やはり心は叫びたい   作:ツユカ

7 / 22
初めまして、「心が叫びたがってるんだ」にどはまりして
衝動的に書きました。
タイピングも遅く、おそらく亀更新でさらに短いという最悪な作品ですが
もしよろしければどうぞよろしくお願いします。


本編
プロローグ


                  順サイド 

              その日、成瀬順は言葉を失った。

 しかし失ったものは言葉だけではない、例えば父親、例えば母からの信頼、まだ幼き少女には耐えられないほどのものを一度に失った。しかし、少女はそれでも心は失わない。それは玉子の呪いのおかげであった。皮肉な話だが父親を失い、母からの信頼を失ってでも、少女は自分のお喋りで人が傷つくのが嫌だった。

(私は言葉を玉子に封印された。他にもいろんなものを失くした、でも、これで私のお喋りで傷つく人がいなくなった。私一人が耐えて、これから私と関わる人たちが、私のお喋りで悲しまなくて済むのなら、そっちのほうが私はうれしい。)

 少女は幼いながらに考え、この呪いを受け入れた。それがどれほど辛くとも、この少女は呪いを受け入れ続けるであろう。

 

      この少女を救う王子様が現れるのは、呪いを受けてからすぐのことだった。

 

 

                  八幡サイド

              その日、比企谷八幡は声を失った。

 それは、突然のことだった。なんのことのない朝、目を覚ますと言葉を発することができなくなっていた。元々、話すことが好きではなかった。いつも一人で、話す機会がないというのもあり、話すのは妹である小町と両親だけ、彼には友達と呼べるものがいなかった。そしてそれは残酷な小学生には異端に見える。そのため、彼はいじめにあっていた。それが小学校の四年間続いたが、しかし彼は大人に相談などしなかった。そんなことをすれば仕事で忙しい両親に迷惑をかけるからだ。妹にも心配をかけないために様々なことに耐えた、しかしそれの限界が来たのだ。

 失声症これが彼の病気の名前だ。これは心因性の原因から声を発することが出来なくなった状態のことだ。そして、この病気は彼から母、そして妹を引き離す原因となる。

「八幡!どうしていじめられていることを言わなかったんだ!お前も、どうして気が付かなかったんだ!」

 父のこの一言がきっかけになった。母はこの一言で怒り、不満などを全てぶつけ、離婚を提案した。それは突然のことだった。たった一日の出来事で比企谷家はバラバラになった。小町は八幡にしがみついて泣いていた。

(俺は結局小町を守れなかった、小町を泣かせた。)

 少年は、震える小町を力いっぱい抱きしめる。

(言葉は出せない、俺は小町に何も言ってやれない。なんて兄貴だ)

 少年は、強く、激しく自己嫌悪する。濁ってゆく目に気付かずに。

 そして、それから数日後、母が小町を父が八幡を引き取る形で離婚が成立した。

 

         この少年を救う少女が現れるのに、時間はかからなかった。

 




コメントやアドバイス待ってます

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。