ルシがダンジョンに潜るのは間違っているだろうか   作:クヴェル

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5話

―――魔法―――

 それはエルフなどの一部の種族が先天的に扱うものか、【神の恩恵】により発現したものを指す。しかし、今では後者に分類されるものがほとんどで有るらしい。

魔法には、魔法名を言えば発動するものや長い詠唱を唱えることにより発動するものまど様々な種類が有る。

魔法を使用する上で最も重要なのが、魔法を使用する代償として精神力(マインド)、つまりはMPのようなものを消費することである。

魔法を後先考えずに連発すると、精神力(マインド)が枯渇し気絶してしまう精神疲弊(マインドダウン)が発生する。

パーティーを組んでいるのならまだしも、ソロで精神疲弊(マインドダウン)を起こせば、それは致命的な隙であり、

自殺行為にほかならない。

 

 

 

「ルイン」

 

まっすぐと伸ばした右腕より、人差し指が指した先にいるゴブリンへと向かって光の玉が吐き出される。ゴブリンが回避する前に光の玉はゴブリンに接触し、直後、接触した部位を吹き飛ばし、血肉が舞った。その衝撃によりゴブリンは地に伏せ、絶命したらしく動く気配は無かった。

 

 現在自分は、ダンジョン第一階層でゴブリン達を相手に、魔法の能力確認のために戦闘を行っている。今目の前にいるのは先ほど倒したを除き3体のゴブリン。先ほど1体が倒されたのを見てか、先ほどの魔法による攻撃を警戒してこちらの動きを伺っている。

 

「…ルイン!」

 

先程と同じ姿勢のまま魔法名を叫び、自分は魔法【ルイン】を発動させ、光の玉を吐き出す。

ゴブリン達は吐き出された光の玉を避けようとするが、光の玉は回避するゴブリンたちを追いかけ、そのうちの1体に光の玉が接触し、肉片を飛ばした。

 

『グェッ!?』

 

その間にも、自分の右手の人差し指から詠唱も行わないまま(・・・・・・)立て続けに2発の光の玉が吐き出され、残りのゴブリン達もあっけなく肉塊となった。

 

「…やはり凄いな、魔法は」

 

【ステイタス】を更新したことにより発現した魔法【ルイン】は魔法名を唱えることにより発動し、誘導性のある光の玉が相手に向かって移動。その後接触した場所をバラバラにする程の衝撃を与えるものらしい。

さらに、今のところは1回の詠唱で3発まで【ルイン】を発動できる。

 

「しかし、連続で出すと後がきついな」

 

【ルイン】を1発だけ発動するのは何の問題もないが、3発連続で発動すると精神力(マインド)の消費が激しいらしく、何度も連続で発動させると体に重さを感じるようになる。

それでも、少し休憩すればその重みも取れるのだが……

 

倒したゴブリンの死体より魔石を取り出し、ある程度の魔法【ルイン】の特性も分かったため、精神疲弊(マイインドダウン)を起こさないために今回はこれで魔法の使用を止めてモンスターを倒すことにした。

 

 

「して、ユウよ。魔法の使い心地はどうだった?」

「使い勝手でいうなら非常に便利ですね。恐らく、精神力(マインド)の消費量が少ない方だと思いますし」

「そうか。しかし、精神疲弊(マインドダウン)が起こらないにこしたことはないのだから、精神回復薬(マジック・ポーション)の使用は渋ってはダメだぞ」

「はい、分かっていますよ」

 

ダンジョンから帰ってきた自分は、ミアハ様に【ステイタス】の更新を行ってもらっている。

 

「…よし、【ステイタス】の更新が終わったぞ」

 

そう言ったミアハ様は【ステイタス】が書かれた紙を渡してきた。

 

ユウ・シミズ

lv. 1

力:I 80 → 99

耐久:I 40 → 50

器用:I 65 → 93

敏捷:I 48 → 88

魔力:I 1  → 90

《魔法》

 【ルイン】

  ・速攻魔法

《スキル》

 【烙印(ルシ)

  ・早熟する

  ・魔法スロット増大

  ・使命を果たせ

 

[……これはまた、魔力が随分と上がりましたね]

「今回は魔法を主体にして戦ったのであろう?ならば、その上がり方は特に気にする程のものでもないぞ」

「そうですか…。ところで、話は変わりますが何か手伝うことはありませんか?流石にこのまま、今日は何もせずに休むのは気が引けますし」

「うむ、ではナァーザと共に店番をしていてはくれぬか?」

「分かりました」

 

 自分は会話が終わるとナァーザさんがいるカウンターへ向かい、ミアハ様は薬の調合をしに戻って行った。向かった先のカウンターでは、ナァーザさんが商品を整理していた。

 

「ナァーザさん、何か手伝うことはありますか?」

「……取り敢えず、始めに商品の名前と値段を覚えて」

「分かりました。商品名簿とかありますか?」

「あそこの引き出しの中」

 

確かに、商品の名前と値段も分からないままで手伝いなんてできるはずがないか…。

そう思った自分はナァーザさんに言われた引き出しの中から商品名簿を取り出し、覚えていくことにした。

 

店の隅っこで商品について覚えていると、突然ナァーザさんに話しかけられた。

 

「どう?ダンジョンは?」

「はい?ああ、まだ2日しか行ってませんし、ほとんどが不意打ちに近いものですからまだ何とも…」

「…怖い?」

「……まあ、それは。それでも、ここで世話になると決めたのに何もしないというのは駄目でしょう?」

「そう…。まだ今はここのことは考えなくていいから、ダンジョンで死なないようにそっちの方に集中して。それに、記憶ないんでしょ?」

「っ、そうですね。記憶を失くしたまま死ぬのは嫌ですし」

 

……忘れていたな。自分が記憶喪失であるという設定は……。

まあ、そのことにはこれから気をつけて行くにしても、ダンジョンでの戦闘以外のことは言われた通り、今は考えるべきではないだろう。まだ自分はダンジョンで安定して戦えるほどの力も無い。それに、ファルシに転生させられたことについて何も分からない状態で考えても、下手な考え休むに似たり、というやつだ。

 

―――――――――――――ここで生きてる意味なんて無いだろう?――――――――――――

 

「っ!?」

 

一瞬過ぎった思いを首を振って頭の中から追い出し、ひたすら商品名簿に記載されている内容を覚えていった。




補足として、主人公が転生させられた時期は原作の1年ほど前と考えてください。

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