テイルズオブジアビスAverage   作:快傑あかマント

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第44話 カイザーディストR テイクオフ

 

 一行は港へと戻ってきた。ルークはさっさと出港させたい気分だ。

 

 いっそ、船の動かし方でも習おうかとさえ束の間考えたが……

 ヴァン・グランツの弟子は、そんな半端な事では勤まらないと思い直し、潔く諦めるルーク。

 

 それはともかくとして

 

 港湾事務所の建物を通り過ぎようとした時である。前を歩くガイが突然暗がりに入った。

 今日の砂漠の抜けるように晴れた空には、雲など一つもなかったはずだが……とルークは何気なく見上げる。

 

 

 それは雲などではなかった……

 

 

 人間ほどもある巨大な怪鳥が建物から飛び降り、ガイ目がけて襲いかかってきたのだ。

 

「ガイっ!!」

 

 ルークが叫んだ瞬間

 

 ガイがその長身をかがめ、転がるように横へ素早く跳んだ。しかし、怪鳥の足はガイの持っていた書類を弾き飛ばして、無数の紙が辺りに舞い散る。

 

 違う……

 

 それは、鳥などでもなかった。

 人間だ。明確な敵意と殺意を持った人間、すなわち“敵”だ。

 

 

 怪鳥を想わせる不気味な仮面で顔を隠した六神将の一人、《烈風のシンク》であった。

 

 

 シンクがガイを、ガイの持つ音素盤を狙って跳びかかっいく。ガイはシンクの拳と蹴りを巧みに躱すが、剣を抜く隙を掴めない。鬼気迫る速攻である。何故、そこまでガイを執拗に狙うのであろうか?

 音素盤だけが目的では無い様にルークには感じられてならない。

 

「……ルークっ、逃げて!!」

 

 飛んだ書類に飛びついたティアが言い終わらぬ内に、イオンの手を取って船へと走り出したルーク。一緒にアニスも走り出し、二人でイオンを引っ張る形になった。

 

「ミっ……ミュウゥ~っ!!」

 

 ルークの肩に掴まるミュウが悲鳴を上げるが、今は構っていらえない。ルークは走りながら、横目で背後を見やった。

 コゲンタがワキザシを抜き放ちルーク達の背後を守るように、シンクと対峙しているのが見えた。ジェイドは、ティアと共に書類を拾い集めている。

 またしても護られてばかりいる自分に歯噛みするルーク。《英雄》にならなければならないのに……

 

 船が停泊する桟橋へとたどり着いた。イオンたちが船に乗り込んでいくのを見届けながらルークは、

 

「急いで出港しろ!」

 

 と、近くで荷物の搬入作業の監督をしていた兵士に詰め寄った。「は?」と怪訝な顔をされた。突然の事に全く思考が追い付いていない。

 

「追われてるんだ! 急げっ!」

 

と、兵士を船へ押しやると、どうすれば良いと考える。今の自分の剣では邪魔になるだけだ。こんな時どうする。まだ英雄ではない、らしくない自分に何ができると考えると、「英雄らしくない」で閃いた。

 

 ルークはガイたちの方に向き直って、「曲者だっ! 捕まえろっ!!」大声で叫んだ。稽古の時の気勢で鍛えた声には自信がある。のどを潰すつもりで、叫び続ける。

 ルークの声で「何事か?」と、そこかしこ建物や物陰から顔をのぞかせた。訳もわからず顔を出した者もいれば、いち早く異変を感じ鉄材や工具を手にした血気盛んな者もいる。

 

 シンクは、コゲンタの剣を手甲で受け止めながら、ルークの大声と集まり始めた周囲の視線に舌打ちすると後ろに飛び退き、周辺に置かれた大型の木箱に隠れて、姿を消した。

 

 そこへ港の自警団やキムラスカ兵だけにとどまらず気が荒く屈強な船乗りたちが集まってきた。コゲンタは剣を鞘に収めると彼らに近付いていく。

 

 

 その横で、ガイは一息つくと書類を拾うのに加わる。ティアは集めた書類をジェイドに手渡すと、また拾い始める。ジェイドは手を止めて、

 

「これは同位体の研究のようですねぇ。3.141592653……ふむ……」

 

 と、ぶつぶつと考え事を始めた。その横をルークは通り過ぎて、ガイに駆け寄る。

 

「大丈夫かよ?」

 

「あぁ、ヒヤッとしたがな……っ!、ててっ」

 

 ガイはルークの声に笑顔で答えようとしたが、顔をしかめ右の二の腕を押えた。

 

「ケガしたのかっ!? ティア!」

 

「大した事ないよ。ただの打ち身だろう。あいつ、あの細身で良い突き持ってるぜ。きっと、思いきり石でもぶつけられたら、こんな感じだな……」

 

 ティアを呼ぼうとしたルークを、ガイは苦笑しながらも慌てて止める。

 

