げんそうごろし!~Imagine Breaker~【凍結】   作:海老酢

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【第五話】えんそく

「そうだ、遠足をしよう」

 

彼女、丈槍由紀は控えめな胸を張りながら宣言した。

各々が自由行動に勤しんでいた学園生活部一同は由紀のあまりにも唐突な提案に一瞬、その行動を停止。

その間にも由紀は自慢げな表情で懐から一枚の紙を取り出し、顧問兼国語教師である佐倉慈の前に突き出す。

 

「遠足のしお……り?」

「そう、そうだよめぐねぇ!」

 

紙に書かれている文字を口に出して読む。

すかさず由紀はもう一枚の紙を取り出す。それは『学園生活部による遠足』と題された文書(?)のようなものだった。

 

「わたしは気づいてしまったんだよ」

「何を?」

 

悪役がよくするようないかにも悪そうな笑みを浮かべながら由紀は腕を組む。

周りから向けられる痛い子を見るような冷たい視線にも臆せずに由紀は話を続ける。

 

「この学園生活部は学校の外には出られないという規則(ルール)がある。そうだよねりーさん?」

「ええ。そうよ」

「けれど、学校行事なら学校に出たことにならない!!!!!」

 

ドン!!という効果音でも付きそうなほどに迫真めいた雰囲気が由紀の周囲を取り囲んだ。

だが学園生活部が纏う雰囲気は全くの別物で。

 

『…』

 

キョトンとしていた。余りにも屁理屈な言い分に呆れている者もいる。

周りを囲む部員と顧問から溢れ出る空気に絶対の自信を掲げていた由紀もアワアワと慌てだす。

 

「ならないよね?」

「…」

「ねっ!?」

「……さぁ?」

 

最近の部員の流行は由紀から視線を外すことなのだろうか。

何とか同意を得ようと両手を振り回し猛アピール。それを眺めている部員達の目が暖かいものに変わっていくことに由紀は気づかない。

 

「てか遠足って……そもそも学校行事は学校がやるから学校行事なんであって、部活でやったら学校行事になんないだろ?」

「はうっ!!」

 

胡桃の的を射る正論に奇妙な悲鳴を上げながら地面へ倒れ込む。

四つん這いになった由紀からは暗いオーラが漂い、彼女の周りの空間だけを近寄りがたいものへと変えていく。

顧問である佐倉も何とか対話を試みるものの、正論を叩き込まれた由紀の背中に漂う哀愁のようなモノに何だか居たたまれない気持ちになり、そっとすることにした。

そんな重い空気の中で。一人のツンツン頭が立ち上がる。

 

「でもいい案じゃないんですか?」

「!」

 

ズバッ!と勢い良く由紀が上条の賛成する声を聞き、立ち上がる。

その勢いのまま、由紀はシャベルを磨き始めた胡桃を指差す。

 

「くるみちゃんは頭が堅いよ!わたしたち学園生活部の踏み抜いた場所が道になっていく。そう、わたしたちが新しい道を作っていくのだよ!!」

「うっ……」

「ふ、わたしの勝ちだねくるみちゃん」

 

ドヤ顔を浮かべ、後ろを振り向く。

対照的に胡桃はなんだか微妙な表情をその顔に貼り付けている。

由紀に敗北したのが悔しいのだろうかと立った状態の上条は予測してみた。

 

「どうします?」

 

椅子に座りながら家計簿のチェック作業を行っていた部長の悠里は隣に座っていた顧問である佐倉に尋ねた。

目を瞑って唸りながら佐倉は遠足をするべきか、遠足をすることによって生じるメリットとデメリットは何か。考えに耽る。

悠里や由紀はもちろん先輩や胡桃の目線が思考する佐倉へ集中し、その判断を待った。

そして。唐突にその瞼が開かれる。部員達の気が無意識に引き締められ、少しばかりの緊張感が部室を覆う。

 

「丈槍さん」

「は、はい」

 

