メダロット異界異聞戦記伝   作:隔離世テロル

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第5話 マッドサイエンティストホスピタル ~吉祥寺Ⅳ~

 鉄を叩く鈍い音が康高の耳に入ると、徐々に感覚が覚醒していくのを感じた。康高が音のする方に目をやると、近くでラフな格好にジーンズを履いた赤茶色の髪の青年が、(わめ)いていた。鉄格子を握りガンガン音を立てると、遠くから足跡が聞こえてきた。

 

「開けやがれ!」

「えーい! しつこい奴だ」

 

 警官が、鉄格子のドアを開けると警棒で青年を殴る。康高は、青年の頭からダラダラと血が出ているのが見えた。しかし青年は、声も上げず(ひる)まなかった。

 手術着を着た男の腕を掴むと、手を逆に(ひね)りあげる。そして、肘関節(ひじかんせつ)部分を目掛けて膝蹴(ひざげ)りで腕を折った。

 

「うぐぅ……い、痛い!」

 

 警官の悶絶した悲鳴が、周囲一帯にこだまする。そして肘を押さえて膝を折りうつ向くと、小刻みに震えだした。

 青年は、すかさず警棒を奪い取ると、警官を気絶させるほどに殴った。殴り終えるなり息を切らし始め、座り込んだ。康高は、少しの間を(青年の気迫が殺気じみたものだったため)置いてから声を掛けた。

 

「大丈夫……ですか?」

「あ、ああ、ちょっと頭を切ったが平気だ。それより、お前の方は大丈夫か?」

「はい、平気ですけど……」

 

 青年の方は立ち上がり、膝のほこりを取り払った。そして康高に対して声をかける。

 

「君、名前は?」

「加藤、加藤康孝です」

「そうか、俺の名はシエミヤ・ロウって言うんだ。これからよろしく頼む、ここの院長は改造手術をやっているみたいだ。さぁ一緒に脱出しようぜ!」

「シエミヤ――」

 

 康高は、その名前に聞き覚えがあった。何せ、幽世の時につけた名前だったからだ。あの時は青ローブをいじるのは楽しかった事も思い出した。

 康高がボーっとしている様子を見て、シエミヤは心配していた。

 

「おーい大丈夫か?」

「あ、はい大丈夫です」

「なら良いけどさ、さぁ行こう」

 

 シエミヤと康高は、(おり)を出て歩き始めた。康高は本当はあの事を言いたかったが、この場で話すと厄介になることを恐れてあえて言わなかった。

 歩いていくと、扉の向こう側で患者らしき人々の叫び声が響いた。

 

「改造手術なんて嫌だ!」

「逮捕されたのに病院に入れられるなんて!」

 

 檻に入れられた人々を横目に、先へと進んだ。

 

「待ってくれ君たち!」

 

 二人は、扉の向こう側から声をかけられた。ふと不思議に思った康孝達は扉を開けた。そこに居たのは、車椅子に座る紅いスーツに紺のネクタイをしている白髪の男性だった。

 

「貴方は……?」

 

 康孝は声をかける。

 

「私かい? 私の名はスティーブン。まぁ悪魔召喚プログラムの生みの親だと言えば分かるかな、所で君たちは悪魔召喚プログラムは持っているかな?」

「ああ、持っている。悪魔召喚プログラムは結構、役に立っていますよ」

 

 シエミヤは笑顔でスティーブンにそう言ったが、康孝はいざ開発者を目の前にして気まずそうにしていた。何せ、気味悪がって受け取らなかったのもあるが、結果としてメダロットを三体持っていることを(かんが)みると、やはり食指は伸びなかったからだ。

 そんな事を知ってか知らずか、スティーブンは康孝に聞いてきた。

 

「ん……どうしたんだい? 君は悪魔召喚プログラムを持っていないのかい?」

 

 康孝は一瞬(おど)く素振りを見せると、少し落ち着かない様子でこう呟いた。

 

「……はい不気味だったんで持っていないです。でも自分には、身を守る(すべ)としてこれがありますからね」

 

 そう言ってスティーブンに三枚の式神札をホルダーから取り出して見せると、興味深そう――まるでおもちゃを与えられた子供の様――に前のめりになって観察をし始めた。

 

