俺は四人というのが一番とは言わないが、色々と適した人数だと思う。
例えば、家族でレストランとか行くだろ?
そうすると、四人席ってのはあるけど、三人席ってあんまり見ないんだよな。
だから、さっき小町が言っていた様な「小町の居ない比企谷家」は中途半端な訳だ。従って、俺の精神状態が中途半端になるかも知れないし、少なくとも俺が安心して寄りかかっていた存在はひとつ無くなってしまう。
ひとつ暗い話を思い出すと、いもづる式で他の暗い話が出て来たりするものである。今がその典型。ひとつ思い出してしまった。
親しかったおばあちゃんが亡くなってあまりしない時に、前におばあちゃんが座ってた椅子とか、毎年おばあちゃんと旅行に行っていて、それなのに今年から「四人です」とか旅行先で言う時はすごい悲しい。
何で居ないんだろうな、とか思うがもうどうしようもない。
なんなら、俺がずっと旅行先のレストランで五人目の椅子をじーっと見てたら、それを見て小町が泣き出したまである。
.....悲しいよう。涙出て来たぞ、もうそれから何年か経っているのに未だに信じられない。だってその数日前には会っていて、その一ヶ月前には旅行も行ったのに。
まだ信じられない時は、それを悲しんでいる人を見るのが一番辛い。
俺がマッ缶を飲みながら涙を拭っていると、小町がやって来た。あ、待ってよ。妹に泣いてる兄とか見せたくない。
もちろん待ってくれる筈もなく、小町は近くに来て俺の顔を覗き込む。幸い、涙を拭き終えていたので目が赤いだけだろう。
小町は不思議そうな顔をした後に、まさかね、という口調で小町は俺に話しかける。
「それ、そんなに美味しいの?」
いや、確かに美味しいけどいくら何でもそれは無いから。マッ缶を飲んだだけで泣くとかその俺、幸せ噛み締め過ぎだろ。
さすがにお兄ちゃんもそこまで頭がおめでたくないよ。
「いや、何でもないぞ」
「へー、そうなんだ」
口ではそう言うものの、小町はそんなの信じないよ、と目で言っていた。
どうしたのか、と聞かれたらまともに話す自信がないが、どうしたらいいものか。
「.....部屋行くわ」
このままだと、また小町と険悪な関係になりそうだったので俺は部屋に行った。
......ここ最近の小町の不安定さは何から来るものだろう。
受験のストレスか、人間関係が順調でないのか、自分の浅さに滅入ってしまったのか。
少しだけ小町との関係が順調になった今、雪ノ下や由比ヶ浜と小町に話をさせるのも比較的簡単かも知れない。
なんなら、今でも。
そう思った俺は、携帯を取りだして由比ヶ浜に電話をかけた。
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