里を捨てた少年   作:落ち葉崩し

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本選開始まで2週間となった土曜の朝、木の葉の里から少し離れた街で祭りがあるという情報を仕入れたマツリは憧れの陽光を誘うことに成功した。
だがしかし、そんな幸せそうなマツリの後ろにはニヤニヤした男女が4名、めんどくさそうな赤髪の少年が1名いるのだった。


第18話 マツリと陽光

マツリとの待ち合わせ場所、木の葉の門にやってきた陽光はいつもと変わらぬいでたちだった。

 

10分ほど待ったころ、カランコロンと音を立ててやってきたマツリを見てナルトは思わず笑顔を見せる。

 

「お、お待たせしました、陽光様!」

 

大人っぽいような子供らしいようなあどけなさの残る水色の浴衣にかわいい鼻緒の下駄を履いたマツリが頭を下げる。

 

「いや、そんな待ってないってばよ!その浴衣すげー似合ってるぞ!」

 

その言葉を聞いたマツリは顔を赤くして俯いてしまう。

 

「なぁマツリ、俺のこと陽光様って呼ぶのやめないか?なんかかたっくるしいってばよ!普通に同い年なんだから陽光でいいってばよ!」

 

 

その言葉に対してアワアワと両手を前で振りながら答える、

 

「む、むむ無理ですよぅ、呼び捨てなんて恥ずかしいです」

 

乙女心全開のマツリは両手で頬を包みこみ、照れてしまう。

 

「じゃぁこうするってばよ!陽光くん、もしくは陽光さんでもいいってばよ?慣れたら呼び捨てにしてくれよな!」

 

そう告げるとマツリはまた顔を赤く染め困ったような表情になるも頷き応じた。

 

「わ、わかりました、陽光さm、さん」

 

 

ナルトはニコッとするとマツリを促し歩き始める。

 

「街までは歩いて20分ってところだから行こうぜ!足が痛くなったら教えるってばよ!」

 

そう言うとマツリの隣で楽しそうに微笑んでいる。

 

マツリもそれを見て嬉しそうに歩き始めた。

 

 

そらこからだいぶ離れた場所にはニヤニヤした4人と少し離れた気に凭れかかる我愛羅。

 

「陽光のやつも隅に置けないじゃん!本選を控えてるのにデートなんてよ」

 

ニヤニヤしながらも若干ジェラシーを感じるカンクロウ。

 

「まぁまぁ、まだ2人とも年齢的には子供なんだから嫉妬しないの、それに将来もしかしたら妹になるかもしれないよ?」

 

テマリはニヤニヤしながら様子を眺める。

 

「いやーん、マツリってばだ・い・た・ん」

 

ユカタが楽しそうに話す。

 

「でもマツリちゃん凄いよね、このためだけに浴衣買っちゃうんだもん」

 

そう、今日の朝陽光からオッケーをとるや否や浴衣を買いに走り、裾直しから何まで全て終わらせてもらったのだ。

 

その値段は今までの任務でためていたお金のほとんどを使ってしまったようで、ユカタとサリは少しだけだがマツリにお金を貸してあげたそうだ(後日里に帰った日に返す約束はしてある)

 

だがマツリの嬉しそうな顔を見ると2人は自分のことのように喜んでいるようにも見えた。

 

我愛羅はため息をつき、いざという時は4人を止めるために仕方なくついていく。

 

「陽光さん、陽光さんは祭りだったら何が食べたいですか??」

 

マツリは隣の陽光を見上げて質問する。

 

「うーん、やっぱりたこやきがいいってばよ、でもりんご飴も今日は食べるってばよ!」

 

そう言うとたのしみだなー、とつぶやいているのを聞いて誘ってよかったと思っていた。

 

「今日は誘ってくれてありがとな!誘われてなかったら寂しく部屋で何もしないでいるところだったってばよ」

 

そう告げるとマツリの頭をなでる。

 

マツリは顔をまたリンゴのように赤くしていた。

 

「マツリは今日なにが食べたいんだ?」

 

ナルトはマツリにたずねる。

 

「わ、私はトウモロコシが食べたいです!あとは綿あめも!あと金魚すくいが得意なんですよ!勝負しましょう!」

 

 

陽光の前に出て振り向き後ろ歩きしながら陽光に話しかける。

 

「いいぜ、俺のテクニックで負かしてやるってばよ!」

 

楽しそうにそう言葉を返し、マツリが前を向こうとした時、街が見えてきた。

 

「お、あれが祭りをやってる街だってばよ!結構人がいるな!」

 

そう言うとナルトはマツリの手を取る。

 

「はぐれたらいけないから俺の服か手に掴まってろよ!」

 

マツリはその言動にまた顔を赤くしながらもチャンスと思い手を

 

 

 

 

握れなかった。恥ずかしさが勝ってしまい、服を掴む。

 

