ベート・ローガ? の眷族の物語   作:カラス

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帰還の四

 石畳の街路を斜陽が赤く染め上げる。昼の喧騒と夜の賑わいの間の時間。子供は遊びを終えて家へと帰り、母親は夕飯の準備に取りかかる。父親は仕事終わりに酒場に向かうか家路に着いて――町は昼間の装いから夜の姿に移り行く。

 露店商も店を畳みはじめ、人気が少なくなり、物憂げな空気がオラリオに漂う。後少しすれば、酒場から酔っぱらいのばか騒ぎが漏れ始め、昼とは違った賑わいを見せるだろう。

 

 ぽつりぽつりと魔石灯が道を照らし始める中を、ベートは冒険者依頼(クエスト)の品であるカドモスの泉水を背負いながら歩いていた。

 入浴後、完全に乾ききらなかった髪が普段よりも少し重く揺れる。ダンジョン帰りであろう女性冒険者が、ベートの顔をチラリと見て、隣のパーティーメンバーの女性と囁きあう。楽しげに話すその姿を見て、同じパーティーの男性陣は恨めしそうにベートを睨む。単なる僻みであると自覚しているが、身近な女性が他人の容姿を褒めていたら態度も硬くなるというものだ。

 

 ベートがそちらに視線を向けると、男性陣は直ぐに目を逸らし、女性達はキャーキャーと声を上げる。相手が誰か分かったが為の反応だ。女性達はまだしも、程度はどうあれ敵意を出した自分達が絡まれれば、一巻の終わりだ。第一級冒険者なんてものは、木っ端の自分達からすれば災害と同義なのだ。

 思わず出そうになるため息を口の中で転がして、飲み下す。疲れから些細なことにも気が散らされる。早く仕事を終わらせるのが良いと判断し、少し歩調を早める。

 

 暫くすると、【ディアンケヒト・ファミリア】を表す光玉と薬草のエンブレムが飾られた、清潔な白一色の石材で造られた建物が見えてきた。そろそろ店仕舞いするのだろう。ディアンケヒト・ファミリアの団員兼店員達が細々とした清掃に取り掛かっていた。閉店間近で用件を伝えるのは些か気が引けるが、ここで帰っては来た意味がないと、ベートは真っ直ぐ建物へ向かっていった。

 

「申し訳ありません。本日の営業は終了しましたので、また後日――」

「後日でも良いんだが、せめて()()だけでも受け取ってくれねぇか」

 

  背を向けてカウンターで作業をしていた小柄な女性が掛けてくる言葉に被せるように話しかける。掛けられた声を聞いてパッと振り返った女性――【戦場の聖女(デア・セイント)】の二つ名を与えられた人物――アミッド・テアサナーレはベートの顔を見て直ぐにその柳眉を寄せ、サッとその全身に目を通す。

 

 その視線に動じることなく、ベートは背負っていたバックから冒険者依頼(クエスト)の品であるカドモスの泉水を取り出そうとするが。

 

「少々お待ち下さい。直ぐに閉店しますので、お話はその後に」

「…都合が悪いなら報酬自体は今度でも」

「あちらの商談室でお待ち下さい。案内は必要ありませんね?」

 

 ――話を聞きやしねぇ

 ベートは微かに口元をひきつらせる。そんなベートの姿に頓着せずに、アミッドはテキパキと近くにいた団員に残りの業務の引き継ぎを進める。一拍置いて、抵抗しても無駄だと悟ったベートは半端に下ろされたバックを背負い直した。

 

 商談室近くにいた団員に一声かけてから、扉に手を掛ける。扉の先には清潔で整えられた部屋が見える。華美にならない程度の品の良い調度品、微かに香るのは、精神を落ち着かせる作用を持たせるよう調合した香油か何かだろう。

 

 机の上にカドモスの泉水を置いてソファーに腰掛ける。柔らかく体重を受け止めるソファーの座り心地は良かった。足の上に肘をつき、何処を見るともなく視線を漂わせて商談相手(アミッド)が来るのを待った――

