東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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複雑な人間関係に複雑な心境。


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ではではどうぞ。


第八十九話 神殺し

橙矢とシヴァの衝突により崩れ落ちる龍神の間でなおまだ神と半妖は戦いを繰り広げていた。それは刃が交わる度に激化していく。

崩れ落ちる床を跳び移りながら二人は接近し、再び激突する。

「オオオオォォォォォォ!!」

橙矢は腕を下から振り上げて腹を殴りあげる。

「……………!」

血を吹きながら吹っ飛んでいくシヴァに肉薄すると刀を突き出す。

「貴様……!」

紙一重で避けるとシヴァはカリブルヌスをすぐ後ろに迫っていた壁に叩き付けた。

すると天界がさらに崩れていく。

「………ッ!新郷!」

振り向いて神奈の方を見ると今にも落ちそうになっていた。

「新郷!」

手を伸ばして掴む、寸前神奈は落下していく。

「新郷ォ!」

地を転がりながら蹴って神奈を追おうとするがシヴァに足を掴まれて龍神の間へと投げ戻された。

「くそ野郎……!」

「貴様の相手は俺だ!」

体勢を整えて壁に足を着けるとシヴァ向けて跳び、刀を突き出した。

「ッ!」

上半身を仰け反らせて避けられるが脇辺りに爪先を引っかけて外へ吹き飛ばした。

「なん―――――!?」

一旦着地して神奈を見付けると再び跳ぶ。

「新郷…!」

橙矢が追い付くよりも早く神奈は下にいた幽香に受け止められた。

「幽香!?どうしてここに……!」

「橙矢……!無事だったのね」

幽香より下にいる聖輦船の甲板に何とか着地する。

「幽香!新郷は……!」

「ちゃんといるわ」

幽香が神奈を下ろすと駆け寄り、抱き起こす。

「新郷………悪いな。怖い思いさせちまって………」

「ッ……待ちなさい橙矢」

神奈を抱いている左腕の付根を幽香に掴まれた。

「一体天界で何があったの?それで……新郷神奈は…………」

「…………新郷は死んだ」

『…………ッ!』

その場にいた全員が言葉を失った。

「…………駄神と…………俺のせいでな」

神奈を寝かせると刀を天に向ける。

「東雲橙矢ァ!!」

シヴァが聖輦船目掛けて落下してきた勢いのままカリブルヌスを振り下ろした。

「マズい……ッ!お前らここの船から下りろ!」

神奈を抱いて後ろに跳んだ。

直後振り下ろされたカリブルヌスが甲板を砕き、聖輦船を真っ二つに割った。

「ッ………!椛、新郷を頼む!」

近くにいた椛に神奈を渡すとシヴァに駆け出す。

「貴様のせいだ!貴様のせいで……ッ!」

薙いだカリブルヌスを刀で受け止めると横に弾き飛ばす。

「お前のせいでもあるだろうが!」

何を思ったかシヴァは橙矢の脇を通り過ぎて行った。すぐにその意図に気付いた。橙矢の背後には神奈を抱える椛が。

「馬鹿野郎……ッ!」

足を強化させて甲板を蹴り砕く勢いで後ろに跳んだ。一瞬で椛の目の前に来るとカリブルヌスを止めた。

「お前の相手は俺だってさっきテメェで言ったろうが…ッ!」

「と、橙矢……さん?」

「何してんだ椛!早く離れろ!」

下からシヴァを蹴り飛ばすと椛達に檄を飛ばす。

「この駄神はスペルを真似することに近い能力を持っている!だったらスペルカードを使えない俺は唯一のあいつの天敵だ……!」

「誰が猿なんかに遅れを取るか……!偽式〈マスタースパーク〉!」

「ッ!」

横に跳んで回避する。と同時に再び放たれる。上半身を仰け反らせてそれも避ける。

身体を元に戻すと目の前にカリブルヌスが迫っていた。

「――――――!?」

まともに喰らい、甲板から落ちそうになるが船の端に掴まって船の中に飛び込み、上へ拳を振り上げて下からシヴァを吹き飛ばす。

「小賢しい!!」

