日間ランキングに載るとは…ありがとうございます。
万里花好きが増えないかななんて。
では続きです。
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展望台からの帰り道、晴れてカップルとなった私たちは仲良く手をつなぎながら歩いています。
夜のせいかはっきりと二見先輩の顔は見えないけれど、私はさっきからずっと顔が赤くなっていて、心臓の鼓動が聞こえてきます。
12月だからか気温も冬らしく寒くなってきたので、こうして素肌同士くっついた体温の暖かさもいいなって思えてきました。
「あんまり時間遅くなってしまったらご両親も心配するだろうし家まで送るよ」
「ありがとうございます先輩!」
「まあ、もっと一緒にいたいってのもあるけどなハハハ!」
「えーー、なんかその台詞は私が言うところな気がします、嬉しいですけど」
さっきの告白成功からのアメフトタックル事件で舞い上がっていた私たちは周囲にたくさんの人がいることに気が付きました。
それもそのはず、デートスポットで有名な場所だ。クリスマスで浮かれたカップルがたくさんいるのは予想できるだろう。
めっちゃ見られてるーー!!ってなった場合どうするか、答えは逃亡である。
二見先輩に目で伝えると『分かったぜ』と言いたげな表情で答えたので、手を引いて歩いたまでは良かったのだが、緊張のせいか片足と片手が一緒に出てしまい珍獣みたいなアクションをしちゃったは死ぬほど恥ずかしかったよぉ。
そんなことがあったからか、先輩は帰り道でお話する時は冗談を言ったりからかったりして、気をまぎらわせてくれようとしているのが分かって嬉しく思ったりしました。
今となっては自然に私から手をつなげるまで経験値が貯まりましたよ。
確か…恋人繋ぎだったかな、あれやってみましょうか。今の私なら『もう、何もこわくない』と、どんな敵もティロ・フィナーレで倒せる気がします。
風ちゃんが『それって死亡フラグじゃ』なんて言ってた様な気もしましたが勘違いでしょう。
指と指を絡ませて握る…こう聞くとちょっとえっちな気がします。
今日の私ならできる、やれば出来るのだ!
「えいっ!」
「うぉっ」
「あ、たわわ…やっぱり無理~~う~~~ガンダムぅぅ!!」
「え、ちょ、ちょ!…ちょ待てよ!」
思い切って恋人繋ぎをしたけどやっぱり恥ずかしかったよ。
あとは先輩のモノマネクオリティは期待してはいけない。
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なんやかんやあったけれど春ちゃんを家まで送ることができた。
途中指を絡めてきた時はびっくりしたけれど、すぐ手を離してダッシュで走り去っていく春ちゃんの背中は小さく見えた。
桐崎さんや鶫には走力で到底勝てないけれど、春ちゃんに追いつくのは簡単だった。
「久しぶりな気がするな和菓子屋おのでら」
「せっかくですから寄っていってくださいよ先輩」
「じゃあお言葉に甘えようかな」
扉を開けて店内に入るとクリスマスっぽい仕様になっていた。
クリスマスツリーの飾り付けも気合い入っているし、トナカイとサンタの可愛いイラストも展示していた。
老舗和菓子屋さんとは思えない内装にチェンジしているとは。
「いらっしゃいませ」
そう二人を出迎えてくれたのはサンタコスに身を包んだ小野寺小咲だった。メインは赤で白のラインが所々に入っており非常に可愛らしい。
いつもの売り子の服装も可愛いが、普段のお淑やか系から露出が増えた服装となると印象もだいぶ変わるものだとまじまじと見つめながら思った。
さすがは大天使小野寺。その可愛さは千年に1人とかそういう次元でも納得できる。太ももが結構露出していて色気も感じさせるとは‥視線が吸い寄せられるように見てしまう。
彼女は内気な性格ゆえ恥ずかしくないのだろうか。だが、よくやった!
