メダロット異界異聞戦記伝   作:隔離世テロル

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第3話 吉祥寺捜索~吉祥寺Ⅱ~

 康高が外を出るとパトカーのサイレンが響き渡る。多数の警官がうろつき辺りは物々しい雰囲気だった。康高も薄々ではあるが、ニュースにあったバラバラ殺人事件の現場近くなのではないかと感じた。

 英雄が母らしき人に、お使いを頼まれている場所がアーケードだった事を思いだし、うろうろとしながら探すと誰かにぶつかった。

 

「おっと大丈夫かな?」

 

 康高はぶつかった相手から声をかけられた。見ると目の前に、黒いロングコートを着た20代後半の男が立っていた。

 

「あ、大丈夫です。ぶつかったのは俺ですし」

「なら良いんだけどね。君にお詫びしてもらうために職質しまーす。ちなみに拒否権は無いし、黙秘も無いからね」

「えーっ職質、いやいや貴方誰なんです。もしかして警察……」

 

 男は黒のロングコートから胸ポケットに手を入れると警察手帳を取り出した。

 

「ピンポーン刃黒須野(はぐろすの)って言って、警視庁6課の刑事でね。階級は警部だよ。まぁ本業は神父なんだけどさ、この子に見覚えない?」

 

 刃黒刑事はコートのポケットから英雄の写真を取り出し康高に見せた。康高は一瞬ビックリしたが「知らない」と言うと刃黒刑事は「そう」と言って康高の顔をじっくりと舐めまわすように見た。

 

「なんですか刃黒警部……?」

「警部はつけなくていいよ。固苦しいからさ」

「じゃあ刃黒さん、なんで俺の顔をジロジロ見てるんですかね?」

 康高は嫌そうな顔をしていた。見かけによらず同姓愛者なのかと思ったが、康高の当ては外れた。

 

「ウソの臭いを嗅いでいたんだよ。あ、悪かったね呼び止めちゃって……」

「いえ、別に良いですけど」

 

 康高自身は逃げたかった。刃黒がいやらしい目付きでこちらをみているからだ。

 逆に刃黒は少年に聞こえないように「あ、そうか逆か俺が呼び止めたんだったね」と呟いた。

 

 実際、刃黒は臭いなど嗅いでいない。ウソの色を見ていたのだが、結果はウソと本当が混ざった灰色だった。本当なら心臓が白く光り、ウソなら黒く染まる。

 ジロジロ見ていたのは、ウソや動揺を引き出すためだったが色は変わらず断念し、発信器を付ける事にした。

 

「それよりこれを渡しておくよ」

 

 刃黒はポケットから黒い名刺を取り出すと手渡した。康高が見ると、書いてあるのは6課の住所や電話番号だけで不気味だった。

 

「ど、どうもありがとうございます」

「何かあったら連絡してね。ま、何か無くても連絡しても良いけど」

「何か無くても連絡したくないですよ」

「ハハハ……まぁ露骨に嫌な顔はしないでほしいな、これだって仕事の一貫だからね」

 

 そう言って刃黒は去ろうとした。康高は気になっていた事を聞くことにした。あまり良くない事ではあるが確認したかっただけなのだ。返答次第によっては、逃げなければならないが……。

 

「あのぉ」

「何かな、もしかしてお茶でもしたいの?」

「いえ、何でもないです」

 

 康高は悪魔召喚プログラムについて聞こうとしたが、信じてもらえる訳ではないだろうと思いためらった。

 

「ふーんそっかぁ残念だな、誘ってくれると思ったけど」

 

 そんな事を話す内に刃黒のCOMPにメールが入ってきた。

 

「あらら部下からメールだ。早く現場に戻れサボり魔が! だってさ、ひどいよね?」

「いや全然ひどくないと思いますよ」

「これは手厳しい。ともかく何かあったら連絡よろしくね少年」

 

 刃黒がそう言い残すと康高の目の前から去っていった。康高は刃黒が去るのを見ると、逃げるように自宅に帰る事にした。辺りは夕暮れに差し掛かろうとしていた。

 

「ただいまー」

 

 康高が声を上げると母親らしき人が出てきた。少し不安そうだ。

 

「おかえりなさい康高、心配だからあまり遅くならないでね……でも男の子は元気な位がちょうど良いけど、物騒だから気を付けてね」

「分かっているよ。俺もう寝るからおやすみ」

 

 康高は二階へ上がりベットへと潜り込んだ。


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