暗殺教室 グリザイアの戦士達   作:戦鬼

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たぶん今回の回でロヴロの弟子の正体がわかると思います


カルマの時間

「烏間先生、立てるか?」

 

「立つくらいは、どうにか、と言ったところだ」

 

どうにか立ち上がるも足元はガクガクしおぼつかない。

 

「無理すんなよ。その様子だと歩くふりで精一杯ってところだろ?」

 

「風見、俺が抱えるよ。万が一の時の1番の戦闘要員はおまえだからな」

 

雄二に代わり磯貝が烏間に肩を貸す。それを支えにどうにか動けた。

 

「30分で、戻れるかどうかというところか」

 

かなり行動制限をされているが象を行動不能にする毒を浴びて動けるのは烏間くらいのものである。

 

「…烏間先生、任せてくれ」

 

雄二が言うと生徒は少しだけ安堵するがそれでも最大戦力の欠落は大きなものがあった。一方で烏間はその言葉の意味がわかり別の不安があった。誰もがそれぞれ不安の中

 

「いやぁ、いよいよ『夏休み』って感じですねぇ」

 

と空気を読んでない呑気な言葉を殺せんせーは言った

 

「何をお気楽な‼︎」

 

「ひとりだけ絶対安全な形態のくせに‼︎」

 

「渚、振り回して酔わせろ‼︎」

 

当然だがブーイングがでる。渚も言葉にはしないが同意見なのでおもいっきりブンブン振り回した。

 

「にゅやー‼︎」

 

「ここホテルだよな、後で汚物処理管にでも落とそうか」

 

「やめてぇぇぇ!」

 

「で、殺せんせー何でこれが夏休み?」

 

ぶん回されながらも殺せんせーは叫んでいたがふいに渚は止めて酔い気味な先生に尋ねる

 

「先生と生徒は馴れ合いではありません。そして夏休みとは、先生の保護が及ばない所で自立性を養う場でもあります。大丈夫、普段の体育で学んだ事をしっかりやれば…そうそう恐れる敵はいない。君達ならクリアできます。この暗殺夏休みを」

 

「…相変わらず、体育方面は容赦ないな」

 

「おや、風見くんはクリアできないと?」

 

「…まさか。俺はできると思ってるよ。それに、ここまで来たんだ。後戻りなんてできない」

 

そう言うと他の皆も静かに頷き、先へ進む

 

 

 

side:ガストロ

 

良い香りだぁ。こんなホテルでも流石は一流なだけはある。メニューにない本格ラーメン汁を用意してくれた

 

「濃厚な魚介ダシにたっぷりのネギと一匙のニンニク…」

 

コレの付け合わせに最高だ

 

「そして銃‼︎」

 

こんな味のねぇ任務の最高の癒しだ。少しこぼれたがまぁ良いしっかり銃に絡めてその味を確かめる…最高にうまい銃に最高に美味いスープ…完璧だこんなもん間違いなく

 

「うめぇ、つけ銃うめぇ…銃身内(ライフリング)に絡むスープがたまらねぇ」

 

「ククク…見てるこっちがヒヤヒヤする。実弾(タマ)が入ってんだろ?その銃」

 

本当に心配してんのかわからないような喋りでボスが聞いてくる。まぁ、一応答えておくか

 

「ヘマはしねっス、ご安心を。撃つ時にも何の支障もありませんし、ちゃんと毎晩我が子のように手入れしてます。『その日一番美味い銃が』『その日一番手になじむ』…経験則ってやつっス」

 

「奇特な奴だ。他の3人もそんなか?」

 

それは当然だ。使い捨ての鉄砲玉でなく技術をつけて仕事をこなしてきた奴らだ。当然拘りも出てくる。そのうちのスモッグについて説明すると更に興味が出たのか

 

「ほぅ、では“グリップ”とあそこで寝ている仮面にも?」

 

「グリップの方は殺し屋の中でも変わっていて、あっちの仮面嬢ちゃんはロヴロのダンナのお気に入りだそうです。この場で俺が撃っても即反応できるはずですよ」

 

「寝ていませんしね」

 

って起きてんのかよ。全然気づかなかった

 

「1度でも死を経験すると、たまにできるんですよ意識を生命を感じ、自分の気配も殺し意識があるまま自身を殺す事が。私の場合お腹に命があった経験もあるから尚の事ですね」

 

「それを更にわからないようにするためにその仮面をつけるのか?」

 

「いえ、ちょっと顔見せがNGなだけです」

 

