焔を巻き上げて橙矢に突撃してきた妹紅を横に跳んで避ける。
「ッラアァ!」
着地すると同時に斬撃を放って自身は上空に身を投げ出す。地上と上空からの挟み撃ち。
妹紅は斬撃を避けて橙矢に焔を放つ。
「ッあつッ!」
すぐさま鞘を引き抜いて身体の前に構えるとそれを蹴って後方へ退く。
そして着地すると同時に足を強化して地を蹴り、妹紅に膝を入れる。
「ゴハ……ッ!?」
妹紅は嘔吐いて転がる。それに追い討ちをかけるように首に刀を刺して退治屋の時同様首を撥ね飛ばした。だがそれだけでは手を止めずに身体を八つ切りにして跡形もなく斬り刻む。
「………………それは私が死なないって事を知ってての行動かい?」
焔を巻き上げて妹紅の身体を作り上げると焔が爆散して妹紅が姿を現す。
「………あぁ知ってたよ」
「……だったら―――」
瞬間妹紅の口から血が流れ出す。
「ッ!?」
慌てて押さえるが血は止まることを知らずに流れ出てくる。
「橙矢…!アンタ……何した……ッ!」
「お前がいると厄介だからな。血管近くにこいつの破片を入れさせてもらった」
そう言って刀の先を見せる。刀の先が僅かに欠けていた。
「……そんなんで私を止めれるとでも……嘗めてもらっちゃあ困るよ!!」
妹紅が不意に自身の身体を引き千切る。すると煌めくものが出てきた。刀の破片だ。
「……ゲホッ!カ……うぁ…………!」
「~~~~!馬鹿野郎!何してんだよ!」
「アンタを止める……為さ」
再生しながら口元の血を拭ってニヤリと笑みを浮かべる。
「……ッ!止めろ……………!」
「はん……!このくらいでアンタが止まれば安いもんさ!!」
再生し終えると上空へ飛び、弾幕を放った。
「…ほんと殺りづらいなお前は…!」
「それが私なんでね!」
下から刀を振り上げて斬撃を放って弾幕と相殺させると爆煙が一帯を包む。
刀を振って爆煙を晴れさすと目の前に妹紅が迫っていた。
「ッ!?」
「捕まえたぞ!」
腕と脚を押さえられて動けなくなる。
「ぐ……」
「おっと下手に動くなよ。折れるからな」
妹紅に言われた通り少しでも身動ぎした、折れそうなほど固められている。
だが今の橙矢にとっては至極どうでもいいことだった。
「………なぁ橙矢、なんでお前がこんなことをしている?」
落ち着かせるような言い方で橙矢を諫めようとする。
「……なんだ急に」
「私はまだ橙矢の事を信じているんだよ。誰かに弱みを握られているとかなのか?」
「弱み?馬鹿言えよ。俺の弱みを握っている奴なんざこの世にいねぇよ」
「だってらどうして……」
「……んなことどうでもあいだろ………それよりも放しやがれ……!」
腕を強化しての関節を外しながら妹紅の拘束を解くと外した関節を元に戻す。
「何……!?」
驚愕している妹紅を殴り飛ばして体勢を整える。
「…………やってくれたな」
「それはこっちの台詞だ」
「……まったく、アンタにやっぱり手加減は無用だったか」
周りを見渡して里人がいないのを確認すると焔を身に纏い、不死鳥を模す。
「来やがったな」
さも楽しそうに笑みを浮かべると身を屈めて一気に妹紅に迫り、刀を振るう。
対し妹紅は刀を避けると橙矢の顔面を蹴り飛ばした。
「ッ!」
「遅いんだよ橙矢ァ!」
舌打ちすると腕を強化して地に叩き付ける。地盤が捲れ上がり、その上から妹紅を地盤ごと殴り付けた。
吹き飛んだ妹紅は着地すると同時に素早く回転して勢いを後ろに流す。
「………ッ!」
駆け出して妹紅の目の前に来ると真横に跳ぶ。妹紅からしてみれば急に消えたとしか認識出来ないだろう。
