東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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天の邪鬼を描かせて頂きました。
最近腹が減るスピードが早くなっているような………けれどまぁそんな事は置いといて。


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ではではどうぞ。


第七十三話 酒に溺れて

「それで東雲、隣の人は?」

橙矢と神奈が席に着いた事を確認すると慧音が切り出した。

「俺と同じ外来人だ。明日博麗神社に連れていこうと思ってる」

「橙矢が人を……と言うか女性連れているなんて珍しいと思ったらそんな事か」

「そんな事って言うな」

「おっと失礼。それよりなんて言うんだ?」

「新郷神奈です。えーと……」

「藤原妹紅だ。それと」

「上白沢慧音。里の寺子屋で教師をしている」

「こ、これはご丁寧にどうも」

「そんな畏まらなくてもいいんだ。もっと楽にしてくれ」

慧音がそう言うと神奈は少し強張らせていた肩を下ろした。

「…言葉に甘えさせてもらいます」

「あいよ。……じゃあ橙矢」

「んだよ」

「はっきり言おう。あんたは今里から退治依頼が出されている」

「あぁその事な、もう来たよ。退治屋がな」

「な、何だと!?」

慧音が急に立ち上がった。

「おかしいだろ!まだ退治屋は依頼を受けないはずじゃ……」

「ところがどっこい何故か受けてんだよな」

「私のところには来てないぞ連絡が」

本来退治屋に依頼するときは里の重役達に知らされる。間違っても知らされないという事態はまず無い。

「………私のところにもだ。恐らく橙矢と関わりがある私と慧音には連絡されなかった。つまり………橙矢に連絡を回されると考えたんだろ。………下衆が……!」

多少の酔いが回っているのか少し感情的になっている。

「落ち着け妹紅」

「……………悪い」

「別に怒る程じゃない。予想出来ない事ではないからな」

「…………」

「………まぁ辛気臭い空気は止めにしてだ」

そう言って慧音は翼を生やした少女に話しかけた。

「ミスティア……えーと焼酎頼んで良いか?」

「はいはーい。焼酎ですね」

取り出したのは慧音の注文通りの焼酎。

それを受け取ると橙矢に向けてきた。

「東雲は呑むか?」

「まさか。俺は未成年だぞ」

「だったら霊夢や魔理沙はどうなるんだ?」

「どうなるんだって……いやそもそも歳知らないし」

「あ、そうなのか。……まぁ私達も詳しい事は知らないが………で」

「呑みません」

「じゃあそっちの」

「呑ませません」

矛先が神奈に向いたのを察知するとすぐに庇う。

「じゃあ橙矢に呑ませようかな」

妹紅が意地悪そうな笑みで橙矢の肩を掴んだ。

「ゑ」

「慧音ー、良いよな?」

「あぁ勿論だ」

いつの間に背後を取られたのか慧音に後ろから羽交い締めにされた。

「一回は酒を体験しといた方がいいぞー」

「ま、待て!体験ならしてる!幼い頃に無理矢理呑まされたんだ!それで吐いた!」

まだ橙矢の存在が認知されていた頃の話。

暇潰しに親の同窓会に付いていったところ今と同じ状況で無理矢理呑まされた事がある。酒に対して耐性を持っていなかった橙矢はすぐ吐いた。それからは酒に拒絶反応を起こすようになっていた。数量のアルコールも認知出来るほどに。