なんだそりゃと言いたげな顔にボスがなる。まぁ、理由は聞いたが…イカレてるな。おまけに今回、万が一の時も生命が脅かされる時以外はやめるように言われた。しかも金を払ってだ。グリップならまぁ、我慢出来るだろうが不満だろう

 

 

side:フリー

 

5階展望回廊についたE組の足が止まる。奥を隠れて見ると窓に背をつけて堂々と立ち、これでもかと異様な雰囲気を出しまくっている(・・・・・・・・)男がいる。もうここまでくると全員わかる『殺る』側の人間だと厄介な事はもう1つある。ここが展望回廊なだけあって見通しが良く、更に狭い通路。奇襲も数の利も活かせない。どうすると考えていたらいきなり男の背後の窓ガラスがビシッと割れる

 

「…つまらぬ」

 

低い声で男は言う。よく見ると片手がガラスに触れていた。すなわち、握力だけで割ったのだ。ホテルに使う窓だ当然強度は高いそれをだ

 

「足音聞く限り『手強い』と思える者が1人も居らぬ(・・・・・・)精鋭部隊出身の引率教師もいるはずなのぬ…だ」

 

(?)

 

疑問に感じたのは烏間だけだ。たしかに雄二は烏間よりは弱いが充分戦力として見て良い。だが目の前の男は戦力として見ていない。

 

「どうやら、“スモッグ”のガスにやられたようだぬ。半ば相打ちぬといったところか…出てこい」

 

言われて恐る恐るでるが怖くてどうしても聞けないことがあった

 

「“ぬ”多くねおじさん?」

 

そんなのお構いなしとカルマが聞いた事で皆「良かった、カルマがいて‼︎」と思っていた

 

「“ぬ”をつけるとサムライっぽい口調になると小耳に挟んだ。カッコよさそうだから試してみたぬ」

 

「なるほど、日本を若干勘違いしている系の外国人か」

 

(((((こっちも言った‼︎言えんことをあっさり‼︎)))))

 

雄二とカルマならまぁ当然ではあるがやはり驚きはある

 

「間違っているならそれでも良いぬ。この場の全員殺してから“ぬ”を取れば恥にもならぬ」

 

ゴキゴキっと手を鳴らす握力がどれほどあるのか想像もつかない悪魔の手に見えた

 

「素手…それがあなたの暗殺道具ですか」

 

「あぁ。こう見えて需要はあるぬ身体検査に引っかからぬ利点は大きい。近付きざま、頸椎をひとひねり。その気になれば頭蓋骨も握り潰せるが… 面白いものでぬ、人殺しのための力を鍛えるほど、暗殺以外にも試したくなる。すなわち闘い、強い敵との殺し合い」

 

「なら、俺が相手してやる」

 

雄二が前に出ると

 

「…そうしてやりたいのはやまやまだが、断るぬ。お目当てはそこの引率教師ぬ。なにより、おまえには手を出すなと金まで払われているぬ」

 

「言いにくくないのかそれ……で、おまえのボスの命令か?」

 

「それに答える義務などないぬ。他の雑魚も含めて殺るのも面倒だボスと仲間を呼んで皆殺しぬ」

 

懐から携帯を出し連絡をしようとする。警戒は雄二だけに向いていたのと他を雑魚と思い込んだ油断があった。雄二の横を通り手に持った観賞植物を携帯ごと窓にぶつけ窓ごと破壊した

 

「ねぇ、おじさんぬ」

 

その人物は

 

「意外とプロってフツーなんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ」

 

カルマは、いつものように煽りながら前に出た。

 

「ていうか速攻で仲間呼んじゃうあたり、中坊とタイマン張るのも怖いひと?」

 

だが1つ、大きな違いがある

 

「よせ、無謀…」

「ストップです烏間先生。…アゴが引けている」

 

これまでカルマであれば、相手の強さは関係なく余裕を見せつけてアゴを突き出し相手を見下していた。並の人間なら仮にカルマより体格と運動神経が良くとも見下されたことのに逆上して普段の力が出せず、動きが雑になってそのスキをついて勝利できる。その程度のガキなら…だが、目の前にいるのは大人、それも普通の人間がしない修羅場を幾度となくこなして今日まで殺し屋を続けてきたまず間違いない強敵。

 

「……任せる」

 

「任された」

 

いつものように軽く相槌をうつが相手から目を逸らさず油断なく常に相手を観察している。それはテストで敗北した時にはない大きな成長である。

 

「……いいだろう試してやるぬ」

 

