里を捨てた少年   作:落ち葉崩し

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第57話 蠍の毒

「シカマル、入っていいぞ」

 

声の後3度ノックをしてから入る。

 

「すみません、綱手様。助かりました」

 

シカマルは頭をさげる。先ほどの無礼な侵入の仕方と、助けてもらった礼の意味を込めて。

 

「いや、何があったかわからんがとりあえずこれで命に問題はないだろう。すでに伝書隼を砂に飛ばしてあるから誰かがこちらに出向いてくるだろう。で、何があったか説明してくれるか?」

 

 

綱手の問いにシカマルが頷き答える。

 

「門の上で日向ぼっこしてたらたくさんの木が倒れるのが見えた。だからそこへ向かってみたんですがそこでミズキと砂の使者団が交戦中。3人はすでに気を失っていたんですが、テマリはミズキにやられる寸前だった。それを俺が助け、秘術で今は影の中に閉じ込めてます。この影の中から出る方法は2つ。俺が出してやるかミズキが死ぬか。こいつから何か情報を引き出せるかもしれないので、後で尋問部に連れて行きます」

 

「そうか、よくやってくれた。だがあのミズキが…特別上忍としてよくやっていたのだがなぁ」

 

椅子に座り少し憂鬱な目をする綱手。何せ仕事が早く、丁寧だったため重宝してはいたのだから。

 

「ま、同盟国の忍に手を出したのは事実。こいつはゆるさねぇ」

 

そう告げるとシカマルは腕組みをし影を見つめる。

 

「そいつのことはお前に任せる。後、すまんがテマリを木の葉病院へ連れて行ってやってくれ。その砂の使者の残りのものも多分病院にいるだろう。1つの部屋に全員入院させてやれ、費用は私が払っておく」

 

そう言うと綱手は一呼吸置いて告げる。

 

「ミズキを尋問部に置いたら後からでいいから来てくれ。お前にも話があるんだ」

 

「わかりました。後ほどまた伺います。では」

 

一礼しテマリを抱えるとそのまま部屋を後にする。駆け足で病院へ向かい、病院の受付で事情を話し一部屋借りをし、そこにベッドを4つ設けた。

 

その一つにテマリを寝かせ、受付に戻ると、サクラ達が3人を担いでいた。

 

「おう、サクラ。部屋は用意してある。こっちだ」

 

踵を返し歩き出したシカマル。その後ろを3人はついていく。

 

病室に入り残り3つのベッドにそれぞれを寝かせ中央の空いたスペースに椅子を並べ4人は座る。

 

「シカマル、事情を聴いてもいいか?」

 

カカシの言葉に頷きシカマルは事情を説明した。

 

自分が気づいかけつけるとすでに危険な状態だったこと。ミズキが裏切り者の可能性があること。そして今の状況などだ。

 

「うそ…ミズキ先生が…」

サクラは信じられないといった表情だ。

 

「残念ながら事実だ。そして今から尋問部へ連れて行く。カカシ先生、暴れられたら面倒なんでついてきてもらっていいっすか?」

 

シカマルの問いにカカシは頷き立ち上がる。

 

「サイ、サクラ。ちょっとここでこの子達が起きるの待っててもらえるか?シカマルと尋問部行って片付けたら戻ってくるから」

 

カカシの言葉に2人は頷いた。それを見た2人はそのまま病室を後にした。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「シカマル、いのいちさんは呼んだのか?」

 

「綱手様が手配してくれてます。それとイビキさんも、ついでに多分アンコさんもいるかもしれませんね」

 

森野イビキ、みたらしアンコ。ここ最近木の葉尋問部の2枚看板と呼ばれるほどのドSコンビである。

 

「あー、あの2人がいるのか。ミズキも御愁傷様」

 

カカシはあの2人のやり方を知っているため、悪いやつではあるのだがミズキにほんの少しだけ同情した。

 

「まぁそっすね。あ、ここですね」

 

尋問部のドアを開けると3人の忍が立っていた。

 

「やぁ、シカマル、カカシ、久しぶり」

 

「お久しぶりです。いのいちさん」

 

「ご無沙汰してます。いのいちさん」

 

