「久しぶりね、自来也」
大蛇丸は自来也を見つめ話す。その目に懐かしいなどの感情は一切ない。あるのは野望のみだった。
「大蛇丸、サスケはどこだ?」
自来也は大蛇丸に眼光を向けながら話す。
ネジとリーは離れたところから見ているがそれでも2人から漏れる圧力は相当なものだった。
「サスケくんはもうここにはいないわ。さっき逃したからね。私もあんたたちの相手をしてる暇なんてないんだけどねぇ」
舌を出し唇をひと舐めしながらつぶやく大蛇丸。
「わしもお前とやるのは気がひけるがまぁ仕方ない。お前を殺しサスケを探す」
そう言うと自来也は大蛇丸にクナイで斬りかかる。
自来也の攻撃を予測していたのか大蛇丸もそれに対しクナイを抜きその斬撃を受け止める。
「老いたわね、自来也。昔の力があれば私は吹き飛ばされていたかもね?」
「そらそうだのぅ、だが今無い物ねだりしてる暇はないんだってーの!」
2人は会話しながら戦闘を続ける。
自来也が蹴りを出すと大蛇丸はそれを避けその反動のまま上段に突きを放つ。その手を自来也は取り一本背負を繰り出すが大蛇丸はそのまま落ちずしっかりと着地するとそのままの体制から後ろ蹴りをふるう。
そしてそれが自来也の腕により払われバランスを崩したところに打ち下ろしの掌底打ちが落ちてくる。
首だけで避け体勢を立て直すため距離を取る。
「やるじゃない、自来也」
「お前ものぅ、大蛇丸」
2人はお互い認め合っている。今は敵同士であってもかつては一緒に戦った仲間。手の内はお互い知り尽くしているといってもいいだろう。
「次はこちらからいくわ」
大蛇丸は印を結び始める。それを見て自来也も印を結ぶが大蛇丸の方が結び終わるのが早かった。
「火遁・豪火球の術!」
コンマ3秒遅れてから自来也も術を発動する。
「水遁、水龍弾の術!」
火球が自来也に迫るも自来也はそれを打ち消す。
その瞬間に大蛇丸が次の手を打ってくる。
「潜影蛇手!」
無数の蛇が自来也に伸びてくる。
自来也はバク転でかわしながら印を結ぶ。
「土遁・黄泉沼!」
大蛇丸の足場が急に沼になる。それに少しずつ飲まれていく大蛇丸。その沼は底なし沼であり、もがけばもがくほど飲まれていくのだった。
「甘いのよ!」
その言葉を吐いた大蛇丸は、脱皮するがごとく口から大蛇丸が出てくる。まるで蛇のように体をくねらせながら出てくるのだ。
「くらいなさい、風遁・大突破!」
自来也をとんでもない突風が襲う。
その勢いで自来也の立つ地面から砂が巻き上がる。
その瞬間まさに大蛇丸がとどめをささんと動き出す。
「草薙の剣」
口から刀を取り出すとその刃は自来也の心臓に向かう。
だがそれは自来也には届かない。
それを防いだのは赤いチャクラだった。
「お前は、九尾の…」
大蛇丸はつぶやく。伸びてきた赤いチャクラの方を見て。
自来也もそちらに目を向ける。
そこには以前自分が弟子として育ててきたミナトの面影を持つ少年がいる。そして大蛇丸の言葉。それでその少年がナルトであると確信した瞬間だった。
「ナルト!助かったわい!さぁこっからはこっちが攻めるぞ!」
親指を噛むと自来也は腕に血を塗ると地面に手をつく。
大蛇丸も同時に同じ行動をとった。
「「口寄せの術!!」」
煙が辺りに立ち込める。
それが晴れると大きな蛙と蛇がいた。
その光景にネジやリーは度肝抜かれる。
だが陽光はまったく動じず腹の中の九尾に聞く。
「九喇嘛、あいつらとお前どっちがつえぇ?」
九喇嘛は鼻を鳴らし答える。
「ふん、あんな奴らただの雑魚じゃ。ワシを出すか?ナルト?」
その問いにナルトは首を横に振るが言葉を続ける。
「あの蛙が負けそうな時だけ出す」
その答えに九喇嘛は嬉しそうに頷く。
「そうか、久々に暴れられるかもしんねぇんだな?待っているぞ」
