やはり心は叫びたい   作:ツユカ

15 / 22
お久しぶりです。本編五話です。

ツユカ@心が叫びたがってるんだ

@tuyuka3kokosake

ツイッター始めました。こちらで活動報告をしようと思います。


五話 八幡サイド

ミーンミーンミーン

目が覚めると遠くでセミの鳴く声が聞こえた。体に汗が流れ、着ているTシャツが張り付いて少し気持ち悪い。時計はいつも通り六時を指していた。聞こえる音は三つ。一つはクーラーの音、二つ目は扇風機の回る音、そして最後の一つが、横で寝る順の寝息である。

(またか……くそ暑いのにこいつは……)

 季節は夏。俺が順の兄貴になってから、四か月が過ぎようとしていた。今日は七月二十日、世間の小学五年生は夏休みのカウントダウンを開始しているであろう。しかし、俺たちにとっては毎日が夏休みなのであまり関係ない。毎日が夏休みといっても勉強していないわけではない。家庭学習は毎日のようにやっているし、学力は普通の五年生と二人ともそう変わらない。あえて言うなら俺の方が順よりも賢い。俺はどちらかというと順の家庭教師だった。今日は……というよりも最近両親は帰って来てない。元々向こうに寝泊まりする予定で引っ越したのだから当然なのだが、順はさみしいと感じているようだ。そのこともあり順には強く一緒に寝ることをやめろとは言えない。こうすることでさみしさがまぎれるのならそちらの方がいい。

 順は寝返りを打つとこちらに振り向いた。薄着のせいで色々と見えそうになるのをタオルケットをかけて回避しベットから出て顔を洗いに行く。毎日の習慣になっているランニングに出かける準備を整えると、靴を履いて外に出る。外は昼間より涼しかったがやはり少し暑い。今日は天気が快晴なのだろう。日差しが強かった。いつものコースをいつものペースでゆっくりと走る。三十分ほどの軽いランニングを終え、家に帰りシャワーを軽く浴びる。そして七時半ごろに朝ご飯を作り始める。順は四十五分ほどで起きてくるので、ちょっとしたものを作れる。白米、味噌汁、玉子焼き、ウインナー、レタスやキュウリの入ったサラダ。定番の朝食を次々と作る。準備ができたところで階段を降りてくる音が聞こえる。あらかじめいつもの文字を打っておいたスマホを持ち、椅子に座って待つ。順がリビングのドアを開ける。いつも通り朝が弱い順はまだ眠そうにしながらも、いつもの定位置、俺の横に座る。そしていつも通り俺の肩に頭を置き二度寝しようとする。そうはさせまいとデコピンを食らわせ、スマホを順の前に持ってきて読ませる。

『おはようさん。とりあえず顔を洗って来い。』

 いつも通りの文に頷き椅子から立ち上がり洗面所に向かう。しばらくすると目が多少覚めたようで携帯を片手にもう一度椅子に座りなおす。そして携帯をこちらに見せる。

『おはよ、お兄ちゃん。いつもありがとね。』

 その文字と笑顔にいつもながら照れながらも、手を合わせて口パクでいただきますという。順もそれに続けて手を合わせいただきますと口パクで言ってこちらに笑いかけてくる。照れるのを隠すように、朝食に向かい味噌汁をすする。順も同じように味噌汁に手を付け、ホット一息つくと朝食を本格的に食べ始め、そして片つくともう一度手を合わせごちそうさま、とつぶやくと皿を流しに運び、洗う。俺も食べ終わると同じように流しに運び、順の横で洗い始める。フライパンなどを洗い終え、順に渡し、拭いてくれる。この四か月、ほぼ毎日のように続けてきた行為だから特に苦もない。もちろん家政婦には来てもらっていた。しかしそれは最初の一週間のみだった。俺はその一週間で家政婦の仕事を見て盗み、父さんに言って家政婦を解雇してもらった。それからは毎日の家事を順とともに分担して行っている。料理などほとんどは俺の仕事だが順には洗濯を全面的に任せている。それは順の強い希望があってこそだ。本当はすべて俺一人でやるつもりだったのだが、

『洗濯だけは順がやる!』

と譲らなかったのだ。まあ、下着を見られたくないとかそんなところなのだろう。

 くいくい、服を引っ張られ、順の方を見ると早くよこせと急かしてくる。最後の皿を拭き終わり、軽く伸びしている順は伸びをやめると携帯で文字を打ち俺に見せる。時刻は八時半を過ぎていた。

『ひと段落ついたし、ちょっと休憩してから勉強しよ?』

 いつものやり取りだったが飽きたことはない。いつでも新鮮な気持ちだ。頷いてソファーに向かう。順と並んで座り、テレビをつける。この時間帯はニュースしかやってない。そのため眠くなり、いつも十五分ほど寝てしまう。しかし、俺にとってはこの時間が一日の中で一番好きだった。順に体を預け、聞こえるのはテレビのアナウンサーの話す音、そして順の呼吸音、順の鼓動、それらを感じながら眠りにつく。いつも通り、順にもたれかかりながら……




ありがとうございました。

番外編のリクエスト待ってます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。