カリブルヌスに力を込めると橙矢に振り下ろす。

「チッ……!」

勢いを受け流すが床が耐えきれなかったのか崩れて聖輦船が破壊されて自由落下を始める。

「しま―――――」

「隙だらけだ!」

いつの間にか懐に入られていて、顔面を殴りあげられた。

何とか着地すると落下していく破片をシヴァに蹴り飛ばす。

「そんな子供騙しに……」

「それは囮、だからな」

破片の影からシヴァの腕を掴むと刀を振り下ろして腕を切断した。

「ッッ!?」

「吹き飛べ!」

宙で回転すると顔面を蹴り飛ばす。転がり、船から弾き出す。しかし神であるシヴァは空を飛ぶことなどわけない。

「……よくも切断してくれたな」

そう言いながらも能力により腕を創造する。

「…………言ってることとしてることが別々だぞ」

「知ったことかよ!」

橙矢に突撃すると頭を掴んで宙に放り出した。

「―――――――!!」

重力に逆らえず落下を始める。

「宙に出れば貴様は何も出来ないだろう?」

「ふざけやがって……!」

「それは貴様だ東雲橙矢!」

落下していく橙矢に斬撃を放つ。

「ッ!」

避けることは出来ずに天叢雲剣を横にして受け止める。しかし吹き飛ばされて地に真っ逆さまに落ちていく。

「うああああぁぁぁぁぁ!?」

「橙矢!」

村紗が橙矢の腕を掴んで持ち上げる。

「村紗!?馬鹿!そんなことしたらお前も標的に……!」

「遅い!〈全妖怪の緋想天〉!」

「マズい……!」

放たれた紅い柱のような光線。それが橙矢と村紗に直撃する寸前に村紗を突き飛ばした。

「ッ!?」

「…………悪いな」

「とう―――――」

瞬間橙矢が紅い光線によって吹き飛んでいった。

「橙矢!」

「貴様等にも消えてもらおうか」

シヴァの矛先が残された七人に向けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に地が広がり、慌てて受け身を取るが勢いを止められずに地を転がる。

「グァッ!」

刀を地に突き刺して無理矢理止めた。それと同時に痛みが全身を襲う。

「ッ………!」

その時前方にシヴァが降り立つ。

「頑丈な奴め。まだ死なないか」

「生憎と……身体の硬さには好評でね」

ふらつきながらも立ち上がり、刀をシヴァに向けた。

「…………それよりもお前あの椛達を無視してきたのか?何やら空が静か過ぎるんだが」

「あぁ邪魔だから消し飛ばしてやった」

「なに………!?」

「貴様は忙しいな!何もかも護らなくてはいけなくて!だが貴様は何も護れない!いい加減その事実を受け止めたらどうだ!」

「……………んなこととっくに分かっている」

「だったらもう護るなんて戯れ言を二度と吐くな……!」

「………あぁ、分かったよ。もう二度と言わねぇ……だがな……それでも俺は……」

視線をあげるとシヴァを睨み付けた。

「お前を殺す……!」

「……やってみやがれ死に損ないが!」

金属音が鳴り響き、互いの得物を弾き合う。

「ッ!アアァァァ!」

伸びきった状態からカリブルヌスを振り下ろして橙矢の身体を裂く。

「――――ッ」

足を強化すると地に蹴ってシヴァの腹に膝を入れる。

「ゴ……!」

くの字になったシヴァにさらに追撃と顔面を殴り付け、下から斬り上げた。

「ぐお……!?」

大量の血がシヴァから吹き出て片膝を着かせる。

「貴様……!」

憎々しげに睨むとシヴァはカリブルヌスを地に突き刺した。

「何して……」

「悪いな東雲橙矢………!カリブルヌスも役目を終えたようだ」

「……役目?」

「知っているか東雲橙矢。カリブルヌスがどうやって封印されたか」

「まさか…!止めろ!」

慌てて駆け出すがカリブルヌスが放つ衝撃に吹き飛ばされる。

「答えは簡単。元々神が持つ力、即ち神力を宿している。だったらこの神力を排除させればいいだけのこと。だがどうやってその封印が解かれたか………カリブルヌスで我が妃を突き刺した時に神力を吸収した。……顕現せよ、聖剣エクスカリバー」