 

 

 

 

 ▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 手早く業務の引き継ぎを終え、冒険者依頼(クエスト)の報酬を準備し向かった応接室の扉を開けた先に見えたのは、片手で顔を押さえ何かを堪えるようにして座る狼人の背中だった。

 漏れ聞こえた舌打ちに、思わず聞いてしまいそうになる。

 

 ――ディアンケヒト・ファミリア(ここ)はまだ、貴方を苛みますか? と。

 

 開きかけた口を閉じて、緩く首を振る。ゆるゆるとした頭の動きに少し遅れ、白銀の色をした細い長髪がさらりと揺れた。治療師(ヒーラー)は本分は傷を癒す事だ。それは身体の(肉体的な)傷だけでなく、時には心の(精神的な)傷も含まれる。

 

 治療師は傷付いた患者を立たせる事が重要なのではない。傷に寄り添い、支え、癒すことで患者自身の意思で立ち上がって貰うことが大切なのだ。疲れたのなら休んでも良い。傷が癒えるまで座っていてもいい。また立とうと思えるまで、治療師(ヒーラー)は何時まででも共にいる。

 

 ――優しくあれ、しかし堕落させることなかれ。

 いつも心に秘めている言葉。優しさは必要だ。けれど、過ぎた優しさは患者を堕落させる。時には厳しさをもって接することが、患者の為になる時もある。

 ――万人に優しくしなさい。けれど、万人に好かれることは必要ではない。

 嫌われたとしても、それで患者が再起できたのなら、胸を張って誇るべきだ。だが、いたずらに傷を抉るような真似をするのは治療師として失格だ。

 誰にでも触れられたくないことはある。必要とされていないのに、強引に関わろうとするべきではない。

 

「お待たせして申し訳ありません。過酷な遠征よりの無事のご帰還、嬉しく思います」

「ああ」

 

 心の内を覆い隠し、アミッドは「どうぞ」とベートの前に飲み物を入れたカップを置き、挨拶の言葉述べてからベートの対面のソファに腰かけた。

 ベートは机に置かれたカップに、微かに訝し気な表情を浮べる。今回は大きな商談などではなく、泉水の受け渡しと報酬の受け取りのみだ。ロキ・ファミリアに配慮して、カウンターなどで済まさず商談室を使うまでは分かるが、飲み物まで準備するのは聊か腑に落ちない。

 

「注文の泉水だ。要求量も満たしてるはずだ。確認してくれ」

 

 何かあるなら言って来るだろうと、ベートは感じた疑問を一旦置いておき当初の目的を果たすことにした。バックから取り出した泉水入りの瓶を手渡す。

 手に取り、一通り確認したアミッドは頷いた。

 

「確かに……。依頼の遂行、ありがとうございました。ファミリアを代表してお礼申し上げます。つきましては、こちらが報酬になります」

 

 用意されたのは二十もの万能薬(エリクサー)だ。

 【ディアンケヒト・ファミリア】が販売するものの中でも最高品質に類するそれらは、単価にして一本五〇万ヴァリスはくだらない。複数の小瓶はクリスタルケースに厳重に密封されており、ケースの中で、七色の液体が薄く輝いていた。

 

 泉水と交換で受け取った万能薬の小瓶一本一本を手早く取り出しては、手の内で全体を眺めるように回転させ、ケースに戻す。

 

「……」

「……」

 

 

 視線を万能薬に向け、確認の手を止めないベート。アミッドは自身の分のカップを傾け、喉を潤している。

 その間、両者は特に会話もなく無言。どこぞのアマゾネス姉妹の妹が居れば「何か暗いっ!!」と、叫びながら突っ込みでも入れそうな雰囲気だ。けれど、両者は特に気負った様子もなく動いていた。

 

 ベートが今やっているのは報酬の確認だ。依頼の品の破損や劣化などがないことを確認するのと同様に、今回のような報酬の品の品質、破損状態の確認をするのは受け取りを担当した者の責任だ。持って帰った後に破損していた、等と訴えてもどこかでぶつけたのだろうと言われてしまえばそれまでだ。

