東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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まさかのすくすくを描いてしまうとは……。


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ではではどうぞ。


第九十五話 東雲橙矢のスペルカード

 

 

妹紅と慧音は警戒心を一瞬で最大限にまで上げる。

「妹紅!」

「分かってるよ慧音。私が止める……!」

妹紅が焔を纏うと橙矢に駆け出す。

「遅い!呪符〈厄病神の山雪崩〉」

橙矢がカードを掲げると同時に無数の弾幕が妹紅と慧音目掛けて上から落ちてくる。それはさながら雪崩のよう。

「マズい……!」

「呑み込まれろ」

「ッ!不滅〈フェニックスの尾〉!」

妹紅もスペルを発動して相殺させる。

「チッ、やはりまだ扱いに慣れないか………」

「橙矢!どうしてアンタがスペルを使える……!アンタは今まで使えなかったはずだ!」

「あぁ確かに使えなかった。けどな、俺はずっと探していたんだ。人間である身でこのスペルカードを生成できる方法を」

「ッ!」

「それで俺はついに見付けたんだよ」

スペルカードを妹紅に突き付ける。

「これがその証拠だ」

「だったらどうして今まで使わなかった!」

「それじゃあ語弊が生まれるだろうがよ先生。使わなかったんじゃねぇ。使えなかったんだ。使えたら新郷を助けれたはずだ」

「………………随分と自虐的だね」

「同情なんかいらねぇよ。俺はただ単に殺したいだけだからな」

「おぉ怖い怖い。ま、やれるもんならやってみな!」

妹紅が不死鳥を放ってくる。

真横を通り過ぎると刀で真っ二つに裂く。その勢いで妹紅に接近すると下から斬り上げる。

それを横に跳んで避けた妹紅は橙矢に弾幕を放つ。

「鬱陶しい」

腕を地に叩き付けて地盤を捲り上げると相殺する。

地盤が弾幕と激突して崩れ落ちるとその中から慧音が飛び出してくる。

「邪魔だ」

足を振り上げると下から顎を蹴り上げて足を掴むと地に叩き付けた。

「………!」

「慧音!」

身を宙に投げ出すと妹紅に斬撃を放った。

「ク……!」

手を翳すと焔を自身の前に発動して防ぐ。

刀を真っ直ぐに構えると焔に突撃する。

一点に集中した威力は焔を霧散させて消し飛ばした。そしてそのまま首に突き刺さる。

「カハ……!?」

「……………………悪く思うなよ」

そう言って刀を抜くと血が吹き出る。

「…………………また汚れたな」

退治屋と妹紅の血によって全身を真っ赤に染めた橙矢はひとつ息をつく。

「………ぅ………や……」

まだ息があったのか妹紅が橙矢の足を掴んできた。

「……………………汚らわしい」

躊躇なく心臓部分に刀を突き刺した。

「――――ッ!」

「妹紅――――――!橙矢ァ!貴様ァ!」

慧音が怒りに任せて弾幕を放つ。だがそれだけで橙矢は止められるはずなく、

と袈裟斬りにされて地に伏せられた。

「感情でどうこう出来る話じゃねぇんだよ先生」

吐き捨てるように言うと妹紅達が来た道を進んでいく。

「待て……!何処に行くつもりだ……!」

「………分からねぇか?里だよ」

「ッ!よせ!止めろ!」

「動けないやつは黙って寝てな」

跳び上がって近くの木の枝に足をかけると高速で跳んでいった。

「待て!橙矢………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燃える燃える。家屋が、人が、里が。

恍惚の表情を浮かべる橙矢は逃げ惑う人々を見ていた。

「ハハハッ、結構結構。いいねぇ」

「ちょっとアンタ!この騒ぎアンタの仕業でしょ!?」

前方に赤いストールのようなものをかけた少女が着地してきた。

「…………アァ?」

うざったそうに橙矢は首をもたげさせて睨み付ける。

「………誰だよお前」

「それはこっちの台詞よ。家でゆっくり休んでいたのに………」

「……………………」

一瞬で懐に潜り込むと刀を首目掛けて振り抜いた。

いとも簡単に首が撥ね飛んで地に落ちる。

「……………?」

しかし橙矢は違和感を感じた。首を撥ね飛ばしたが感覚が伝わってない。それどころか血が吹き出てないのだ。

「……………まさか……!」

慌てて後ろに跳ぶと橙矢がいたところに弾幕が着弾した。

「よく気が付いたね。そうだよ、私は赤蛮奇。ただのろくろっ首さ」

浮いている首がケタケタと笑い、弾幕を放ち続ける。

「チッ、ただの妖怪風情が……俺に逆らうな!」

弾幕を一喝で無効化させると身体を押さえつける。

それと同時に赤蛮奇の頭が戻ってきて橙矢を突き飛ばした。

「…!」

家屋に掴まって止まると掴んでいる家屋を持ち上げて投げ付けた。

「ちょっ、冗談でしょ!?」

赤蛮奇は上空へ身を投げ出して橙矢の追撃が来ない距離まで遠退く。

しかし―――――――

「残念だったなぁろくろっ首」

目の前に橙矢がいた。

訳が分からないまま頭ごと組伏せられて地に叩き付けられた。

「どうも幻想郷の奴等は皆が皆不利になると上空へ逃げ出す………。とっくに読んでるんだよ」

「ッ!」

「弾幕を放つ事もなァ!」

刀を振り上げると腹に突き刺した。

「カ………ァ………!」

糸が切れた人形みたく倒れた。

「……………さて」

橙矢は興味なさげに視線を逃げ惑う人々に移すと跳んだ。

超人的な脚力である人物の目の前に着地する。

その人物は

「……よぉ里長」

里長だった。

「な……し、東雲橙矢……!?」

「なんだよその反応。別に俺が何処にいようとも俺の勝手だろ?」

「ふざけるな!貴様には討伐命令が出されたはず……!」

「残念だが退治屋は殺させてもらった…苦しんでたからな」

「何だと……!」

「いい加減諦めを覚えたらどうだ里長。事実なんだ。なんなら今ここに証拠を持ってこようか?」

「まさか本当に……」

「第一俺が何処ぞの刀が少し出来るくらいの奴に遅れを取るわけねぇだろ」

血塗れの人殺しが笑う。

「もう迷う必要はねぇな。……俺は幻想郷を壊す」

「………ハハッ、何を言うかと思えば……貴様如きに出来るわけないだろう!」

「………へぇ、神を殺した俺を目の前にしてもそう言うか」

「ッ!?」

「神を殺すこと、それは即ちこの世の理を殺すことと同じ。つまり俺は破壊という概念の理を殺したってことになる」

「口を慎め小童が!!」

「おやおや、あまり叫びすぎるなよ。ご老体に響く」

「馬鹿にしてくれるな……!」

「俺は本気で心配してるんだぞ?」

そう言うと刀を引き抜いて里長に近付く。

「まぁどの道俺が殺すから意味ねぇか」

身を屈めて一気に跳躍すると里長の目の前に迫り、胸ぐらを掴み上げる。

「さて、どう殺してくれようか」

「ッ!や、やめ―――――」

「るわけないだろ」

刀を真横に振り抜くと首が弾け跳んだ。

素早く身体を投げ捨てて血がかからないようにする。

「………ハッ、脆い脆い」

すると遠方からこちらに駆けてくる影が見える。

「さて、前座はこのくらいでいいだろ。さぁ始めようか幻想郷。楽しい楽しいゲェムの始まりだ」

ニヒルな笑みを浮かべると橙矢は姿を消した。

 





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では次回までバイバイです!

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