 ティアもガイの傷を気にしている様だが、手を振って無理やり笑うガイを見て書類を拾う作業に戻った。少しも納得していない様子の心配顔であったが……。ルークも納得していない、後で引きずってでもガイをティアに診せようと決意する。

 

 その背後では、コゲンタが兵士たちと向かい合って、

 

「……奴は幼く見えるが、今まで何十人手にかけた知れぬほどの手練れにござる。尻尾を掴んでも、下手に手を出さぬ方がよろしかろう。」

 

「はっ、ダアトの監査官に協力を要請します」

 

 と、シンクへの対応を話し合っている。しかし、そのシンク自身がダアトの人間(しかも、けっこう偉いらしい)なのだから、いまいち期待どころか信用する気にはルークは正直なれない。

 

 こうして、厳戒態勢となった港で出港準備は駆け足で整えられ、まもなく出港した。

 

 

 しばらくして一行は、キャツベルトの船室で一堂に会している。ルークは備え付けの机に突っ伏して、気を落ち着けると、

 

「ここまで来れば追ってこれないよな」

 

 向かいに座ってミュウを撫でているイオンを気にして、なるべく不安げに聞こえないように呟いた

 

「くそ……。烈風のシンクに襲われたとき、書類の一部をなくしたみたいだな」

 

 しかし、ジェイドと共に書類の順番を揃えていたガイの声に消されてしまった。

 

「なに、概要なら十分にわかりますし、足りない部分はいざとなれば方程式で割り出せますよ」

 

 ジェイドが書類に目を通しながら答えた。今はその顔にいつもの笑みはなく、学者の顔になっている。

 

「わしのような凡人には概要で十分。それで、その数列は何なのですかのぅ?」

 

「これは同位体の研究ですね。ローレライの固有振動数のようですね」

 

 頭の上にいくつも疑問符を浮かべたコゲンタが先を促すと、書類を見つめたまま答えるジェイド。やはり顔は別人のような真顔で、絶えず目線は書面の数字の羅列を追っている。

 

「ローレライ? ……って前にティアが言ってなかったけか?」

 

 ルークはティアと渓谷で話した事を思い出し、彼女の顔をうかがう。

 

「そうね。七つの音素の意識集合体にはそれぞれに名前があって、ローレライは第七音素の意識集合体……つまり、わたし達の神様としての名前ね。だから『ローレライ教団』って言うの」

 

 どうやら正解だったらしく、柔らかく微笑み頷くティア。

 

 そんな彼女の微笑みに、ルークは母 シュザンヌの前で覚えたての剣の演武を披露し、思った以上に褒められてしまった時の事を思い出し、あの時と同じく何故かいたたまれない気分になってしまった。

 

 それはともかく……

 

「音素は一定以上集まると自我を持つらしいですよ。それを操るというか、協力して貰うと高等譜術を使えるんです」

 

 アニスが少し得意げに人差し指を上げて補足した。それが、いわゆる『晶霊』なのだろう。ルーク自身も、第七音素術士(の素質がある)らしいが、やはり話が突飛すぎて全く想像がつかない。

 

「ローレライは、まだ観測されていません。いるのではないかとの仮説ですね。話をしたという先達もいるにはいましたが、なにぶん大昔……しかも、かなりのご高齢の方の報告だったので、いわゆる“妄想”という見方が強いです」

 

 ジェイドがさらにそれに補足する。苦笑しているが表情はまだまだ若干硬い。

 

「それで、その……同位体とやらとは?」

 

 コゲンタが脱線した話を元に戻すため、「もういいっての……」と降参でもするように苦笑いで両手を上げた。

 ティアが「ごめんなさい」というように微苦笑し説明を始める。彼女の説明はこうだ。

 

 同位体は音素振動数が全く同じ二つの個体の事で、一卵性の双子でも指紋が違うように微妙に振動数も異なり、自然界には存在しないとされている。もしも同位体がそこかしこに存在していれば、何かの拍子に日常的に超振動が起きてしまい大惨事になることだろう。

 

 とのことだったが、超振動という言葉に、ルークの肩が「びくり……」と跳ね、視線が定まらない。しかし、幸い、皆話に熱中しており、誰にも気づかれていないようだ。

 

「同位体研究は兵器にも転用できるので、今も軍部も注目していますねぇ。もっとも、その大半の情報や技術は失われ、なかなか難儀しているらしいですよ♪」

 

「昔研究されていたフォミクリーって技術なら、同位体が作れるんですよね?確か……」

 

 ジェイドの呟きに、アニスが生徒が教師に質問でもするような口調で言った。しかし、ジェイドはすぐには答えず、「失礼。疲れですねぇ」と眼鏡を外して、と眉間をもむ始めた。

 

 珍しくジェイドが黙ったので、辺りは静かになった。彼はゆっくりと眼鏡をかけ直し、

 

 確かにフォミクリーなら、レプリカを作る事ができるが、所詮はただの模造品で、何故か音素振動数は変わってしまう。同位体は作れない。

 

 という趣旨の説明をした。

 

