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ではではどうぞ。
「何よこれ……」
起きたら里が燃えていたので急いで飛んできた楽園の巫女である博麗霊夢はあまりの悲惨さに言葉を失っていた。
燃える家屋に燃える人々。挙句の果てには里長の首なし遺体が見付かった。少し離れたところにはいつかの異変の首なしろくろっ首が気絶している。
「…………一体何が起こったっていうの?」
呆然とする霊夢のすぐ横の空間が裂ける。
「霊夢!今大変な事になって……って」
出てきたスキマ妖怪も霊夢同様に言葉を失う。
「………紫、アンタも知らないの?」
「ついさっき起きたもの知るわけないでしょう?………と言いたいところだけれど……おかしいわね。普通だったらこのくらいの異変が起きたのなら気付くはずなのに」
「つまりどういうことなの?」
「分からないかしら。これだけ大事になってるのにも関わらず今の今まで気付けなかった、それ即ち何者かの力が働いて私達に気付かせるのを遅くした。……ということは私達に気付かれる前にしたかった事がある」
「それが………これ?」
里を見渡しながら奥歯をギリッと鳴らした。
「…………質が悪すぎるわ」
「とりあえず避難を始めるわ!紫、アンタは消火を頼むわ!」
「任せときなさい」
上空へ飛ぶと紫はスキマを展開して消えた。
「まったく、守護者と蓬莱人は何をしてるのよ………!」
愚痴りながら札を取り出して倒壊している家屋に投げ付けた。
着弾すると爆発して家屋を吹き飛ばす。すると下敷きになっていた人が立ち上がる。
「おぉ巫女様!ありがたや……」
「そんなの後でいいから貴方達も避難の手伝いをしてちょうだい!」
霊夢にしては珍しく声を荒げた直後、大量の水がスキマから里へ流れ込んできた。
「ちょっ、あの馬鹿!限度ってもんがあるでしょう!?――――――天岩戸別命!」
祓い棒で地をトンと軽く叩くと大穴が空く。そしてその中に水が流れ込んでいった。
天岩戸別命は本来日本神話の高天原にあると言われている天の岩戸を破壊した神のことである。
今はその神の力を借りて天の岩戸を破壊する威力で地に大穴を空けたのだ。
「危なかった………」
「ナイス連携ね。さすが霊夢」
少しも悪びれる様子もなく紫がスキマから姿を現す。
「紫!アンタねぇ、私が憑霊術を持っていたから良かったものの………やり過ぎよ!」
「それを承知の上での行動よ。理解しなさい」
「多分アンタは一生かかっても理解出来なさそうだわ」
「……それよりも水源が出来た。後は里人達だけで消火出来るでしょう」
「私達は………」
「犯人については大方見当はついてる」
「ッ!誰なの?」
「…………………」
急に紫が黙り込んだ。
「紫?どうしたの?教えなさい!」
「…………貴方にとってはかなり残酷な答えよ。……それでも貴方にはそれを知る覚悟がある?」
「何よ急に。そんなのあるに決まってるじゃない!」
「…………………そう」
しばしの間紫は哀れむような瞳で霊夢を見詰めたあと口を開く。
「……まずひとつの証拠は……話は変わるのだけれど霊夢、里を襲うような馬鹿にはどのような輩がいるかしら」
「………下級妖怪でしょう」
「そう、でも下級妖怪とはいえここまで酷いときはない」
「え?」
「………里を襲ったら幻想郷全土を敵に回すことを知ってるらしいわね。それもかなりの力を持った………ね」
「…………まさかそれって」
「…………えぇ、貴方も分かったようね私が見当する犯人は―――――」
「あれ、霊夢と八雲さんじゃねぇか」
▼
阿礼乙女である稗田阿求が避難していた屋敷にも火の粉が降りかかっていた。その中で阿求は使いの者と必死に今まで代々書き記してきた幻想郷縁起を運んでいた。
だが阿礼乙女は極めて身体が弱く、短命だ。
ふらつきながら建物にもたれ掛かる。
「ッ!阿求様!」