神妙な面持ちな佐倉の姿につい由紀は敬語で返事をしてしまった。

由紀の緊張はさらに高まってゆく。その緊張度を例えるのなら、弁論大会で大勢の生徒達の前で発表するぐらいだろうか。上がり症の人間ならば地獄のような一時に違いない。

そんな由紀の心情を知ってか知らずか、佐倉は由紀の右手を両手で包み込む。

 

「みんなの言うことを聞いて、部活の規則を忘れずに守る……出来る?」

「うん」

 

佐倉の問いかけに即答する。

由紀にとってその行為はいつもやってきたことだ。

「みんな」の言うことは今までだって聞いてきたし、部活の規則も曖昧だったけれど守ってきた。

彼女にとっての当たり前、日常行動なのだから。だから由紀は即答が出来たのだ。

彼女の返答に満足したのか、佐倉は笑みをその顔に浮かべ、由紀の手を包み込んでいた両手を離す。

 

「それじゃあ、行ってきなさい。目一杯楽しんできてね?」

 

その言葉を聞いた由紀は歓喜の声を上げた。大声で。

許しが出たことで由紀を内側から圧迫していた緊張が消え去り、その穴を埋めるように喜びが湧き出てくる。

衝動は止まらず、ぴょんぴょんと跳ね回りながら上条の背中へ何度も平手打ちを打つ。

背中から伝わってくる振動と痛みに上条は思わず咳き込むがそんなこともお構いなしに由紀は追い打ちをかけるように頭へチョップをかました。

 

「いてぇよ!」

「あはは、ゴメンゴメン」

「気持ちが籠もってないように感じるのは俺だけか?」

 

心の籠もっていない反省に思わず上条は溜め息を吐いてしまう。

由紀が繰り広げるこの会話の応酬も既に定番の物に。

最初はそのテンションの高さにどう対処すればいいか迷ったものだがそこは人間の環境への適応力の高さ故か。

由紀を御し方はもう覚えてしまった。ちなみにテンションが高いときはツッコミに回り、冷静なときはこちらがボケに回るのがデフォ。

 

「ていうか、めぐねえは行かないの?」

 

上条への猛攻をピタリと止め、佐倉へ由紀は訊く。

 

「もちろん教師である私が同伴するべきなのは分かってるんだけど…」

 

そう由紀の質問に答えながら佐倉はパイプ椅子に腰掛ける先輩を横目に見る。

その右足には包帯が巻かれ、テーブルには杖が掛けてあった。

 

「やっぱり先輩君には先生が付いてあげなきゃいけないから。先輩君も怪我をしているし、私もやらなきゃいけないこともあるし」

「そっか………それじゃあ仕方ないね」

 

佐倉の言い分に納得したのか、由紀は渋々といった様子で佐倉への誘いを諦めることに。

ならば!といった表情で上条の方へ振り返るが。

 

「俺も残るよ」

 

腕を組みながら上条は由紀が訊く直前、質問を遮るように言った。

そう言われるとは考えもしなかったのか、由紀は振り返った状態で思考と共に硬直。

硬直時間は数秒と短かったが由紀にとってはとても長い数秒だ。

 

「俺もやらなきゃいけないことがあるんだ」

「………やらなきゃいけないことって何?」

 

上条の続けた言葉に反応することで由紀の硬直状態が切れる。

やらなければならないこと。上条の言うその目的を由紀は訊き出す。

真剣な表情で上条へその瞳を向ける由紀とは対照的に、上条は笑みすら浮かべていた。

 

「当麻にも考えがなきゃ、そんなこと言わないでしょ?」

「りーさん」

「若狭先輩」

 

どうやら悠里は由紀への説得を手伝ってくれるらしく、上条のフォローに回った。

 

「大丈夫よゆきちゃん」

「でもりーさ………むぐっ!?」

 

ピタッと由紀の唇を人差し指で開かないように塞ぐ。

人差し指を押しつける悠里の顔は笑顔で、由紀の心に何か安心感のような感情を与える。

 

「当麻ばかりに頼ってばかりじゃ駄目なのよゆきちゃん。当麻ばかりにね?」

 