「では出来るか出来ないかは別として、連中はルーク殿の同位体を作ろうとしたのですかな?」

 

 そうコゲンタが話の続きを促した時だった。

 

「大変ですっ! 神託の盾騎士団の襲撃です!」

 

 キムラスカ兵が船室に飛び込んできた。かなり慌てているらしく顔面蒼白だ。

 

「敵は何人だ! だいたいで良い!」

 

 ガイがすかさず聞く。そして、その横でルークは自分の顔もまた青ざめるのを感じた。また、タルタロスやカイツールで見た光景が脳裏に蘇ったのである。

 

「それが一人なんです……。浮かんだ椅子に座った、ひどく顔色の悪い男で……。甲板でカーティス大佐を出せと喚いておりまして……」

 

 兵士は幽霊の話でもするような口ぶりだった。彼の理解を超えた人物だったらしい。

 

「やれやれ。ディストですか……」

 

 ジェイドがこめかみを揉みながら、一つため息をつくと、

 

「意見具申させていただきます。その男は馬鹿ですが、危険度は折り紙付きです。私どもが相手をしましょう。でないと余計な犠牲を出す事になると、貴方の上官にお伝え下さい」

 

 本来、指揮権のない立場を考慮してか丁寧かつ柔和な口調で伝えた。

 

 兵士は、あの『死霊使い』の意見具申に「了解しました。」とこれ以上ないくらい緊張した様子で答え、廊下へ飛び出して行った。

 

 程なくして、ルーク達は甲板へと案内された。アニスがイオンが危険だと意見したが、ジェイドが、伏兵に襲われたらタルタロスの二の舞になる、全員で行動し、ディストを取り囲んでいる兵士が揃っている甲板の方が、かえって安全だと説得すると、しぶしぶ納得したように付いてきた。

 

 一行が甲板に出ると、兵士達の中心に相変わらず宙に浮いた椅子に腰かけたディストがいた。彼は武装した兵士に囲まれながらも、せせら笑いを浮かべている。彼はルーク達というよりジェイドが甲板に現れた事に気が付くと、そのせせら笑いを狂喜の笑みに変えて、哄笑を上げ始めた。いや、もはやバカ笑いである。

 

「ふぁ~っはっはっはっ……ゴホッ?! ゴホっゴホっゴホっ!!」

 

 しかし、ディストは突然咳き込み始める。

 

 そんな彼を見ながらルークは、

 

(なんで、こうゆ~他人の失敗って、自分までハズかしくなるんだろう?)

 

 と、しみじみと場違いにも思った。ちょっとした現実逃避である。

 

「ゴホッ……、ジェイド! あなたの好敵手『薔薇のディスト』が死の芳香を届けに来ましよっ!!」

 

 薔薇と言うより食虫植物か毒草だとルークは感じ、動物図鑑で読んだ警告色というのを思い出し、一気に緊張感が甦ってきた。

 

「おやおやぁ、『鼻たれディスト』くんじゃないですかぁ?お久しぶりで~す」

 

「も~ぅ、ディストってば、ま~たそんなコト言ってぇ……。ディストの二つ名は死神でしょ?『死神 ディスト』! 大佐の無駄にエンギ悪い『死霊使い ジェイド』より全然マシじゃん? いちおー神様あつかいってかんがえればさぁ」

 

 不安なルークを他所にジェイドは妙に爽やかに微笑み手を振り、アニスは呆れつつも嗜めるような気さくな口調だが実に意地悪な笑みを浮かべている。

 

「おやおや、アニスはそんな風に思っていたんですかぁ? 傷付きますねぇ」

 

 ジェイドは涙を拭う真似をして、アニスを見たが顔は笑っている。彼らは視線で握手を交わしているに違いない。

 他ならぬ仲間からの緊張感を削ぎ落す言葉に、ルークは滑って転ぶところであった。それにしても、先程の船室での顔とは違って生き生きした顔をしているジェイド。まるで水を得た魚だ……

 

「ジェイドだけならず、アニスまでもぉ! 私は『薔薇』ぁっ!『薔薇のディスト』ですってばぁ!」

 

 一方、ディストの方は椅子に座っているのに転んでいた。『鼻たれディスト』あるいは『死神ディスト』は、ジェイドとアニスに叫びながら、跳び起きた。意外にも身体能力は低くないようだ。

 

「なんと! 『バラバラのディスト』!? 可哀想っ!」

 

「えぇ~! 『バラバラのディスト』!? グロいっ!」

 

 ジェイドとアニスが大袈裟な驚き声を上げた。示し合わせたような掛け合いである。息ぴったりだ。

 

「ちっが~うっ! バラバラでもなぁーい! 私は未完成のパズルですかぁぁ!? 『薔薇』っ!『薔薇のディスト』だぁ!」

 

 ディストの抗議虚しく、やっぱり『バラバラ』になっている。

 

 そのアホらしいやり取りに、その今までの戦場とかけ離れたその姿に、その少ないながらも戦場で得た経験の自信もなくなっていく。

 

