小町がぼっちになった後、俺達は前の様にゲームセンターに行ったりしたが、その間、小町はいま何をしているのだろうとぼーっと頭のどこかで考えていた。それにしても、もう午後一時である。小町はお昼をどうするのだろうか。
自分ではなく小町のお昼の心配をしていると、戸塚が少し控え目に訊ねる。
「ねぇ、八幡。お腹空かない?」
「ああ、そうだな。そろそろ食べに行くか?」
そんなこんなで名前だけは一人前な「ごちそうパーク」へと向かった。要はただのフードコート。
到着すると、某赤いピエロの敵であるケンタさんや、モスバーガーやおひつごはんだのが並んでいた。
......そういえば、ここ来たこと無いな。くっ、千葉県民として一生の不覚!
何を食べよーかなーと考えながらも適当に席を探して戸塚と座ると、隣に居た中学生くらいの女の子の動きが止まった。というか、小町でした。
気まずい、気まずいがここがぼっちの腕のみせどころである。今日は教室で一回も誰にも話しかけなかったぜ、とかしょっちゅうだから無言への慣れには普通の人間に比べたら勝っている。
「左の子って......小町ちゃんじゃないかな?」
そう戸塚が小声で訊いてきた。
戸塚の言葉が「かな?」となっているのは、恐らく小町が見知らぬ帽子をかぶっているからだろう。俺達と離れてぼっちしている間に気に入って買ったのかも知れない。
「恐らく......そうだな」
もっとよく周り見てればよかったって思う時あるよな、例えば電車で座ったら隣に先生が居たりとかな。パーティーでカラオケに行ったら、合コンから追い出された先生が居たりとかな。なにそれ後者が悲しすぎる。
小町から話しかけてくることはまず無いだろうが、戸塚が耐えられないという顔をしているものだから思わず少し小町の近くに寄ってしまった。......どうしよう。
さすがに妹に対して「今日は晴れてますね」とか出来ないしな、小町がいつか言っていた「ファッション」に注目でもするか。
「なぁ、小町」
「ん?」
小町はこっちを向くと、普通に聞き返す。予想と反し、意外と悪い反応ではなかった。
「その赤い帽子、さっき買ったのか?」
そう言われ、帽子のひさしを後ろへ回してからいつも通りの雰囲気と口調でしゃべる。
「あ、これ?うん、そうだよ。いいでしょ。そっちは楽しかった?」
「ああ、楽しめたな。あと、帽子も似合ってるぞ」
そういえば、少し前に読んだ本で赤い帽子が出てくるのがあったような......何だっただろうか。今度、雪ノ下にでも訊いてみよう。そして、本題だ。
「......怒ってないのか?」
「へ?ああ、怒ってないよ。ホントに全然。」
小町はいい妹すぎるな。もし、こいつが妹じゃなくて戸塚が男だったら絶対に小町ルートをつき進む覚悟ができる。
それに、真面目に考えてもいい妹である。居るだけでこんなに心にしみてくるレベルの人間なんてそうそういないだろう。こんな時間がずっと続いたら、とはきっとこのことだろう。
そんな風に考えていても、ずっと続きはしないことは知っているし、意味の無いことかもしれないとも思うが、俺は少なくとも続いている今を楽しんでいたい。
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