暗殺教室 グリザイアの戦士達   作:戦鬼

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3月中にもう1話出したい……無理かなぁOTL




引率の時間

ロッククライミングには種類がある。はしごや命綱以外のロープを使用して行うタイプ、もう1つは命綱以外の道具を使わず登るタイプだ。

 

現在ウィルスに感染したクラスメイトを救う為ホテルに潜入する彼ら3年E組は少なくとも素人レベルでは道具があっても難しい崖を命綱なしで登っている。特に両親がジムトレーナーでもあり、部活で体操もしていた岡野は暗殺訓練の一環でクライミングを始めるとみるみる成長して小枝、岩の一部分を手にもち遠心力をつけつつバッバッと登っていく。

 

「流石は岡野だな」

 

「こういう事をやらせたらクラス1だろうな」

 

「そういう風見もその岡野についていけるレベルじゃん」

 

やろうと思えば岡野に追いつくことはできる雄二だが今回はそれができない。なぜなら動けずビニール袋に入った殺せんせーを片手にもっているからだ。

 

「すいませんねぇ、風見くん」

 

ヌルフフフと楽できて喜んでる殺せんせーにイラッとしたのか少し登り安全を確認して携帯の動画を見せる。小屋で見せた三村と岡島が制作したものだ

 

「ニュワあああぁぁ!やめてぇ‼︎」

 

「じゃあ袋の中に入れてしっかりと見れるようにしよう」

 

「ギニュアアアアア!」

 

「雄二やめてあげなよ、これから潜入するのに大きな声で叫ばれたらダメじゃん。あとでゆっくり見せてあげよ」

 

「それもそうだな」

 

「あとでもやめてぇー⁉︎」

 

完全防御形態は精神攻撃だけは防御できない。いじり放題なそれは言うなれば

 

「完全防御形態(笑)だな」

 

「やめて‼︎もうやめて‼︎」

 

ニヤニヤと悪魔のような顔をするカルマと雄二に殺せんせーは完全にオモチャにされていた。

 

「まぁ、このくらいは我慢してくれ先生。俺らより凄いあっちの負担をちょっとでも軽くしたいんでな」

 

と下の方を見るとドレスを着たビッチ先生を背に抱え、それでもゆれるからもっと静かに登れ、掴む手が疲れてきたから早く登れだの無茶な要求をするビッチ先生に辟易しながら登る烏間がいた。荷物を抱えて命綱なしで崖を登るというとんでもないことをさらりとしている。

 

「…つうか、ビッチ先生何でついて来てんだ?」

 

「留守番とか除け者みたいで嫌なんだって」

 

「……まぁ、今回は助かるけどな」

 

「「「「?」」」」

 

ボソッと呟いた雄二の言葉が理解できず困惑していると崖を登りきり通用口の近くで全員が着くのを待機した。

 

「来るわけないと思いつつも監視カメラと電子ロック、流石に最低限のセキュリティはあるな。…律、いけるか?」

 

「問題ありません。この扉のロックは私の命令で開けれますし、監視カメラも私達を映さないように細工できます。しかし、ホテルの管理システムは多系統に分かれれいるので全ての設備を私1人で掌握するのは不可能です」

 

「…流石に厳重だな。律、侵入ルートの最終確認を頼む」

 

烏間に言われホテル内のマップを見せる。エレベーターが使えないので階段で行くことになるが裏の人間達が使うホテルだからか、階段の位置はバラバラだ

 

「とはいえ、迷ってるヒマはない。烏間先生、状況を見つつ指示をお願いします」

 

「わかっている。…いくぞ」

 

音を出さないように扉を開閉し潜入し烏間が前を行き、来いの合図で次に雄二が来て二重に確認して他の者も静かに来る。だが最初にして最大の難所がこのロビーだ

 

「警備の数は…10人はいるな。非常階段はすぐ近くだが」

 

1人も見つからずに抜けるのは不可能だった。

 

「警備の数が予想より多い。おそらく敵が配置したんだろうな……囮で1人見つかり、後全員が行けばいいがそう簡単にも行かないだろうな」

 

それが原因で敵に連絡されてもいかない。

 

「何よ。普通に通ればいいじゃない」

 

どうするべきか悩んでいると客が使って回収したと思われるワイングラスを手に持ち呑気にビッチ先生がかるーく言い出す。状況が理解できないのかと何人かの生徒がツッコミを入れるが雄二が止める

 

「任せていいか、ビッチ先生?」

 

聞くとビッチ先生はちらりとロビーにあるピアノを見て

 

「心配いらないわ。言ったでしょ普通でいいわ」

 

足取りが酔った人間のようにふらふらし、わざとらしく見えないように足を見せ胸を揺らす。その姿に警備の何人かの目は彼女に向けられる。1人の警備員の男にぶつかって

 

「ごめんなさい。部屋のお酒で悪酔いしちゃって」

 

「あ、いえ、お気になさらずに」

 