「……えぇと。なぁティア?」

 

 『最後の拠り所』というような気持ちで、ティアに助けを求めるルーク。本当に申し訳ないが……。そんなルークの問いかけに、ティアも目の前の掛け合いに戸惑っていたが、気を取り直すように咳ばらいをすると、

 

「えっと、あの方は『薔薇のディスト』様。ダアトにおける譜業開発の第一人者で……」

 

 努めて冷静に話し始めた。

 

「数で劣る神託の盾騎士団に、『人形型譜業』という新たな力をもたらした人物よ。アニスのトクナガもその一種なの。ディスト様が神託の盾の表舞台に現れた前と後とでは、ダアトの『発言力』はかなり増したと言われているわ」

 

 言葉を選んでいるようだったが、どう聞いても絶賛しているようにしか聞こえない。もちろん、媚びへつらう様な雰囲気は、彼女の顔には微塵も無い。という事はこれは間違いなく、何故か味方によって完膚なきまでに破壊されてしまった“戦いの前の空気”を修復しようとしているのだ。本当に頭が下がる。

 

「それだけじゃなくて、世の中の譜業の半分が、彼の考案した技術が応用されているわ。それによって譜業の動かしやすさが、とても上がったの。譜業の事は詳しくないから、『何をどういう仕掛けで?』という話は、わたしにはできないけれど……」

 

 ルークも譜業の事は当然からっきしだが、ディストの言動はともかくとして、彼の譜業……すなわち音素を扱い事に関してはティアの説明で「とにかくスゲぇ」という事は十二分に理解する事ができた。

 

「譜業技術者として活躍の方が多いし、直接の戦果も少ないけど、譜術士としても一流で主席総長を超えるとも言われているわ。わたしやカンタビレ様は『最高の譜術士』の一人だと思っているわ」

 

 それを聞いたルークは、師よりも強い人間がいるなど想像できなかったが、ティアが言うのだから「とにかくスゲぇ」と、やはり思うべきだ。このディストという男は強敵なのだ。

 

「推測だけど、コーラル城の譜業もディスト様が作った物の可能性が高いわ……?」

 

 ティアは声に苦々しい色を滲ませた。

 

「メシュティアリカ・グランツ!!」

 

 ディストが突然、大声を上げたのでルークはビクッして、剣に手をかけた。

 

「はっ、はい!?」

 

「いえ、ここは親愛を込めて『ティアさん』とお呼びしましょう」

 

「えっ? えっと、は、はぁ……」

 

 唐突の展開に呆気に取られて素直に頷くティア。

 

「ありがとうございます、ティアさん。貴女の真摯な姿勢に、私の心は救われました……」

 

 ディストは乱れた髪と衣服を整えながら、微笑んだ。しかし、その顔は不自然……何か企んでいるようにしか見えなかったが。

 ディストの名誉の為に補足すると、彼は決して何か企んでいるわけでもティアに対して邪な感情を向けているわけは無い。本当に心の底からの、純粋な感謝の言葉を口にしたのだ。ただ、元々の彼の顔が、変態て……いや、個性的なだけなのである。

 

「い、いえ」

 

 そんな笑顔は気にせず、恐縮して微笑むティア。ディストは獲物を狙う蛇のように笑い返す。

 

 一方、二人のやり取りを見て、当然面白くないルーク。

 

(こんなヤツに、なんで顔赤くしてんだよ。)

 

 という場違いな感情が浮かんできた。相手は和平への取り組みを妨害し、自分自身の身体にも『危害』を加えた強敵なのだ。場違いすぎて我ながら呆れてしまう。

 

 

 そんな事を考えていると、ディストがわざとらしく咳払いして、

 

「しかし! ジェイドとアニスは許せませんっ!! この薔薇のディストをコケにした罪、思い知らせてやりましょう!」

 

 と叫びながら椅子に座りなおすと、再び浮かび上がった。どういう構造なんだろうか?

 

「ティアさんは、イオン様を連れて下がった方が良いですよ。巻き添えなどにしたくない。いかに美しい私といえども、ジェイドとアニスを相手に手加減できるほど、器用ではありませんからね」

 

 ディストはティアに媚びるような声で『避難勧告』を行う。しかし、彼女は首を横に振る。

 

「はい、イオン様には避難していただきます。でも、わたしは仲間と共に戦います……!」

 

 強い眼差しで返し、錫杖を構えた。

 

 ディストはなるほど……と何度も頷くと、椅子に深く座り直すと胸の前で両掌を組んだ。瞬間、威圧感が一気襲ってきた。これは明らかに殺気だ。

 

「では、貴女にもほんの少し痛い思いをいていただきましょう。とても痛い思いをするジェイドとアニスの看病をお願いするとしましょうか! 出ぇろっおおおっ!!」

 

 ディストは唐突に両手を空へと掲げると絶叫を上げた!そして、

 

「カイザーディストっ!!!」

 