そう言うとナルトを包むように座る。そしてナルトに1本の尻尾を巻きつけた。
「ブン太!行くぞ!」
頭の上から蛙に命じる自来也にカエルも応答し、ドスを抜き飛び込む。
「おおうよ、ペビがなんぼのもんじゃー!」
刀を振るうとマンダはそれを歯で受け止めた。真剣白刃取りのような感じで口で受け止めた。
そのままドスを振り回そうと首を振るマンダに対し、ブン太はドスを持ったまま耐える。
自来也はマンダの上をかける。大蛇丸も自来也に向けて駆け下りる。
「そこよ!潜影蛇手!」
「火遁・火龍炎弾!」
無数の蛇が自来也に向かうがそれが火龍に焼かれ散っていく。その炎が大蛇丸を包もうという瞬間自来也の後ろに大蛇丸がいる。
「影分身、これであなたの負けよ」
大蛇丸の手には草薙の剣。それを振るう大蛇丸。
刹那ブン太が自来也を舌で救出する。大蛇丸の斬撃は空を切る結果となった。
「助かったわい、ブン太。まさか影分身だったとはのぅ」
そういう自来也にブン太は叫ぶ。
「馬鹿野郎が!わしが助けんかったら死んどったぞ!さっさと本気出さんか!」
ブン太はマンダにまた飛びかかる。ドスを振り抜く斬撃を繰り出すが、それをマンダは避けると噛み付く。それをドスで受け止めるとそのドスを地面に突き刺しそれを軸に体を回転させ回し蹴りをぶち当てた。
その時大蛇丸もマンダごと吹き飛ばした。
「自来也!仙人チャクラは溜まっとんのか?」
「いや、ダメだのう。全然足らんわい」
「ならここは一旦引け。このままじゃジリ貧じゃぁ」
自来也とぶんたは大きな声で話していたためその言葉は陽光にも伝わる。
「おっさん、俺やっていいかぁ?」
自来也の横に現れると自来也に了承を得ようと尋ねる。
「あぁ!何お前人の頭に断りもなくのっとんじゃわれ!」
ブン太は怒り振り落とそうとするが陽光はチャクラで吸い付き離れない。
「お前が?まさか九尾の力を使いこなしとるのか?」
「そうだってばよ、だからあいつ倒してくるってばよ」
自来也はナルトに聞いたことに対して即答された言葉を受け止め驚く。そしてナルトを止めることができなかった。
「おっさん、俺があの大蛇丸ってやつをなんとかするからあのでかい蛇をどうにかしてくれ!」
その瞬間ナルトは九尾チャクラにつつまれ、オレンジ色に光るチャクラはおびただしく溢れ出てくる。
その瞬間ナルトが消えたように感じた自来也。その瞬間マンダの頭のところから爆音が聞こえる。
「おりゃー!」
ナルトは大蛇丸に裏拳をたたきこむ。マンダの上から吹き飛ばされる大蛇丸。
その大蛇丸に追撃を加えようとするナルト。ナルトの通ったあとは全てが無に帰すかのように木々がなぎ倒され粉塵が上がっていた。
「お前のことなんて知らないけどよ、仲間の敵は敵ってやつだ!」
ナルトは吹き飛ばした方向と逆方向に大蛇丸を蹴り飛ばす。その大蛇丸は受け身を取ることもままならず飛ばされるがままだった。
「ぐぁぁ!!」
その瞬間マンダが飛び出そうとするがマンダの頭をドスが貫く。
「わしを忘れたらあかんやろ!この蛇野郎が」
ブン太がそのドスを横に薙ぎはらう。
マンダは煙となってきえる。そしてブン太は自来也に尋ねる。
「あのガキャァなにもんじゃ?あんな簡単に大蛇丸をボコすたぁただモンじゃないぞ?」
「あぁ、あいつはミナトの子じゃ。そして9尾と完全に理解し合っとる」
その言葉にブン太は驚きの声を上げる。
「あいつがあのミナトの子か。そりゃぁ凄いのぉ。まぁもう片付きそうやけェわしは帰るぞ」
ブン太もその場から消え去り自来也はナルトを眺めた。
「あやつ、あそこまでやりおるとは。もう誰も手ェ付けられんじゃろ?」
その言葉の通り大蛇丸はもはや手も足も出ない。
身体中の骨は折れ形を保てていない。さらには血を流し過ぎていた。