カリブルヌスであったものが引き抜かれ聖剣の頂点に君臨するエクスカリバーが姿を現した。

「………!」

「まさか半妖如きの貴様に抜くことになるとはな…………まぁいい」

大きく振りかぶると地に叩き付ける。するとそこから蜘蛛の巣状に地割れが起きる。

「なんつー威力だ……!」

駆け出して刀を引き絞り、その力を一気に解放してシヴァに放つ。最速にして最大の一点集中型の突き。それをシヴァは掌で受け止める。もちろん貫通はするがそれを代償に刀を固定した。

「砕け散れ東雲橙矢―――――!!」

振り下ろされるエクスカリバー。それを目を見開いて待つ。しかし橙矢の身体が、橙矢の左肩が僅かに後ろに退かれ、左回転する。

「なんだと!?」

回転することによって刀を手から引き抜き、さらにエクスカリバーに僅かに掠ることによって回転力を増し、そのままシヴァに斬りつけた。何度も何度も。この一連の動きには覚えがあった。紅魔館の時に始めに殺した妖怪を退治する決め手となった動き。

「ガ……アアアアァァァァァ!!?」

血飛沫が舞い、シヴァの身体を真っ赤に染める。そしてシヴァを十回近く斬りつけた後に足を強化させる。

「堕ちろ、駄神!!」

斬りつけた箇所を蹴り飛ばした。

「カハ……!?」

血を吐いて転がるシヴァはすぐに体勢を整えて立ち上がると自身目掛けて駆け出してくる橙矢にエクスカリバーを突き出した。

橙矢はそれを手を突きだして受け止める。

「これは………!」

さっきシヴァがやってのけたものだ。分厚いエクスカリバーの刀身が橙矢の掌を貫通し、橙矢はそれを掴む。

「………くそ!」

「…………………」

橙矢は刀を真っ直ぐに構えて、

 

 

 

 

 

 

 

 

シヴァの心臓を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地に倒れ伏したシヴァを見下ろしながら橙矢は大きく刀を振り上げる。

「…………俺を、神を殺すか………東雲橙矢………ゲホッ!ゴホッ!」

大きく咳き込みながら血を吐くあたり持って数分の命だろう。

「神はその信仰されているものが……具現化したもの……神を殺すこと…………即ちその信仰しているもの否定するのと同じことだ……」

「………破壊と創造」

「俺の場合はな………」

「……………」

「……………」

シヴァはエクスカリバーを杖代わりにして立ち上がる。

「ッ!まだやるのか……!」

「……そんな気力ねぇよ馬鹿…………」

シヴァはよろめきながら橙矢に近付いて額に指を置いた。

「…………最後の最後に………破壊神の加護をくれてやる………」

すると橙矢を縛っていた鎖が千切れた、感覚がした。

「………何しやがった?」

「……貴様の中にある妖力を……全て破壊させた……」

力を使い果たしたのか倒れそうになるが橙矢の両肩に手を置いて耐える。

「これで貴様は晴れて普通の人間に戻った………これで……元の世界に……」

そこでシヴァは崩れ落ちる。

それを橙矢は支える。

「………………………シヴァ」

最後の最後までこの駄神は橙矢を返すことだけを考えていた。自らが命が尽きようとしているのにも。

「…………………新郷。お前の仇は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振り上げていた刀をそのままシヴァ目掛けて振り下ろした――――――

 

 

 

 

 

 

 




多分次回から新章です。

では次回までバイバイです!

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