今回は朱鷺子を描かせて頂きました。かなりこのキャラは好きです。香霖堂にしか出ていないようですが……。けどやっぱり好きです。
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次回は九十九弁々を描こうと思ってます。
ではではどうぞ。
神奈目掛けて投げ付けられた封魔針を掴んでへし折った。
「…………どういう意味だこれは」
「………どうこう言ってる場合じゃないのよ」
そう言って霊夢は結界を閉じた。
「……へぇ、俺には教えてくれないと?」
「世間知らずのあんたでもさすがに知ってると思ったのだけれど」
「…………何の事だ」
「ま、知らないのなら簡潔に言うわ。今すぐその人をこっちに渡しなさい」
「本気で言ってるのか?」
当然、と言わんばかりに橙矢の背後にいる神奈を睨み付ける。
「………せめてこいつを渡さなきゃいけない理由を教えてくれ」
「………それは」
「―――私から説明させてもらいます」
霊夢の真横にスキマが開く。
「まさか……八雲さんッ」
「大正解、耳が良いわねー」
その一言と共に妖怪の賢者である八雲紫が姿を現した。
「褒められても今は何も嬉しくないけどな。やっぱりあんたもそっち側か?」
「今回に限ってはね」
「まったく………で、説明してくれるって?」
「えぇ、もちろんするわ」
紫は口元を扇子で隠しながら話し始めた。
「……破壊神であるシヴァは本来四人の妃がいた。それぞれの神の名はサティー、パールヴァティ、ドゥルガー、そしてカーリー……その中でも最初の妃となっているサティーとシヴァはあまりの愛の深さに禁断とされている神の融合をしてしまった。といっても融合したのは命だけであって身体は融合されてないんだけど。さて、ここまで言ったのなら頭の言い貴方なら分かるわよね?」
「……………大体は分かった。けどそれとこれとが何の関係がある?」
「まだ分からない?つまり新郷神奈、その娘がサティーの生まれ変わり、ということは当然シヴァとも繋がっているのよ。命がね」
「だからって殺すのかよ!」
「残念だけど東雲さん、貴方が新郷神奈を護ろうとするのならすなわち幻想郷全てを敵に回すことになるのよ?」
「知ったことかよ」
「そう………じゃあ仕方無いわね。後悔しても知らないわよ」
「上等だ」
瞬間スキマが膨張した。
「…………………ッ!」
「東雲さん……」
神奈がようやく状況を把握したのか橙矢の手を握る。
「大丈夫だ。安心しろ」
握り返すと足を強化させて後ろに跳んだ。
(霊夢一人だけなら勝機が少なからずあると思うがあのスキマチート野郎がいたら話にならねぇ!)
「ひとまずここから逃げる。異論は?」
「……東雲さんに任せます」
「任された」
木々が生い茂る急な坂に飛び込む。
「木々に紛れて逃げる……ッ!」
「待ちなさい!」
「誰が待つかよ!」
ひとつの木に向けて跳ぶとさらにその木を蹴って方向転換する。
そして背後から迫る霊夢を避けた。
空中で振り返ると霊夢近くの木目掛けて斬撃を放った。
「な………ッ!?」
霊夢は慌てて後ろに下がって倒れてくる木を避ける。その間に一気に距離を離した。
「これで霊夢は撒けた、あとは………」
「私だけね」
「こういう事、だッ!」
着地すると同時に拳を地に叩き付けて煙幕を舞かせる。
「神奈、二手に別れるぞ!」
「東雲さん!?」
「俺の家の前で待ってろ!」
「……ッ!」
そんな会話が聞こえて紫は二手に別れた二人を追撃にかかる。おそらく橙矢は紫に向かってきて囮になり、神奈を逃がす作戦だろう。
スキマを展開すると煙幕を中心として真反対側へと移動した。
すると煙幕の中から人影が見えてくる。
「…………」
手を前に翳して弾幕を容赦なく放った。
「―――――掛かったな!!」
弾幕の中を飛び出てきたのは神奈ではなく橙矢だった。
「………ッ!?」
一瞬紫の思考が停止した。
「あんたはそう来ると思ったよ……!」
紫は舌打ちすると同時に二枚のスペルカードを引き抜いた。
「式神〈八雲藍〉式神〈橙〉」
背後にスキマが開いてその中から召喚された藍と猫のような少女が出てきた。間違いなくその少女は橙だ。
紫は藍と橙が出てきたスキマへと消えていく際に式神達に口を開いた。
「東雲さんの相手をしてなさい。私は新郷神奈を追うわ」
「了解です」
「紫様!私頑張ります!」
それぞれが意気込んでるのを確認するとスキマの中へと消えていった。
「待ちやがれ!」
