里を捨てた少年   作:落ち葉崩し

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第56話 砂隠れの姫君・無精の智将

「陽光、ここにいたか」

 

我愛羅の声が下から聞こえる。

 

砂隠れの里の1番の大木、千年杉の上に陽光は立っていた。

 

「なぁ、我愛羅にぃ。俺たちが里にいることは里にとってマイナスなのかな?」

 

陽光は遠くを見つめ問う。その答えを我愛羅は一瞬の間ののちに雲に乗り陽光の横に浮いてくると肩に手を置き答える。

 

「大丈夫。俺たちの力で里を守ってやればいい。それに最後ば皆が協力を申し出てくれた。そのみんなのためにも俺たちはやれることはやる。それが俺たちの仕事だろう」

 

我愛羅の言葉を受け止め陽光は真剣な表情で頷き、砂の上に自分も乗る。

 

「そうだな。じゃぁ我愛羅にぃ、俺たちのできること、やってやろうぜ!」

 

我愛羅は少し微笑むと頷きそのまま砂をキン斗雲のように操り飛んでいく。

 

門の上にある駐屯所へ向かい、2人は飛んでいくのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「マツリ!ユカタ!サリ!急ぐよ!」

 

 

「「「はい!」」」

 

テマリは走りながら叫ぶと少し後ろから3人の返事が聞こえる。木の葉の里に向かい同盟国として協力をしてもらうこと。そして五影会談における砂隠れの里の意志を伝えること。そして何人かの忍を選出させてもらうことが目的である。

 

そして木の葉の里において、暁の情報を少しでも集めるのも目的の一つである。

 

そのためテマリはかなり速く走っていた。

 

他の3人も普段テマリに鍛えられているだけありついて行ってはいる。

 

 

木の葉の里まであと500mを切った頃。異変が起きる。

 

後ろから短い悲鳴が聞こえた。

 

「きゃっ」

 

立ち止まり振り返るとそこにいたのは白髪の男。顔を隠していて誰かわからない。

 

マツリ達3人は気を失っており、皆地に伏せていた。

 

「マツリ!ユカタ!サリ!貴様は何者だ!」

 

その問いに男が答えることはない。

 

そして男は瞬間声を出してくる。

 

「お前は風影の娘だな。お前には利用価値がある。おとなしく捕まれ」

 

テマリは男の言葉を鼻で笑う。

 

「はっ、何言ってんだい?あんたなんかに私がやられるわけないだろう?捕まえたきゃ力ずくでやってみな!」

 

テマリは告げるとその場から消える。

 

次の瞬間マツリ達3人は同じ大きな木の裏に移動させられていた。

 

「ずいぶん余裕だな。女」

 

白髪の男が目の前に現れると右足が顔面に迫る。テマリはそれを鉄扇でガードするとそのまま1の星2の星まで開放する。

 

「風遁・大旋風!」

 

男の体を風が襲うが、男は全く意に返さないというような態度でその風を前に立つ。

 

そして印を組むと地面に手をつき、自らの前に土の壁を形成する。

 

「土遁・硬岩壁の術」

 

その壁は硬く丈夫であり全くビクともしない。その壁から槍のように岩が形成されていく。

 

「土遁・戦塵槍の術」

 

無数の槍がテマリに襲いかかる。

 

テマリはそれを飛んでかわし、鉄扇を振るおうとするが、槍の先端がテマリに向かい追尾してくる。

 

「初めて見る術だ、だか!」

 

テマリはその槍の先端に鉄扇を叩きつけそのまま地面に槍を叩きつけた。

 

槍は粉々に砕け散りテマリの足元に散らばる。

 

「流石は砂の上忍。この程度ではびくともしねぇなぁ。だが俺は倒せねぇぜ」

 

男が印を組むとテマリの右足に激痛が走る。

 

「ぐぅっ!!!」

 

先ほどの槍の残骸がすべて小さな槍となり右足を貫いた。テマリの右足には無数の槍が突き刺さり血が溢れ出てくる。

 

「くぅっ、だがこれしきで私を止められると思うなぁ!」

 

テマリは印を組む。先ほどまでとは比べ物にならない速さで。

 

自らの足に触れ血を掬うと鉄扇に塗りたくる。

 

その瞬間鉄扇に術式が発動しそれを前に向けて振るう。

 

「口寄せ・カマイタチ!キリキリ舞い!」

さらにもう一度次は逆の面にも血を塗りたくる。

 

そして逆にも一閃鉄扇を振る。

 

「口寄せ!斧イタチ!大閃斧!」

 

2匹の武器を扱うイタチが風を薙ぎ、周りの木をなぎ倒しながら男に向かう。男は背中に抱えた二つの大きな手裏剣でその攻撃を受け止める。

 

ズザザザザ

 

足が地面を擦れて体が後ろに押される。そしてそのままかなりの距離を押されるが男は踏ん張り耐えた。その瞬間体を反転させ男は宙を回るとその右足で2匹のイタチを屠る。

 

地面に叩きつけるとそのイタチ達は煙となって消える。

 

「所詮その程度だ。お前では俺に勝てない。お前は俺に捕まりサソリ様の手駒にしてやるぜ!」

 

その男が口にしたサソリという男の名に聞き覚えがある。

 

「サソリ?赤砂のサソリか!?」

 

テマリの言葉に男が反応する。

 

「そうだ、その通りだ。あのお方の力になること。それが俺の使命だからな。そろそろおねんねしてもらうぜ!」

 

「土遁・牙追掌!」

 

地面を男が殴りつける。

 

この瞬間拳大の岩石がテマリの全身に襲いかかる。

 

鉄扇を広げガードをするが、四方八方から飛びくる岩石、すべてガードすることはできない。いくつかの岩石が命中する。

 

「くぁぁ!」

 