「よ、小野寺、似合ってると思うよ?楽には見せたの?」
「2人ともお帰り。え!?み、見せてないよぅ!」
「お姉ちゃんぐう可愛。写真撮るねー」
「じゃあ俺も」
「2人ともストップストップ!」
和菓子屋だけど今日は洋菓子に染まってんなぁと思いながら見てみると、少し違和感があった。キャラクターのクッキーぽいやつやケーキをじっくり見た瞬間、電流が走る。
「これは、まさか‥」
「そう、洋菓子だと思った?残念、和菓子でした!」
小野寺らしからぬ両手を腰に当てて渾身のどや顔を披露したのだ。全く腹は立たない、むしろ可愛いとしか言葉が出なかった。
隣の春ちゃんも「どやお姉ちゃんも可愛い」と言っていたが全くもってその通りであると納得したのだった。
「それにしても綺麗に作れるもんやなぁ」
「飾り付けとさ細かい作業はお姉ちゃんすごいんですよ先輩」
「これで味も良ければ文句なしなんだけどなぁー」
「あーー」
「もぉ!私もそれわかってるからね!まだ修行中だから」
「みんな救急車に運ばれましたからね…」
「そこまではいってないよ!」
小野寺小咲の料理センスはうまく言葉にできない。
見た目だけは良いが味が壊滅的という奇跡の未技である。
少し前に学校で調理実習があった時のことだ。完成品をもらって口に入れた所で意識を失ってしまったのだ。
どんな味だったか分からない、けれどヤバイってことだけは伝わって欲しいと思う。
一種のトラウマ的思い出だったりする。
全く、こんな天使みたいな見た目で劇物つくるとは神も不条理なことしやがると恨んだのは懐かしい。
「それはそうとクリスマスデートはどうだったの春?」
「楽しかったよー!あと実は‥」
「お付き合いさせて頂くことになりました」
「あー!二見先輩に台詞取られちゃった」
「えーーー!?そ、そうなんだ。春、良かったね」
慈愛の表情で祝ってくれる小野寺さん、やはり女神だ。
「春のことよろしくね、二見君」
「任せてくださいお姉さん」
「ちょ、それはやめて。蕁麻疹でるから。二見君にお姉さん呼びはいろいろとキツイかな、本当に」
「こんな毒吐く小野寺は初めて見たよ」
「奇遇ですね私もです」
それから小野寺オススメの和菓子をいくつか購入して帰ろうかと思ったところで春ちゃんからこう言われたのだ。
「先輩って確か一人暮らしですよね?夕食もう出来るみたいなので一緒に食べませんか?」
「小野寺家が良ければ喜んで」
と話していると裏から小野寺のお母さんらしき人が現れたのだ。
この世界の母親は若いのが当たり前なのかな。小野寺姉妹から分かるように母親もかなりの美人だった。
おもわず姉御、姐さんと呼んでしまいそうだ。ソード・カトラスを持たせれば天下のレヴィ姐さんみたいだ。
「あれ?その子、春の友達?」
「はい。春さんとお付き合いさせてもらっている二見貴一と言います」
「へぇ‥、まさか春が彼氏を連れてくるとはねぇ。女子校育ちだから小咲のが早いかと思ってたけど」
「お母さんの予想を超えれました、よし!」
「えーー」
それから小野寺のお父さんにも挨拶して、小野寺の食卓に混ざることに。クリスマスっぽいチキンやシチューなど美味しく頂きました。
会話の中で「1人暮らしなんで料理は結構するんですよ」からの「和菓子の作り方分かる?ひとつ作ってみない?」となりスパルタ教官の調理実習が始まったりしたのだ。
手取り足取り教えてもらいながら無事完成し、どうやら味も初めての割には及第点に達していたみたいで、
「よし、二見君。あんたうちにお婿に来なさい」
『ふぁっっ!?』
小野寺母、菜々子さんの婿来い発言で、自分と小野寺姉妹、小野寺父が吹き出したのは仕方ないと思う。そうなったら小野寺のこと本当にお姉さんって呼ぶことになるんだよなぁ。
「自分で良ければ喜んで」
「ふふ。春のことよろしくね」
「はい!」
「うーー、二見先輩ぃぃ」
「私、さっきから蚊帳の外なんだよなぁ」
「網の外だ、この歴史的ばかもんがっ、いや間違えてしまった。春がついに彼氏を家に連れてきたから気が動転していたよ。父親として喜ぶべきなのに」
小野寺のお父さんは、優しそうな人で眼鏡がよく似合っていた。絶対尻に敷かれてそうだよなぁと確信できた。
イメージするならまどかのお父さんみたいな感じだろうか。
可愛い可愛い愛娘が男連れてきたら父親としてなんか複雑なのかもしれない。愛ゆえに。父親になったことないから知らんけど。
小野寺はなぜか空気のように透けて見え、ステルス小咲に変身しており、春ちゃんは頭がショートしたのか足元がフラフラしているカオスな空間になってしまうのだった。
「ステルス小咲の独壇場っす!」これは違うないろんな意味で。
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名残惜しくも小野寺家を出て、自宅に向かって冬空の下歩いている。
今日はいろんな事があった、クリスマスデートからの告白、小野寺家との団欒など。
まさか春ちゃんから告白されるなんて驚きだった。元々気になっていた可愛い後輩。
元気で面倒見がよくて優しい子、その屈託のない笑顔にどれだけ元気をもらったか。
出会ったころのように紳士ぶった先輩キャラのメッキは剥がれ落ちてるし、素でいれるからこれから楽しみだ。
『彼女が出来ましたー』と我が親友には報告をしないとな。
携帯電話を取り出して通話履歴から一条楽なる人物に電話をかける。
彼は集英組というヤクザの跡取り息子である高校生という特殊な境遇に身を置いている。
あとは困っている人がいれば相手が誰であれ助けてしまうお人好しだ。ラブコメの主人公的な感じの少年が親友だったりするのだ。
「よぉ、楽、今大丈夫か?」
「貴一か、今忙しいからちょっとだけなら大丈夫」
「じゃあ手短に話すわ。俺、小野寺と付き合うことになったから」
「そうなのかおめでとさん。え、あれ…ん??今、小野寺って言った?」
「もちろん買い物に付き合うとかじゃなくて恋人的なやつだからな」
「ちょ、え、は、ハアァァ!?マジ!?」
「じゃ、切るね」
「ちょ、待っ」
楽の台詞が途中で切れてたような気がするがいいだろう。
まぁウソは言ってないからね、ちょっとしたドッキリだ。
こうやって小野寺が誰かに先に取られる可能性があるってことを自覚してほしい。
長年片想いをしている事を知っているが、言葉にしないと伝わらない事があるのだと知ってほしい。
やらないよりかはやって後悔するほうがいいとは言わないが。
実際はそんなことを考えてした訳ではない、なんとなくノリで。
だから楽よ、『済まぬ。』
春ちゃんギザ可愛ゆす。
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