 何かの名前を呼んだ。それは、大瀑布を想わせる轟音と共に海面を割って現れた。それは砲弾のように飛翔したかと思うと、ほとんど衝撃を感じさせずキャツベルトの甲板へと降り立った。

 

 最初、ルークにはその威容を目の当たりにしても『それ』がなんなのか分からなかった。いや、『それ』を一目で理解できる者はそうはいないだろう。『それ』はそれほど奇想天外な姿をしていたのだ。人の三倍はあろうかという大きさの円柱形の身体に、右側からはヤットコ(針金や板金をはさむための工具)のような腕、左側からは削岩機のような腕を生やし、足と表現して良いのか鉄管が折り重なったような物が腰に当たる部分から生えていた。

 

 あえて、本当にあえて云うのであれば、人型と表現しても良い形をした機械である。これだけ複雑な機械である何らかの譜業なのだろう。ルークの脳裏にようやく先程のティアの話に出た『人形型譜業』という言葉を思い出した。

 

 そう、これこそダアトに更なる発言力をもたらした『人形型譜業』の一つ、戦闘用人形型譜業カイザーディストシリーズの一つ、『カイザーディストR』である。

 

「さぁ、ジェイドにアニス。今さら謝っても遅いですよ……」

 

 ディストは、顔から笑みを消した。しかし、凶暴さは各段に増している。

 

「ああ、そうでした……。そちらの公爵子息には、私の研究室にご招待しましょうか。まだまだ検証したい事があります。地道な追試験が『夢』への第一歩ですのでね……」

 

 彼はルークを人ではなく、実験材料でも見るような眼で見下ろした。その眼には、殺意も、嘲りも、怒りも、何も無い。

 

 その静かな眼にルークは、コラール城での出来事を思い出し寒気を覚える。

 

 その瞬間だった。青白い閃光がディスト目がけて走った!

 

(ガイの剣だ!)

 

 直感で確信したルークが仰ぎ見たその先で、甲高い金属同士の衝突音と火花が散った。シングムント派アルバート流『虎牙破斬』だ。ガイの得意技の一つで、ルークも使う『双破斬』の速度重視型といった技である。ちなみに悔しいが、ルークはガイとこの二つの技で撃ち合って、一度も競り勝った事がない。

 

 その度に、ガイは「当たらなければどうという事はない。なんてな♪」などと笑い、ルークをイラつかせた。

 

 にも関わらず、ディストに放たれたであろうその技は、完全に防がれてしまった。巨大な鋼鉄の腕によってである。ガイの剣技に反応するなど、カイザーディストRの見た目にそぐわぬ素早さに、ルークは戦慄を覚える。

 

 ルークがそんな事を思った瞬間に、ガイは剛腕に弾き飛ばされたが、難なく体勢を立て直して着地した。

 

「コーラル城の譜業の事……、アンタに聞けばもっとよく分かりそうだな」

 

「学者としては知識を披露するのは、やぶさかではありません……」

 

 カイザーディストRの頭の辺りで鈍いが長く伸びる音が響いた。甲板に小石が転がっていた。小石といっても子供の握り拳ほどもある。そんな物が当たっても、カイザーディストRの頭には小さな傷ができた程度だった。

 

「む! これは驚いた。譜術でも譜業でもなく、投石とは……。船の上でそんな物が出てくるとは考えもしませんでした。なるほど、隠し持つ方もいますよねぇ。次回は、もっと『指令』に柔軟性を持たせましょう」

 

 とって付けたように丁寧な言葉だったが、顔は嘲りに満ちている。

 

 コゲンタが素早くワキザシを抜き、ディストを睨んだ。

 

「あの古城で、ルーク殿に何をした? 申せ! 申さなければ、もっと驚く事になるかもしれんぞ」

 

「なるほど……ジェイドと一緒にいるだけあって、実にせっかち。結論を焦るのは実に愚かな事。まぁ、カイザーディストRに貴重な実戦データを提供してくれるんです。感謝しなくてはねぇ……」

 

 形は良い唇を弧を描く様に不敵に歪めつつ、ディストはズレた眼鏡の位置を直す。

 

「カイザーディスト!!」

 

 ディストの裏返った大音声で戦いの火蓋が切られた!

 

 先陣を切って、ジェイドの譜術がカイザーディストの巨体に連続で白光が炸裂する。それはジェイドの十八番……かどうかは分からないが、彼が多用する初級攻撃譜術『エナジーブラスト』だ。

 

 しかし、封印術のせいかライガの巣で見せたような神業めいた連発ではないが、威力自体は落ちたように見えないが、カイザーディストの装甲には僅かに傷を付けるまでにしか至らない。

 

「並べ構えるは更なる堅き盾の力……『フィールド・バリアー』!」

 

 しかし、ティアが精密な譜陣を描くまでの時間稼ぎには十分であった。彼女によって丁寧に編み上げられた水の音素が、青く美しい水晶の幻影が無数に形作られ、ルーク達の周囲を舞う。その水晶が砕け散ると同時に、決して視界を邪魔することのない淡い光が、仲間たちの身体を包み込む。