「ッ!何処に――――」
「こっちだ!」
横から蹴り上げて上空に打ち上げる。腕を強化すると刀を振って斬撃を翔ばす。
「冗談だろ……!」
宙で体勢を整えると妹紅は焔で生成した不死鳥を放った。
「ここが里だっていうこと忘れてねぇか馬鹿野郎!」
拳を振り上げて大気を叩き付けると拳圧で消し飛ばした。
「何でもありだな……!」
刀を地に突き刺すと引き摺りながら妹紅に迫る。
「チィ!〈バセパイドフェニックス〉!」
舌打ちして妹紅は不死鳥を模すと橙矢へ突撃してくる。
「…ッ!そっちがその気なら……ッ!」
刀を振り上げて上段に構えると妹紅を待つ。
そして距離が零になった瞬間、刀を振り下ろした。
「―――喧嘩は駄目だよ君達☆」
そんな呑気な声が聞こえると同時に脳天に強すぎる衝撃が奔った。
▼
「ッ!」
目を覚ますと同時に身体を起こした。周りを見渡すと何処かの森の中のようだった。
「何処だここ!?」
「やぁ起きたみたいだネ」
声のする方に首を向けると一人の青年が岩に腰かけていた。その姿を確認すると何やら橙矢は訝しげな表情を作る。
青年の格好に警戒心を抱いた。
青年はカラフルな色合いをした服を身に纏い、顔半分を仮面で隠していた。
一言で表すと道化師。
「どうかしたのかイ?」
「………………いや、アンタの格好に違和感を感じてな」
「そうかナ?」
「………それよりもアンタか?さっき横槍を入れたのは」
「うんそうだヨ☆」
笑顔で特に傲ることもなければ誇らしげにでもなく言う。
「……なんで」
「だって二人とも悲しそうにしていたからネ。皆仲良くしないト。楽しくならないじゃないカ」
カラカラと笑いながら橙矢を立ち上がらせた。
「そういえば君の名前を聞いてなかったネ」
「…………言う必要ないだろ」
「何を言ってるんだイ!君とボクが会ったのも何かの縁!仲良くしようじゃないカ!」
能天気なのか本物の馬鹿なのか。橙矢は額を押さえながら青年から距離を取った。
「?何で距離を取るんダ?」
「いや頭がイカれてる奴なのかと思ってな。そういう奴とは関わらないようにしてるんだ」
「Hum……そう言われるのは心外だネ」
「自覚してねぇならなおさら質が悪い」
「………おいおい、いくらボクでも我慢の限界ってものがあるんだヨ?」
「知ったことかよ」
「……怒っちゃうヨ?」
「知らねぇって」
「……もう一度聞くヨ。…………本当に良いんだな?」
「え?」
不意に青年が纏う雰囲気が一変した。
「あーぁ、上手く聞き出そうと思ったんだけど……さすがかの破壊神を殺した人間だね」
仮面から覗かせる口元をニヒルと歪ませた青年は両手を広げた。
「罪状は神殺し!罪人の東雲橙矢。会いたかったよ」
「何で俺の名を…」
「君の名を知らない奴はいないよ?ボク達神群の中ではね」
「ッッ!」
瞬間的に刀を引き抜く。
「お前も神だったのか………!」
「おぉ怖い怖い」
戯けるように肩を竦めて一歩二歩下がると仰々しくお辞儀をした。
「自己紹介だ東雲橙矢。ボクは北欧神が一人のロキ。名前の意は『閉ざす者』または『終わらせる者』。以後お見知りおきを」
神々の中でも屈指のトリックスターが目の前に顕在した。
感想、評価お待ちしております。
そういえば私事ですがディバインゲートというゲームをやっているのですがそのランクがようやく200越えまして………いやぁ、データが吹っ飛んだ時はかなり発狂しましたけど……。
では次回までバイバイです!