押しつけていたその指を由紀の唇から離す。

閉じていた口内に溜まった息を一気に吐き出した由紀の表情は不満一色。

そんな由紀に悠里は笑みを崩さない。むしろ先程よりも増していた。

 

「………大丈夫かな」

「大丈夫」

 

不満から不安に変わる感情が顔に出る由紀をそっと抱きしめる。

悠里からの突然の抱擁に戸惑う由紀だったが、抵抗はしなかった。

暖かさと優しさが伝わるその抱擁は由紀の心に安らぎを与えたから。

その抱擁を拒否する理由が見当たらなくなる。だから由紀は抵抗をしない。

そんな由紀の頭を撫でながら悠里は話を続ける。

 

「当麻ばかりに格好付けさせてばかりでゆきちゃんは悔しくない?」

「………………………………………ちょっと悔しいかも」

「なら当麻が居なくても、私達はここまでやれるんだよって。当麻に自慢話を聞かせてあげるために頑張りましょう」

 

由紀は自分を抱く悠里を見上げる。

悪戯を仕掛けようとする子供のようなわくわくを隠す笑みで片目を閉じ、悠里はウインクをした。

それが伝染したのか、由紀は不満と不安というような表情が張り付いていたその顔は笑顔一色へと表情を変える。

 

「うん!」

 

由紀の肯定により顧問の佐倉、仮入部員の先輩、部員の上条の在校が決定した。

 

 

 

 

「うし、準備完了!」

「わたしもおっけー!」

「よいしょっと」

 

なんて話もあった日から二日が経ち悠里、胡桃、由紀の三人による遠足が決定したその日から遠足に向けての準備が始まった。

荷物整理から始まり、どういったものを収集していくか、移動方法はどうするかなどを一つ一つ慎重に吟味しながら議論し決定していく。

 

「荷物はこれで良し……ね」

「買う物は缶詰とかの食べ物が優先だな」

 

由紀に聞こえないようにコソコソと小声で悠里と胡桃は会話を交わす。

持つべき荷物は全て確認した。何を収集すべきかも事前に決めた。残りの移動方法というか手段は。

 

「教師の私は何故自分の車を無免許である生徒に貸さなきゃいけないんでしたっけ…」

「このご時世です。無免許だからって誰も文句は言いませんよ佐倉先生」

「そういう問題じゃねぇと思うんですけど先輩さん…」

 

遠目で何処かを眺める佐倉と考えに耽けながらぼそぼそと呟く顧問を何とか安心させようとする先輩とひっそりとツッコミに回る上条は見送りのために由紀達の後ろで立つ。

移動手段は佐倉の車。それを運転する彼女達はもちろん無免許。これが普通の世界であれば無免許運転でバレれば即警察のお世話になってしまう行為である。

しかしこの世界は『日常』という単語の意味が過去とは少し違う意味合いに変わってしまっているのでそれ自体には何の問題もない。教師である佐倉には十分問題視するべきことなのではあるけれども。

 

「まぁ、安全運転でいけば大丈夫だろ。無免許でも経験有るし」

「えっ!?」

「へぇ…」

 

胡桃の言葉に驚いたのはもちろん教師であり顧問である佐倉慈。

無免許なのに車の運転経験があると聞けば誰だって驚くものだが、生徒を正しい道へ導くことが本業である教師佐倉にとってはそれ以上の衝撃であって。

 

「ちなみに何で?」

「ゲームで」

 

思わず佐倉は昔のギャグマンガのようにずっこけそうになったが何とか踏みとどまることに成功した。

佐倉は息を大きく吐き、安心が豊満な胸の内を埋め尽くし、安堵する。

しかしこれはこれで問題発言なことに目先の安心感に囚われてしまった佐倉は気づかない。

 

「やっぱり私も………いやそれじゃあ先輩君が」

 

一人で悶々と葛藤してる佐倉を余所目に長いツインテールを輪の形に巻いた胡桃は割れてしまい本来の役目を失ってしまった窓硝子から地上まで届く非常用の梯子(はじご)を降ろす。