「ほう、これは興味深い術式だ。式神札の様だが、こんな式神札は初めて見たよ。どこで手に入れたんだい?」

「それは、その……」

 

 スティーブンに聞かれて、康高はしどろもどろになってしまう。人を罵られるほど、言葉が達者な康高にも弱点はあった。そうウソが下手だった。子供の頃から両親に、呪詛のごとく『ウソはダメだ』と言われ続けた為か、深層心理(無意識下)において、康高はウソが言いづらくなってしまう。

 そんな事を見抜いてなのか、スティーブンはこう言った。

 

「言いたくないならそれで良いとしよう。うーんならその札を1枚私に貸してはくれないかね? その代わり礼と言ってはなんだが、君はCOMPは持っていない様だから後でそれもあげよう」

「ありがとうございます」

「いや気にしなくて良い。それより赤髪の君のほうは必要だろうから、デビルアナライザーとバージョンアップをしておこう」

 

 スティーブンは、そう言ってシエミヤのほうに目を向けると、ケーブルを手に取った。逆にシエミヤは「ありがとうございます」と言ってスティーブンにCOMPを手渡す。

 少し経つとスティーブンはシエミヤにCOMPを手渡した。

 

「これでOKだ。それと言っていなかったが、君たちのほかに悪魔召喚プログラムを持つ子がいてね。その子は私が2階にある院長室のカギを開けたら、向かっていったようだよ」

「どんな子でしたか?」

 

 康高は、不気味がらずに悪魔召喚プログラムを使える人に興味持った為か、ふとスティーブンに聞いてみた。逆にシエミヤは早く、こんな不気味そうな病院から出たがっていたが……。

 

「確か、英雄とか言っていたな。学生服を着ていた子だったが中々電子工作の筋は良いと思ったよ。COMPを改良していたからね」

「そうですか……わかりました。ありがとうございます」

「いや構わないよ。それよりも早く院長室へ行った方が良い。彼には助けが必要だろうからね。あ、しばらくしたら、例のものを渡そう」

「わかりました。何から何までご丁寧に」

「構わないさ、ここにいると少し暇だからね」

 

 康高達はスティーブンと別れると、急ぎ早に2階の院長室へ向かっていった。途中には地霊ノッカーや悪霊ゴーストという悪魔などが出たりした。しかし、苦も無く康高が陰陽札の鬼火や破魔札を投げて倒した。

 そして康高達は扉の前にたどり着いた。

 

「ここか」

「そうだな……」

 

 康高とシエミヤはどうするか思案していると、中で鉄が打ち合う音が聞こえてきた。

 康高たちは、思い切って院長室のドアを開いた。周りを見渡すと手術用具が散乱している。奥の方では、白いタテガミのライオンの顔をした異形の者が、馬に乗って英雄と知らない誰かが一緒に戦っていた。しかし後ろからキラリと何かが光り、異形の腹から紅い剣が飛び出していた。

 

「な、なんだと!」

「これは一体……!?」

 

 シエミヤと英雄は、驚きを隠せないでいた。いきなりソイツは姿を現した。藍色の肉体にウロコがあり、まるで顔はヘビのようにも見えた。

 ライオンの顔をした異形の者は、口から血を吐きながらも叫んだ!

 

「き、貴様は何者だ!?」

 

 ライオンの異形の者の問いにヘビ顔は答える。

 

「俺、ボルチマンド。オリアス、抹殺しに来た」

「グフッ! 何、幻魔だと。ど、同盟を忘れたのか!」

「同盟? そんな物、主は認めていない。この世界に反旗を翻す為、お前達を裏切る。その手始めが貴様だ。残念だったな」

 

 ボルチマンドは紅い剣をオリアスに深く突き刺すと「チクショー!」と叫びその場から消えた。

 

「さて次は人間……貴様らだ。さっきの奴よりは楽しませてくれよ」

 

 ボルチマンドは姿を消し去ると攻撃を開始し始めた。




今回は少なめですが、やっと出せました。幻魔ですよ幻魔、鬼武者です。やっぱり鬼武者と仮面ライダーキバは、真・女神転生Ⅰとキャラとかの親和性が高いですからね。Ⅱとかだとこうは行きませんから……。

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