メダロット異界異聞戦記伝 作:隔離世テロル
康高が外を出るとパトカーのサイレンが響き渡る。多数の警官がうろつき辺りは物々しい雰囲気だった。康高も薄々ではあるが、ニュースにあったバラバラ殺人事件の現場近くなのではないかと感じた。
英雄が母らしき人に、お使いを頼まれている場所がアーケードだった事を思いだし、うろうろとしながら探すと誰かにぶつかった。
「おっと大丈夫かな?」
康高はぶつかった相手から声をかけられた。見ると目の前に、黒いロングコートを着た20代後半の男が立っていた。
「あ、大丈夫です。ぶつかったのは俺ですし」
「なら良いんだけどね。君にお詫びしてもらうために職質しまーす。ちなみに拒否権は無いし、黙秘も無いからね」
「えーっ職質、いやいや貴方誰なんです。もしかして警察……」
男は黒のロングコートから胸ポケットに手を入れると警察手帳を取り出した。
「ピンポーン
刃黒刑事はコートのポケットから英雄の写真を取り出し康高に見せた。康高は一瞬ビックリしたが「知らない」と言うと刃黒刑事は「そう」と言って康高の顔をじっくりと舐めまわすように見た。
「なんですか刃黒警部……?」
「警部はつけなくていいよ。固苦しいからさ」
「じゃあ刃黒さん、なんで俺の顔をジロジロ見てるんですかね?」
康高は嫌そうな顔をしていた。見かけによらず同姓愛者なのかと思ったが、康高の当ては外れた。
「ウソの臭いを嗅いでいたんだよ。あ、悪かったね呼び止めちゃって……」
「いえ、別に良いですけど」
康高自身は逃げたかった。刃黒がいやらしい目付きでこちらをみているからだ。
逆に刃黒は少年に聞こえないように「あ、そうか逆か俺が呼び止めたんだったね」と呟いた。
実際、刃黒は臭いなど嗅いでいない。ウソの色を見ていたのだが、結果はウソと本当が混ざった灰色だった。本当なら心臓が白く光り、ウソなら黒く染まる。
ジロジロ見ていたのは、ウソや動揺を引き出すためだったが色は変わらず断念し、発信器を付ける事にした。
「それよりこれを渡しておくよ」
刃黒はポケットから黒い名刺を取り出すと手渡した。康高が見ると、書いてあるのは6課の住所や電話番号だけで不気味だった。
「ど、どうもありがとうございます」
「何かあったら連絡してね。ま、何か無くても連絡しても良いけど」
「何か無くても連絡したくないですよ」
「ハハハ……まぁ露骨に嫌な顔はしないでほしいな、これだって仕事の一貫だからね」
そう言って刃黒は去ろうとした。康高は気になっていた事を聞くことにした。あまり良くない事ではあるが確認したかっただけなのだ。返答次第によっては、逃げなければならないが……。
「あのぉ」
「何かな、もしかしてお茶でもしたいの?」
「いえ、何でもないです」
康高は悪魔召喚プログラムについて聞こうとしたが、信じてもらえる訳ではないだろうと思いためらった。
「ふーんそっかぁ残念だな、誘ってくれると思ったけど」
そんな事を話す内に刃黒のCOMPにメールが入ってきた。
「あらら部下からメールだ。早く現場に戻れサボり魔が! だってさ、ひどいよね?」
「いや全然ひどくないと思いますよ」
「これは手厳しい。ともかく何かあったら連絡よろしくね少年」
刃黒がそう言い残すと康高の目の前から去っていった。康高は刃黒が去るのを見ると、逃げるように自宅に帰る事にした。辺りは夕暮れに差し掛かろうとしていた。
「ただいまー」
康高が声を上げると母親らしき人が出てきた。少し不安そうだ。
「おかえりなさい康高、心配だからあまり遅くならないでね……でも男の子は元気な位がちょうど良いけど、物騒だから気を付けてね」
「分かっているよ。俺もう寝るからおやすみ」
康高は二階へ上がりベットへと潜り込んだ。