なんかそういうの殺し屋っぽくてカッコよくない?」
「良いですねぇ。頭の固いあの2人もあだ名で呼ぶのに慣れるべきです」
殺せんせーを大きなお世話だと言わんばかりの視線で睨むが当然スルーした。
「皆さんが親になった時に名付けセンスも鍛えてられる。…ではルールですが、皆さん各自で全員分のコードネーム候補を書いてもらい…その中から先生が無作為に1枚引いたものが皆さんの今日のコードネームです」
(ふむ、全員分か…なるべくそいつに合ったコードネームにしたほうがいいな)
渡された紙に全員分のコードネームを書く。他の皆も真剣な者、ふざけている者、適当に書く者、明らかに悪意あって書く者様々だ。
そして決まった後で殺せんせーは言った
「今日1日…名前で呼ぶの禁止‼︎」
*
そして迎えた1限目は烏間の体育。今日は森に中で烏間をターゲットにして全員で背中、もしくは腹につけた的に当てるというもの。全員参加のためチームプレイができるよう、各員に携帯による無線をありにしている。
「野球バカ‼︎ 野球バカ‼︎
「まだ無しだ美術ノッポ」
「堅物は今一本松の近くに潜んでる。貧乏委員チームが堅物の背後から沢に追いこみ… ツンデレスナイパーが狙撃する手はずだ」
「甘いぞ2人‼︎包囲の間を抜かれてどうする‼︎特に女たらしクソ野郎‼︎銃は常に撃てる高さに持っておけ‼︎」
甘く見ていたわけではないそんな相手でない事は
「逃すな‼︎あつ森‼︎ キノコディレクター‼︎そっちに行ったぞ‼︎」
「まかして〜…あッ方向変えた‼︎」
「MOTO GP ‼︎ 喜久蔵ラーメン‼︎ コロコロ上がり‼︎」
「だが足りない‼︎俺に対して命中1発じゃとうてい奴には当たらんぞ‼︎それと毒メガネと永遠のゼロ‼︎射点が見えていては当然のように避けられるぞ‼︎」
気付かれてしまい作戦の変更を余儀なくしてしまう
「そっちでお願い凛として説教‼︎」
「OK‼︎いくよヘタレギャルと性別‼︎」
(背後に… 変態終末期とこのマンガがすごい‼︎だな。距離を保って隙を窺っている、なかなかのものだ……⁉︎)
(引くと…あの木につけた袋が爆発し、ペイントを放射する仕組みか。… メガネ(爆) の考えだけではない。おそらく…‼︎)
瞬間、その場所にペイント弾が降りそそぐ。その超距離射撃をしていた人物は今回の作戦を共に立案した
「どうだ?」
「ダメだね気付かれてトラップは発動せず。弾は回避…いや、肩、それと左足に命中してる」
「俺とツンデレスナイパー、それとギャルゲーの主人公の狙撃は常に警戒しているとはいえ1発も的に当てられないとはな」
「けど、目標地点には着実に追い込んでる」
「なら、そろそろ行け」
「了解、DHA ‼︎」
そうして1人の男子が向かう。今回の主役は彼だから
「にしても、サプリメントみたいな扱いはどうかと思う」
一方どうにか的に当たるのを回避した
(中ニ半か…退路を塞いだということは次は)
と
「ギャルゲーの主人公‼︎君たちの狙撃は常に警戒されていると思え。俺に対して2度も同じ手は通用しない‼︎」
(仕上げは俺じゃない)
気配を消し、フリーランニングを活かしてその人物は背後をとった
(やれ‼︎ ジャスティス‼︎)
完全に裏をかかれ、これだけ近くからの攻撃は避けらようもない。
*
訓練は終わり、皆教室に戻っていた
「で、どうでした?1時限目をコードネームで過ごした気分は?」
「「「「「「なんか…どっと傷ついた」」」」」」
殺せんせーはわかっていたのか、そうですかと言っている。
「ポニーテールと乳って…」
「ヘタレってなによ…ヘタレって…………そりゃ、キスされても告白できてないけどさ」
「それで殺せんせー、何で俺のだけ本名のままだったんだよ」
「今日の訓練内容は知ってましたから、君の機動力なら活躍すると思ったからです。さっきみたいにカッコよく決めた時なら…ジャスティスって名前でもしっくりきたでしょ」
「うーん…」
たしかにその通りだがそれでもなぁと腕を組み考える
「安心のため言っておくと木村君。君の名前は比較的簡単に改名手続きができるはずです。極めて読みづらい名前、普段から読みやすい名前で通している。改名の条件はほぼほぼ満たしています」
「…そうなんだ」
「なら、さっそく改名するか?」
「いえ、まってください風見君。もし木村君が先生を殺したら世界は彼の名前をどう解釈するでしょう?」
殺せんせーの質問に雄二はなるほどと笑みを出し答えた
「…『まさしく
殺せんせーは顔に丸を出してニコニコしている
「親がくれた立派な名前に正直大した意味は無い。意味があるのはその名の人が人生で何をしたか。…名前は人を作らない、人が歩いた足跡の中にそっと名前が残るだけです。ですからもうしばらくその名前……大事に持っておいてはどうでしょう。少なくとも暗殺に決着がつくまでは…ね」
木村は今日つかった銃を手に持ってまじまじと見てさっきの事をおもいだしながら
「…そーしてやっか」
と答えた。
「…さて今日はコードネームで呼ぶ日でしたね。先生のコードネームも紹介するので、皆さんは先生の事をこの名で呼んで下さい」
殺せんせーは黒板に自身のコードネームを書いた。
「えいえんなるしっぷうのうんめいのおうじ?」
「いえいえ違います
精神的疲労もあってストレスはピークであり、生徒達から大ブーイングが上がる
「なんだそのドヤ顔‼︎」
「1人だけ何スカした名前付けてんだ‼︎」
「無駄にルビふりすぎだろ‼︎中ニか‼︎」
「にゅわわわ、いーじゃないですか自分のことですし!1日くらい‼︎」
こうして殺せんせーは今日1日バカなるエロのチキンのタコと呼ばれた
ちなみに
原作とコードネームが違うのは中村莉桜をのぞいて全部雄二の考えた名前です。雄二のコードネームは渚が考え、莉桜は前原です