梯子の固定を確認するため何度か揺らす。安全確認を怠ってはならないというのはこの世界になってから十二分に身に染みた教訓である。

梯子はしっかりと固定されたようで安全は確保できた。

 

「よし、行けるぞ」

「先輩、当麻、めぐねぇ。行ってきます」

 

悠里は先輩、上条、佐倉の立つ方へ振り返る。

先輩は優しげな笑顔で、上条は頭を掻き、悶々としていた佐倉は自分の世界から戻ってきた。

 

「もう。めぐねえじゃなくて」

「佐倉先生でしょ!」

「!」

「……ですよね?」

「……うぅ」

 

台詞を奪われた佐倉は悶々とした状態へと逆戻り。

そんな佐倉の様子に悠里や他の部員達も自然と笑顔になる。

 

「じゃあ先に私が佐倉先生の車出してくるから、りーさんとゆきは下の玄関口で待機してくれ」

「分かったわ」

「りょう~か~い!」

 

悠里と由紀が了承の意を示すと胡桃は梯子に移る。

下を覗き込めば校庭には無数の『彼等』が。その場に留まる者もいれば、嗅ぎ回るようにうろうろと彷徨う者もいた。

『彼等』がのさばる校庭という地獄のような光景を目に灼き付けた胡桃は廊下へ、正確には先輩へと視線を注ぐ。

 

「行ってきます。先輩」

「……ああ」

 

互いに笑顔を浮かべながら挨拶を交わす。

片方は必ず戻ってくるという希望が詰まったもの。

片方は信頼しているからこそ、一抹の不安を拭いきれないという気持ちがちらつくもの。

同じ笑顔であったが。だからこそ、その違いが浮き彫りになってゆくのが互いに理解出来た。

 

『…』

 

しばらくの沈黙があった。

沈黙による支配は数秒程度だったが、二人には数分にも感じ取れた。

 

「大丈夫です」

 

最初に口を開いたのは胡桃だった。先輩は口を閉じたまま胡桃の次の言葉を待つのみ。

先輩を射貫くように見つめながら深呼吸を一つ。そして口を開く。

 

「私を。貴方の後輩の恵飛須沢胡桃を信じてください」

 

ただそれだけ。だが先輩にはその言葉だけで、胡桃がその言葉に込めた想いを察することが出来た。

先程の胡桃のように先輩は小さく深呼吸をする。そして胡桃の澄んだ瞳へ見つめ。

 

「なら約束してくれ。必ず帰ってくるって。この言葉をお前の声で聞きたいんだ」

「…はい」

 

先輩も分かっている。そんなことは聞かなくても彼女が必ず自分の元へ帰ってくると彼女の言葉から察せたのだから。再度聞かなくてもいいはずだ。

けれど聞かずにはいられない。どれだけその気持ちを理解したって、痛いほどにその強固な意志を感じ取れたって。

人間は言葉にしなければ安心できない生き物なのだから。愛しい人に愛して貰っていると理解出来ていたとしても。不安を抱えて生きる人間だからこそ一時的で確証のないものでも、安心というものに縋り付きたい。

 

「帰ってきます。先輩やみんなを置いてどこかに行くなんて不安で心がいっぱいになりますし、それに」

「それに?」

 

二次元ならば疑問符が頭の上に浮かび上がりそうな怪訝な表情を顔に貼り付ける先輩に、胡桃は少し頬を赤く染めながら言葉の続きを口にする。

 

「………………………………………最後は先輩と一緒が良いし」

「へっ?」

「な、何でもないですッッ!!」

 

真っ赤な顔を見せないように急いで地上に降りようとする胡桃だが。

 

「胡桃」

「にゃっ!?」

「「ぶっ!?」」

 

そんな胡桃の腕を先輩が掴み、胡桃は動きを止める。

ちなみに咄嗟に出た胡桃の悲鳴を聞いて吹き出したのは上条と由紀。

何とか先輩の視線に真っ赤になった自分の顔を(さら)け出さないように必死に逸らそうとするが梯子を掴み、動きに制限が掛かっている状態では動くのは危険なので身動きが取りづらく、結局その顔を先輩に曝すことに。