「はりきって行ってみよう!」

「に、新郷!助けてくれ!」

「そう言われても………あの」

「「あ?」」

歪んだ笑顔で振り向かれて神奈は

「あ、いや何でもないです」

すぐに折れた。

「やっぱり駄目か……!」

予想出来てました。

「レッツ、飲酒」

口の中に酒が入っていくのを最後に橙矢の意識は翔んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

数十分後、酒を呑まされて寝息を立てて寝ている橙矢を横目に妹紅は満足そうにしていた。

「あー楽しかった。初めて橙矢のあんな顔見れたわ」

「そうだな。たまには東雲で遊ぶのも悪くないかもしれない」

「今度霊夢達に教えるか?」

「いや、それだとさすがに東雲の気が持たないだろ」

「確かになー。けどそれはそれで良いんじゃないのか?」

「………まぁそれは本人次第だな」

「だな。……で新郷、だっけ?」

不意に妹紅は神奈の名を呼ぶと驚いたのかひゃい、なんて声を出した。

「あんたは橙矢とはいつ会ったんだ?」

「え?東雲さんとですか……?それでしたら……大体二時間前くらいですかね」

「二時間前……まだ明るいときだな。で、会った場所は?」

「えぇと……確か東雲さんの家………でした」

「あれ、だとしたらどうしてこんなところにいるんだ?確かここから橙矢の家って一里くらい離れてるぞ」

「一里?……って」

「外の世界でいう㎞で言うと……三kmかな」

「そ、そんなに!?」

「……そんなに驚く事か?」

「当たり前ですよ!」

「ふーん、外の世界では離れてるほうなのか」

「…………この世界ではそんな遠くない距離なんですね」

「そりゃあまぁ森羅万象が集う幻想郷だからな」

「森羅万象……宇宙間に存在するもの全てですか?」

「んー、それとは少し違うかな。ま、そんな話はいいんだ」

それよりも、と妹紅は顔を近付けさせてきた。

「橙矢とはどうやって打ち明けたんだ?こいつの性格上私が言うのもなんなんだけどかなり口が悪いぞ?」

「………そうですか?橙矢さんいい人でしたよ。その…………妖怪?からも私を守ってくれましたし」

「へぇ、橙矢があんたを………。まぁ橙矢だからねぇ」

「どういう事ですか?」

「いやさ、橙矢って一言で言うとこう……人間嫌いみたいなんだよな。人と関わる事を極端に嫌うんだよな」

「そうなのか?私と初めて会った時の東雲はそんな感じではなかったぞ?」

「慧音はそんなに橙矢と大した関わりがなかったからね」

妹紅があっけらかんに言うと慧音が少し唸った。

「おお怖い怖い。さて、そろそろお勘定頼もうかな」

戯けるように立ち上がって懐から金を取り出した。

「ん、折角だし私が出すよ。橙矢に無理矢理呑ましたのは私だしね。こうでもしないと気まずい」

苦笑いしてから金を少女の前に出した。

「毎度ありー、また来てくださいねー」

夜雀のミスティア・ローラレイは手早く金を回収すると片付けを始めた。それを横目に妹紅は橙矢を一瞥する。

「橙矢をどうしようか」

「このままここで寝かせるのは危険ですしね」

「運んでいくにしても……何処に運べばいいんだ」

「起きてるぞ」

いつの間にか橙矢がよろめきながら立ち上がる。

「東雲、もう大丈夫なのか?」

「あぁ誰かさんのせいで頭がまだ痛いけど」

そう言って妹紅を睨み付ける。しかし当の本人は苦笑いをしているだけである。

「アハハ……良いじゃん楽しかったんだし」

「ふざけんな。こっちはトラウマ呼び起こされてパニック寸前だったんだぞ」

「そりゃあ残念だ。パニック起こしてたらもっと楽しめたのに」

「寝言は死んでから言いやがれ下衆野郎」

「それは私が死なないって事を分かってて言ってるのか?」

「知らなかったら言ってねぇよ」

「………はぁ、もういいや。あんたと話してると精神が削られる。じゃあね橙矢、私達はそろそろおいとまさせてもらうよ。色々と気を付けてね」

そう言って立ち去る妹紅と慧音を見送ったあとあることに気が付いた。

「あ、金払ってねぇや」

「それなら藤原さんが私達の分も払ってくれましたよ」

「妹紅が?………はぁ、余計な事を……」

「良かったじゃないですか」

「俺何も食ってないがな」

「良いじゃないですか」

「んー………」

 

―――その時

「鶏肉ゥ!!」

「――――――は?」

急に橙矢と神奈の目の前をピンク色の何かが猛スピードでミスティア目掛けて飛んでいった。

 




みすちーの屋台に一回でもいいから行ってみたいですね。

それとお気に入りが50件に達しました。本当にありがとうございます(*´∀`*)
これからも頑張っていきますのでよろしくです!

では次回までバイバイです!

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