一色いろはは本物を追い求める【完結】   作:あんじ

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とある海の浜辺の夜

はっきり言います。あの後は特に何もありませんでした!せんぱいは本当にホテルに着いたら温泉入って、夕食を済ませたら部屋に篭って出てこないし…

 

「あ〜あ、つまんないの。せっかくの旅行だってのに」

「なんなら夜這いでも仕掛ければ?いろは、そういうの好きでしょ?」

「好きじゃありません!おっぱい揉んじゃうよ?瑞穂」

「いろはになら抱かれても良いわ!」

「ごめん、私が嫌だから」

 

う〜ん…せんぱいが外に出てきたら強引にでも外に誘うかな?ここは都会と違って空が綺麗だからな〜。星を見ながら海辺を歩くなんてロマンチックですよね。

 

「そこで、告白と…」

「そうなんだよ。そして2人だけの時間を…ってもしかして声に出てた?」

「うん、ちゃんと聞こえてたよ。せんぱいが外に出てきたらってところから」

「全部じゃない!こうなったら瑞穂のおっぱいを揉むしか手が…」

「ホントに?私の事を抱いてくれるの?ってそんな事よりいいの?そのせんぱいは今自販機に向かってこっちを見ながら歩いていったけど」

 

私は瑞穂のみぞおちにパンチを決めて、せんぱいの元に小走りで向かう。なんだか足は羽が付いたかのように軽かった。

 

「せ〜んぱい!」

「何でしょうか?どちら様で?」

「何言ってるんですか…あんなに愛し合って私の隅々まで触ったくせに」

「ごめんなさい、そんな記憶は無いですし、捏造するのはやめて。八幡の精神が軽く本気でダメージ喰らう」

「それはどのくらいなんですか?軽く?それとも本気なんですか?」

 

この人は確実に起きてましたね。寝起きの人はこんなに口達者じゃありませんから。

 

「さて、せんぱい。1つお願いがあります」

「ごめんなさい、無理です…ぐふっ、腹が」

 

せんぱいのお腹?今は私の手がめり込んでます♪私はそんなに強く無いんですが。おかしい、貧弱ですね、せんぱい。

 

「そ、それでお願いとは、な、何かな?」

「外、行きましょうよ!多分、星が綺麗ですよ」

「あっ、俺は星に興味無いんで。それじゃあ」

「せ〜んぱい♪どこ行くんですか?」

 

これぞ、蛇に睨まれた蛙ですね。メデューサの石化能力とかでも良いですね。

 

「は、はい。今から一色と外に星を見に行くところです」

「ですよね、じゃあ行きましょう!」

 

いやぁ、せんぱいって優しい!えっ?ただの脅しじゃないかって?こんな可愛い天使ですよ?ただの天使の囁きですよ♪

外は暑くもなく、涼しくもない、半端な気温だった。ただ海の小波の音や、浜風が心地よく気分は最高になっていた。

 

「星、綺麗ですね」

「あぁ、綺麗だな。これなら、まぁ、出てきても良かったんじゃないか?」

「そうですね、浜風も気持ちいいですし」

 

暫く歩き、今日サメの出た海の釣りスポットに着く。そこはテトラポットが沢山ある。私はそこに座り海を眺める。せんぱいは私の隣に座ってくれる。

 

「ねぇ、せんぱい」

「ん、なんだ?」

「月、綺麗ですね」

「あぁ、俺もそう思ってた所だ」

 

せんぱい、もしかしてそう言う返信の仕方ですか?ロマンチックですけど…

気になりせんぱいの顔を覗くと夜でも分かるくらい赤くなっていた。

 

「せんぱい、顔が真っ赤ですよ?どうしました〜?」

「な、な、何言ってんの?お、お前の方が真っ赤だし」

「へっ?」

 

私の顔が真っ赤?そ、そんな馬鹿な…

 

「な、なぁ一色」

「な、なんですか、せんぱい」

「そう言う事だと思って良いのか?」

「そういことってこう言う事ですか?」

 

接吻、キス、他はなんて言うか知らないけど、そう。私はせんぱいの唇に自分の唇を当てていた。せんぱいの顔がすごく近かった。1分?2分?3分?どのくらいか分からないほど長い間キスをしていた。もしくは長く感じている間キスをしていた。

 

「い、一色」

「せんぱい、もう『一色』じゃダメですよ?」

「いろは」

「なに?八幡」

「俺も、お前の事、好きだよ。だから今の告白は受け取れない」

「へっ?」

 

せんぱいは私の後ろから座り抱きしめる。

 

「俺はお前が、一色いろはが好きだ。だから付き合ってくれ」

「は、はい。よろしくお願いします?」

 

何故か雨も降っていないのに、頭に水滴が落ちてきた。それはせんぱいの目から落ちてきていた涙だった。

 

「せんぱい?」

「あぁ、ごめん。嬉しくってな。ホントはフラれる覚悟の元で今日しようと思ってたんだよ。でもな、怖くて怖くて。また、高校の時みたいになるんじゃないかって怖くて、部屋に閉じこもってたんだよ。そしたらさ、これだ。なんか涙が止まんなくてな」

「せんぱいのお馬鹿さんですね。私がせんぱいの事を?そんな事は絶対にしませんよ」

 

私は体を捻ってせんぱいの方へ向ける。泣きじゃくってるせんぱいを抱きしめて、頭を撫でる。

 

「せんぱい、泣かないでください。泣くなんてせんぱいらしく無いです」

「ごめん、ごめん、ごめん、ごめん」

「もう、今度は謝ってばっかり。大丈夫です、今日の私は天使ですから。さぁ、私の胸で泣いて良いんですよ?」

「あっ、それは大丈夫だ」

 

酷い…こんな天使のお誘いを断るなんて!天罰を与えるしか無いですね。私は抱き締めたまま、せんぱいの顔をわざと胸に押さえつける。

 

「せんぱい、そろそろいい時間なんですけど帰ります?」

「ん、帰れない。今帰ったら俺の天使に心配される」

「私は心配しませんけど?」

「お前じゃない」

 

くっ…告白して彼女にもなったのに男の人の戸塚先輩に勝てないなんて。悔しすぎます!

 

「なぁ、いっし…いろは。ティッシュか何かあるか?」

「ふふん、私は女子力が高めなのでティッシュぐらい完備してますよ」

 

ポケットからティッシュを取り出し、せんぱいの顔の涙の跡を撫でる。

今日からこと人が私の彼氏。そう、念願のせんぱいをゲットできた。なんだか達成感と感動と喜びが入り混じって涙が出そうだった。

 

「なんだ?いろはも泣くのか?」

「な、泣きません!ほら、跡も消えたし帰りましょ?蚊に刺されますよ?」

「はいよ、ちょっと待てや」

 

私は先に立ち、せんぱいに手を差し出す。せんぱいは今まで見たことの無い顔。笑顔で私の手を取り立ち上がる。私は自然にせんぱいの手を握り、せんぱいは私の手を自然に握る。ホテルへの帰り道の足は羽どころか既に飛んでいるかの様な足取りだった。




最初からクライマックスだぜ!まぁ、あらかた予定通りに進んだんでオールOKかな?次回はエピローグ的なので終了です。次は2章です。2章は最初からクライマックスだぜ!

では次回をお楽しみに!

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