 

 別に【ディアンケヒト・ファミリア】を信用していない訳ではない。しかし、信用という言葉で確認を怠るのはただの怠慢だ。

 特に、ダンジョンの深層に潜ることのある【ロキ・ファミリア】にとって、万能薬は欠かせないものである。破損、劣化によって想定していた効果が得られなかった。それだけで全滅の危険さえあり得るのだから。

  コトリと最後の一本を確認し終え、ケースの中に万能薬を戻す。

  タイミングよくアミッドより差し出された受領書にロキ、ディアンケヒト各々のファミリアのサインを互いに書き込み完全に依頼を終える。

 

「報酬、確かに受け取った」

「はい。また依頼をさせていただく事もあると思いますので、その時はよろしくお願いします」

「流石にカドモスの泉水は暫くは受けたくはないな」

「その時にならないと、何とも」

 

  チクリと刺すようなベートの言葉に、アミッドは苦笑しながら言葉を濁した。足元を見た依頼だった自覚があるだけに、どうしても表情は雲ってしまうが、必要になるかどうかはその時になってみないと分からない。

 言いながらそこまで本気でもなかったベートは、まだ暖かいカップの中身を飲む。爽やかな味わいが口の中に広がる。

 ベートがカップを置くのを見て、アミッドは口を開きかけ――躊躇うように閉じてしまう。

 

「……」

「……」

 

  アミッドの目が伏せるようにして、長い睫毛に覆われる。下げられた視線の先で、緩く組まれた細い指が少しだけ動いては止まりを繰り返している。その姿にベートは何かを言うでもなく、受領書に目を落とす。

 先程の確認の為の無言の空間とは違い、重い沈黙が降りていた。

  そのまま暫く二人は動かなかったが、ベートは吐息すると万能薬をバックの中に入れるために手を伸ばそうとして――

 

「――【聖母(マリア)】が、ダンジョンの20階層付近で目撃されました」

 

  アミッドの言葉を聞いて、ベートはその手を止める。

  変わらない表情。しかし、その眼だけは違った。

 睨んでいる訳ではない。怒りや、まして殺意が込められている訳でもない。ただ、()()()と視線を合わされた。

 それだけでアミッドは息を飲んだ。

 

 治療師は怪我人を治療するという役目柄、怪我をした患者から罵声を浴びせられることがままある。痛みによる錯乱、意味のない八つ当たりなど理由は様々あるが、一々そんなことで怯んでいたら治療等できない。

 どのような状況でも冷静に、【鋼の精神】をもって事に当たる。

 アミッドのLv.は2だが、彼女は大きな傷を負って痛みから暴れるLv.4の冒険者に対して、一歩も退かずに治療を続けたことも多くある。仮に第一級冒険者が相手だとしても、対応は変わらなかっただろう。Lv.差で恐れるようなことは無い。

 

 しかし、自身に向けられる琥珀色の眼が、アミッドをどうしようもなく緊迫させた。

 

(それでも…)

 

 どんな些細な情報であったとしても、聖母(彼女の)ことは伝えなければならない。ベート・ローガ()には、伝えなければならないのだ。

 

「…経緯としましては、探索中のパーティーが怪物進呈(パスパレード)を受け――」

 

  気を引き締めて、アミッドはベートへの説明を続けた。

 その間、ベートの表情は終ぞ変わることはなかった――

 

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

「以上が、今回得られた情報となります」

 

  一通り話終わったアミッドはカップに口をつけた。すっかり冷めてしまっているが、話続けて乾いた喉には心地よかった。

  逸らされることのなかった琥珀色の瞳は、今は閉じられた瞼の下に隠れている。スッと静かにベートは立ち上がり万能薬をバックに詰める。

 

「情報、感謝する」

 