 

 その瞬間、ガイとコゲンタがカタナを翻して、疾走する。同時にティアは譜陣を描き換え、更なる譜術を発動させる。

 

「連ね掲げるは更なる鋭き刃の力……『アグリギット・シャープ』!」

 

 高らかに謳い上げられた聖句によって、火の音素、火炎の幻影を呼ぶ。そしてその火焔が弾けると、ルーク達の武器を包み込む。

 

 ルークは、反射的にガイたちに続こうと剣を抜きかけたが、ティアの細い背中がさりげなく前に出てきて遮られた。そして、柄を力いっぱい握って固くなった手にイオンの細い手が置かれた。

 

 横を見ると、沈痛な面持ちのイオンが、首を横に振り、

 

「ルークは和平の要です。今はこらえて下さい。悔しいでしょうが、ここはジェイドたちに任せましょう」

 

イオンの歯噛みするような呟きに、彼の悔しさが痛いほど伝わってきた。

 

 いや、もしかすると……いざという時、戦うという選択ができる自分よりもその選択肢のないイオンの方がより悔しいかもしれない……、ルークは少し冷静になれた。

 

 戦いは仲間たちに任せ、今はイオンの悔しさに付き合おうとディストからは注意をそらさず、剣から手を放すと、イオンに笑いかけた。しかし、自分でもわかるほど、笑顔が引きつっていた。情けない。

 

 その時だった。

 

「たぁっ!」

 

 ガイの裂帛の気合が聞こえた。彼の腰からカタナが銀光となって伸びた。鋭い金属音が幾重にも重なって響き、カイザーディストの装甲に傷をつける。ごく浅い傷だが、傷は傷である。まったく歯が立たなかった先程とは、明らかに違う。

 

(よっしゃ、イケるっ!!)

 

 ルークは胸中で歓声を上げる。

 

 その間にもガイは攻撃の手を緩めない。カイザーディストに次々と剣を浴びせていく。しかし、当の機械人形はガイの攻撃を意に介す様子もなく、二本の鋼の剛腕を振り回し、彼を追い詰めていく。

 

 しかし、白い小爆発がカイザーディストの剛腕を妨げた。ジェイドの『エナジーブラスト』である。

 

  そして、続けてコゲンタが彼の剣技には珍しい剣を両手で持った上段の構えから基本稽古のような打動きで放った地を這う衝撃波が、機械人形に連続で命中する。ルークやガイの『魔神剣』よりも一回り大きい『魔神剣・改』だ。しかし、どちらの攻撃もカイザーディストの装甲には、ダメージを与える事は出来ていない。しかし、その動きを一時的に止める事には成功したようだ。

 

「ガイ、いったん退がりましょう。援護します♪」

 

 ジェイドが戦場の喧騒の中でも不思議と通る声で言った。ガイは仲間の作った隙に、ルーク達の前に退がった。怪我は負っていないが、その顔は汗で濡れ、肩はわずかに上下している。

 

 ルークは、ここまで消耗した親友を初めて見た気がする。彼は再び剣に手を伸ばしてしまう。

 

 そんなルークを他所に、戦いは続く。

 

「雷よ。『ライトニング』!」

 

「ジェイド、本当に『封印術』を受けたのですね。術のグレードもですが、キレも今一つ……。嘆かわしい」

 

「……と思うでしょう? しかし、そこがこのジェイド・カーティスの根性の見せ所といったところでしょうか?」

 

 ジェイドは、ディストの嘆息交じりの言葉に答えながら、彼に指先を突き出す。すると、緑色の譜陣が浮かび上がり風の音素を巻き上げる。

 

「根性? そんな精神論では、私には勝てませんよ!」

 

 ディストは、その言葉は嫌いだと言わんばかりに声を張り上げた。カイザーディストが、その大声に答えるようにジェイドへ猛然と突進する。

 

 しかしその突進は、別の巨体に止められた。トクナガである。

 

「こっの~っ!」

 

 巨体といっても、トクナガはカイザーディストの半分にしか満たない。それでもカイザーディストの右腕を押さえ込んで、その動きを止めた。

 

「左足を狙えっ!!」

 

 コゲンタが叫ぶ。ガイはその声に反応しカタナを振るい『魔神剣』を放つ。コゲンタも同時に動き、先程と同じ構えから再び地を這う衝撃波『魔神剣・改』を放った。その二つの衝撃波が重なって、カイザーディストの左足に命中し大きな頭から転倒した。

 

 仲間たちが機械人形とディストの気を引いている間に、ティアは慎重に、しかし迅速に譜術を練り上げていく。

 

 そう、彼らは無為無策に効き目のうすい攻撃を繰り返していたのではない。ティアの動作と音素の鳴動をディストの視線から隠すための囮だったのだ。

 

 ガイが一人で、カイザーディストを引き受けているうちにティアはジェイドから、

 

「『アシッド・レイン』という譜術をお使いになれたり、なんかしたりしますか?」

 