鼻の下を伸ばしていた。さりげなくぶつかっていたがこれにも意味はある。視線の誘導は色気だけではなく動作と行動、そしてきっかけが必要だ。物音がしたら人は無意識にそちらを向くように人と人がぶつかってしまえばどんなに軽くとも意識はそちらに向かう。

 

「来週そこでピアノを弾かせて頂く者よ。早入りして観光してたの」

 

ホテルにピアノとくれば自然だった。実際警備員はビッチ先生をピアニストと勘違いした

 

「酔い覚ましのついでにね……ピアノの調律をチェックしておきたいの」

 

流れるようにピアノの方へ行き自然に椅子に座る。酔っているが動作はピアノニストに見えるような動きだ

 

「ちょっとだけ弾かせてもらってもいいかしら?」

 

ぽわぽわした声で聞き、フロントに確認をしようとする男を止め、審査してほしいと上目遣いで言う

 

「私の事よく審査してダメなとこがあったら叱って下さい」

 

そして、ピアノを弾く。譜面もなく弾くがその音、否、音色は見るもの全てを惹きつける。

 

「幻想即興曲ですねぇ。腕前もさる事ながら見せ方が実にお見事です」

 

全身で色気を出し、そこに鮮やかな演奏が融和していた。遠くにいた警備員もビッチ先生が近くに来てと言えば花に吸い寄せれる虫のように近付き警備はザルになる。ハンドサインで時間を稼ぐから行けと言われ全員非常階段に行くが数人はその姿に見惚れていた。「なんて綺麗な先生なんだろう」と

 

音が聞こえなくなる位置に着いて詰まりそうな息を吐いて茅野はロビーを突破できてほっとした。

 

「すげーやビッチ先生、あの爪でよくやるぜ」

 

「あぁ、ピアノ弾けるなんて全然言ってなかったし」

 

菅谷と磯貝が関心していると烏間は補足をいれる

 

「普段の彼女から甘く見ないことだ。優れた殺し屋ほど万に通じる彼女クラスになれば潜入暗殺に役立つ技能なら何でも身に付けている。君らに会話術(コミュニケーション)を教えているのは世界でも1・2位を争う色仕掛け(ハニートラップ)の達人だ」

 

ゴクリと生唾を呑む。彼女が足手纏いにならなきゃいいと考えて者は特にだ。

 

「まぁ、プロという意味なら相手も同じだがな。あんなウィルスを自作できるやつがいるって事は他にもいるだろう。気張っていくぞ」

 

コクリと気合を入れて上に向かう

 

 

 

side:ビッチ先生

 

それは突然だった。とはいえ何かされたわけでもない。以前の潜入する時のようにピアノを弾いて色気を駆使して人を惹きつけていたあの子達を上に登らせる為に。ピアノを弾いてはい終わりではなく、弾き続けなければ怪しまれるし、脱出の時も自然出なくてはいけない。わかっているのに、エレベーターから出てきた人物を見て演奏が乱れそうになった。

 

こんなところにいたの⁉︎

 

そこで確信した。あの子がいるって事はロヴロ師匠(せんせい)の言っていた連絡の取れてなかった有望な殺し屋数名もこのホテルにいる。いやそれ以前の問題。こちらの情報はあちらは把握しているなら、私があそこで教師をしてる事も知ってるはずせっかくの時間稼ぎも無駄になってしまう

 

(ニコリ)「・・・・・・・・」

 

口パクで「だいじょうぶです」と笑顔であの子は言うそして「ごめんね、姉さん」ともそれはどっちの意味かと問いたいがそれもできず、エレベーターへ再び乗り上へ行くのを見つめるしかなかった。

 

おちつきなさい本当に連絡するなら私を見た時点で連絡する。でもなんでしないの?でも今はここで時間を稼ぐしかない。…気をつけてよあんた達。想像以上に厄介よ

 

 

sideフリー

 

ビッチ先生が不安になっている事など知らず3階に着くと烏間は1度説明を始める

 

「さて、君等になるべく普段着のまま来させたのにも理由がある。入口の厳しいチェックさえ抜けてしまえばここからは客のフリができるからだ」

 

「客ゥ?悪い奴等が泊まるようなホテルなんでしょ。中学生の団体客なんているンすか?」

 

菅谷の言い分はもっともだが烏間はどこか呆れたように答える。

 

「聞いた限りでは結構いる。芸能人や金持ち連中のボンボン達だ。王様のように甘やかされて育った彼等はあどけない顔のうちから悪い遊びに手を染めてる」

 

「なるほど、ここはそういうやつらにとっての理想郷(ユートピア)ってことか」

 

世も末だなぁとまさしく他人事のように雄二も呆れる。

 

「ですから君達もそんな輩になったフリで…世の中をナメた感じで歩いてみましょう」

 

殺せんせーに言われ、皆自分のイメージにあるナメた中学生を演じる。微妙にズレているかもしれないが…

 

「ただし、我々も敵の顔を知りません。敵も客になりすまして襲って来るかもしれない、充分に警戒して進みましょう」

 