追おうとするが橙矢の目の前に式神が行く手を阻む。
「紫様の命だ。貴方を足止めさせてもらいます」
「先に行きたかったらまず藍しゃまと私を倒すことだね!!」
―――――同時に式神達を殺気が貫いた。
「「――――――ッ!」」
「………あぁそうさせてもらう。てめぇらを潰してから行くことにするよ。……九尾の狐に………妖怪猫……いや猫又か」
「さすがに分かるようだな」
「逆に分からない方がおかしい」
「…………それもそうですね」
「まぁそういう事だ。邪魔だからとっとと退きな……!」
足を強化させると真後ろに跳んだ。
「何……?」
後ろにある木に足をかけると藍向けて蹴り飛ばした。
「……こんなもので」
殴り付けて粉々に砕いた。そこに橙矢が突っ込む。
「通じるんだよ!」
「………橙!」
「はい藍しゃま!化猫〈橙〉」
橙矢の横から衝撃が奔り、身体がピンポン球のように吹き飛んで地を跳ねた。
「………ッ!くそが!」
転がりながら体勢を整えて状況を整理する。
(何だ?何が起きた………)
慌てて視線を上げると目の前に橙が鋭利な爪を振り上げて迫っていた。
「マジかよこいつ……!」
腕を掴んで眼球まであと数センチに迫っていた爪を止める。
よく橙を見てみると尻尾が逆立っており、息も気のせいか荒くなっていて瞳も獲物を狙っているような目をしている。
「さっきのスペルで頭がおかしくなったか!?」
「違うな。橙は自らの名をスペルとして使うことで基礎能力を底上げしている。いわば強化スペルみたいなものだ」
橙の代わりに藍が答える。しかしそれに返す余裕はなかった。次々と橙が四方八方から襲い掛かってくる。
「ッァ!」
寝ていた首を擡げさせて何とか避けると続いて地に平行に跳びながら足払いを狙った橙を避けた。
「式輝〈プリンセス天狐〉‐Illusion‐」
「次は九尾の狐かよ……!」
目の前に広がる弾幕に気を取られて自身の回りに爪で付けられたであろう斬撃がある事に気付くのに一瞬遅れた。
腕を強化させて顔の前で交差して最低限の防御を図る。
「甘い、そんなので防ぎきれるとでも?」
刹那、橙矢に大量の斬撃が浴びせられる。
「ぐ……ァ……!」
何とか耐えきると同時に横から橙の蹴りが入る。
「ごふッ!?」
「遅すぎるよお兄さん!」
「黙ってろよ猫ごときが……!」
蹴ってきた足を掴むと藍に投げ付ける。
「ちぇぇぇぇぇぇん!」
「喰らいやがれ!!」
藍が橙を受け止めると同時に橙矢は斬撃を放つ。
「チッ!式輝〈狐狸妖怪レーザー〉!!」
弾幕が凝縮されたレーザーが橙矢が放った斬撃もろとも橙矢を飲み込む。
「くっそがァァァァ!」
腕を強化させて刀で弾いた。
「何……!?」
勢いは殺せずに後ろにある木に激突した。
「ッ………………!」
口から血を吐いて膝を地に落とす。
「ガハッ!ゴホッ!」
咳き込みながらも立ち上がる。
「…………ひとつ聞きます。貴方どうしてあの娘に固執しているのです?」
「…………固執?バカな事聞くな。元々同じ世界にいた者同士助け合わないと駄目だろ」
「…………」
「……何だよその目。まさか俺が嘘ついてるとでも言いたいのか?」
「………………いえ、まさか」
「何が言いたい。はっきり言えよ」
「………」
「八雲さんだったらはっきり言うけどな」
「…………でははっきり言わせてもらいます。貴方、シヴァをどうするつもりなんですか?」
「……………はっ、何を聞くと思えば。そんな事か。言わずとも分かるだろ」
「シヴァを殺す、ですよね。だとしたらあの娘も死ぬことになるのですよ」
「……………そんな事知ってる。だからってな、すぐに他のやり方を探さずに関係の無い神奈を巻き込むだと!?ふざけるな!」
「そちらこそふざけないでください。今大事なのはいかにシヴァを手っ取り早く葬る事が出来るかです。その為なら手段は選びません」
すると橙矢は目を細めた。
「……………人の命がかかってと分かってていながらもか?」
「…………………えぇ、それほどこの幻想郷は護らなくてはいけない場所なんです」
「…………………あぁそうか」
瞬間橙矢を包む雰囲気が一変する。
「…………少しでもお前らに希望を持ってた俺が馬鹿だった………」
刀の先をゆっくり上げて藍と橙に突き付ける。
「あいつを護る為だったらこの幻想郷を敵に回してやる」
久し振りに映画見て号泣してみたい。なんてたまーに思っちゃうんですよね。なんででしょう?
ただの泣きたがりなんですかね自分……。
では次回までバイバイです!