 と唐突に尋ねられた。音律士でないと聞き取れないほどの小声だったが、ふざけている様子はなかった。それは現在では音律士や治癒術士の間でも、知る人ぞ知るという珍しい術で、ティアは「よく知ってる……」と場違いな感心をしたが、無言でうなずいた。確かにあの譜術なら、カイザーディストのような敵には有効かもしれない。

 

「では、お願いします。私も頑張ります」

 

 ジェイドは小声で続けると、最後に苦笑し、譜術の詠唱に入った。

 

「解きほぐすは、無慈悲なる光の雨。『アシッド・レイン』!!」

 

 ティアは聖句を唱え終えると同時に、掲げた杖の先に収束させた音素が天を突く。

 瞬時に譜陣が虚空に描かれ、幾筋もの光が、聖句の通り光の雨となってカイザーディストへと降り注いだ。

 

 光の雨は、本物の雨の様にカイザーディストの鋼鉄の装甲を叩き、物悲しくも美しい不可思議な歌を奏で

て弾ける。

 

 この譜術『アシッド・レイン』は、本物の雨を降らせる術ではない。『アシッド・レイン』は物体の分子や原子を結び付け形作る音素のに働きかけ、その結びつきを緩め、あるいは破壊して物体の強度を低下させる為の譜術だ。

 この光の雨を受けた物体はは、あたかも化学物質で汚染された雲から降ると言われる“酸の雨”に打たれた様に、劣化し脆くなってしまうのである。

 しかし、新陳代謝という形で音素情報が常に書き換えられる生命体には全くと言って良いほど効果が無い。ある程度、安定した音素の状態をした物体……すなわち盾や鎧、城壁やカイザーディストのような無機物にしか効果が無い。その効果も、音素同士が結び付く性質によって一定時間で失われてしまい使い所が難しい。

 しかも、譜術や譜業の技術が進歩し、盾や鎧の防御をものともしない強大な術や兵器が登場するにつれて、その意味を失い、今では忘れられた術である。

 

 ちなみに、ティアが何故そんな廃れた譜術を使えるのかといえば、カンタビレの『ワガママ』がきっかけなのは“言わぬが花”だ。

 

 光の雨が止み、カイザーディストの外装全体を覆っていた淡い光が海風に溶けるように消える。術が対象の音素の構成を読み終え、その結びつきを緩めた合図である。

 

「ガイ! コゲンタ! 今がチャンスです!!」

 

 それを待っていたジェイドが手槍を掲げて、高らかに叫ぶ。彼の周り顕在する風の音素が、槍へと集まり紫電となる。文字通り電光石火の刺突がカイザーディストの片足を吹き飛ばす。名付けるならば『瞬雷槍』。タルタロスでジェイドが使った『雷神槍』の簡略化版と言ったところか。

 

 これが、譜術連射を布石としたもう一つの本命。英雄譚や絵物語に習い『譜術剣』と呼ばれる技。正式名称『フィールド・オブ・フォニムス』、通称『複合譜術』の一形態である。

 ティアの様に譜術と組み合わせれば、より大きな効果や別の特性を持つ別の譜術に変化する。

 一方、剣技と組み合わせれば譜術の使えぬ者でも、部分的に上級譜術に勝るとも劣らない魔法的事象で攻撃が可能となるのだ。

 

 さらに“剣”を上手く防げたとしても、“譜術”は防げない。そう、剣や盾で防いだ瞬間、燃える、感電する、凍る、吹き飛ばされる。また逆に、“譜術”を防げたとしても今度は“剣”を防がなければ、やはり無意味。

 この『譜術剣』の厄介極まりない特性が、秘技『譜術剣』の“秘技”たる所以だった。

 

 そして、ジェイドの一突に続いて放たれるガイの高速の四連撃。彼の得意技の一つである『虎牙連斬』だ。……いや、ジェイドの手槍と同じように風の音素を取り込み、刃が紫電をまとう。『雷破斬』とでも呼ぶべき技だろう。

 紫電を纏い高熱の刃と化したガイのカタナは、カイザーディストの両腕を容易く“溶断”し“感電”させた。

 

 カイザーディストは身体のあちこちから激しく火花を散らし、ガクリッ……と膝を突く。しかし、もはや使い物にならない両腕を突き出し、その巨体を支える。それはちょうど、許しを請うように両手をついて頭を下げるかのような恰好だ。

 そして、その下げられた頭を一筋の閃光が貫いた。

 

 その閃光の名は『瞬雷剣』。

 

 ルークも会得し、コゲンタとの旅の合間合間の稽古でさらに磨きをかけた『瞬迅剣』が風の音素を取り込み雷光の突きと化した姿である。

 

 素早さと力強さはくらべるべくも無いが、その前へ倒れ込むような独特の体重移動と足捌きから繰り出されたコゲンタの技は、飛距離だけならばヴァン・グランツの“それ”以上の物だった。

