俺の声だけが家の中で静かに流れると、小町はふぅー、と静かに息をはいてから答える。心なしか、その時間はとても長かった。今度は小町は目を開けて、しっかりと目を合わせて答える。
「良かったよ」
その声は、はっきりと自信に満ちている様な気が俺にはした。
「...そうか」
「お兄ちゃんは、小町がいて良かった?」
そんなことは言うまでも無いだろう。
俺が今、奉仕部を続けられているのは小町の力添えもあったからなのだ。
「そりゃあ、もちろんだな。むしろお前がいなかったらもう死んでるまであるな」
小町は「へへーん」と偉そうに言うと、いきなり姿勢を良くして言う。
「あ、でも。お兄ちゃんがただの同級生だったら小町、きっとこんなんだよ?」
そう言って小町はすっと立って演技を始める。
「あっ、ごめんね。比企谷君?私はもう帰るけど、後の掃除頑張ってね。じゃあね!」
「...って感じだよ?二人で掃除始めて三秒でこれやるよ?」
...まだまだだな、小町よ。
と言いたいが実際の感想を正直に言うと、例え妹だとしても危ない方向に走るところだったのでなんも言えねぇ。
恐らく、そんな俺にとどめを刺すためだけに小町は補足する。
「ちなみに、比企谷君?って語尾を上げたのは『名前、これで合ってるよね?』って意味がこもってます!」
「最低だ、お前って。だが、そこも含めて愛してるぞ、小町」
「キャーッ!お兄ちゃん、気持ち悪い!」
...最後のは聞かなかったことにしよう。そうしないと俺の精神が崩壊してしまう。
そんなことを言った後に、小町はうーん、としてから言う。
「...いやぁ。実際は小町もお兄ちゃんが好きだよ?」
「...こ...小町!」
ヤバイ、俺がうるうるしてんじゃんか。
そこで由比ヶ浜が間違えて俺に電話をかけて、俺が目覚めて妹エンディングでいいじゃん。それで行こうぜ。
「小町、お兄ちゃんの遺産とか特にポイント高いよ!早く小町のポイント上げてね!」
「うわぁ、こいつさりげなく『遺産残して早く死ね』って言った。お兄ちゃん、もう死にたいよう」
ポイント高いって久しぶりに聞いたな、と思ったが、内容が酷かった。というか、酷すぎた。
「だめだよ、お兄ちゃん。しっかり生きて。それから死になさい!」
ホントに精神攻撃はきつい。俺は小町を愛してるのにな。それはもうやめて!とっくにお兄ちゃんのライフはゼロよ!と声を大にして言いたいです。
やり過ぎたかなー、みたいな感じで俺を見ながら小町は言う。
「いやぁ、本当に実際はね?小町はお兄ちゃんが大好きだよ?」
ここで俺の特殊能力発動!
その名も「ぼっち特有の、相手の言葉の裏をかく!」...なんだそれ、全然格好良くねぇよ。そのまんまじゃねぇか。
「そのお兄ちゃん呼びも、俺の名前がわからないからじゃないのか?」
「覚えてるよ、それぐらい!えっと...やわた君だっけ?」
「俺は駅かよ、お前浅間神社ではちまんって言ってただろ」
そう言われると、小町はソファーにぐでっと座ってから返す。なにお前、卵だったの?
「あ~。もう疲れたからやめよう。はい、終戦」
小町がすごい短い第二次比企谷家大戦の降伏文書を言い終えた。ちなみに第一次は無い。第二次の敗者はたぶん俺。
その後に小町がマッ缶くらい甘ったるい声で言う。
「でも、小町も~、お兄ちゃんのこと愛してるよ!」
そんなことを小町が言うと、ちょうど着信が小町の携帯に来る。
「はっ、電話!誰だろ~?」
.....どっちにしろ、あと少しで決着は強制的に着くということだ。もう戻ることは出来ない。
小町が携帯を取るまでの間、俺は静かに深呼吸をした。
読んで頂きありがとうございます。
新しい作品は月曜日の18:45の投稿で、小町視点の話です。
希望等ありましたらメッセージにて受け付けます。
また、読んで頂いた方からのご意見で、他の作品の様に文字数を増やすべきだという意見がありましたので、アンケートを採ります。
詳しくは活動報告にあるので、そちらをご覧頂けたら、と思います。
また活動報告にも書いてありますが、その場合は一話が5000字程度を予定しています。
参加をして頂けたら、大変感謝致します。
これからも、感想や評価を頂けたら大変嬉しいです。
この作品の次回の投稿は土曜日の07:00予定です。
ありがとうございました。