だが止まらない。左足だけで飛び上がり鉄扇で風を起こす。

 

下から襲い来る岩石をすべて吹き飛ばし難を逃れるが、その瞬間上からの攻撃。

 

「くらえ、土遁・岩鋼剣」

 

ザシュッ

 

男はテマリが鉄扇を持つ方の手である右肩を剣で貫く。その剣をそのまま地面に突き刺し、身動きが取れないようにする。

 

「うぁぁぁぁ!!」

テマリの口から悲鳴が漏れる。そしてそこからは大量の血が流れ出ている。

 

「殺したらあの人のコマとして使うとき面倒だ。そろそろ倒れとけ」

 

男が足を振りかざす。歯を食いしばり衝撃をこらえるために身構えるテマリ。

 

だがいくら待ってもその衝撃は来ない。

 

「っ!?」

 

テマリは目を開けると目の前には男の足。そしてその後ろには1人の忍がいた。

 

「よぅ、あんたにしチャァ珍しくやられてるな。今度は俺が助けに来たぜ。ま、日向ぼっこしてたら偶然見えたんだけどな」

 

奈良シカマルが印を組んだ状態でテマリに告げる。その顔は優しげだが怒りをこらえていた。

 

「おい、お前ミズキだな。こんなとこで同盟国の忍に何してんだ?」

 

シカマルは問う。その男をミズキと呼ぶ。木の葉の忍のようだ。

 

「あぁ、よくわかったじゃねぇか。奈良シカマル。邪魔すんならお前もやるぜ?」

 

ミズキはシカマルにより対峙させられる。

 

「あんたが里の裏切り者だったなんてがっかりだぜ。俺にとっちゃあんたはアカデミー時代の先生だからな。だがそのひとを傷つけたんだ。あんたはもう仲間じゃない」

 

そう告げると印を結び影を操る。

 

「影首縛りの術!」

 

影がミズキの体を這い上がる。その瞬間チャクラによる抵抗がある。

 

「はっ、奈良一族は馬鹿の一つ覚えみてぇに影を操る。そんなもん抵抗できるし時間が経てば術は解ける。お前と俺のチャクラの量じゃ勝負は見えてんだよ!」

 

ミズキはニヤリと笑いながら告げる。

 

「確かにチャクラ量じゃ俺はお前に勝てない。だがバカとハサミは使いようって言ってな。そのバカみたいに影の使い方を極めてきた俺たちにしか許されない術ってのも…あるんだよ!」

 

印を結び直すとミズキの体に対し木の影からたくさんの影が鋭く尖り伸びていく。

 

「影縫いの術!」

 

ミズキの四肢の付け根部分、両手両足に影が突き刺さる。

 

その影は体を貫き止まる。

 

「ぐぁっ、この術は!?」

 

ミズキの知らない術だったのだろう。何せこの術は奈良家でも使用できるのは今やシカクとシカマルくらいのものだからだ。

 

お前の敗因は二つ。俺の一族を舐めてかかり俺を格下と決めつけたこと。そしてもう一つ。俺の大事な仲間を裏切り、この人に手をかけたことだ!」

 

さらに印を結ぶとミズキに突き刺さり、動きを止めていた影までも消える。その瞬間ミズキの体を影が包み込む。地面に黒い穴が開き、その中に引きずり込まれる。

 

「秘術・影奈落縛りの術」

 

「な、なんだこれは!や、やめろ、やめろー!!」

 

ミズキの叫びとともに地面の穴は消えた。

 

「いっちょあがり。テマリさん。大丈夫ですか?」

 

シカマルは汗を拭うとテマリに走り寄る。

 

テマリは気を失い倒れていた。術者がいなくなったせいか、槍も剣も消えており、血だらけのまま倒れていた。

 

 

「ちっ、これはまじぃぞ!あっちの3人は…」

 

テマリの後ろで倒れていた3人に目を向ける。木にもたれかかったまままだ目を閉じていたが目やだった傷はなかった。

 

「この人の傷が最優先だな」

 

テマリを抱え走り出す。木の葉の里へ向けて。

 

門のところまでたどり着くと、そこには偶然にも7班のサイとサクラ、カカシがいた。

 

「サイ、サクラ、カカシ先生!頼みがある!」

 

後ろから声をかけられた3人は振り返り驚きの表情を見せる。

 

「シカマル!その人は!」

 

「あぁ、話は後だ。こっから西に600mほどのところの木の下に砂の使者の方が気絶させられている。人数は3人。その人達の救出、および治療を頼む。外傷はなかったから気を失っているだけだと思う。この人の怪我がひどいから綱手様に見てもらいに行ってくる。そっちを任せたい!」

 

口早に言うと、サイとカカシは顔を見合わせ頷く。

 

「わかった。任せて」

 

サイの返事と共に2人が走り出し、その後をサクラが追う。

 

「これで一応大丈夫か。急がねぇと」

 

火影執務室へシカマルは急いだ。

 

普段はドアから入るのだが緊急事態だ。シカマルは飛び上がり窓から入り込む。

 

入り込むと綱手は1冊のビンゴブックとにらめっこをしており、驚き振り返る。

 

「馬鹿者!ドアから入らんか!!」

 

「綱手様!すみません。この人の治療をお願いします。事情は後で説明しますので!」

 

シカマルの抱く人物を見て綱手は表情を変える。

 

「テマリじゃないか!一体何が!とりあえず床に寝かせろ!」

 

シカマルはテマリを優しくおろし床に寝かせる。

 

「一応外に出ています。そいつも女なんで。終わったらドアの外にいますから呼んでください」

 

シカマルは一礼し外に出る。

 

綱手の治療が始まった。




シカマル強くしすぎた?

それともテマリ弱くしすぎたかな?

って感じですね。

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