最後の一撃と陽光は大蛇丸を地面に叩きつけるように殴り倒すと、大蛇丸はピクリとも動かない。
そして九尾チャクラが解けると自来也が近づいてくる。
「ちとやりすぎではあるが、これであとはサスケを探すだけになった。感謝するぞ」
そう言うとナルトに笑いかけるが、ナルトは一礼して立ち去った。
大蛇丸の脈を計ると全く動いておらず、心拍を確認するも動きはない。
どうやら本当に死んでしまったようだった。
だがそれはただの抜け殻だった。
地面からいきなり何かが出てきて飛び上がる。
「な!?」
自来也はそれを見て目を疑う。先ほど死を確認したはずの大蛇丸が地面から出てきたのだから。
「最後の…一撃をくらう前に脱皮して…おいて正解だったわ。もう少しで、死ぬ、ところ…だった」
「でも残念…だったわ。ね。私は…サスケくんの体を手に入れる。絶対にね」
話を終えた大蛇丸はその場から消え去った。そしてその時カブトも同時にいなくなっていたのだった。
そこにシカマル、テマリ、ヒナタ。逆方向からは我愛羅が砂に乗り飛んでくる。
「おお、みんな無事だったか、砂のみなさん、ありがとうございました」
カカシは周りを見渡し1礼する。
「チョウジがホウレン丸を使い今動けないため門の外にシノといます。キバも負傷したため、サイと砂のカンクロウとともに門の方に向かっているそうです。あとガイ先生は我愛羅に門のところに運ばれたようですが命に別状はなさそうでした」
シカマルの報告にカカシは誰も死ななかったことに安堵する。
「我愛羅にい、テマねぇ。そろそろカンクロウにぃ連れて帰るってばよ」
そう言うと陽光は走り始めていた。
「それでは失礼します。奈良シカマル、あんたの立てた作戦のおかげて誰も死ななかったんだ。誇れよ」
テマリが走り出すとそのあとを我愛羅も追った。
「なんだよあいつ、言い逃げしやがって」
シカマルは照れて頭をかく。そして鼻の下をゆびでこするとニヤリと笑う。
「そうだな、シカマル。お前のおかげで誰も死ななかったんだ。いい作戦だったと思うよ」
カカシはシカマルに言うと周りを見回し告げる。
「今回の任務は失敗したが得るものは多かった。そしてお前らはナルトに追いつくにはまだまだだということも分かっただろう。だがこれからだ。まだまだ時間はある。焦らず頑張ろう」
カカシの言葉にみんなが頷く。
「それじゃぁ帰りましょうか、自来也様」
自来也の方を見ると自来也は3人が走り去った方を見ていた。
「自来也様?」
「あぁ、すまんすまん。じゃぁ木の葉に帰って綱手に報告するとするか」
カカシの呼びかけに応じると自来也を先頭に歩き始める。
そしてけが人をみんなで分担して背負いながら、里に帰って行ったのであった。
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「そうか、大蛇丸がそこまで一方的に」
「あぁ、あやつの力は底が知れん。もしも何かあった際にはあやつは危険すぎる。だが味方となるとあいつより頼もしいものもおらんはずだ」
「里の物の中でこの前ナルトに手を出そうとした者たちは火の国から追放、砂の国は受け入れを拒否したため、その他の国に送られることになったが果たして何人が前と同じ生活ができるかはわからないけどね」
2人は不穏な話をする。ナルトという力の脅威について。
「だがやつはミナトとクシナの子だ。本性は優しい子さ。間違いないね」
綱手のつぶやきに自来也も頷く。
「あいつはいい目をしていた。まるで4代目として里を守った時の目と同じじゃった。あいつを見守ろう。そして木の葉の里の中でも受け入れてもらえるようにな」
自来也の言葉に綱手も頷く。
2人は長い時間ナルトのことを考え話した。
2人の気持ちは同じだった。
ナルトを大切に思っているという気持ち。