比企谷小町のわだかまり。   作:★ドリーム

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そんなものに、比企谷八幡はなりたい。

ある作家曰く、命ある間は希望があるらしい。

つまり、俺と戸塚が結ばれてハッピーな人生を送ることもあるかも知れないわけだが、希望と同時に絶望も命ある間はあるわけで、いきなり俺や誰かが人生からログアウトする可能性もあるのだ。げに人生とは美しくも、怖いものである。

 

「どうしたの八幡、何か考えてるの?」

 

戸塚のボイスによって現実に引き戻されたが、それなら大歓迎。むしろ毎日やって欲しいまである。従って、俺の趣味はやはり戸塚。

 

「いや、何でもない」

 

自分自身で、「『何でもない』とかいうヤツが実際に何でもなかったのを見たことがない」とか思っていながらも、こんな言葉を使ってしまった俺は、きっと何か察して欲しいかまってちゃんである。

 

「お兄ちゃん。小町、ちょっとだけ席を外してもいいかな?」

 

「あ、ああ。いいぞ。この辺りで待ってるからな」

 

「う~ん。ごめんね」

 

小町には、戸塚が男だという目を背けてしまいたくなる様な事実を知らせた筈だが、俺を養ってくれるのなら誰でもいいのだろうか。

それとも、むしろ戸塚と俺のラブコメ展開を望んでいるのだろうか。なにそれ小町ちゃん話の分かる妹すぎる。偉大すぎて、兄の意思を優先した妹として歴史に残したいレベル。無理だろうけどな。

 

ささっと近くの手頃な店に入ると、小町の向かったトイレ方面から死角の位置まで移動して待機する。

.....いや、戸塚と二人っきりがいいとか、戸塚とラブコメがしたいとかそういうのでは断じてないし、小町が俺達を探しに遠くへ行って、はぐれたりとか望んで無いからな?

だが、戸塚は心配そうな目をしながら隠れる俺を見て言った。

 

「小町ちゃんと、はぐれちゃわないかな.....?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

堂々と死亡フラグを立ててしまったが、これは恐らく、死亡フラグの死亡フラグなので大丈夫だ。要は、死亡フラグが死亡するということなので大丈夫だ、ということである。なにそれ新ジャンル。俺マジ開拓者だな。カッコよくいえばパイオニア。

 

いつも通りのしょうもないことしか考えていないが、今日は小町のリハビリ兼ねて戸塚とお出掛けである。言うまでもなく戸塚がメイン。

.....小町?あれはきっと一個買ったらもう一個みたいな感じのおまけだな。例えるなら、マックスコーヒーのペットボトルを買ったら、マックスコーヒーの缶も出て来ましたみたいな。なにそれ最高。

 

ちなみにマックスコーヒーのペットボトルの名前は、少し細かくいえば「マックスコーヒーX」である。何かすげぇ材木座が食い付きそうな名前だな、ただでさえマックスなのにX付いちゃうとかもう最強だろ。以上、千葉県横断ウルトラクイズでした。そして、この問題は頻出なので覚えておくように。

 

「八幡、このストラップかわいいと思わない.....?」

 

戸塚が、彩加的なうさぎさんのストラップを持ちながらそう言った。だから今日は第二戸塚記念日。あまりにも偉大なので世界の祝日である。

 

「ああ、いいんじゃないか。ずっと持っておきたい感じだぞ」

 

.....戸塚をな。

 

「そっか.....じゃあ、一緒に買おう!」

 

「そうだな、そうしよう。いや、そうするべきだ」

 

ラブコメな会話をしていると、小町が店にやって来たと思ったら、俺の目の前を早歩きで通り過ぎ、前を通るついでにこれでもかというほど俺の足を強く踏むと、店をささっと出て行った。

 

.....すげぇ痛ぇ。まあ、これも小町らしくていいのだが。

結局のところ、小町が自分らしくいられるのなら俺は我慢だってするし、いくらでも待っているのだろう。家族というものはやはり重要なのである。支えて支えられて、必要とされるような、そういうものに俺はなりたい。

 




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