上着を脱ぎ、動きをよくする。筋肉質の腕を少し捻り手からコキリと音を立てている。その音が合図だったかのようにカルマは観賞植物を今度は顔面目掛けて振りかぶる。が、余裕ありといったかんじで幹を掴み握力でメキメキと潰した。

 

「柔い、もっと良い武器を探すべきだぬ」

 

「必要ないね」

 

もとよりこんな攻撃で勝てるなど微塵も思ってはいない。すぐに放り捨て相手の掴もうとする腕を紙一重でかわす。今度は逆の手で掴もうとしてくるがこれも避けると同時に腕を使い、払い除けるようにいなす。時に顔を逸らせて時に手首持って動きを止めて退避。一度でもつかまれたらゲームオーバーという無理ゲーもいいところだ。が

 

(立場が逆なだけでいつもやってんだよね、その無理ゲー)

 

普段から殺せんせーの動きを見続けているカルマにはその動きはとらえている。さらに烏間の防御テクニック。

 

「烏間先生、カルマに教えて…ないよな?」

 

「あぁ。殺し屋に防御技術は優先度が低いからな」

 

なぜなら防御しなければいけない状況になっている時点で暗殺ではないから。攻撃も回避も防御もさせず殺す。だからこその殺し屋、暗殺者だ。故に烏間は授業で教えてはいない。カルマの高い観察眼のたまものだ。

 

「今までの烏間先生の動きを見て盗んだか。戦闘の才能もだが観察能力の方にも才能があるな」

 

「あぁ。だが」

 

反撃ができない最小限の動きで回避、防御ができているがいざ攻めようとすればこの防御体制を止めなければいけないその瞬間につかまれるだろう。どうするかとカルマが考えていると相手の動きが止まる

 

「……どうした?攻撃しなくては永久にここを抜けれぬぞ」

 

「どうかな〜あんたを引きつけるだけ引きつけといて、そのスキに皆がちょっとずつ抜けるのもアリかなぁって思って」

 

そんなことできると思っているのかと目で警告をしてくるが、それにぐらつくことなく軽く、されど集中してカルマはつづける

 

「安心しなよそんなコスい事はなしだ。今度は俺から行くからさ」

 

腕を数回鳴らしてかまえる

 

「あんたに合わせて正々堂々(・・・・)、素手のタイマンで決着つけるよ」

 

「良い顔だぬ、少年戦士よ。おまえとならやれそうぬ、暗殺家業では味わえないフェアな闘いが」

 

さぁ来いと言うように腕広げて男は接近してくるカルマを見る。片足に力が込められいると判断してもう片足の蹴りを警戒し見事的中させ腕で防ぐ。つかまれぬようにすぐに半歩引きすぐに攻撃を再開し右腕で攻撃し、防がれてももう一度と見せかけて止め左手をチョキの形にして目をつぶしにいく。がスッと避けられる。だがこれによって足元が疎かになる。当然カルマが気づかないわけがなく左足で別名、弁慶の泣きどころ、いわゆる向こう脛を蹴る

 

「くっ」

 

崩れそうな体制をどうにか保つため体を捻りしゃがむが背中を見せた。正面を向いているのと背中を向けているのとでは行動のステップがもう一度前を向くという動きが追加される為防御にタイムラグが生まれる。戦いの最中に背を見せるのはスキを見せた時と

 

「罠だ‼︎行くな‼︎」

 

時すでに遅く向かっていたカルマは男が懐からだした物、スモッグと言われた男が使っていたガス発射装置と同じ物だった。

 

「一丁あがりぬ」

 

至近距離のガス攻撃を浴びた後カルマは力を抜けふらっと倒れる体を腕で頭を持ってささえながら男はほくそ笑む。

 

「長引きそうだったんで“スモッグ”の麻酔ガスを試してみる事にしたぬ」

 

「汚ねぇ、そんなもん隠し持っといてどこがフェアだよ」

 

「それは違うぞ吉田。そもそもあいつは暗殺者でプロだ。ウソや策略なんて常套手段だ。……納得はできないがな」

 

「その通りぬ。そもそも俺は一度も素手だけとは言ってないぬ。まぁ、それで納得がいかないのは腑抜けていると言っていいぬ。そこまで言うからにはわかるはず(・・・・・)ぬ。拘り過ぎないのがこの仕事を長く続けるコツだとぬ」

 

「…………」

 

「何も言わないか、おまえを相手にしてもつまらなかっただろうぬ」

 

そうしてカルマの表情を見るため再び見る

 