いのいちのあいさつを2人はにこやかに返した。

 

「早く出しな。ミズキの野郎とっちめてやる」

 

「まぁそう慌てるなアンコ。じっくりいたぶってやればいい」

 

この2人は何かやる気に満ち溢れており、若干の怖さを醸し出していた。

 

「じゃぁ出します。俺の影の上で影で縛ったまま出します。もしもの時はカカシ先生、お願いします」

 

シカマルは告げると印を結ぶ。影が黒く濃くなり、その上に手足を縛られ、ジタバタと暴れまわるミズキ。地面には血が流れている。

 

「この野郎、よくもやりやがったなてめぇ!ぶっ殺してやる」

 

ミズキはシカマルを見つめ叫ぶ。が、次の瞬間後ろから強烈な蹴りが入る。

 

「がばぁっ」

 

嗚咽を漏らし胃液が逆流し嘔吐する。

 

アンコの蹴りは相当な威力だったようだ。

 

「うっせーんだよ!てめぇ話は聞いてんだ!さっさと白状すんだな!」

 

アンコのセリフに呻き答えることができないミズキ。そこにイビキがしゃがみこむ。

 

「おい、お前が吐くまでじっくり楽しませてやるからよ。楽しみにしてろよな」

 

そのまま頭をつかみ尋問用の椅子に座らせ体を縛り付ける。

 

カカシはその椅子の後ろに立ち雷遁チャクラを流し込む。ミズキは土遁の使い手と有名なため、術を使えなくするためだ。

 

「さぁ、白状するか吐くかどちらかだ」

 

イビキの言葉にミズキはそっぽを向き話そうとしない。

 

ため息とともにイビキが右手をあげる。

 

その瞬間アンコの拳がミズキの腹部に入る。

 

「ぐふぅっ!」

 

その威力はすさまじいものであり、尋問椅子がかなり揺れている。

 

ちょーしこいてんじゃないよ!さっさと吐け!」

 

アンコの怒号が響く。ミズキは悶絶しており聞いているのかわからないが。

 

「口を割らないなら仕方ない。少しばかり体に聞いてみるか」

 

 

イビキがジャケットの前を開けるとそこには数々の忍具があった。

 

「死なない程度に斬り刻む。覚悟しておけ」

 

アンコとともにその忍具を構える。

 

その表情は見るものを恐怖させる笑顔であった。

 

「や、やめろ、やめろ!うわぁぁぁーー!!」

 

シカマル達の前で行われた行為は言葉にするのもおぞましいほどの暴力。痛みを与えるだけの拷問でありもはや情報を引き出すということ自体がおまけのようなものに感じるほどであった。

 

2時間後

 

 

「これだけやって口を割らないとは。なんて忍耐強いんだ」

 

イビキの言葉にシカマルは呆れた。

 

『何度か言うって言ってなかったかあいつ…ホント今なんてもう話せる状態じゃねーし』

 

ミズキはもはや意識も朦朧とし、息も切れ切れだった。

 

「しょうがないねぇー、いのいちさん。お願いしていいですか?」

 

 

いのいちがうなずき一歩前に出てくる。

 

「じゃぁいきますよ。読心!」

 

対象の頭に手を当て情報を読み取る術だ。最初からこうすればいいのにとは口に出せないシカマルとカカシ。

 

その瞬間ミズキの身体に異変が生じた。

 

「ぐぐぐぐぅ、ぐぁぉあぉぁぁ!!」

 

ミズキが痙攣し始めた。

 

その時いのいちは瞬時に術を解除する。だが時すでに遅し。ミズキは動かなくなっていた。

 

「なんだ!どうなった!?」

 

イビキはいのいちを問いただす。

 

「記憶を覗こうとした時に何か術式のようなものに阻まれた。そしてその術式が記憶の中を燃やして行っていたよ。多分何者かに操られていたんじゃないかな?」

 

いのいちは冷静に分析し伝えるとシカマルに指示を出す。

 

「シカマル、こいつに襲われていたくのいちに話を聞いてもらえるかな?もしかしたら何か知っているかもしれない」

 

その言葉にうなずきシカマルは駆け出した。

 

 


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