気を入れ直して皆進む。途中客とすれちがうが視線も合わさず去っていく。トラブルを避けたいのだろう。そうして中広間に着くと余裕だと思って寺坂と吉田が烏間の前に出る。目の前には黒い帽子をつけて口笛を吹きながら歩く男が1人。それを見た中で1人、不破だけが気づいた

 

「寺坂くん‼︎そいつ危ない‼︎」

 

その言葉に真っ先に烏間は反応して2人の襟を掴んでグイッと後ろへ下げたそれとほぼ同時に男はマスクをしポケットから取り出した物を烏間に向けそこからガスが噴射される

 

視界がガスで覆われるも気配で蹴りを入れ手に持っていた物を飛ばすと警戒を強めた男は舌打ちをして下がる。

 

「…何故わかった?殺気を見せずすれ違いざまに殺るのが俺の十八番だったんだがなオカッパちゃん」

 

それは雄二も、烏間ですら気付かないほどだ。あのまま不破が気付いてなければ寺坂と吉田もガス攻撃に巻き込まれていただろう

 

「だっておじさん、ホテルで最初にサービスドリンク配ってた人でしょ?」

 

と言われてよく観察してわかった。表情が全然違うので別人に見えるが間違いない。

 

「…断定するには証拠が弱いぜ。ドリンクじゃ無くても、ウィルスを盛る機会は沢山あるだろ?」

 

「皆が感染したのは飲食物に入ったウィルスから…そう竹林君は言ってた」

 

ここに来る前竹林は経口感染だから赤の他人に感染させる事はないことを皆に伝えていた。

 

「クラス全員が同じものを口にしたのは…あのドリンクと船上でのディナーの時だけ。だけどディナーを食べずに映像編集をしてた三村くんと岡島くんも感染してたことから感染源は昼間のドリンクに絞られる。___従って犯人はあなたよ、おじさん君‼︎」

 

推理は正しかったのか男はたじろぐ

 

「それはいいとして、なんだその喋り方は…つかおじさん君って…」

 

おかしくないかとかそういうツッコミがでそうになる

 

「ふふふ、普段から少年漫画を読んでるとね、普通じゃない状況が来ても素早く適応できるのよ。特に探偵ものはマガジン・サンデー共にメガヒット揃い‼︎」

 

「えっ、ジャンプは⁉︎」

 

「ジャンプに探偵物ってあるのか?」

 

「うん一応あるよ。よく知らないけど文庫版がでてるらしいよ。あと探偵物じゃなくて歴史物で同作者の新作も面白いからそっちも見てね」

 

「だからいやらしいって‼︎」

 

「もっとマーケティング倫理に配慮して‼︎」

 

雄二の質問からの茅野&渚の定番ツッコミをしていると烏間がガクッと倒れる。完全に倒れることなくむしろ立ち上がろうとしているがそれだけで必死になるほどの

 

「毒か」

 

「しかも実用性に優れていますね」

 

「俺特性の室内用麻酔ガスだ。一瞬吸えば象すら気絶(オト)し、外気に触れればすぐに分解して証拠も残らない」

 

「ウィルスの開発者もあなたですね。無駄に感染を広げない…取引向きでこれまた実用的だ」

 

殺せんせーの言い分に「さぁね」と白々しくいう。

 

「まぁ、おまえ達に取引の意思が無い事はよくわかった。…交渉決裂、ボスに報告するとするか」

 

踵をかえして戻ろうとするが数名の生徒で退路を既に塞がれる。手にはホテルの飾りや椅子を武器として持っていた

 

「舐めすぎだな。こっちが何もしないで話してると思うか?」

 

「敵と遭遇した場合、即座に退路を塞ぎ連絡を断つ」

 

ふらふらしつつもどうにか烏間は立ち上がっていた。

 

「おまえは、我々をみた瞬間に攻撃せずに報告に帰るべきだったな」

 

相当毒に自信があったのか流石に立ち上がったことに驚きを隠せていない

 

「立ち上がるだけじゃなく、しゃべれるとはな…だが、しょせん他はガキの集まり。おまえが死ねば統制が取れずに逃げ出すだろうさ」

 

再びマスクをして(・・・・・・・・)ポケットに手を入れる。視界が定まっておらず、フラつきもある圧倒的に不利な状況

 

「…ジャ!」

 

「⁉︎」

 

それはまさに閃光。先程と同じガス(・・・・・・・)を浴びせようとした男に急接近してその顔に飛び膝蹴りを喰らわせた。グシャァッと骨格が変わったかに思うほどだった

 

(強え…人間の速さじゃねぇ…)

 

弱っているから油断していたわけではない。いや多少はあったかもしれないが0と1の差だ。それなのに圧倒されたことに信じられなかった

 

(…だが、おっそろしい先生よ、お前の引率も、ここ、まで………)

 

倒れる烏間と心配して声をかけているであろう生徒の声を聞きつつ、意識は闇に溶けていった。

 




前回オマケと言いましたがビッチ先生がいないとロビーの時点で結構詰んでいたでしょうね

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