「………たしかに。よくよく考えたら、俺ら(・・)も暗殺者だ」

 

と抑え込んでいた笑いと共に言った瞬間いつの間にかカルマの手には同じガス発射装置がありそれが発射された。ご丁寧に自分は吸わぬようにハンカチで鼻と口を塞いで。

 

「な、なん、だと」

 

「奇遇だね2人とも同じ事考えてた」

 

ニンマリとイタズラを成功させた時の顔になっていた。至近距離からガスを浴びた烏間が受けたものと同じものをだ。ゾウすら気絶させる麻酔ガス。それでもどうにか体を動かして懐から折りたたみ式のナイフを出す。動きはガタガタ、武器は安っぽいもの。普段の授業を受けているカルマには余裕で対処できる。腕を掴み、体勢が取れなくなっている足元をスッと崩して自身の体重を乗せて組み伏せる。男の腕からメキメキと鳴ってはいけない音が聞こえたがカルマは気にせず

 

「ほら雄二、寺坂、早く早く。ガムテと人数使わないとこんな化けモン勝てないって」

 

「そうだと思ってたよ。おまえが正々堂々なんて言い出した時からな」

 

「なぁ。素手でタイマンの約束とかカルマだぞ、1番無いわな」

 

雄二と寺坂に続いて全員が飛びつき、のしかかる。肩のあたりからミシッと嫌な音がしたがお構いなしにのしかかる。烏間先生の指示のもと、手のひらに注意しつつガムテープで縛りあげた。

 

「毒使いの未使用ガス。烏間先生に使おうとして使えなかったやつだな」

 

「ピンポーン。使い捨てなのがもったいない位便利だね」

 

「なにかあるのは間違いないと思ってたが驚いた」

 

「な、何故だ。俺のガス攻撃…おまえは読んでいたから吸わなかった俺は素手しか見せてないのに…何故…」

 

「とーぜんっしょ。素手以外(・・・・)の全部を警戒してたよ』

 

男の問いにカルマはそんな事かといわんばかりに答えた

 

「あんたが素手の闘いをしたかったのは本トだろうけど、この状況で素手に固執し続けるようじゃプロじゃない。俺等をここで止めるためにはどんな手段でも使うべきだし、俺でもそっちの立場ならそうしてる」

 

しゃがみ込んで同じ目線にして言う。敗者を見下さず敬意を込めている証拠だ

 

「あんたのプロ意識を信じたんだよ。信じたから警戒できた」

 

大きな敗北は時に人を強くする。カルマはそもそも観察眼に優れていた。が、本人の性格がそれを邪魔していた。油断も慢心もなく敬意と警戒を持てる人間になった彼は隙が無い人間へ成長した。

 

「…大した奴だ少年戦士よ。敗けはしたが楽しい時間を過ごせたぬ」

 

男もカルマに敬意をもち、清々しい顔になる。いい勝負だった……で済めばいいのだが

 

「え、何言ってんの?楽しいのはこれからじゃん」

 

ウキウキとした顔で出したのはチューブのわさびとからし

 

「なんだぬ、それは?」

 

「わさび&からし。これを、おじさんぬの鼻の穴にねじこむの」

 

「なにぬ⁉︎」

 

悪魔の笑みを見せてカルマは男の鼻に近づける。これだけでも鼻にくるだろう

 

「これ入れたら専用クリップで鼻塞いでぇ…口の中に唐辛子の千倍辛いブート・ジョロキアぶちこんで、その上から猿轡して処置完了」

 

「色々用意よすぎだろ…ほかに何が入ってんだこの巾着袋」

 

ドクロマークと『そなえあればうれしいな』が描かれた物の中にはセンブリ茶やにせうんこやにせゴキブリなど色々エグい物が入っていたその中にわからないカプセルのような物がありそれを取り出す

 

「なんだこれ?」

 

「あ、それ気をつけて。奥田さん特製悪臭化合物だから」

 

「なに作らせてんだ…そしてなに作ってんだ奥田…」

 

と言いつつ雄二も1つ取り出す。

 

「んじゃ、暴れないよう押さえておくから早めに終わらせろよカルマ」

 

「りょーかーい。さぁ、おじさんぬ、今こそプロの意地を見せるときだよ〜」

 

ノリノリな2人にクラスの皆戦慄しながら哀れな男の断末魔をきいていた。

 




グリップさん合掌

次は一気にVSガストロまでいきます

感想、意見、誤字方向いつもありがとうございます。遅くはなりますが基本的に返信しますのであればお願いします。


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