しかも何時になく真剣な表情と眼差しで見つめてくるのでさらに頬が熱くなっていくのが胡桃自身自覚できた。

 

「行ってこい。俺も最後の瞬間はお前と居たいから」

「………………………………………行ってきます」

 

胡桃は耳まで真っ赤に染めながら地上へゆっくり降りていく。

先輩は杖を付きながら部室へ戻っていった。

 

「じゃあわたしも行ってくるね、とーくん」

「はい。ついていけないのは残念ですけど、無事に帰ってきてください丈槍先輩」

「うん!」

 

力強く返事をした由紀は上条から佐倉へと身体の向きを変える。

 

「わたしたちも頑張るからめぐねぇ達もやるべきこと、頑張って!!」

「ふふ、ありがとう丈槍さん」

 

応援に感謝の言葉で答えた佐倉は由紀の頭をやさしく撫でた。

されるがままの由紀は惚けながら口角を上げニヤつく。

撫でていたその手を離すと名残惜しそうな表情をしたがすぐに由紀は自分の両の頬を手で(はた)き、右手を上げて大きく振ってもう一度「行ってきます!」と言いながら梯子を伝って降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

上条は硝子が割れてしまっている窓硝子から『彼等』が彷徨う地上を見下ろす。

梯子を伝って無事に地上へ降りた由紀は胡桃の次に降りていた悠里と合流し、玄関口へ逃げ込んだ。

それから数分も経たない(うち)に胡桃が運転している赤い車――――――佐倉の車が玄関口の前へ停車する。

急いで由紀と悠里は車の中に飛び込むように乗車し、佐倉の車は闊歩する『彼等』を轢きながら校門を潜り抜いた。

 

「はぁ…うまくいったか」

 

ポキッポキッと交互左右に首を傾け鳴らす。どうやら彼女たちの遠足は無事にスタートが切れたようだ。

確か彼女たちの行き先は巡々丘市内でも有数の大きさを誇るショッピングモールだったはず。

それでいて遠足期間は三日間。この間にどれだけのことが出来るか。

 

(とりあえず最優先事項は…)

 

そう心の中で呟きながら上条は肩からぶら下げていたワンサイドショルダーバックからラジオ機能や手回しでの充電機能を備えた多機能型懐中電灯を取り出す。右手で取り出したその懐中電灯から流れたあるラジオの放送の内容を目を瞑り、脳内で大事な箇所を反芻する。

 

「巡々丘駅だな」

 

目的地を定めた上条はポケットから白い包帯を取る。包帯は未使用らしく少々のポケットに溜まった埃のようなものが付着している以外の汚れは全くといっていいほどに無かった。

真新しいその包帯を上条は自らの右手にグルグルと巻きつけ始める。何度も何度も、堅く巻きつけたらもう片方の手にも巻きつけた。その位置は拳と手首。知っている者ならばそれがボクサーが必ず行う手首や拳を守るバンテージだと理解できるだろう。

巻き終えた上条は懐中電灯を仕舞い、バックから巡々丘市の地図を取り出す。

 

(まずは下校か)

 

上条はもう一度、息を吐いた。

気持ちを落ち着かせて頭の中の情報を整理し直す。

準備は完了。目的も定めた。覚悟は当の昔に出来ている。

ならば後は為すべきことを為すだけ。ただそれだけだ。

肩を回し、軽めの準備運動を一通り行う。

 

「うし、行くか」

 

軽く開いた左手に堅く握り締めた右手を叩きつけ、戦意を高めた上条の眼に映るのは終末を迎えた後の町並みと『彼等』のみ。

上条が発した声はどこか楽しげな声色であったがその表情は「楽」や「喜」といった感情が感じ取れるものではなく、ただただ「無表情」ではあったが「覚悟」を宿した鋭い眼光だけが上条が燃やすその意志を表していた。




書き方を少し変えてみました。
なんだかんだ言って次回からオリ展開。
短くまとめ過ぎたようにも感じるし、少し長いような今回でした。

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