ナルトは笑顔でマツリに振り向き声をかける。

 

「あそこにトウモロコシがあるってばよ!」

 

マツリのペースに合わせて歩く陽光の気遣いに気付いたマツリは嬉しくなる。

 

「はい、陽光さん!」

 

笑顔で返したマツリ。

 

ナルトは焼きトウモロコシ売り場のおじさんに声をかける。

 

「おっちゃん、2つちょうだい!」

 

「毎度」

 

とうもろこしをマツリが受け取り陽光がお金を払う。

 

「あ、陽光さん、自分の分くらい出しますよ!」

 

ふたりぶんのトウモロコシを受け取ったマツリは財布が出せずに焦り声を出す。

 

「いいってばよ、今日は誘ってくれたお礼に俺が全部出してやるってば!俺任務のお給金使う時間も惜しんで修行しまくってたから2年間でほら、こんなに!」

 

ナルトの見せた財布は2つ。

 

1つはお札のみが入るタイプに大量のお札が入っていた。

 

もう一つはカエル型のがま口財布。全て小銭のようだが、入りすぎてカエルが破裂しそうになっている。

 

「す、すごいですね、こんなにためたんですか!?」

 

マツリは驚きを隠せずたずねる。

 

「まぁな、修行の成果を試すために難しい任務にも行ったからな!Aランク任務にも何度か行ったし、Bランク、Cランクは1日に2〜3件やってたこともあるしな!」

 

その言葉に驚きを隠せない。

自分は今までBランクが1回とCランクとDランクは、多くても1日に1件だったのだから。

 

「さ、さすがは陽光さん達、驚きです。

それでは今日はご馳走になりますので、里に帰ったら是非修行の時にお弁当作らせてください!」

 

どさくさにまぎれてマツリは約束を取り付けようとするも、それに気づかない陽光は嬉しそうにいう。

 

「え、いいのか!?じゃぁさ、じゃぁさ、鮭おにぎりとタコさんウィンナー、甘い卵焼きがいいってばよ!」

 

メニューを聞いて、陽光のために練習しようと意気込むマツリだった。

 

2人で回った祭りは楽しかった。

 

たこ焼きも綿あめもりんご飴も食べて、2人でたくさん笑いあった。

 

その光景をニマニマと写真を撮りながら祭りを回る4人に、諦めたのか祭りで買った物を食べ続けている我愛羅。

 

そして金魚すくいは陽光は1匹も掬えなかったのに対しマツリは15匹も掬ったのだった。

 

そして1匹だけ、陽光の目のような真っ赤な金魚をもらって嬉しそうにマツリが言う。

 

「私の勝ちですね、陽光さん」

 

「あれは事故だってばよ、掬おうとした金魚の後ろからでかいのが飛んできて破れたんだぞ!あんなの勝てっこないってばよ!」

 

ふてくされたようにいうナルトだが、マツリはふんと鼻を鳴らす。

 

「勝ちは勝ちです。なので陽光さんにお願いがあります」

 

マツリは歩きながら陽光に目を向ける。

 

「なんだってばよー、聞けることなら聞いてやるぜ」

 

諦めたナルトは視線にマツリを捉える。

 

「後ろからついてきて写真を撮ってるカンクロウ様のカメラをあとで回収して私に渡してもらえませんか?今さっきの金魚すくい屋さんのあたりです」

 

マツリの言葉にパッと振り向き、あたりを探すと確かにカンクロウがカメラを持っていた。

 

「おう、わかったってばよ、カンにぃにはあとでキッツイお仕置きをくれてやるってばよ」

 

ニヤリと笑うマツリと陽光、この会話をカンクロウは知る由もなかった。

 

木の葉の里に帰り、マツリを宿の部屋の前まで送り届けたナルトはマツリに対してはなしかける。

 

「今日は楽しかったってばよ、誘ってくれてありがとな!」

 

そう言うと忍具の入ったポーチから紙袋を取り出す。

 

「マツリがトイレに行った時に買っておいたんだ、よかったらもらってくれってばよ、これも今日のお礼だから、それじゃぁ疲れただろうし今日はよく寝ろよ!おやすみ」

 

 

そう言うと自分の部屋に駆けていく陽光の背に見とれたままマツリは2人が帰ってくるまで動けなかった。

 

そしてナルトは部屋でカンクロウのカメラを没収し、布団で簀巻きにしたあとベランダに放り出したという。

 

テマリはナルトに謝る際に、ご機嫌とりに買ってあったお土産を渡して難を逃れたそうな。

 

我愛羅は静かにベッドの上で祭りで大量に購入してきたりんご飴と綿あめを嬉しそうに食べていたのだった。

 

 




はい、フラグ立ちましたがこのフラグのまま行ってしまうのか、それとも違うフラグが立つのか、それはあとのお楽しみです。

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