 そんな光景を目にしたルークは、仲間たちに頼もしさを感じると同時に悔しさのような焦りを感じずにはいられない。物語の中から出てきたような譜術剣と、部分的に師を超えた技、何も出来ていない自分、無性に悔しい。

 

 だが、さらに同時にほっとしてもいた。これで戦いも終わりだ。いくらディストが名うての譜術士でも、たった一人でこれだけの人数を相手にするほど無謀ではないはずだ。

 

(勝っ……いや、終わった)

 

 自分の事はもちろんだが、ティア達が無事なうちに収拾がついて良かった。みんなが無事なら勝とうが負けようがどちらでも良い。いや、これは矛盾しているだろうか……と、ルークがそんな事を考えた時だった。

 

 カイザーディストの頭に剣を突き立てたコゲンタが、そこから動いていない。彼はワキザシを両手で掴んだまま、動いていないように見える。

 コゲンタは市井の剣士である。軍の兵士や騎士のように高度な譜術剣どころか一般的な譜術の訓練も受けた事もないのだ。ジェイドとガイに合わせて、ぶっつけ本番で秘技を繰り出した。そして、彼は失敗したのだ。譜術剣が彼の予想よりも深く刺さり過ぎたのだ。

 

 コゲンタとて手入れでやせ細った剣が惜しくて、そんな事をしているのではない。今、彼がいるのは『戦場』という人外魔境、さらに背後には守るべき仲間たちがいるのだ。「おいそれと剣を手放して良い物か?」と数瞬思考を巡らしたのだ。

 

 しかし、カイザーディストの補助機動が作動するのには十分の間であった。機械人形は突如、沸騰したポットのように蒸気を噴き出して、ガイに切り落とされて短くなった腕を甲板に振り下ろす。何度も何度も、駄々をこねる子供のような動きで暴れ始めると、鉄で補強された甲板もとうとう耐え切れず、木片と鉄片を辺りにまき散らし始めた。その暴力の渦の中心にコゲンタは取り残されてしまった。彼は機械人形の動きに合わせているが、いつ踏み潰されるかわからない。

 

 アニス、トクナガがその巨体で仲間達に飛んでくる破片を受け止める横で、ガイが何事かを叫び、ジェイドとティアが瞬時にそれぞれの譜陣を瞬時に描く。

 ルークにはそんな彼らの挙動がひどくゆっくりに見えた。何故、そんなに皆がのんびりしているのかが理解できない。

 

(オレが、やらなきゃっ……!!)

 

 しかし、ルークの心の内で不安感と焦燥感が、使命感に換わるには十分な時間。その一瞬の刹那、ルークの脚はもう動き出していた。

 正真正銘の全身全霊のはずなのだが、身体が上手く動かない。速過ぎる思考に身体が追いつけないのだ。しかし、集中力が一歩ごとに増していくのを実感するルーク。不可視のはずの音素になる前の色とりどりな光の粒まで、見えてしまいそうなほどにである。もっとも、彼にはそれを理解する知識はなかったが……。

 

 ガイがやった事を真似るだけだ。決して、難しい事ではない。剣の修行も、いつもヴァンの動きを真似る事から始まる。だから、真似は得意なのだ。

 

 そして、離れた相手に対して走り寄って繰り出す技は、『双破斬』と決めている。……というより、咄嗟に出すのは大抵『双破斬』だ。なんとかの一つ覚えなのかもしれないが、習熟度には自信があった。

 

 ルークが一歩進むごとに、剣に緑色の光の粒……風の音素が集まっていく。

 

「おっさんっ! 避けろぉ!」

 

 ルークが叫んだ瞬間、コゲンタはワキザシを手離して転がるようにカイザーディストから離れる。あわやという所をカイザーディストの剛腕が掠めていく。

 

「おぉぉぉっ!!」

 

 疾走の勢いそのままに、ルークは烈昴の気合と共に、風の音素を纏い紫電を放つ渾身の『双破斬』を繰り出す。

 

「っりゃあぁぁぁっ!!!」

 

 鋼鉄製の“唐竹”を大上段から叩き斬り、返し刀で最下段から斬り上げる。そして、駄目押しとばかりに跳躍し斬り砕く。

 

 その瞬間

 

 それがリンゴやスイカであったなら大失敗であろう、いびつに歪んだ頭を揺らし斬り上げられた姿勢のまま固まったカイザーディストの身体を巨大な雷光が貫き斬り裂いた。




 今回は、展開を早くしようと工夫してみた回でした。しかし、充分長かったですし、色々詰め込んだ印象になってしまいましたね。

 今回の中心は、後半のディストとの戦闘でしょうか?
 機械の描写もなるべく具体的に描いたのですが、複雑になったかもしれません。今後は分かり易さも両立させなくてはと反省しています。それにしても、カイザーディストRは海の真ん中に出没するのに、何故『水属性』に弱いのでしょうか?不思議です。
 
 それから、何よりディストの性格がけっこう違いますね。後で見直したら、ティアにちょっかい出してるように見えますし、ファンの皆さんすみません。

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