メダロット異界異聞戦記伝 作:隔離世テロル
鉄を叩く鈍い音が康高の耳に入ると、徐々に感覚が覚醒していくのを感じた。康高が音のする方に目をやると、近くでラフな格好にジーンズを履いた赤茶色の髪の青年が、
「開けやがれ!」
「えーい! しつこい奴だ」
警官が、鉄格子のドアを開けると警棒で青年を殴る。康高は、青年の頭からダラダラと血が出ているのが見えた。しかし青年は、声も上げず
手術着を着た男の腕を掴むと、手を逆に
「うぐぅ……い、痛い!」
警官の悶絶した悲鳴が、周囲一帯にこだまする。そして肘を押さえて膝を折りうつ向くと、小刻みに震えだした。
青年は、すかさず警棒を奪い取ると、警官を気絶させるほどに殴った。殴り終えるなり息を切らし始め、座り込んだ。康高は、少しの間を(青年の気迫が殺気じみたものだったため)置いてから声を掛けた。
「大丈夫……ですか?」
「あ、ああ、ちょっと頭を切ったが平気だ。それより、お前の方は大丈夫か?」
「はい、平気ですけど……」
青年の方は立ち上がり、膝のほこりを取り払った。そして康高に対して声をかける。
「君、名前は?」
「加藤、加藤康孝です」
「そうか、俺の名はシエミヤ・ロウって言うんだ。これからよろしく頼む、ここの院長は改造手術をやっているみたいだ。さぁ一緒に脱出しようぜ!」
「シエミヤ――」
康高は、その名前に聞き覚えがあった。何せ、幽世の時につけた名前だったからだ。あの時は青ローブをいじるのは楽しかった事も思い出した。
康高がボーっとしている様子を見て、シエミヤは心配していた。
「おーい大丈夫か?」
「あ、はい大丈夫です」
「なら良いけどさ、さぁ行こう」
シエミヤと康高は、
歩いていくと、扉の向こう側で患者らしき人々の叫び声が響いた。
「改造手術なんて嫌だ!」
「逮捕されたのに病院に入れられるなんて!」
檻に入れられた人々を横目に、先へと進んだ。
「待ってくれ君たち!」
二人は、扉の向こう側から声をかけられた。ふと不思議に思った康孝達は扉を開けた。そこに居たのは、車椅子に座る紅いスーツに紺のネクタイをしている白髪の男性だった。
「貴方は……?」
康孝は声をかける。
「私かい? 私の名はスティーブン。まぁ悪魔召喚プログラムの生みの親だと言えば分かるかな、所で君たちは悪魔召喚プログラムは持っているかな?」
「ああ、持っている。悪魔召喚プログラムは結構、役に立っていますよ」
シエミヤは笑顔でスティーブンにそう言ったが、康孝はいざ開発者を目の前にして気まずそうにしていた。何せ、気味悪がって受け取らなかったのもあるが、結果としてメダロットを三体持っていることを
そんな事を知ってか知らずか、スティーブンは康孝に聞いてきた。
「ん……どうしたんだい? 君は悪魔召喚プログラムを持っていないのかい?」
康孝は一瞬
「……はい不気味だったんで持っていないです。でも自分には、身を守る
そう言ってスティーブンに三枚の式神札をホルダーから取り出して見せると、興味深そう――まるでおもちゃを与えられた子供の様――に前のめりになって観察をし始めた。
「ほう、これは興味深い術式だ。式神札の様だが、こんな式神札は初めて見たよ。どこで手に入れたんだい?」
「それは、その……」
スティーブンに聞かれて、康高はしどろもどろになってしまう。人を罵られるほど、言葉が達者な康高にも弱点はあった。そうウソが下手だった。子供の頃から両親に、呪詛のごとく『ウソはダメだ』と言われ続けた為か、深層心理(無意識下)において、康高はウソが言いづらくなってしまう。
そんな事を見抜いてなのか、スティーブンはこう言った。
「言いたくないならそれで良いとしよう。うーんならその札を1枚私に貸してはくれないかね? その代わり礼と言ってはなんだが、君はCOMPは持っていない様だから後でそれもあげよう」
「ありがとうございます」
「いや気にしなくて良い。それより赤髪の君のほうは必要だろうから、デビルアナライザーとバージョンアップをしておこう」
スティーブンは、そう言ってシエミヤのほうに目を向けると、ケーブルを手に取った。逆にシエミヤは「ありがとうございます」と言ってスティーブンにCOMPを手渡す。
少し経つとスティーブンはシエミヤにCOMPを手渡した。
「これでOKだ。それと言っていなかったが、君たちのほかに悪魔召喚プログラムを持つ子がいてね。その子は私が2階にある院長室のカギを開けたら、向かっていったようだよ」
「どんな子でしたか?」
康高は、不気味がらずに悪魔召喚プログラムを使える人に興味持った為か、ふとスティーブンに聞いてみた。逆にシエミヤは早く、こんな不気味そうな病院から出たがっていたが……。
「確か、英雄とか言っていたな。学生服を着ていた子だったが中々電子工作の筋は良いと思ったよ。COMPを改良していたからね」
「そうですか……わかりました。ありがとうございます」
「いや構わないよ。それよりも早く院長室へ行った方が良い。彼には助けが必要だろうからね。あ、しばらくしたら、例のものを渡そう」
「わかりました。何から何までご丁寧に」
「構わないさ、ここにいると少し暇だからね」
康高達はスティーブンと別れると、急ぎ早に2階の院長室へ向かっていった。途中には地霊ノッカーや悪霊ゴーストという悪魔などが出たりした。しかし、苦も無く康高が陰陽札の鬼火や破魔札を投げて倒した。
そして康高達は扉の前にたどり着いた。
「ここか」
「そうだな……」
康高とシエミヤはどうするか思案していると、中で鉄が打ち合う音が聞こえてきた。
康高たちは、思い切って院長室のドアを開いた。周りを見渡すと手術用具が散乱している。奥の方では、白いタテガミのライオンの顔をした異形の者が、馬に乗って英雄と知らない誰かが一緒に戦っていた。しかし後ろからキラリと何かが光り、異形の腹から紅い剣が飛び出していた。
「な、なんだと!」
「これは一体……!?」
シエミヤと英雄は、驚きを隠せないでいた。いきなりソイツは姿を現した。藍色の肉体にウロコがあり、まるで顔はヘビのようにも見えた。
ライオンの顔をした異形の者は、口から血を吐きながらも叫んだ!
「き、貴様は何者だ!?」
ライオンの異形の者の問いにヘビ顔は答える。
「俺、ボルチマンド。オリアス、抹殺しに来た」
「グフッ! 何、幻魔だと。ど、同盟を忘れたのか!」
「同盟? そんな物、主は認めていない。この世界に反旗を翻す為、お前達を裏切る。その手始めが貴様だ。残念だったな」
ボルチマンドは紅い剣をオリアスに深く突き刺すと「チクショー!」と叫びその場から消えた。
「さて次は人間……貴様らだ。さっきの奴よりは楽しませてくれよ」
ボルチマンドは姿を消し去ると攻撃を開始し始めた。
今回は少なめですが、やっと出せました。幻魔ですよ幻魔、鬼武者です。やっぱり鬼武者と仮面ライダーキバは、真・女神転生Ⅰとキャラとかの親和性が高いですからね。Ⅱとかだとこうは行きませんから……。