「私の事は気にしないでください!それよりも幻想郷縁起を!」
「しかし……!」
「私は死んでも転生出来ます!ですが幻想郷縁起は燃えたらそこでお仕舞いなのですよ!?」
「ッ………!」
「分かったのなら早く行きなさい!」
「わ、分かりました!」
使いの者は幻想郷縁起を抱えると屋敷の外へと走っていく。
「…………」
阿求はゆっくりと歩みを進めながら苦しそうに咳き込んだ。
ふと上を見上げると屋敷の屋根が今にも崩れそうになっていた。
「………今代は以外と短かったですね……せめて次代は長生きしたいものです」
バキバキと気が折れる音がして屋根が阿求に降り注いできた。
「…………」
(……これに潰されたら死ぬのでしょうか……)
なんて他人事のように崩れ落ちる屋根を見つめて――――――
「――――何してんだ馬鹿野郎!!」
潰される寸前誰かに抱えられて間一髪で避ける。
そのあと阿求を抱えた者は床を蹴って天井を蹴り飛ばすと崩れ落ちた屋根の上に乗った。
「………危なかったな。稗田阿求」
抱えていた者は阿求を下ろすと口の端を吊り上げる。
その者の姿を阿求が確認すると目を見開いた。
「東雲………橙矢……?」
「あぁそうだが」
あっけらかんに言う橙矢に少なからずの疑問が浮上してきた。
東雲橙矢は幻想郷を破壊するために、その前座としてまずは里を襲って……。
とりあえずどうして東雲橙矢が里の人間である私を助けた!?
「………おい、何か凄く失礼な事考えてねぇだろうな」
ジト目で見ると阿求は焦った様子で首を横に振った。
「い、いえまさか。そんなことありませんよ」
「……ったく。ま、別にどうでもいいけどさ。……この騒ぎはなんだ」
「それが私にも分からないんです……」
「……………仕方ねぇな」
面倒くさそうにため息を吐くと身を屈める。
「まったく……誰だよ。俺がやろうとしていたよりも質が悪い」
「え?」
「おっと失言だった。まぁお前は何処か安全なところへ移動してろ。そろそろ使いが来るだろ」
吐き捨てて言うと足を強化させる。
「ま、待ってください!」
そんな背にかけて橙矢の服の裾を掴む。
首だけを動かして視界に阿求を入れる。
「何だよ」
「貴方は……何をしようとしているのですか?」
「……………………精々気を付ける事だな」
阿求の手を解くと一気に跳躍した。
腕を強化させて振り抜くと暴風が吹き荒れて辺りの火が消えていく。
「さっさと消火しやがれこんな火!」
火が消えたところに着地するとさらに跳躍する。
「っくそ!慧音や妹紅は何をやっている!」
とにかく騒ぎがする辺りを見つけてそこ目掛けて跳ぶ。
騒ぎの近くの灯籠に着地して足を止める。
地には大穴が空いており、幻想郷では珍しい水がそこに貯まっている。里の人々がバケツやら何やらを持ってきて汲んでいって里の奥へと進んでいく。
その傍らには博麗の巫女とスキマ妖怪がいた。
灯籠を蹴って二人の前に現れる。
「あれ、霊夢と八雲さんじゃねぇか」
「東雲さん!?どうしてここに!?」
何故か八雲さんに驚かれた。
「いやどうしてって………里の一大事に来ただけだが」
「………紫、これで橙矢の線は無くなったわね」
「………その事に関しては保留で」
「はいはい。それで橙矢。貴方ここまで来るのに誰かと会ったりとかしてない?」
「さっきそこで阿礼乙女と会っただけだ」
「後は?」
「無い」
「―――やっと見付けたぞ橙矢……!」
橙矢が今来た方とは逆の方角から慧音をおぶった妹紅が姿を現した。
慧音を見てみると斬られた後がくっきりと残っていた。
「妹紅!?それに慧音先生!?お、おい何だよ先生のこの傷!」
瞬間妹紅が橙矢の胸ぐらを掴みあげた。
「何だ……だって!?惚けるのも大概にしろ!
慧音は……里の外で東雲橙矢、つまりアンタにやられたんだよ!!」
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では次回までバイバイです!