  ベートは短く一言だけ礼を述べると、踵を返しそのまま扉に向かって歩き出した。

  扉に手を掛ける直前、服の裾を引っ張られた。掴む、というよりは摘まむような力で握られる裾は、少し身動ぎすれば直ぐに放されるだろう。

 振り向く前に魔力の高まりを感じ、次いで詠唱の声が響く。何をしているのか理解したベートはそのまま動かずにいた。

  朗々と唄い上げる声が終わり、唱えられた魔法がその効果を現す。ベートの身体から細かな傷や痛みが消え去る。手を数度握っては開きを繰り返してから振り向いた。

 

  聖母の話をする前とは違う、違うように感じられる眼差しは自分の思い込みだろうか……。()()()見た、瞳の奥に澱のように沈みこんだ感情を。誰にも縋らず、何も溢さず飲み下したであろう想いを。知っている、分かっている等とは決して言えない。けれど、その姿を見てしまった自分にはどうしても、変わらぬ筈の眼差しに言い表せない()()を感じてしまうのだ。

 

「一つ、訂正させていただきます」

 

  握っていた服を手放し、此方を見るベートに今度は自分から目を合わせる。身長差の問題で見上げる形になりながら、アミッドは言葉を続けた。

 

「無事のご帰還と言いましたが、貴方は無事とは言えませんね」

 

  どこか非難するような響きを感じさせる声音。けれど、固い声音に対して、ベートを見るアミッドの表情はやるせなさを感じさせるものだった。

 

「この程度なら問題ない」

「問題のない怪我や傷は存在しません。どんな些細な傷でも、適切な治療は必要です」

 

  今度は明確に非難の意が込められた言葉と、表情であった。怪我の軽視は治療師が一番嫌う患者の考え方だ。引っ掛かれた程度、服の上から噛まれただけ。そんな言葉を言った者達の何人が取り返しのつかない事態に陥ったことか。

 

 今日初めて会ったときから分かっていた。遠征帰りだとしても多いと思ってしまう大小様々な傷に、顔色も悪い。遠征にはお金が掛かると、ロキ・ファミリアの方々が嘆いているのを何度も聞いたことがある。ダンジョンから戻ったからと、回復薬(ポーション)等を使わずにいたのだろうか。そんなことを考えてしまう程度には、ベートのコンディションはよくなかった。

  だというのに、ここに来てしたことは依頼の達成報告。回復薬も買う気配はなく、魔法による治療を施さなければ、何も処置などをせず帰っただろう。【ディアンケヒト・ファミリア】をどういうファミリアだと思っているのか。

 

 

「ここはダンジョンじゃねえ」

「その通りです。ここは【ディアンケヒト・ファミリア】の施設で、私は治療師(ヒーラー)。怪我人を治療することが私の役目です」

 

  ムッとした表情で語るアミッドの姿は、他の団員が見れば「珍しい」と言葉を漏らしたに違いない。普段冷静沈着な彼女がそんな姿を見せるのは、とある神の眷族の犬人(シアンスロープ)とやりあっている時くらいだ。

 

 

「頼んだ覚えはない」

「はい。本日の【ディアンケヒト・ファミリア】の営業は終了しました。ですから、今のは私がしたかっただけです。私が、傷付いた貴方を癒したかった。それだけです」

 

  手袋に包まれた手を自身の胸に添えて、少しだけ微笑みながら言い切った。その姿にベートは――諦めたように体から力を抜いた。

「…そうか」

「はい」

 

  おもむろにベートはポケットから袋を取り出し、それをアミッドに手渡した。小首を傾げながら袋の口を開けると、中にはダンジョン深層でしか採れない、治療薬に使える貴重な素材が入っていた。

 

「直ぐに代金を――」

「要らん。治療代だ」

「治療は私が勝手にやったことです。それに対価を頂くわけには、ましてこれは治療代にしても多過ぎます」

「ファミリアを通してないなら正規の価格じゃなくても問題ないだろう。足りないならまだ出すが、多い分には問題はないだろ。()()()()()()()()()()だ」

「…強情ですね」

 

