里を捨てた少年   作:落ち葉崩し

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番外編 ナルトの中の怪物

これは里を抜け砂隠れに来てから1年ほど経ったころだった。

 

このころになると、ナルトはすでに九喇嘛と仲良く会話するまでになっていた。

 

 

「九喇嘛、聞こえるか」

 

修行場にしている滝の前で腹のなかの九喇嘛に声をかける。

 

「なんだ、ナルト。何か用か」

 

九喇嘛は腹のなかで檻に入れられ封印されていたが、今はナルトと和解しあい、打ち解けている。

 

「俺ってばお前のチャクラを借りて、忍術ができるじゃん?それって例えば九喇嘛の使う尾獣玉とかも使えるのか?」

 

たずねるとさらりと答えが返ってきた。

 

「当たり前だろう、お前は俺の主であり、お前は俺を友と呼んでくれたのだからな。俺と息を合わせればお前が使用することも可能だ。だがお前は九尾の人柱力として覚醒してからまだ時間が短く、その攻撃の威力に体がついていけない可能性がある。だからまだお前は使わない方がいい。」

 

九喇嘛の言葉にナルトは頷く。

 

そして今日もチャクラをコントロールしての技の修行に明け暮れる。

 

「ナルトよ、そろそろお前の父親である波風みなとがお前のために俺に託した術を教える。これはお前が普段やっている性質変化とは別、形態変化というものに当たる。この技は螺旋丸というそうだ。掌にチャクラの回転で玉を作るようなイメージで行う。そしてその玉にチャクラを圧縮して目に見える状態に留める。まずはやってみろ」

 

ナルトは言われた通りに掌にチャクラをしゅうちゅうさせる。玉のような形になってきたが、それが一瞬で霧散する。

 

「ナルト、これができればお前はさらに強くなれるだろう、俺のチャクラもいくらでも使うがいい。疲れ、傷は俺の力で治してやる。」

 

九喇嘛はそう告げると精神世界のナルトを包むようにして眠りにつく。

 

九喇嘛は思い返していた。

 

あの日のことを。

 

・・・・・・・・

 

木の葉からナルトが抜け出してから3ヶ月が経ったころの夜

 

 

ナルトは熱にうなされてあのひのゆめを見ていた。

 

ナルトはもがきながら逃げるのだ。夢の中で。

 

その時精神世界へと迷い込み、九喇嘛と対面する。

 

「ほぅ、わしの人柱力のガキか、こんなところで何をやっている」

 

いきなりでかい狐に話しかけられたナルトはビクビクしながらこう告げる。

 

「あいつらが憎い、俺を認めないあいつらが」

 

「あいつらを壊せる力が欲しい。あいつらの大切なモノを毀せる力が欲しい」

 

九喇嘛は少し驚いていた。

 

こんな小さなガキが、腹の中から見ていたガキがここまで言うようになるとは思っていなかったのだ。

 

甘ちゃんで、どんなことをされても里を愛することをやめないナルトの心をここまで壊してしまえる里の民を。

 

「俺は聞いてる。九尾は憎しみの塊だって。感じてわかった。みんなの言ってることは間違いじゃなかった。俺には化け物が潜んでいた。でも、でも俺は化け物じゃない、普通の人間なんだ!」

ナルトの言うことはもっともであった。

 

化け物は九尾の狐である九喇嘛自身であり、ナルトはいわば自分を封印するための入れ物なのである。

 

厄災を運ぶ前触れとして恐れられた自分を、厄災を逃れるために封印するいわば生贄のようなもの。

 

だから、ナルトはただの人であり、ただの子供である。

 

九喇嘛の眼に映る10歳のナルトは自分と同じ憎しみの塊であった。

 

「ナルトよ、お前は俺の力が怖いか?」

 

九喇嘛はたずねる。ナルトに対し自分が恐怖の対象かどうか。

 

「怖くないよ。怖いのは醜い心の大人たちだ、お前はただ生きていただけだろ?」

 

 

ナルトの心は憎しみに支配されているはずなのにもかかわらず、九喇嘛に届く言葉はとても優しいものだった。

 

「人は人同士でも争い、命を奪う。俺は九尾が奪った命も、人が奪った命も、重さは変わらないと思う。だけど目に見える仇に辛く当たってしまうのは簡単なことだけど、やっぱり俺はこの原因は九尾の狐にはないと思うんだってばよ、心が醜いあいつらが悪いんであって、お前は何も悪くない、俺の中でただ生きているだけ」

 

そう告げられた九喇嘛の心に何かが入ってきた。

 

それは奇しくも命を賭して我が子を守ったミナトとクシナの封印術の中に混ぜ込まれていた親心なのかもしれない。

 

九喇嘛の心に確かに声が聞こえた。

 

「ナルトをよろしく頼むってばね!」

 

母として子を友に預けるかのように。

 

「九喇嘛、君は悪くない、なんにもね、だからナルトを、任せたよ」

 

父として、息子を託すかのように。

 

九喇嘛のさっきまでのいつ牙をむくかわからない表情から一変し、ナルトに声をかけた。

 

「ナルトよ、近くに来い」

 

促されてナルトは恐る恐る近づく。

 

九喇嘛の小指がなるとに差し出される。

 

「約束だ、俺はお前を主として認めよう。そしてワシの力はお前の力、お前は俺で俺はお前だ。だからナルト、お前は強くなれ、お前に俺を封印してくれた、父のように強く、そしてお前に名前をつけてくれた、母のように優しくなれ。俺はいつでもここでお前を見守っている」

 

九喇嘛の言葉にナルトは頷くも否定の言葉を口にする。

 

 

「ありがとうってばよ、でもな、俺はお前の主になるよりも友達になりてぇ。家族になりてぇんだ。だからさ、名前を教えてくれよ」

 

笑顔で聞くと九喇嘛もニヤリと笑う。

 

「面白いやつだ、うずまきナルト、俺の名は九喇嘛だ」

 

「覚えておけ」

 

そう告げると九喇嘛のいた空間にあった柵のようなものが光り輝き、なくなった。

 

これは2人の間にあった壁がなくなった証。

 

そしてナルトは九喇嘛の小指に指を絡ませる。

 

「約束だ、九喇嘛」

 

周りが白く開ける。

 

眩しく感じ目を抑えるとそこは自分の部屋だった。

 

汗をびっしょりかいてはいたが、昨日までの体の重さはない。さらになぜか今までよりも力がみなぎる。

 

ナルトは心の中で挨拶をする。

 

『おはよう』

「あぁ、おはよう」

 

九喇嘛もナルトに返事を返す。

 

ナルトはみんながいるであろうドアの向こうに元気にかける。

 

「みんな!おはようだってばよ!」

 

 

 

 

 

 

 




そんなこんなであの日から2年が経ったナルトはどこまで強くなってるんでしょうか(他人事)

というわけでナルトがチートキャラという設定

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