 不承不承といった様子で、素材を受け取ったアミッドに「不服ならドロップアイテムの鑑定の時にでも多少色でもつけてくれ」と言って、今度こそベートは扉に手を掛けた。

 

 

「第一級冒険者の方には言うまでもないかもしれませんが、魔法での治療は体の傷は癒せても精神の疲弊までは回復できません。ですので、今日はしっかりと休養をとってくださいね」

「ああ」

 

 【ディアンケヒト・ファミリア】の本拠の入り口まで付き添っていたアミッドは念を押すように言うが、ベートは軽く相槌を返すだけだ。

 その対応にため息を吐くでもなく、慣れたようにアミッドは頷いた。言葉少なな返事だとしても、事情がなければ一度言ったことを簡単に反故にするような人物ではないと、彼女は知っていた。

去っていく後ろ姿に一礼をし、アミッドは仕事に戻る。営業時間が終わっても何かとやることはあるのだ。翌日の予定を思い出しながら、準備をしていく。

 

一度だけベートが向かった方へと顔を向け……首を振って作業を続ける。思うことはあれど、それが今の作業を疎かにしていい理由にはならない。

アミッドはぱしりと頬を軽く両手で叩いて気持ちを切り替え、残る仕事をこなしていった。

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

 

 【デュアンケヒト・ファミリア】の本拠から出て、日が落ちて暗くなった街路を本拠に向けてベートは歩を進める。

 酒場は喧騒に包まれて、陽気な酔っ払いたちが声を上げる。昼よりは人通りが減っても、宵の口である今のオラリオは静寂とは程遠い。騒ぐ人々の合間を縫うように歩くベートは【ディアンケヒト・ファミリア】で聞いた情報を思い返していた。

 

聖母(マリア)が目撃された二十層付近、ならリヴィラの町で何か情報を……チッ、どうせ無駄金払わされて意味のない上に真偽が定かじゃない話を掴まされるだけか)

 

 今までも似たような情報はあった。見た、聞いた、助けられたという声はあれど、正確な位置や何をしていたのか等の具体的な内容は今まで一つもなかった。聖母の痕跡の隠蔽が巧みなのもあるが、何よりも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことが足取りを追うことの難易度を跳ね上げている。

 

 ――私が向かった先を言わないでください。

 

 その一言だけで目撃者は口を噤む。ダンジョンに現れる【幸運の癒し手】。そんな通り名が出来る程に聖母は誰かを救ってきた。

 冒険者は験を担ぐ。例えば、一本の酒を飲むときに半分だけ飲み、もう半分はダンジョンから無事に帰って来られるように残しておくなど。

 誰が言ったのか【幸運の癒し手】に助けて貰ったなら何も聞くな、聞けばせっかくの幸運が逃げてしまう何て言うジンクスが信じられている。

 そのせいで入る情報があまりに少ない。分かっているのは何人かの仲間がいるということだけだ。それにしても人数も種族も分かっていない。

 実体はあれど実像が掴めない。無理に探そうとすれば他の冒険者からの反感を買う。そうなれば今までよりも更に情報が集まらなくなるのは目に見えていた。だからこそ強引に聞き出すことは出来なかった。

 

 だが、ここに来て新しい情報が入った。怪しいローブの集団。それが本当に聖母と関わりがあるのかは分からないが、何らかの手懸かりになる可能性はある。もし仮に、関わりがあるのであればベート・ローガ()は…

 

――私は、ただ救いたいのです。

 

 足を止めて空を見上げる。暗い空には雲一つ無く。欠けた月がゆっくりと天頂に向かって登っている。

 それを眺めながら思う。初めて()()と出会ったあの日、彼女に共感すれば良かったのか、出会わなければ良かったのか。

 

 それとも――

■■■いれば良かったのだろうか

 視線を戻して歩き出す。街路に立ち止まっていては邪魔にしかならない。疲れた体を休める為に、喧騒に包まれながらベートは自身の本拠地(ホーム)へと帰っていった。

 その道のりは遠征の疲労を差し引いても、重く遠く感じられた。




あまり話が進まなくて申し訳ない

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